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世界の真実

超・睡眠不足

ちゃんと書けてるか不安

寝ぼけて変に書いてたらスルーするー感じでオナシャス


『無風さん……』

「…………ん」


 暗い闇の中に居た俺に誰かが囁いた。


『起きてください……』

「…………だ……れだ?」


 優しく語りかける様に囁かれる声。

 とても聞き覚えのある声が聞こえる。


『起きてください、無風さん……』

「…………士元……か?」


 そうだ。

 これは士元の声だ。

 孟徳の陣地から離れ、満身創痍で心の内側まで凍えきり、楽になりたいがため死さえも受け入れていた俺にただ一人、必死に助けようと手を差し伸べてくれた少女の声。

 劉備軍内部で、数少ない信頼のできる人物。

 この世界に来て始めて、好意を寄せていると言ってくれた女の子。

 だから、一緒に居てはいけない。

 俺の周りは敵だらけの危険地帯。

 そんな所に士元を置いておくなど、彼女を無駄に危機に晒すだけだ。


『私は―――です。だから―――に。』


 士元の声が掠れてきた。

 どうした!?

 どういう事だ!?

 そして、俺の意識はまた闇に取り込まれて薄れて行く…………


・・・・・・・・・・・・


 「…………ぁ」

 「あ、起きましたか?無風さん」


 まるで泥沼の中から浮上するかのように意識が浮いてゆく。

 瞼もかなり重たく、ゆっくりと開いて周りの確認をする。

 すると右側に鍔の大きい魔女帽子が目に入った。

 その帽子を被っているのは色素の薄い青色の髪の女の子が見える………


「…………士元……すまない、寝ていた。」

「まだ寝てます。私は司馬懿ですよ。鳳統ではありません」


 数秒、彼女が何を言っているのか理解できなかった。

 しかし、段々と覚醒してゆく意識をフルに活用して今の言葉を解読する。

 さらに数秒、やっとこさ現状を理解した俺はもう一度右にいる人物を見やった。

 いまだに眠気眼(ねむけまなこ)の状態ではあるが、脳が既に半分以上覚醒している為に相手が誰だか、今度はしっかりと把握する。

 士元と瓜二つ、ただし服は赤を基調とし銀髪、眼はオッドアイな上に目つきが鋭い。

 言葉にすればかなりの違いがあれど、実物を前にして、一瞬だけならば士元と間違えてしまう。

 それによく考えればここに士元が居たらおかしいしな。


「…………すまない」

「別に。気にしてなんかいませんから。全然……気にしてませんから」


 大事な事なので、二言いましたよ?

 脳裏に一人のMCをしている大物の人が浮かんだが、今は関係ない。

 まぁ……なんだ。

 滅茶苦茶気にしてるっぽいな。

 そりゃ、別人と間違えられていい気分をする人なんて滅多に居ないよな。

 世界は広いからな………居ないと断言出来ないのが悲しい。

 ここは別の話をして思考を逸らすしかないな。


「…………そういえば、俺はどれくらい寝ていた」


 意識が途切れる前は真夜中だったが、今も空には月が暗闇の空を照らしている。

 早くとも一日は爆睡していた事になる筈。

 意識が途切れる程に身体が疲労していた訳だし。


「私が起きたのは一日前です。無風さんは丸々3日も寝ていたんですよ」

「…………それでどうして俺が3日も寝ていたという計算になる……」


 仲達が俺より1日早く起きたのならばおれは2日寝ていた計算だ。

 まさかの凡ミスか?


「あぁ、そこは狼さんが教えてくれたんです。私が丸々2日ほど寝ていた……と」


 狼さん?

 あぁ、ここの土地神か。

 狼さんって……3匹の子豚に出てくる狼を想像してしまった。

 そういやこっちに来てから最初に本屋を見て回ったんだよな。

 文字を覚えるに絵本は最適だし、何よりも文字が単体で書かれていればまだ良いのだが文字が連結していて尚更に読めない。

 孟徳なんかは達筆だから、パッと見、形は綺麗に見れるが筆記体の様に書かれていて読めん。

 それでも何とか読み取れる単語から内容を把握して孟徳のミッションをこなしてた。

 不幸中の幸いだったのが、言ってはアレだが俺の生まれである現代よりも治世のレベルが低かったので対処は可能だった事だな。

 まぁ、1800年も昔なのだから当たり前か。

 次も上手く行くとは限らないし、内容を誤読しては元も子もない。

 だから本屋で絵本を探したのだが………これが見事に絵本と呼べる物が存在しなかった。

 まぁ、このご時世だ。

 生きる事で精一杯なのだからしょうがないとも取れる。

 まてよ?

 これ、俺が絵本とか描いて売ったら売れるんじゃね?

 と思ったが、俺自身、絵心なんて皆無。

 孟徳ならば可能かもしれないが、ここが1800年も昔なのを忘れていた。

 印刷できねぇ。

 瓦版とかはあるのでそういった職人は居るのだろうが子供が何人居ることやら………

 職人を何人雇っても追いつかねぇわ。

 この世界では紙も貴重な物だし。

 作れてもモトを取るには相当に絵本の値段を上げなければいけない。

 考えれば考えるほど問題が山積みな事に気がつき、これは俺一人で考えても解決しないという事が十二分に分かった。


 だいぶ話も逸れてしまったし、ここいらで思考を戻そう。

 えーっと……あぁ、そうだそうだ。

 俺が3日も寝てしまったと言う所で話が逸れたんだったな。

 恐らくは氣と魔力の使いすぎだろう。

 2~3日寝ても居なかったから疲労も溜まって限界を超えたという所か。


「…………そういえば……あの狼はどこいった」

「狼さんは先に寝床の方で待ってます。無風さん、倒れる前にそこに行こうとして倒れるように寝てしまったんですよ?覚えてませんか?」

「…………そういえばそうだった気がする」


 3日も寝ていた為か、身体の彼方此方がギシギシと音を立てて痛い。

 それに臓器も長く横になっていたせいで起き上がると臓器の重みが響く。

 要するに全身が痛い。

 それでも無理矢理身体を持ち上げて立ち上がる。


「…………うっ」


 急に立ったからか、目眩がして目の前がチカチカする。

 もう、傍から見てもボロボロだろうな。

 こんな姿、孟徳ならいいが、流琉と士元なんかに見られたらどうなるか分かったもんじゃない。

 寝すぎも問題だよなぁ、自分の意思でどうにか出来る物でもないけど。

 重たい身体を無理矢理に動かして、まずは氣を使い土地神の居場所を探す。

 今回は特定の止まっている相手を探すだけなので、一定方向に氣を伸ばしそこから360度、全方位に回転させる。

 簡単に言えばレーダーの様な物だ。

 人や物など、特定の何かを探すにはこの様な使い方が一番効率が良い。

 普段の全方向への拡散型と違い、氣を一定方向に伸ばすだけなので距離が4倍ほど伸びる。

 しかし、これは戦闘時などに使うのは不向きだ。

 戦闘時に必要な物は周辺の状況把握が一番、戦の全体を見て判断するのは孟徳や文若の仕事であって俺は将に近い分、前者が必要になってくる。

 なぜ不向きかというと、氣を伸ばすのにはそれなりの集中力が必要で、全方位に伸ばした氣を回転させるのも戦いながらだと、かなり難しい。

 それに比べ全方位への拡散型は一々集中する必要が無く、大雑把に力を出しても大丈夫な上、周辺の状況を確認するのにも役に立つ。

 まぁ、どちらも一長一短って事だ。

 

「…………近いな」


 探して見た所、俺らが居る山の頂辺から少しだけ向こう側の森が広がっている所。

 麓の村から見たら頂上より奥にある位置の為、村からは見えないし、そういった意味でも安心して眠れるって訳か。

 絶対見つからないとは行かないが、こんな山の奥までは(と言うか土地神の存在で)動物が来ないので、狩りをする麓の人たちもよって来ないしな。

 歩いて銀狼の所まで歩いてゆく。

 森の、特に木々が他の所よりも密集している所に行くと煙の様に銀狼が現れる。

 今回に限って俺が見つけられるように気配だけ残して姿を隠していたんだな。

 普段は人間に見つけられない様、姿・気配を消して過ごしているんだろうが、便利だ。

 俺にも出来っかな?


《来たか……》

「…………あぁ」

《この先だ。この木々は実態のある幻だから、ここを真っ直ぐ突き進めば洞窟がある》

「木を通り抜けられるんですか!?」


 仲達の驚きも最もだ。

 俺がどれだけ集中力を練った氣で視ても、そこには木々があるようにしか見えない。 

 銀狼を信じない訳でないが、そのまま進むのは抵抗がある。


《ふっ……小童共にそうそう気づかれる程、日々を無駄に過ごしてなど居ない》


 銀狼はニヤリと牙を見せるかの様に笑ったと思ったら、今度は仏頂面の様なポーカーフェイスになり唸るような声で喋りだす。


《だが、この結界は俺では壊せない。悔しい事に、お前らの力が必要不可欠なのだ》

「…………」

《だから……頼む。満月の夜で無かったとは言え、俺を破る事が出来たお前以外頼れない》

「満月の夜で無いとは?」

「…………簡単な事だ。大方、妖力が上昇するだとか、妖力を使用する時の抵抗が無いとか。そんな所だろう」

《ほぅ、良く分かったな。俺が妖力を使っていると》

「…………神を信じてないだけだ」


 神は存在していたとしても、奴等は傍観者だ。

 この世界に干渉してくる事は無い。

 

《ふむ、大体は小童の言う通りだ。我々の様な妖の力を持つ生き物は体内にある妖力を使って攻撃や幻惑・自身の強化をする》


 銀狼の身体から氣とも魔力とも違う異質な力が泉の様に溢れ出してくる。

 戦っていた時は自身の強化をしていたからか感じられなかった。


《ただし、空気中には妖素という妖力と同じ力が漂っている。そしてこの妖素は日によって空気中に漂う密度が日に日に変かるのだ》

「…………そして、その妖素なる物には空気中に漂う密度の限界がある……か?」

《察しがいいな、その通りだ》


 なるほど、大体原理は理解した。

 妖力を使えば使う程、そこら一帯の妖素が濃くなって行き段々と妖力が使えなくなってゆく。

 現代風に言い換えれば小学校の理科で習う飽和水蒸気量が似ている。

 飽和水蒸気量は1mの空間に存在できる水蒸気の質量をgで表したもので、温度と湿度によって水蒸気が空気中にどれだけあるかを求める物だ。

 一定値を超えると水蒸気が凝縮し、気体から液体になる。

 夏場、コップの外側に付く水滴などが、厳密には少し異なるが飽和水蒸気量を超えた現象の一例としては分かり易いだろう。

 妖素が限界値を超えるとどうなるかは分からないが恐らくは似たような物である事に違いはない。

 でもって、満月時には月の引力によって引き潮・満ち潮が起きる様に、月が妖素を最大限吸収するから、ほぼ全力を尽くせる状態になれる。

 そんな所か。

 まぁ、妖力は恐らく自分では使えないだろうから、あまり興味も沸かない。

 興味が無くなった物はもういいとして、実態のある幻という木々に触れる


バチバチッ!


「…………っ!」


 少しだけ手が木に沈み込んだ所で、まるで電気を直接掴んでしまったかのような痺れが掌を襲う。


《これだ、この結界のせいで俺はここから先に入れない。………行けるか?》


 確かに結構強力な結界だが、触れた時の感触から氣で練られた物であるのが分かった。

 なるほど、ここに銀狼が入れないという事は、妖力を持った奴は氣に弱いのかもしれない。

 ここにも何かしら一定の法則があるのか?

 まぁ、そんな事は後で幾らでも考える時間はあるので、今はこの結界をどうするかを考えるべきだな。


 相手の氣に合わせる事が出来れば結界など何の意味も成さないが、相手の氣に合わせるという事は相手の事をある程度は知っている必要がある。

 なので今回はこの方法は使えない。

 次の方法としては結界に流れている氣を上回る氣力で破壊、これがやり方としては一番簡単だが、自分の身体のコンディションから考えてそこまでの力を使ったらそれだけでまた倒れる自信がある。

 最後の方法としては、一番地味なやり方だが結界に穴を開ける方法か。

 結界と大層な言い方をするが、身も蓋もない言い方をすれば蜘蛛の巣が少し複雑になっただけの代物だ。

 だからその結界に流れる氣の流れを逸らし、消し、潰し、組み換え、加え、組み合わせて穴を開ける方法。

 とてもすご~~~~~~~~~~く地味だが、今はこれがベストだ。

 というかそれ以外の方法が思いつかない。

 しかし、この方法にも問題がある。


「…………仲達」

「はい、なんでしょう?」

「…………お前はここで待ってろ」

「へ?な、何故ですか?」


 ここで私も!とか言わずにまずは聞く所が士元とは違う所だな。

 まぁ、仲達も時たまにそうなる時が無い訳では無いが。


「…………これから結界に穴を開けるが、その穴が一人分の大きさしか作れない」

「後から続いて入る事は出来ないんですか?」

「…………これほど強固な物だから、難しいと考えるのが妥当だろう」


 それに何より、結界内に入れたとしても、その中が安全とは限らないしな。


「…分かりました。では、ここでお待ちしてます」

「…………あぁ、そうしてくれ」

「だから……」


 そう短く切り返して俺に抱きついてきた。

 帽子のせいで仲達の顔が見れない。


「だから、早く帰ってきてください。………待ってますから」


 言い切ってから、名残惜しいのか最後にギュっと少しだけ強く抱きついてから離れた。

 恥ずかしかったのか、帽子の鍔を持って引き下げ、離れた後も顔を隠している。

 そんなに恥ずかしいなら抱きつかなければいいのに……


「…………始める」


 短くそう言って、仲達を下げさせる。

 万が一を考えてだ。

 ゆっくりと結界に両手を伸ばしてゆく。


バチ…バチバチバチッ!


 今度は痺れが来るのが分かっていた為に、ダメージは少ない。

 その状態のまま、目を閉じて結界の構造を頭に流し込む。

 ん?思った以上に簡単な構造をしている?

 2重3重に結界が張り巡らされていると思っていたが、そんな事はなく単純な構造で、特筆しているのは結界の強度だけだ。

 何か、態と壊して欲しい様な、誘い込まれている感じがする。

 しかし、ここで引け腰になっていても何も好転しない。

 なので、黙々と氣の配線を組み替えて穴を開け、開けた穴を広げてゆく。


 時間としては半刻ぐらいで人一人が通れる穴が完成した。

 単純な構造であるとは言え、一瞬でも気を抜けば結界の再構築が始まってしまう。

 

「…………行ってくる」


 一言だけそう告げ、結界に開けた穴へ頭から飛び込む。


「必ず帰ってきて下さい。待ってますから!」


 頭から飛び込み、受身を取って起き上がる。

 起き上がった時点で、もう既に結界に開けた穴が閉じていた。

 同時に、向こうに居るはずの仲達の声が聞こえない。

 この結界は音すらも通さないのか。

 意識をしたその瞬間、静寂が俺の周りを包み込む。 

 考えてみれば、ここ最近は一人でいることが少なかった。

 連合では傍に孔明と士元がよく居たし、劉備軍を抜けてからの数日は一人だったがそれから先は仲達がいた。

 現実世界では家族は居たが、父が8代目当主だった為に分家を回って何か色々とやっていたみたいで、それに母も着いて行った為、家では一人だった。

 分家の方から本家に来るのが仕来りだと思うが、まぁそんな仕来りに縛られるほど古くからの家系という訳でも無いからいい……か?

 

 それにしても……凄く異様な光景だ。

 何が異様かって言うと、ここら一帯はあの銀狼の作った幻がある所なのだが、結界があるせいでその部分だけ幻の木々が切れているのだ。

 入ってきた入口の木々も、半分結界に飲み込まれている為、その部分だけ無いのだ。

 切断面が晒されている木々がそのまま立っているという謎空間に少し不気味さを覚える。

 あまり気にしていても仕方ないから銀狼が言っていた様にひたすらに真っ直ぐ歩く。

 それから少しの間、山の斜面を降っているとある部分だけ山の斜面が平坦になっており、調べてみると洞窟だった。

 山を降りている時の視点では洞窟が見えなかったので見逃しそうになった、あぶねぇ。

 中に入ってみると、思った以上に中は湿っておらず、しかも洞窟の彼方此方が淡く光ってそこまで暗くは無かった。

 どんな原理で光っているのか少しだけ興味が沸いたが、今は優先順位がある。

 洞窟内を進んでいくと、草が敷き詰められた如何にもあの銀狼が使っているであろう寝床らしき場所があり、その少し奥に祠らしき物が立っていた。

 石で作られた台に小さな、本当に小さな祠が乗っかっている。

 大きさ的にはA4サイズの紙と同じくらい、本当に小さい。

 そこまでは普通の祠だが、一つだけ異なる点があった。

 祠の扉にまるで封印するかのように紙が貼ってあるのだ、それも✖印に2枚。

 

 その御札を………問答無用で剥がす!

 罰当たり?

 神なんぞ信じてない俺に天罰なんて落ちるわけ無いだろう。

 札を剥がし扉を開けると、中には紫色をした結構大きめな水晶が納められていた。


「…………」


 無言でその水晶に触れてみる。

 触れた瞬間、水晶がいきなり発光しだした。


「…………っ!」


 あまりの眩しさに目を閉じて顔を逸らす。

 数秒して光が収まった様なので、恐る恐る目を開いて正面を見る。

 すると、祠が台座の石部分すらも無くなり、代わりに其処には一人の子供が立っていた。

 しかし、目を閉じており動力の切れた人形の様でもある。


「…………!!」


 流石に俺も驚いた。

 祠から人が?祠が人に?

 どちらでもいいが、まさか人が出てくるとは思わなかった。

 俺が驚いているとその子供は目をゆっくりと開いてこちらを見つめ


「……あぁ、君か。僕を起こしたの」

「…………俺を知っているのか?お前は誰だ」

「僕?僕は僕だよ」


 会話が成立しない。

 しかし、ただ分かっている事は一つ、こいつは限りなくヤバイ。

 身体の細胞一つ一つが『逃げろ!コイツはヤバイ!』と警告して来ている。


「そんなに警戒しなくてもいいよ。僕は敵じゃない」

「…………何故、そう言い切れる」

「何故?……あぁ、それはね。"僕が君を召喚"したんだもの。敵な訳無いだろ?」


 何!?コイツは今、何て言った?

 『俺を召喚した』……だと!?

 

「まぁ、君が分からないのも無理無いさ。だって僕が"そういう風"に"記憶を誘導"したんだもの」


 コイツは何者だ?

 俺がいわゆる現代から来た人間だというのは分かっているみたいだし、記憶を誘導?

 コイツは………俺の知らない事を知っている?



================???視点================


 眠い

 急に叩き起されたから、まだ本調子になれない。

 しかし、驚いた。

 僕の結界を突破して、しかも祠の封を切るなんて、そこそこ出来る奴である事は分かっていたけれど、まさか僕が召喚した無風君だったとは。

 もうちょっと時間かかるかな~と思っていたけれど、本当に君は僕の予想を簡単に覆してくれる。

 見ると、かなり警戒されている。

 当たり前だけど、少し寂しい。

 

「まぁ、まずはそうだな。君、僕の事思い出せる?」


 僕の問いかけに考える素振りは見せるが警戒も解かない。

 警戒しなくて言いって言ってるのに。


「思い出せないか。じゃ、ちょっといいかい?」


 そう言って僕は腕を伸ばす。


「…………っ!」


 しかし、僕が触れるよりも早く無風君はバックステップで避けてしまう。


「少しだけ記憶を戻すだけだよ。いや、この場合はちゃんとした方向に思考を戻すと言った方が適切か?」

「…………」

「まぁ、君が記憶を取り戻したく無いのならいいよ」

「…………まずは、話せ。その記憶の部分を」


 ん?話して信じて貰えないから、この方法を取ろうと思ったんだけど。

 まぁいいか。


「僕はね、路上で君を襲ってこの世界に連れてきた張本人さ」

「…………っ!?嘘だ、確かに俺は路上で倒れ、気づいたらこの三国志の世界に来たのは認めるが、お前の様な子供になど……っ!」


 やっぱり否定されちゃった、と思っていたら急に無風君は頭を抱えて片膝をついた。

 まさか………


「…………ぐぅぅぅぅ!?くっ!はぁ!はぁ…はぁ」


 頭から手を離し、こちらにその黒く澄んだ双眸でこちらを見てくる。

 

「…………お…もい出した。俺は…確かにお前と合っている……」


 まさか……自力で記憶誘導に打ち勝つなんて、本当に君は面白いなぁ。

 ただ、一つ思い出すだけでかなり負担は大きいみたいだけど。


「…………あの時……俺に『助けて』と言ったな」

「言ったね」

「…………どういう意味だ」

「そのまんまの意味だよ。んー……まぁ、かなりいい方向に行ってるけど、もう少しかな」


 僕の言っている意味を理解できなくて首を傾げている。

 逆に今ので話が読めたら神様だよ。


「まぁ、まずは『この世界』について言っておかないと理解出来ないだろうから、そこから話すね。長くなるから座ろ?」


 流石に、話が長くなりそうだという事は本当だと思ってくれたのか、お互い胡座で座る。


「えっとね。まずこの世界は『終わりで始まりな世界』っていう世界なんだ」

「…………終わりで始まり?」

「うん、イメージで言うとね?まず正史、これを大木と考えると、そこから伸びる枝は外史。ここまでは大丈夫?」

「…………あぁ」

「それで、枝から伸びる葉っぱ一つ一つが一つの世界」

「…………世界?意味が分からん」

「うーん、簡単に言うとね?葉っぱの部分はその外史の歴史なの。ある葉っぱは三国志、ある葉っぱは戦国時代、ある葉っぱは第一次世界大戦、それぞれの時に起きた世界といえばいいかい?」

「…………あまり要領を得ないな」

「こればっかは言葉では言い表し難いんだ。察してくれると嬉しいな」


 彼も頑張って認識しようとしているが、説明しようがない上、僕は説明ベタだから中々に難しい。


「それで、この世界はね。そんな大木から出た『落ち葉の集合体』の様な物なんだ」

「…………落ち葉」

「そ、木についた葉っぱが枯れて地面に落ちるように、外史のその世界も枯れてしまうんだ。だけど、落ち葉もまだ落ちた直後は生きている。そんな命の炎が燃え尽きる直前な世界が、この世界なんだよ」

「…………それ、この世界ももうすぐ世界の終わりが来るって事か?」

「その予定だった……と言うべきだね」

「…………どういう事だ?」

「北郷一刀……君はもう会ったよね?」

「…………アイツがどうかしたのか?」

「一刀はね、外史の修理者なんだよ」


 外史の修理者


 外史には管理者なる、言葉そのまんま外史を管理する組織が存在する。

 しかし北郷は管理者とは違い、外史の進む方向性を元に戻したりして、極力枯れてゆく世界を救う役割でありただ一人の存在。

 その存在が、既に枯れて正史という木から離れたこの世界に降りる。

 そんな未来を視た管理者全員は驚いた。

 いや恐怖したと言ったほうがいいかもしれない。

 こんな事例、外史が生まれてから初めての事だったからね。

 落葉が木に戻る事は無いように、終わった外史が生き返るなんて合っては為らない。

 そこで一つの仮定がなされた。

 『これは、新たな正史の始まりではないか』という馬鹿げた話が。

 落ちた葉から新たな種が生まれ、新しい正史の木がなる。

 有り得ない、最初は皆が皆そう思っていた。

 北郷が『終わった世界』に行く事になったのは、何かのミスだとね。

 しかし、何回、何十回、何百回と未来を視ても北郷が『終わった世界』に行く事は確定していた。

 もう管理者全員、否定しようが無くなり、そこで派閥が生まれた。

 一つ目は終わった外史を壊し、全てを無かった事にしようとする過激派。

 二つ目はその外史を認め、その外史の行き着く先には干渉しない傍観派。

 三つ目は終わった外史に北郷以外の人間を送り込み、間接的に外史の行方を変えようとする穏健派。

 大まかに分けてこの三つがお互いに一人ずつ天の御使いたる人間を送り込む事になったんだ。

 

「ここまでが君のこの世界に来る少し前のお話さ」

「…………なるほどな。それで言うと俺は"穏健派"からだな。誰よりもこの世界に来るのが早かった」

「いい線いってるね。後は北郷が傍観派、もう一人の天の御使いが過激派からだね」

「…………という事は、早急に対処しないといけないのは呉にいる過激派の天の御使いか……」

「ううん、別に大丈夫だよ」

「…………何故、言い切れる?」

「確かに過激派に選ばれた天の御使いとなる人間を指定されたよ。けど、僕は過激派の奴等が嫌いだからね。僕のメガネにかなう人間しかこの『終わりの始まりな世界』には召喚してないよ」

「…………そんな事して、過激派の干渉はどうしてるんだ」

「干渉なんて出来ないよ。この世界に干渉できる管理者は僕だけさ。正確には『この世界』限定だけど」

「…………限定?」

「そう、僕はこの三国志の中での管理者であり、他の外史には干渉出来ない存在。だから、君がこの"三国志の世界"から"日本の世界"に行ったら、そこには僕と同じ条件の管理者が存在するよ」

「…………訳が分からんな」

「世界なんて、そんなもんさ」

「…………次の質問だ。何故、事の始まりでは『終わりの世界』と言っていた癖に、今は『終わりの始まりな世界』とお前は言うんだ?」

「あぁ、それは僕が勝手に言っているだけ。君と北郷、そしてもう一人の御使いの3人なら、ここにまた一つの正しい外史を作ってくれる、そう信じてるだけだよ」

「…………正しい……外史」

「うん、君らは良くも悪くも"正しい"と思う世界にしようとしている。勿論、正しいという言葉はどうとでも受け取れるけどさ、君らなら間違えない」

「…………随分、過大評価してくれる」

「本当のことさ、そうでなければ、この世界に召喚なんて出来ない。ただ、ちょっと。いや、かなり僕は酷い事を皆にしてるけど。特に君には」

「…………?」

「まず、君は特に人殺しなんか出来る人間じゃ無かった。恐らく人を殺したら、最悪壊れていただろうね。だから思考を操作させて貰ったよ。気づいて無かったでしょ?」

「…………言われてみれば、そうだな。現代で生きてた俺が普通に戦に参加してる」

「次に君の氣…だっけ?その出力を制限させて貰ったし」


 そう言って僕は目を伏せた。

 人……いや、例え神であったとしてもやってはいけない禁忌。

 人間を冒涜する管理者の………僕の能力。


「…………どうやって制限をかけた」

「………」

「…………そこまで言ったのなら、答えろ」

「君の"本当の肉体"を入れ替えた。君のその身体はこの世界の君の祖先に当たる身体なんだ」

 

バキッ!


 いきなり、無風君に殴られた。

 座った状態からだったから、拳に腰が入ってなく力が入って居なかった。

 それでも痛い、心が痛い。

 分かっている、それが幾万とある禁忌の中で最上位に位置するものであると。


「ふざけんな!」


 無風君が本気でキレている為に、物凄い量の覇気が身体全体にぶつかる。


「お前……少しはいい奴かもと思ったが、俺が大馬鹿だった」

「ああ、僕が馬鹿なのは分かっている。だけど、こうしないと君は"消えて"しまっていた」

「今なら分かる。俺は北郷が来る前に来て、歴史を先に変えかけた。それは未来の俺の存在を脅かす行為だ」


 そう、北郷……外史の修復者が来る前に世界の流れを変えてしまうと、歴史が大きく変わってしまう。

 それは『世界』にとって異物以外の何者でもない。

 存在する事を『世界』が許さなかったろう。

 しかし、それを回避する為にこの世界の人間の身体を借りれば世界は手出しが出来ない。

 この世界の人間の身体なのだから。


「分かっている。だがな、俺が生きる為に誰かが犠牲になっていい筈がない!」

「僕だってそれぐらい分かってるさ。だから、君の祖先の体から魂が抜けるまで待った」


 数秒間、無風君は僕を睨み、僕は真剣にその視線を受け止めた。


「………俺の祖先は…生き抜いたんだな」

「ああ、僕が保証する」

「…………ならいい」


 そういうと無風君はまだ機嫌は悪そうだが、なんとか納得してくれた。


「…………ちなみに、俺の本当の身体は何処だ」

「君がこっちで始めて起きた森の中の洞窟にある祠さ」

「…………彼処か。なるほど、あの時は洞窟なんて探す余裕すら無かったからな」

「それでさ、こっちからも一つ質問いいかな?」

「…………質問にもよる」

「さっきからなんか結界への攻撃を繰り返してる奴がいるんだけど、誰?」

「…………恐らく、銀狼だな」

「銀狼?」

「…………ここの土地に住んでる大妖怪の狼だ」

「……あぁ、もしかしたらあの子かな?あちゃー、あの子の寝床がここって事?」

「…………奴の話によれば…だがな」

「ふーん。ならあの子は通れる様に結界を調整しなくちゃねー

「…………アイツ等が来るとうるさくなる。最後に一つだけ質問させろ」

「なんだい?」

「…………お前の名前はなんだ?一番最初の質問が最後になったがな」

「僕?僕は色々な名前があるからなー。じゃあ、一番名が通ってる名前でいい?」

「…………あぁ」

「分かった。それじゃ名を名乗ろう」










「僕の姓は姜 名は尚 字は子牙。皆からは太公望と言われていたよ」











up主「ども!皆さんこんちゃっす」

流琉「兄様、挨拶が軽すぎます。もっとシャキっとしてください」

華琳「そうよ、もう少し気を引き締めなさい。だらしがないわよ」

up主「流琉に言われるのなら仕方ないと思えるけど、華琳には言われとうない」

華琳「私はいつでもしっかりしてるわ」

up主「どの口が言うんだか」

流琉「それよりも兄様、どうして今回は私まで?」

up主「簡単な事だ。最近、流琉成分が足りてない!」

華琳「もしもし警察ですか?ここにロリ〇ンが一人。ええ、直ぐにお願いします」

up主「ちょっと待てコラ」

華琳「なによロ〇コン」

up主「確かに不適切な発言をしたのは謝る。すまなかった」

流琉「?」

up主「だけどな、流琉が居るのと居ないのとじゃ空気が違うんだよ!」

流琉「え?え?」

up主「こういう反応する奴が、俺の周りにはいなさすぎる!」

華琳「もしもしSW〇Tですか?ええ、ここに世界の敵が、はい…はいあ、直ぐにでも……」

up主「某国の特殊部隊を呼ぶのはやめて!俺の命だけじゃ済まなくなるから」

華琳「仕方ないわねぇ」

up主「仕方なくねぇよ、ただでさえ今回は話が長いんだから、ここぐらいはもうちょいコンパクトにするべきだったんだよ」

華琳(とか言いながら流琉を連れてきてる時点で話を短くする気ないじゃない)

up主「なんか言いました?」

華琳「いいえ、何でもないわ。でもそうねぇ、最近は流琉の料理食べてないものね。何か作ってくれるかしら?」

流琉「はい!じゃあそうですね、最近は夏と言っても涼しくなってきましたし、肉まんにしましょう」

up主「め、飯テロェ……」

華琳・流琉「何が(ですか)?」

up主「コイツ等、素だったのかよ!?」


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