呪われし大地
董卓が名目上死亡し、洛陽が陥落してから数ヶ月が経った頃、俺は広陵郡と呉郡の狭間、いわゆる徐州と揚洲の国境。
それでも分からなければ、入蜀する前の劉備軍と呉の孫策軍が占める領土の境目だとでも思って貰えればいい。
呉郡にまで侵入すると、さすがに呉の人間にバレる危険性を孕んでいたために、呉よりかは比較的人の出入りが甘い徐州の端っこで身を潜めることにした。
そして山間の道を抜けて、山の麓まで降りる途中で疲れを吐き出すように小さくため息をつく。
「…………ここまで来れば、まずは一安心て所か」
「そうですね、劉備殿の治水管理は甘いですし、臥竜鳳雛もいくら秀才だからといって、ここまで調べるとは思いません」
「…………山の上から見下ろした時にも確認したが、そろそろ麓の集落に着くな」
「はい、比較的小さい村でしたし、恐らく"目"は無いと思います」
「…………ところで」
「なんでしょう」
「…………どうしてここに居る。"司馬 仲達"」
そうなのである。
洛陽を脱出する時は姿を消していた癖に、洛陽を出て孟徳が居る陳留を避ける為に迂回路を取り陳留を含めた兗州の上の、冀州に入った所で待ち伏せされていた。
そこでいきなり、自分を家臣にして欲しいという司馬懿の意味不な発言を無視して、ここまでやってきた。
「家臣にと取り入れて貰えるまで離れる気はありまあせん。……もう月は権力から離れました。だからこのままそっとして上げたいです。彼女の幸せの為にも。だから、私が次に仕える君主は無風さん、貴方だけなんです」
推測だが、恐らく最初に姿を消していたのは董卓と賈詡の二人が劉備軍に保護され、無事にやっていけるのかを確かめる為だろう。
でもって、董卓が安心して過ごせているのを確認してから、俺の通るであろう道に待ち伏せをしていた。
どうせこんな流れだろ。
それに、家臣として取り入れたら余計離れないだろ普通。
どっちにしろ、こちらにメリットが無いじゃん。
「…………俺は家臣など作らん」
「そこを何とか」
「…………駄目だ」
「もう少し」
「…………くどい」
「もう一声」
値切りじゃねーよ!
なんだよもう一声って。
アホか!
なんだか、案外司馬懿ってアホキャラなのか?
久々に頭痛くなってきた。
「…………そんなに俺に仕えたいのなら、仲間になれ。・・・・・・それが妥協点だ」
「……劉備のため………ですか?」
「…………半分正解……だな」
司馬懿が警戒していた部分まで踏み込み、踏み躙る。
仲間とは確かに心強く、頼もしい。
しかしそこに、明確な線引きをするのは難しい。
仲間だから信用・信頼できる。
仲間だから大丈夫。
確かに素晴らしく、尊い言葉でもある。
しかし、それを言い訳に使ってはならない。
そこが仲間という言葉の難しい所である。
甘やかし合うのは仲間なんかじゃない。
そんなものは負け犬同士、傷の舐め合いをしてるのと同意義。
仲間という言葉を借りた、それこそ免罪符にほかならない。
本当の仲間というのは己の全力を持って、周りの人間を支えること。
そういった意味で玄徳は中途半端でいけない。
玄徳は武にも智にも秀でている訳ではない。
だからこそ彼女は考える事をやめてはいけない。
連合に参加する前も、なんとかなると思っていたからな。
だから、仲間とは己の立場を決める線引きが難しい。
司馬懿もそこを危惧していたのだが、その危険性を分かった上で俺は問いかける。
お前はそれでも俺に着いてくるのかと。
それと同時に玄徳への示しでもある。
劉備陣営では好き勝手やっていたし、士元に助けられた最初の頃にも劉備の掲げた物を否定していた。
だが、否定ばかりでは説得力に掛けてしまう。
だからこそ、俺なりの仲間というものを示す必要がある。
「……わかりました」
そして、そんな俺の思考をも読み取った上で、司馬懿はその場で頭を垂れて抱拳礼を取る。
形だけだが。
「今ここに、無風 雛 殿を君主と定め、我が姓名 司馬 懿 仲達の真名、苺里を貴方に捧げます」
簡易的な礼ではあったが、これで仲達は公式的には部下、ということになった。
「…………それを理解して尚……か」
そこでいきなり、本当にいきなり仲達が腰に抱きついてきた。
姿が瓜二つなだけに、抱きつかれて見上げる姿が士元だと錯覚してしまう。
「………なんだ」
「ずっとこうしたいって、思ってました。もし、家来になっていたら……出来ませんでしたけど」
そうして上目遣いにこちらを見上げてくる仲達は、顔を真っ赤にしてとても嬉しそうな表情をしていた。
「…………なぜだ?」
「最初は、私が無風さんに負けて鳳統殿が私達の保護を申し出てきた時です。あの時、あなたは私を一切怖がることなく接してくれました」
「…………目の色の違いが魔の類では無いと知っていたからな」
「違うんです。問題はそこじゃありません。恐れない、それが私にとって大きな事なんです」
そうかもしれない。
仲達と一緒にいたら祟られるかもしれない、呪われるかもしれないと思っている連中が大半だ。
恐らく洛陽でも、話し相手は董卓か賈詡ぐらいだったろう。
もしかしたら、董卓が悪政をしているという噂の発端は洛陽だったのかもしれないな。
董卓が魔に取り憑かれたとか、呪われて傀儡にされたなど。
もう、知る術は無い。
とても孤独な人生を歩んできた事だろう。
「それでも、私は無風さんを疑っていました。本当に月を助けてくれるとは思っていなかったですし、精々、これから逃亡、亡命して連合から逃げる日々を少しだけ伸ばすくらいだと思っていました」
それはそうだろう。
俺はあの時小細工を使った。
"血糊"をな。
この時代に血糊を使って誤魔化す、なんて小細工を思いつく人間は居ないだろう。
精々、影武者を立てて死んだかの様に思わせるくらいだ。
決めてとなったのは、どうして今の時代にあるのか分からなかったが、片栗粉である。
あれを少し混ぜるだけで本物の血みたいにドロドロっと出来る。
問題は本物の血では無いので、酸化せず真っ赤なままだという事。
多少、俺の"血"を混ぜているとはいえ、酸化する速度はそこまで挙がらない。
血を混ぜたのは、血糊に血の匂いを付けるためだからな。
しかし、その問題は士元と孟徳、玄徳、袁紹あたりがその痕跡を消してくれるだろう。
士元は、俺が血糊を作っているのを董卓と賈詡、仲達の4人で見ていたから。
玄徳は、士元からその事を聞いた孔明と、存命している董卓の姿から。
孟徳は、そんな血が洛陽の入口近くにあっては民を呼び戻すに戻せないから消すだろう。
袁紹は………そんな汚らしい董卓さんの血を早々に片付けて、私を城内に入城させなさーい、おーっほっほっほっほっほ!!……とかで。
劉備軍以外でも何人かは、孟徳、文若あたりならばそれが偽物の血だと気づく恐れもあるが、今更董卓をどうこうしようとする小物では無い。
そんな事を孟徳や文若に言ったらどうなるだろうか・・・・・・・・・
・・・・・・想像をするだけで、今にも落とし穴に嵌められ、絶が降ってくる気がする。
さすがにそんな事されたら死ぬ。
「な、何を震えているんですか?無風さん」
「…………武者震いだ。気にするな」
「は、はぁ」
納得してない顔だが、仲達も気にするような事では無いと判断したのか、話を戻してきた。
「でも、無風さんは月や詠を本当に救ってくれました。強くて、優しくて、こんな私でも受け入れてくれる男性に………惚れない方が……おかしいです」
最後らへんは流石に恥ずかしかったらしく、小声になって聞き取れなかったが、まぁ良く思われてると解釈しよう。
「…………いい加減離れろ。村に行くぞ」
「そ、それもそうですね。日が落ち始めましたし、泊めてもらえるかどうか早めに聞いた方がいいですね」
何故か、顔を赤くしたまま飛び退き、飛び退いたと思ったら既に俺の前を歩き出していた。
変な奴。
村に着きました。
え?早い?
そりゃ、仲達から抱きついて来た時から先、何も起こらなかったんだからしょうがない。
とても静かでしたよ、森の中。
だが、着いたはいいが、まるで廃墟の様に外には人っ子一人居なかった。
「…村人全員、こちらの様子を伺ってますね」
「…………あぁ、どうやら招かれざる客、みたいだな」
氣を周りに飛ばすと、家のドア、窓、壁穴と、ありとあらゆる所からこちらを覗き見ているポーズを取っている人々を感知する。
「しかたないですね、退散しましょう。ここに居ても泊めてくれなさそうですし」
「…………いや、待て。様子がおかしい」
仲達は、董卓の所に行く前、司馬家を追い出されてから村を転々としていた経験から、泊めてくれなかった場合は、次の村に向かい、泊めてもらえれば幸運。
次の村に着かなければ野宿という生活を送っていたそうだ。
だからこの村でもその時と同じ容量でやっていた為に、違和感に気づいていない。
斯く言う俺も、明確に断言は出来ないが、何か空気、もしくは雰囲気が「アイツ等も犠牲に…」といった空気を感じる。
「この村の村長宅はどこか分かるか?仲達」
「それならば、一番奥にある建物かと。見た目は他とほぼ一緒ですが、土壁の作りや屋根の損傷の具合から、他の家以上には丈夫に作られてますし」
「…………よし、いくぞ」
「え?ちょっ?!無風さん!?」
仲達は俺の行動に付いてこれず、一歩遅れて後ろを着いてくる。
「…………入るぞ」
バキィィッ!!!
どうせ開けてくれないだろうからと、扉を蹴って無理矢理こじ開けた。
扉は壊れなかった様だが、扉の留め具に使われていた木材が吹き飛んだ。
「荒っぽい客人じゃの」
中に居たのは老人ただ一人。
他に誰か住んでいる様な形跡は見られない。
ということはコイツが村長なのだろう。
「…………お前がここの村長か?」
「あぁ、そうじゃ。して旅の者よ、どうしてこの様な土地に参られた」
「…………色々事情があってな、ある所から逃げてきた」
「…そうか、しかし残念じゃったの」
そう言って村長は光の無い目で俺を真っ直ぐ見つめてくる。
「…………どういう意味だ」
「この村は呪われておるんじゃよ、この前にある山の土地神様にな」
どうして呪われた等と言うのか問い詰めようとした所、村長は食卓を差し「座って待っておれ」と言い、台所に向かった。
少し待つと老人は戻ってきて、お茶を俺らの前に置き、自分は対面の席に腰を降ろした。
「事が起きたのは黄巾党の党首が討伐された頃、ここから更に下った所の城に勤めとった趙苞という男が、何を思ったのか山狩りをし始めたのじゃ」
「…………山狩り?狩猟のどこが悪いんだ」
俺の問いに村長は首を横に振り、青ざめた顔で視線を手元に落とす。
「違う。儂ら山の民がするような山狩りでは無い。"山を狩り"に来たのじゃ!」
「ま、まさか!」
そこで今まで黙っていた仲達が椅子を倒す勢いで立ち上がる。
「"山の物全て"を狩ったとでも言うのですか!?」
その言葉に村長は泣きそうな顔になりながらも、頭を縦に振って肯定した。
村長が肯定した事で仲達は呆れと驚きと、恐れを一緒くたにした顔で言葉を漏らした。
「当前です。そんな事、山の掟を守らないどころの話じゃありません。禁忌に触れるような事をして、土地神が黙っている筈ありません」
「…………ところで老人。この村に掛かった呪いとはなんだ」
確かに土地神の件は気になるが、一番に知りたいことは呪いだ。
なんせ、この村に呪いが掛かっているというならば、自分達もその呪いの範疇にいるってことだからな。
「出られないんじゃ、この山から。いくら進めども村に戻されてしまう」
「…………来る時は何も感じなかったが」
「入ってくる事は出来る。お主らの様にここに迷い込んできた旅人は沢山おる。」
あの時に感じた雰囲気はその事だったのか。
聞くことは粗方聞いたので仲達共々、席を立つ。
「…………安心した」
「まぁ、心身に問題を起こす呪いでなくて良かったです」
「お主ら、何を……」
村長が理解に苦しむ、と言った顔でこちらを見上げる。
「…………何って」
「呪いを壊すのですよ」
至極当たり前と言った風に返す。
村長はその俺らの返しに口、を開けて一瞬だけポカーンとした表情をしたが、正気に戻ると頭を垂れて首を降る。
「無駄じゃ。ここに来た旅人は皆、そう言って出て行く。しかし、村に帰って来た時、皆が皆絶望に染まった表情をする。きっとお二人も……」
「…………随分と」
「舐められたもの、ですね」
二人でニヤリと笑いながら家を出………かけて、最後に一つだけ聞きたいことがあるのを思い出した。
「…………村長、その後の趙苞はどうなった」
俺の問いかけに村長はため息を一つ吐いてから。
「…死んだよ。空から光が落ちてきて、それが趙苞に当たったと思ったら黒焦げになっとったらしい。神罰が下ったのじゃ」
なるほど、雷に打たれたのか。
最悪な死に方をしたな趙苞。
「…………情報感謝する」
「…どうせお主らでも無理じゃ」
そう言って光の失せた目で扉を閉める村長の言葉なんぞ何の其の。
仲達と二人で歩きながら情報の整理と推測をまとめる。
「…………仲達、どこまで分かっている?」
「その前に情報の統一を先にしましょう。認識が違えば話の受け取り方も変わってきます」
「…………そうか。なら仲達、土地神はどのような存在だと思う」
「この世に神など存在しません。居たとしても、神は常に観察者、もしくは傍観者…とでもいえばいいでしょうか。しかし、土地神と呼ばれている"存在"は居ると思います」
「…………大体は同じ意見だ。……これは土地神、もしくは守り神の正体の一説だが、土地神と読んでいる生き物の正体は妖怪だ、という説だ」
「妖しの類…ですか?」
「あぁ、だが俺は妖怪も信じてないからな。正確には魔力、又は氣を多く持った獣ではないかとな。この世界で言えば青龍・朱雀・白虎・玄武などか」
「なるほど、考えられない事では無い……ですね」
「…………神獣……とまではいかなくとも、それだけの力を持った獣は所々に居るだろう」
だが、先程村長に聞いた話だと既に趙苞は死んだ。
それで怒りは収まった筈。
いくらなんでもこの村をいつまでも巻き込んでおく意味が分からない。
種・能力・影響力、全てが分からない状態なので、仮に土地神にして置くとして、土地神は己の力を抑えるために自分に合った土地に隠れ、その力を大地に流し、山・海・平原などなどの土地に潤いを与えてくれる。
そうやって土地神は自然と自分とのお互いの利益を与え合いながら日々を過ごしていた筈。
だからこそ、今も尚人間に関わり続けているのはどういう事だ?
「無風さん!!」
「…………ん?なんだ」
「なんだじゃありません!さっきからずっと呼んでいました!」
「…………そうか、すまない。で、なんだ」
「はぁ~、もう、森の前ですよ」
仲達に言われて初めて山の麓まで戻ってきていた。
考え事に夢中になると周りが見えなくなるなー。
「…………仲達、ここからは氣を、お前は魔力……だったか、を体に纏え。一つも違和感を見逃すなよ」
「はい。わかりました」
俺は氣を、仲達は魔力を纏う。
其のせいか、周りの木々がザワザワとざわめき出す。
氣と相反する魔力が近くに存在すれば、お互いを相殺し合おうと、俺と仲達の間で渦巻いている。
ぶつかり合うエネルギーが逃げ場を求め、風を起こして居るのだ。
「…………いくぞ」
「どこまでも」
仲達と並行に並び、一歩、また一歩とゆっくり山を登り始めた。
妖の力で山から出られない能力となると、かなり絞られてくる。
大まかに分けて2つ……という所だな。
一つには操作系、人間自身に力を当て進む方向を操るなど。
もう一つには空間系、空間と空間の間をずらし、繋ぎ合わせる事で距離を短縮、方向転換など。
考えうる限りでは、大体そのどちらかだ。
体に氣を巡らしたのも、相手の力を遮断・感知するため。
そして山を歩くこと3刻ほどして、仲達の方に引っかかった。
「……っ!無風さん、ここです。ここから向こう側の間に、膜の様に張られた魔力の壁があります」
なるほど、相手は空間系の能力を使うのか。
しかも"壁"ということは空間を捻って違う場所に繋げているな。
「どうしますか?」
「…………壊せるか?」
「…いえ、難しいですね。この壁だけでも魔力量が桁違いに凄いです。私の力じゃ……ちょっと」
なるほど、仲達の魔力量だと歯が立たないか。
ならば、少し面倒だが別の方法を取ろう。
「…………仲達、魔力の使い方を教えろ」
「!?だ、駄目です!そんな一朝一夕でやって出来る様な代物じゃありません!そんな無茶をしたら、何が起こるか分かりません」
俺の意図を瞬時に汲み取り否定される。
しかし、仲達よ。
まだ、俺と一緒にいる時間が少ないお前では読み取れていない事がある。
それにこんな所で油を売って居られるほど俺は暇じゃない。
早々に片付けてしまわなければ。
「…………いいから教えろ」
「嫌です!それが命令でも嫌です!」
「…………そうか」
俺が諦めたと勘違いする仲達の横で"強引な魔力の行使"を試みる。
そんな俺の姿に一度は安心していた仲達も驚きを隠せていない。
「な、何をしているんですか!」
「…………魔力を使おうとしているだけだ。……独学でな」
まずは心を落ち着かせ、氣のイメージを想像する。
素人ならば、陽炎、湯気などをイメージするといいかもしれない。
そして、氣のイメージを使いたい場所に送り込む。
送り込んだら、そこで一気に氣のイメージを増幅、人によっては爆発させる様イメージすると発動できる。
これが氣を使う初歩だ。
ならば、魔力はその対極にあると思うのが普通だろう。
だが、対極にあると言っても方法が分かる訳もなく。
一から全て試すしかない……か。
まず最初に思い至ったのは氣は陽、魔力は陰という構図。
そんな上手く出来ていればいいが……
陰……と考えるならば、氣を逆に働かせればいいのか?
試しにやってみるだけやってみよう。
陰といえば負の感情。
負の感情に氣を入れて増幅させろという事だろうか………
================苺里視点================
迂闊でした。
無風さんが一度も扱った事の無い魔力をいきなり行使なんてしたら危ないと思い、止めはしました。
でも無風さんの中ではやる事が前提で話している事に気付けなかったです。
あれは、なるべく安全に魔力を使うにはどうしたらいいのか、という事を遠まわしに聞いていたのですね。
口数が少ない上、まだ無風さんと接して日が浅いので気付けませんでした。
「無風さ…っ!?」
真意を問おうとして無風さんを見ると、体中から黒い氣が溢れ出していました。
見ただけで分かります。
あれは危ない。
「無風さん!!」
「…………」
呼びかけても返事がありません。
精神を統一中という事は、まだ間に合う筈です。
「……っ!」
周りにある氣の粒子を無風さんを中心にして集め、徐々に凝固してゆく。
それを一気に炸裂させて無風さんの氣を破壊させる。
ただ問題は私の氣が集まるのが先か、無風さんの氣が達するのが先か。
私の総量では無風さんの足元にも及びません。
まさに時間との勝負。
集中力を高めに高めて気を集める速度を上昇させる。
「くっ?!………波っ!!」
間一髪で私の方が完成し、無風さんに纏う暗黒の氣を爆散させた。
「…………っ!何をする。仲達」
目隠しをしては居るものの、無風さんの圧力が体にのしかかります。
眼力無しでそこまで圧を掛けれるのは反則ですよ。
「な、無風さんがしようとしていたのは魔の力ではありません」
「…………そんな事は承知している。だが……」
「分かっています。ですから、教えます。それでいいんですよね」
しかし、それに無風さんは怪訝な顔をする。
それでいいのかと。
何故、その様な顔をするんですか。
だって、どちらにしても貴方は止まらないのでしょう?
「…私だって、この現状を打破するにはそれしかないと、痛感したばかりですから」
私の力ではこの妖力に対抗する事が出来そうに無いです。
大掛かりな仕掛けを施せば可能性は有りますが、それを用意するだけで数ヶ月は必要になってしまうでしょうし。
「…………なら、直ぐに頼む」
「信じても……いいんですね?」
危険な事にはならないと。
「…………善処はする」
「絶対!ですよ」
あの氣、恐らく次は私じゃ抑えきれない。
次はきっと、命を賭さなければ難しいでしょうね……
up主「てぇ事ではい、今回は少し毛色の違う感じにしてみました」
華琳「土地の神ねぇ、本当にいるのかしら」
up主「いると思いますよ?」
華琳「ちなみにこれのネタはどこから仕入れたのかしら」
up主「え?恋姫ですけど」
華琳「え?」
up主「えっ?」
華琳「どこにそんな話があったと言うの」
up主「魏・蜀・呉の外史ぜんぶ終わらした後にある漢の外史ですけど」
華琳「…………あったわね、確かに」
up主「…………あったでしょ?」
華琳「えぇい!気分が沈んだままだと何も好転なんかしないわ!」
up主「おー!」
華琳「こんな時こそパァーとやりましょう!up主の奢りで」
up主「おお?!」
春蘭「お前もたまには気が効くじゃないか」
up主「お前何処から沸いたし!?てか華琳さん?なんで私の奢りなん!?」
華琳「……ダメ?」
※up主に9999ダメージ、up主は倒れた。
up主「くそぅ」
華琳「私の勝ちね(というか、夫婦なのだからお金も共有財産なのに気が付かないのかしら……)しょうがないわね、あまりにも貴方が惨めだから私も払うわよ」
up主「好いた女に払わせる訳無いだろ、アホ」
華琳「………莫迦///」
up主「えぇっ!?」




