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男の覚悟と女の覚悟

前回のあらすじ

・忘れた←

・CCレモンが美味しい←

 俺は虎牢関より少し離れた所にある曹操の拠点で、現在軍議場に呼び出されていた。

 内容は言わずもがな。

 俺が生存していた事で軍に戻す戻さないで文官武官が言い争っているのだ。

 スパっと文官と武官の意見が分かれている訳では無いが、文官はどちらかというと否定派、武官は肯定派で対立している。

 もちろん文官の中にも肯定派は居るが、いわゆる新人と言った力を持たない者たち。

 武官は全員が肯定派で、数では肯定派の方が有利だが文官はその分を正論で責める。

 一度抜けた人間をしかも褒賞付きで戻すのは、周りへの示しが付かない。

 と、孟徳の思想を早く叶えるならばという言葉を潜ませた正論で一歩も引かない状態である。


「黙りなさい!」


 そんな言い合いを2刻ほど続けていたが、さすがの孟徳もキレた様に眉間の真ん中に皺が寄っている。


「貴方たちがいくら話しても満足のいく結果が出ない事は分かったわ。こうなったら無風本人に問いましょう」


 孟徳が俺に顔を向けてくる。

 それに合わせて周りも静かになり、視線が俺へと注がれる。

 

「無風、貴方は軍に戻ってくるの?それとも…」


 どこかへ行ってしまうの?

 その言葉は言うことはなく俺を見つめてくる。

 

「…………戻る気は無い」

「……そう」


 孟徳が悲しみに染められた瞳で俯きため息を漏らす。


「…………ずいぶん、諦めがいいな」

「ふふ、どれだけの付き合いだと思ってるのよ」


 一緒にいた時期は少ないながらも俺がこの世界に来てから長く居たのは孟徳の所だ。

 俺の事をよく分かっている。

 だが、それは俺の知る曹孟徳では無い。


「…………何か、勘違いしてるぞ。孟徳」

「…なんですって?」

「…………俺が今まで孟徳の傍にいたのは、行き場の無い俺を拾ってくれた恩があったからだ」

「………」

「…………俺に戻ってきて欲しいのなら、俺を奪ってみせろ。俺の知る曹孟徳はそういう奴だ」


 俺の言葉を聞いて孟徳は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をして、次に笑いだした。

 笑って、笑って、笑いまくる。

 まるで全てを笑い飛ばそうとするかのように。

 そして次に目が合った瞬間、孟徳の目には自信と闘志の炎が見えた気がした。


「そうだったわね、私は曹孟徳。覇王となる人間よ、私の前に立ち塞がるモノは全てなぎ払うわ」


 自分に言い聞かせるように呟き、腫れ物が落ちた不敵な笑みで俺をみる。

 久々に会ってから、どこか濁りが見えた覇気が透明に澄んだ覇気に戻ってゆく。


「私は、容赦なんてしないわよ?」

「…………それでいい。孟徳は孟徳の進む道を行けばいい。その道を照らすのは"流琉"達の役目だ」


 流琉を除いた、この場にいる全員の表情が驚きに彩られる。

 それはそうだろうな、俺が他の奴の前でハッキリと真名を呼んだのはこれがほぼ初めてだ。

 すると、孟徳と文若が拗ねたような表情になる。

 孟徳の氣に触れたからこそ、今は完璧にその表情の意味が分かる。

 文若も同じ反応から、そうだと考えると今までの行動にも納得がいく。


「嫌な男ね、流琉だけ真名で呼ぶなんて」

「…………流琉の件は俺から手を出した事だ。その責任はしっかりと持つ。勿論、責任だけで呼んでる訳でも無いがな」

「…そうやって、いっつもいっつも流琉ばっかり……私の事も真名で呼んでくれたっていいじゃない」


 孟徳が近寄って小声で愚痴ってくる。

 言いたいことは分からなくもない。

 俺がこの世界で生きていけるのは、孟徳が俺を拾ってくれたからだ。

 多大な恩は感じている。

 だが、恩を感じているから真名で相手の事を呼ぶのは意味が違う。

 

「…………孟徳、勘違いするな。真名はそちらに合わせて呼んでいるだけだ。俺の国に真名の風習など無い、

真名で呼んでいても俺は裏切る事をなんとも思わないぞ」

「なら、あなたは私を裏切るの?」

「…………そうではない。真名を預ける基準を間違えるな、という事だ。それと、俺も孟徳もお互い裏切る事など出来ないがな」

「お互い?どういうことかしら?」


 最後の部分がどういった意味なのか、理解出来ないと言うように疑問の顔で問いかけてくる。


「…………孟徳の傷を治す時、氣を同調した際に孟徳の心を見た。俺への……気持ちを」

「っ//////」


 孟徳が俺からバッと離れて顔を真っ赤に染めてゆく。

 いつもの孟徳らしくない慌てた様子で、目を見開き動揺している。


「無風、貴様!華琳様に何をした!!」


 その様子を見ていた元譲がズンズンと俺の前に出てこようとしたが、孟徳が片手で顔を隠しながらそれを止めた。

 

「や、やめなさい。春蘭!それと無風、一つ確認したいわ」

「…………なんだ」

「私の気持ちを知って、お互い裏切れないと言ったの?」

「…………ああ」

「~~~っ//////」


 孟徳がしゃがみこんで両手で顔を隠してしまった。

 恥ずかしがっているのもあるのだろうが、どちらかというと嬉しがっている様に見える。

 いつも冷静沈着な孟徳が、ここまで乙女の部分をこんな大勢の前で見せるとは。

 孟徳も年相応の女の子なんだと再確認される。

 ただ、そのせいで文若と流琉の空気が氷点下まで下がっているのは気のせいでは無いだろう。

 これは次に会った時、死ぬかもしれないと冗談では無く、そう思った。


「わ、分かったわ。桂花、彼を外まで送ってやりなさい」

「了解しました」


 凍えそうな視線をこちらに向けて、ついてこいという視線で見てきたので文若の後をついて行く。

 軍議用の天幕を出て、未だ忙しく動き回っている兵を横目に出口近くまで無言で歩く。

 だが、出口まであと10mという所で急に文若が足を止めた。

 文若は前にいるために顔は覗えない。

 いや、正確には"視る"ことは出来るがここでそれをしてはいけない気がする。


「無風……本当に行っちゃうの?」


 前を向いたまま文若はこちらに問い掛けてくる。


「…………あぁ」


 一歩文若に近づく。


「また私はあなたを助けられないのね」


 俺が近づいてる事に気付きながらも、その場を動かない。


「…………これは俺自身が決めた事だ」


 また一歩近づく。


「いや、行かないでよ。ここに……居てよ」


 声が震えているのもお構いないしに問い掛けてくる。


「…………無理だ。無理だが……」


 最後の一歩を踏み出し、文若を後ろから抱きしめる。

 俺よりも断然小さく細い体を抱きしめると、ビクリと男性恐怖症のせいで体が無意識に反応する。

 

「…………なら、お前の王佐の才で捕まえて見せろ。俺を」

「私も容赦はしないわよ?」

「…………望むところだ」


 言い切ると、ゆっくり腕を解く。

 そして2歩ほど下がると文若がやっとこちらを向いた。

 その目には涙はなく、決意に満ちた青い炎を宿す軍師の目だった。

 言葉は無く、ただ見つめ合う。

 どれくらい見つめ合って居ただろうか、時間にすれば体感で1分も経っていない様にも、10分くらい経っている様にも感じた。

 文若の方から視線を逸らし、それに合わせて俺も文若を避けて出口の方へ歩いてゆく。

 話すことは全て話した。

 あとは行動で結果を示し、奪い、勝ち取るだけだ。


================白蓮視点================


 昨日から今日に掛けて不思議なことが起こりすぎて何がなんやら。

 野営地を作ろうとしていた所で、前線と切り離されてしまった。

 兵種の違うものや混合軍の場合、その境目の連携が弱いため少し間を開けてた為にやられてしまった。

 だが、そのお陰でこちらの兵には被害は無かった、向こう側はわからない。

 分からないが、向こう側で戦闘音がしている。


「急げ!向こう側で敵が攻めてきているぞ!」


 徐々に石を退けてはいるが兵の士気も考えないとイケないので作業が捗らないでいる。

 気持ちだけ焦っていると、後方の兵がざわつきだした。

 見てみると、もの凄い速度で誰かがこちらに近づいてくる。

 

「白佳殿!お下がり下さい!ここは私が」


 星が私の前に出て槍を構えて、こちらに近づいて来る者に備える。

 そして、その者が有り得ないほどの跳躍で、兵の上を飛んで星の前で着地する。

 見ると、全身を外套で覆い、頭まですっぽりと隠している為に誰だかわからない。


「何奴か知らんが、この定山の超子龍である私を抜けられると思うn…」


 槍を構え、後ろからは見えないが十中八九笑っているであろう星がその人間に詰め寄られた!?

 いくら油断していてもあの星が槍を構えていた状態で敵を自分の圏内に入れるなど、相当な使い手であると同時に剣を抜く。

 後ろからなので見えていないが、星が攻撃を喰らった事は明白……だと思っていた。


「…なるほど、貴方だったか。ややこしい格好をするから分からなかったぞ」


 その人間が一歩引いて、しかも星が槍を納める。


「せ…星、大丈夫なのか?」

「ん?あぁ、全然平気ですよ白佳殿。こんななりをしていますが劉備殿の所の将です」

「何!?桃香のか?なら……まぁいいけれど」


 明らかに怪しいが、星が言うのならば本当なのだろう。


「わかった、星を信じるよ。で、その者は一体?」

「おや?白佳殿とも言うお方が見抜けないんですか?」


 お前だって分からなかったじゃないか!

 と、理不尽な事を思いながらも頷く。


「この者が、無風 雛という人物ですよ」

「何だと?お前が一騎打ちで負けたと言ってたあの?」

「恥ずかしながら」


 それならば、先程の接近にも納得が行く。

 

「で、無風…でいいのか?お前は何をしにここへ?」

「…………孟徳を助けに行くだけだ。どけ……」


 そう言って彼は落とされた岩の下に向かって歩く。

 

「あ、おい!まだ岩で塞がってるんだぞ」


 無風はそんなこともお構いなしに岩壁に近づく。

 

ドンッ!!


 次の瞬間彼は立ったままの状態から有り得ないほどの垂直跳躍で岩を登ってゆく。

 ポカーンと口を開けてその光景を見ていると、もう既に見えなくなっていた。


「白佳殿、驚きすぎですぞ。ここに来るときもあれぐらいの跳躍をしていたじゃありませぬか」


 ふふっと笑っている星を見ると、口は笑っているが目が笑っていなかった。

 その目は闘士に燃えており、岩の向こう側に注がれている。


「なぁ、星。アイツは一体何なんだ?」

「とおっしゃいますと?」

「何故、桃香の将が曹操を助けに行くんだ?」


 星が本気で呆れたと言うような仕草をしてくるのがムカつく。


「白佳殿、無風殿は元々曹操殿の将ですぞ」

「何だと?」


 何故曹操の所から桃香の所に行ったのか不思議でしょうがない。

 いや、普通なら不思議な事ではない。

 その人の思想に自分の思想が合わない場合は、暇を取って他の勢力に移ることはある。

 だが、先程の男からは桃香の思想に染まった様子は無かった。

 その佇まいからは、負の感情。

 後悔や絶望を纏った雰囲気で、どちらかと言ったら曹操寄りな雰囲気だった。

 そこで疑問が生まれる。

 あいつは本当に桃香の思想に染まっているのか?

 元の主君とはいえ、今の主君を置いて助けに向かうだろうか。

 桃香なら止めず、むしろその背中を押すだろう。

 だからこそ危ない。

 思想がまったく違う人間がいると、個人なら孤立するか集団なら勢力が真っ二つに割れてしまう。

 恐らく、桃香の軍勢の中で染まってないのはあの無風だけなのだろう。

 普通ならそこで孤立するだけで終わるが、星を凌ぐ実力を持っているとなると、一歩間違えると軍が割れてしまう。

 

 もう、直接的な関係は無くなったが、魯植先生の門下生で居た時の妹弟子だ。

 ここは桃香の為に少し手を貸すべきあもしれない。


「白佳殿?何を考えておいでですか?」


 星が横からいつもの飄々とした顔ではなく、鋭い視線をこちらに向けてくる。


「まさかとは思いますが、無風殿に何かするつもりですか?」

「あぁ、桃香の為に少し……な」

「分かってますか?それは他勢力の君主がする事ではありません。踏み込んではいけない領域ですぞ?」

「分かってる。けど、桃香は私の愛弟子でもう家族も同然だ。ほっとけない」


 星の鋭い視線に鋭い視線で返す。

 視線を交差していたのはほんの一瞬。

 星が目を伏せて笑う。


「…そうですか。なら白佳殿の好きにすればよろしい。あ、そうそう」


 そういうと、私に近づき耳打ちする。


「気をつけなされ。無風殿のすることを常識の範疇で捉えると危ないですぞ」


 耳打ちをした星は不敵な笑みをしたまま天幕の方に帰っていった。



・・・・・・


 事が起こったのは日が昇った後だった。


ドォォォン!!


「何事だ!?状況報告しろっ!」


 近くに居た兵に音のした方に行かせ、報告を待つ。


「大丈夫ですか!白佳殿!何事です」

「星か。いや、わからん。塞がれた道の方だったが」

「報告します!」


 ちょうどその時、音のする方に行かせた兵が戻ってきた。


「音は落とされた岩の向こう側からするそうで、そこに居合わせた兵が言うには岩が崩れ落ちる音がする前にキーンという音がするそうです」

「キーンと?」

「ふふっ、そういうことですか」


 私が兵士にその音について問い返していると、急に星が笑いだした。


「どういうことだ?星」

「何、簡単な事ですよ。そんな事をするのはアイツ以外にはいませんよ」

「まさか!無風!?」


 私の出した答えに星が頷く、しかし、それにも疑問が残る。


「しかし、星よ。もし無風ならばあの道の岩をまた飛び越えてくればいいのではないか?何故岩を崩して通るような面倒を事をするんだ?」

「そんなの私は知りませんよ、白佳殿。ただ彼は無意味な事はしませんぞ」

「? どうしてそんなことが言えるんだ?」

「無風殿の行動を見てれば分かりますよ。それに白佳殿から劉備殿に例の激励文を届けに行ったときに彼について聞いたのですよ、どのような人物かを……ね」


 一瞬、星の目には黒い炎が映ったように見えたが、次の瞬間には不敵な笑みをしながら闘士の炎を燃やす。

 そうして星と話して居ると音のしていた向こうの兵達が騒がしくなった。

 どうしたのかと見て見ると向こう側から無風が歩いてきた。


「…………」


 無言で横切って行こうとする無風だが、それを許さない。


「ちょ、ちょっと待て無風!お前さっき何をしていた!」


 その問いに無風は足を止めたが、こちらを向くことなく喋る。


「…………さっきと言うが、何時のことだ?」

「しらを切るな!あの落石のあった方だ!何をした!」

「…………岩を切って通りやすくしただけだ。負傷者を通りやすく……な」


 そこに星が無風の前に立ち、通せんぼをするかの如く見上げている。


「無風殿、それは主に孟徳殿の為ではないのですかな?」

「…………なんだと?」

「それ以外考えられませんから、あなた程の人物があんなに急いでいたのなんて」

「…………だったら……なんだ?」

「……っ!例えどのような理由があるにしろ、現君主を置いて単独行動をするなど、何を考えてる!」


 いきなり星が怒って無風に掴みかかる。


「私にあれだけの事を言っておいて!貴方がしている事はなんですか!私と同じで貴方の自己満足の為、私利のためじゃ無いのですか!」

「おい!やめろ星!仮にも無風は桃香の兵だ」

「止めないでくだされ白佳殿!これは私たち二人の問題です!」

「そうはいかない、何があったかは分からないが止めろ、星!」


 私が懸命に説得をすると、苛立ちを隠しはしなかったが無風を掴んでいた手は離してくれた。


「すまない、無風。星が失礼をした」

「…………いや、子龍の言ってる事は正しい」

「だとしてもだ、いくら失礼がそちらにあったにしても先に手を出したのはこちら側だ」

「…………単刀直入に言え。何が言いたい」


 無風が振り向き、漆黒の瞳が私を見定める。

 無風の瞳に見つめられると心の奥を見透かされてるようで気味が悪い気分になったが、それで怖気ついてなどいられない。


「失礼を承知で言わせて貰えれば……お前は桃香の思想をどう思ってる?」


 途端に無風の視線がスッと細められ、体に言い知れぬ悪寒が走る。

 悪寒を振り払い、無風の目を見るとその目がどうなってもいいのか?という殺気を纏って語っていた。

 その視線に一瞬負けそうになるが、目に力を入れて睨み返す。

 そうして時間的には半々刻もしなかったと思うが、体感では2刻ほども睨み合ってたような気がする。

 先に無風の方が細めていた目を閉じた。

 

「…………あいつもお前もどうしてそうも頑固なんだか…」

「?」

「…………まぁいいだろう。教えてやる。アイツ…劉備の思想は………劉備には叶えられないと思ってる」

「貴様っ!」


 星がその言葉に反応して無風に掴みかかろうとするが、それを片手で止める。


「それはどういう意味だ無風」

「…………言葉のままだ。……俺はもう帰るぞ」


 そう言って有無を言わさずにこちらに背を向けて立ち去ろうとする。

 その無風の立ち振る舞いに、今までの体裁や立場を忘れて体が勝手に動いてしまった。


「……待て、無風」


シャキッ!


 剣を抜いて無風に肉迫し、頚動脈に剣を当てる。

 正直、私の実力ではここまで追い詰めたとしても倒されるかもしれない。

 だが、ここで無風の真意を聞いておかなければいけない。

 もちろん、桃香の為でもあるがこれからもしも無風と対立した時にこいつがどのような奴なのかを知っておきたかった。

 こちらは危険な賭けに出たというのに、無風は微動だにする事なく止まったままだ。


「…………何のつもりだ」

「お前はこの世界を、いや、お前は何をしたいんだ。それを教えろ」

「…………それを知ってお前はどうするんだ。公孫白佳」

「しれたこと。お前の回答次第では、ここで殺させてもらう。例え、私も命を落とすとしても」

「…………」

「さぁ!答えろ!」

「…………俺は守りたいだけだ」

「守る……だと?」

「…………そうだ。知り合いを、親しい人を、仲間を、……俺なんかに惚れてくれてる奴を。その為にどれだけの犠牲を払ってもな」


 その無風の目は一瞬悲しみに染められていたが、次の瞬間には獰猛な笑みをしていた。

 

「…………今言った通り、俺はこういう人間だ。自分の周りを守るためならどれだけの人間が死のうが知ったこっちゃない」


 獰猛な笑みをしたままで本来ならそのまま頚動脈を切る所だが、その前に見せたあの悲しい目が引っかかる。

 後ろを向いていた事と無風の動きにも注意しなければいけないので、ちゃんと見た訳では無い。

 無いが、悲しい表情をしていた無風を信じたい。

 そりゃあ、数回しか会ったこと無いし彼の立ち振る舞いも怪しい。

 だけど、桃香は信じた。

 桃香の信じた無風を信じたい。

 甘い事を言っているのは重々承知だ。

 それでも信じてみたい、他の誰でもない自分の感覚を。

 ふふ、桃香に毒されたかな。


「わかった、今は信じるとするよ。ただし、もし桃香に何かあって私と対峙するような事があれば…」


 例え勝てないとしても、お前だけは殺す。

 言葉にはしなかったが、殺気を込めた思いを伝える。


「…………分かった。善処はする」 


 無風は、まるで何事も無かったかのようにまた歩き出した。

 今度は追うことをせず、ただ彼が去ってゆくのを見届ける。


「白佳殿……」

「すまぬな、星。お前にあんな事言っておいて私自信、あんな行動を取ってしまった」

「ふふっ、いえいえ。まさかあの白佳殿があんな大胆な事をするなんて、この超子龍見抜けませなんだ」

「ちょ、おまっ!その言い方だと私がイケナイ事をしたみたいじゃないか!」

「実際、いけない事でしたでしょう?」

「うっ……、あ。まぁそうなんだけどさ」


 星と他愛もない会話をしながら落石のあった方に向かう。

 無風が言った事が本当ならば、人が通れるようになっている筈だ。

 そうなれば向こうからけが人を運んでくるだろうから、その準備と指揮を取らなければいけない。

 

「はぁ、ここに来ても忙しい事には変わりないんだな…」

「白佳殿、しっかり働いてくだされ」

「お前も手伝えよ!」


 白状な星を置いて私は前に急ぐ。

 ここからは君主として働かなければいけない。

 そういえば、無風と居たときは立場を忘れていたな。

 最後にそんな疑問を残しながら私は一歩、自分の信じる方へ歩き出す。


はいどーも、ココノでございます。

GW明けからインフルにかかってしまったので、なかなか書ける機会が少なく滅茶苦茶投稿が遅くなりました。

誠に申し訳ございません。

日々華琳様の声を聞いて元気をもらってました。

リアルの無風から林檎をお見舞いに貰ったりして、本当に皆様に助けていただいて日々生きていられてます。

ありがとうございます。

これからはリハビリを兼ねての投稿になりますが、未だにリアル学業が大変なので投稿が遅くなると思いますが、ご容赦下さい。


でわでわ、また次回もよろしくですー

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