その道を男は選ぶ
最近眠くて眠くて執筆が進まにゃい
(なるほど、地面の中に火薬を埋めてたのか)
昨夜大量の犠牲者を出して占拠した泗水関に来て、かなり離れていた筈なのに熱風が来るほどの爆発が起きた。
そんな量の火薬を一体どこに隠していたのか気になり、泗水関の砦内部に一人で来ている。
そして地面が文字通り抉れている。
爆発の特性として下への影響力は上や左右に比べると幾分か劣る筈。
しかし、想定以上に地面が吹き飛んでいる事で結論に至る。
地面に袋詰めした火薬を敷いて、その上から土を被せたのだ。
しかし、普通ならそれくらい見抜かれる。
その為の時間稼ぎをしたのだ、相手は。
土を被せた後は、籠城の為に動いてるだけで地面は踏み締められる。
無駄な労力を使わずに最高の結果を生むという面では、かなり有効な方法であるだろう。
そして水を汲み上げる。
井戸自体は爆発で吹き飛んだがその機能は失われていない。
見た目では澄んだ透明で冷たい水。
その水を舐める程度の分だけ口に入れて直ぐに吐き出す。
微量を口に含んだだけで舌がピリピリと痺れる感覚が襲う。
感じ水銀に似た毒の類だろう。
だが、必要な致死量が桁違いにこちらの方が上だろう。
直ぐに腰に下げてた竹筒から普通の水を口に含み、口内を洗浄する。
爆発で多くの仲間が死に、火を止めようと動いた者達も火に焼かれ乾燥した空気により喉が枯れ、この水を飲み、また多くの者がこの世を去った。
悔しさが込み上げる。
救えた命を見捨てた事への罪悪感、玄徳に現実を見させるために俺が取れる行動がこれ以外に思いつかない稚拙な脳みそしか持たない悔しさ、
力を手に入れても何も出来ない自分への怒り。
様々な感情が現れては切り替わり、自分がどんな感情を今の身に宿しているのかすら分からない。
「…………戻るか」
今回の泗水関攻略で先ず袁術がリタイヤ、俺の所属する劉備軍も玄徳が未だ感情の整理が出来てないようで立ち往生。
玄徳がここでこの先に進むことは不可能と判断した袁紹は、俺らに貸していた無傷な5千の兵を回収し、虎牢関へと進軍していった。
次の虎牢関攻略には袁紹軍、孫策軍、曹操軍が当たる事になった。
その後ろでは幽州の公孫賛、涼州の馬超の騎馬隊2軍で構成されている。
最前線では十分な速度を得られず、騎馬隊の持つ突破力が発揮出来ないからだと思われる。
何にせよ、玄徳が今の状態から立ち上がらなければどうすることも出来ない。
自陣に戻る途中で前線に向かう軍の中で一番会いたくない軍とすれ違う。
曹孟徳
最前線に向かう彼女の横を黙って通り過ぎる。
泗水関の事後処理から帰る集団の中に紛れるように歩く、外套を着ているのもあってかこちらに気づく様子は無い。
これなら無事に通り過ぎられるか?
「そこのあなた、ちょっと待ちなさい」
しかし、通り過ぎた所で孟徳に呼び止められ俺の紛れている集団が足を止める。
気づかれたか?
存在に気づかれたと思って、この場からいつでも逃げられる様に足に力を入れる。
だが、孟徳が俺に気がついた様子は無い。
気がついて居たのならば殺気を出すなりして元譲に俺を殺す様にでも命じている筈だ。
軍を無断で逃げ出した人間をそのままほっとく様な孟徳では無いのを俺自身よく知っている。
気づかれてないのなら好都合、その集団の中に隠れて様子を見る。
「はい、何でしょうか?」
そこで呼ばれたと思わしき兵が一歩前に出て孟徳の前に片足をついて礼を取る。
「亡くなった者達に、これをかけてあげて頂戴」
そう言って後ろに控えていた文若から瓶を、酒と思われる物を持ってこさせ、そこにいる兵士に渡す。
「あ、ありがとうございます」
その君主の行動に戸惑う兵だが、受け取ると先程以上に頭を下げた。
もう行くのかと思われたが、孟徳はその場に留まり、頭を下げている兵に訪ねた。
「ねぇ、一つ聞いてもいいかしら」
「はっ!なんなりと」
「…この辺、もしくはどこかで"全身が真っ黒"な男を見たこと無いかしら?」
全身黒一色の男、その言葉に俺の中で動揺が走る。
探している。
孟徳が俺を。
何のために探しているかは分からない。
だが、孟徳の佇まいから俺が生きているのを確信している様だ。
「……いえ、その様なお方は見たこと無いですね」
「そう、ありがとう。もう行っていいわ」
「はっ!お役に立てず、すみません」
その言葉を皮切りに曹操軍は動き出し、前線に向ってゆく。
孟徳に続いて許褚と典韋の二人、表情は見えない。
ここで顔を挙げてしまえば見つかる恐れもあるし、これ以上氣の量をあげてしまうと孟徳か元譲、妙才に気づかれるだろう。
「ちょっとすみません」
「…………っ!」
いきなり声をかけられる。
明らかに"俺"に向って。
頭を掻くような振りをして手を後ろに回し目隠しを解く。
解いてから自然体を装って後ろを振り向いた。
もちろんあくまで自然に。
何故ここで目隠しを外すのかと思うだろう。
なぜなら俺はこの集団に紛れて"潜んで"いたのだ。
隠れていた俺をピンポイントで呼び止めた事になる。
俺をこの集団で見つけて呼び止める理由は限られてくる。
一つは俺の今の意匠だ。
外套を頭からすっぽり被って姿を隠しているのだ。
気になるのも頷ける。
しかし、もしも"もう一つ"の理由だった場合、ものすごく厄介だ。
それは"氣を使える者"、もしくは氣の存在を理解している者。
氣を見分けられる人物だった場合は、相当に危険だ。
他の者との氣の違い、それに目隠し。
これだけ印象に残る姿をしていれば誰かは分からなくても記憶に残るだろう。
(こんな事なら素顔を偶々見られてバレる心配があっても外して置くべきだったか)
これだけの英雄となれる人物が揃っているんだ、氣を見分ける人物が居たとしてもおかしくない。
完璧なる油断だった。
「…………何か様でも?」
「あ、いえ。ただあなた様から他の者とは違う氣を感じたもので…」
案の定、氣が分かる人物だったか、厄介だな。
「…………俺の氣?そんなに違うか?」
「ええ、とても強い氣を感じます。この様な時でなければ"華琳様"にお願い申し上げて、一戦やり合ってみたい所です」
厄介な上に最悪だ。
コイツ、孟徳の所の将か。
俺が知らないという事は、噂で聞いた4人の内の一人か。
顔をあげてその声の主を見る。
白銀のショートヘアに一本の長い編み込みの髪を垂らし紫よりかは明るい菖蒲色の瞳、武器と言える道具は無く、
篭手を手の甲と腕に付けており、武闘家なのだろう事が見て取れる。
武闘家としての歴は長い様で、体に無数の傷跡が残っている。
「…………残念だが、今は優先すべきことがある」
「そうですね、またどこかで会う事があればその時にでも。して所属はどちらに?」
情報を聞き出そうとしてるわけでは無いのが、彼女の瞳から窺い知れる。
ただ、純粋に問うて来ている。
「…………済まないが所属と名前は明かす事が出来ない」
「込み入った事情でも?」
「…………そんな所だ」
ここで所属も名前も明かさないなど失礼にも程があるのは重々承知、だがここで名を明かす事も出来なければ所属を言うわけにもいかない。
どんな言葉を言われても謝るしかないと覚悟していたが、彼女はそれを承知してくれたのか明るい声で話しかけてきた。
「わかりました。私は楽進と申します。いずれ名をどこかで聞いたらその時は」
「…………あぁ、手合わせを願う」
訪ねてきてくれと楽進は言うが、それは無理だろう。
恐らく楽進はこの先、群雄割拠の時代が来るとまで考えが追っついてない。
そうじゃなくても会うことは出来ないだろうが。
そう言って彼女は軍に戻ってゆく。
危ない所だった。
孟徳が俺を探している事もあり、楽進にも俺の特徴を言ってあると見ていい。
あそこで目隠しをしたままだったら気づかれててもおかしく無かった。
小さく溜息をついて今度こそ自陣に戻る。
=========凪視点=========
私は真桜と沙和の所に戻りながら、先ほどの人を思い浮かべていた。
(あれほどの氣の持ち主、只者じゃない。もしあの人が本気になれば春蘭様でも無理かもしれない)
背筋にゾッとする寒気のような痺れに体を震わす。
敵に回るようなら相当苦戦を強いられそうだ。
戦ってみたい
純粋にそう思った。
だから所属する軍を聞いて、場合によっては会いに行くのもアリだと思った。
だが、彼は所属も名前すらも名乗らなかった。
一瞬頭に血が上りかけた。
しかし、冷静に考えればどうという事はない。
あれほどの武人なのだ、諸侯が黙っている筈もない。
名乗ってしまえば狙われる事くらいは私にも分かる。
彼もそれなりの事情があると言っていた。
だが不思議でならない。
英雄と呼ばれる域の者は大半が女性のこの世界で、男がその域に達していればそれだけでもかなり名は知られている筈。
なのに私の知っている英雄の名前は女性ばかりだ。
ただ、董卓に関しては男なのか女なのかその人も素性を隠しているので分からない。
「お?凪ぃ~、どこ行っとんたんや?」
「凪ちゃん、沙和達を置いてどこか行っちゃうなんて酷いのー」
考え事をしていたらいつの間にか真桜たちに追いついていた。
「ごめん。すごい氣を感じたものだから少しその人に会ってきた」
「すごい氣ぃ?どんくらいやったんか?」
「分からない、氣を抑えていたからどれくらいかと聞かれても…ただ」
「ただ?他に何か思う所でもあるのかなのー?」
「…もしかしたら春蘭様でも勝てるかどうか」
「なんやそれ!?あの春蘭様でも勝てへんくらい強いってどんな化物やねん!ありえへんわ」
「真桜ちゃんの言うとおりなの、ありえないの」
「で、凪。それどんな人やったんか?」
「それも分からない。頭から外套を被っていて顔が少し見えるくらいだった。分かるのは男という事だけだ」
「男!?男で春蘭様より強い奴なんかおるんか?嘘や~、凪の見間違いとちゃうん?」
「そんな事は無い……と思う」
「自信無いなら凪ちゃんの見間違いなの、そんな人居るはず無いの」
本当にそうなのだろうか、本当に私の見間違いだったのか?
嫌、あれは見間違いなんかでは無いだろう。
もし真桜たちの言うとおりなら何故素性を隠す必要がある?
分からない。
私には桂花様の様な知を持ち合わせていない。
いくら考えても一向に答えは出なさそうだ。
華琳様や桂花様なら分かるのだろうか。
一度聞いてみよう。
「凪~、立ち止まってると置いてくでー」
「凪ちゃーん、早く来るのー」
「え?あ!ま、待ってくれ二人共ー」
今、どんなに考えても仕方がない。
彼も言っていた様に今は優先すべき事をしよう。
華琳様に聞くのは後ででも出来るだろう。
=========無風視点=========
今、兵の選別を行っている。
選別と言っても別に自分の兵を持つとか隊を分けるとかそういうのではない。
玄徳がダウンしている今、俺らは動くわけには行かない。
だがそれでは情報を得られないので、孔明と士元に相談して輜重隊の補佐という形で兵を前線に送り情報だけでも得ようと考えた。
今はその輜重隊に向かわせる為の兵の選別を行っているのだ。
すると玄徳の天幕の方から士元が現れ、こちらに向かってきた。
「…………様子は?」
「はい、昨夜よりかはだいぶ良くなっています。ですが…」
「…………戦いには参加出来そうに無い…と」
「…はい」
士元が暗い声で呟くように答えた。
だが、いつまでも沈んでいてはしょうがないとでも思ったのか、少し元気な声で訪ねてきた。
「輜重隊編成の方はどうですか?」
「…………滞りなく進んだ。後は送り出すだけだ」
「そうですか」
「…………お前から一言、目の前の兵士たちに何か言ってやれ」
「え?えぇぇ~~!?わ、私でしゅか!」
「…………俺が鼓舞するより、お前が鼓舞した方がこいつらも士気が上がる」
その言葉に兵士がうんうんと頷く。
分かっていたが、実際素直に肯定されると傷つくもんだな…
「あ、あわわ。あ、あの、うぅ~」
士元が上ずったような声を発している。
自分一人だけで鼓舞を行った事があまり無いのか、緊張しているのだろうとすぐに分かる。
この場合は勢いに任せて直ぐに終わらせた方が緊張する時間が短くて済むのにな。
「あわわ、こ、今回の反董卓連合は私たちの好機です。ここで私たちが飛躍できるかどうかの大きな分かれ道となります」
なんだ、ちゃんと鼓舞出来るじゃないか。
しかもかなり上手だ。
「な、なので!が、がんばってくりゃりゃい!あわ~!」
舌噛んだな。
痛そうに。
しかも最後の最後に失敗してるし。
だが、士元が言った最初の自分たちの好機の部分で、自分たちに劉備軍全ての命運がかかってるとでも思ってたのかかなりガチガチになってた兵士が、
今の士元をみてかなり緊張が解れたな。
ちょうどいい緊張感で送り出せる。
「…………今、お前らの軍師殿も頑張ったんだ。女にここまで言わせて引き下がるか?」
その言葉に全員が心に一つの覚悟を決めたように静かに俺の声を聴いている。
「…………だが死地に向かえと言っているのには変わりはない。死にたくない者、未練がある者は今すぐこの隊から抜けろ」
誰ひとりとして足をあげるような音すらしない。
「…………ならば、することは一つ。任務をこなす。それだけだ」
「「「「「応っ!」」」」」
そして隊が前線に向ってゆくのを見届ける。
そこでふと一つ気になった事を士元に尋ねてみることにした。
「…………士元」
「なんでうか?」
まだ舌が痛むのか呂律が微妙だ。
「…………どうして俺に編成を任せた」
そうなのだ、そこが気になる。
客将なのはもう言うまでもない、しかし今前線に向かった兵の奴らから不満が出るどころかむしろ推薦されたぐらいだ。
急に、というほどではないがどこか気に入られている様な雰囲気を感じているが、自意識過剰なだけだと思っていた。
「それは、憧れでうね」
「…………憧れ?」
「あい、男の身であいながら愛紗さんと同等いひょうの力をもってるんでうから、無風ひゃん結構裏では人気あうんでうよ」
何を言ってるのか、分からなくは無いが聞き取りづらくてしょうがない。
「…………そうか、ほれ、これ使え」
もう何度目か分からないがハンカチを士元に渡す。
「…………傷口に当てておけ、しばらくすれば血も止まる」
「うぅ、すみまひぇん」
そしてここで詰みだ。
もう出来る手は全て打った。
あとは待つ事しか出来ない。
士元と途中で別れ、自分の天幕に戻り一眠りする事にした。
硬い寝具に横になり、布をかけてリラックスした状態になる。
昨夜から寝ていなかったせいか、すぐに意識を手放し夢の世界に落ちた。
・・・・・・
誰かが天幕の外にいる?
軋む体を無理矢理動かして上半身だけ起きる。
いつの間にかかけていた布はぐしゃぐしゃになって床に落ちていた。
そこで違和感を感じた。
まだ少し靄のかかっている思考を使ってその違和感を考える。
そして数秒でその答えにたどり着いた。
見えているのだ、視界が。
そして見てみるとネックレスみたいに首にかかった状態で目隠しがついていた。
かなり寝相が悪かったようだ。
首にかかっている目隠しを取って、ポッケにしまう。
寝起きで目隠しを付けるのが面倒になっただけだ。
外にいつもの格好で出るのは流石に不味いのでマントは着なければならない。
未だ天幕の前で立ち止まっているのか、誰かの吐息が聞こえる。
「…………誰だ?」
「あっ…」
そして天幕を開けて見てみると、そこにいたのは他でもない玄徳だった。
空は既に暗く、星が輝いている。
相当長く寝てたらしい。
松明に照らされた顔色は悪くない、だがその表情は疲れきっている。
元気、というには少々無理があるが外に出て歩けるくらいには回復したようだ。
「…………入るか?」
「…うん」
いつもの元気が無いせいか、二つ返事でコクりと頷き天幕内に入ってくる。
他に誰かいるかと思ったが、誰もいない。
一人で領地の外を君主が出歩くのはどうなのだろうとは思ったが、今はそこまで気が回らないのだろう。
玄徳を椅子に座らせてお茶を作る。
熱すぎず冷たすぎずの体温ほどの暖かさを保ったお茶を出してやる。
「…………どうした、何か用か?」
慰めや励ましは俺の領分ではない。
それは姉妹たちか北郷がやればいい。
なので、俺は単刀直入に話を切り出す。
「ううん、用…は無いんだけど、聞きたい事があって」
「…………なんだ?」
「…どうして最初に言ってくれなかったの?」
恐らく、この連合や自分の間違いにだろう。
「…………なら逆に聞くが、俺の意見で判断をころころ変えるのか?それはお前の理想か?」
揺れているであろう志を一度固める。
そうしなければ矛盾だらけになってしまうから。
「それは…」
「…………それに王だろうが君主だろうが結局は人間だ。間違いは起こす。起こさない人間の方が問題だ」
「…………」
弱々しく疲れきっているが、その目は俺を捉えている。
「…………間違いは誰にでもある。だが、そこで間違いを正すのに人の手を借りては人間は学習しない」
その言葉に玄徳が苦い顔をする。
心境はとても複雑なのだろう。
自分のことを思って雲長や北郷たちは玄徳の間違いを代わりに正してきたのだろうが、それが実はただの迷惑でしか無かったのだ。
言い知れない感情が渦巻いていることだろう。
そこでポツリと言ってはならない一言を玄徳が呟く。
「…私がしてきたことって、全部無意味だったのかな」
「…………その言葉は絶対に口にするな」
「えっ!?」
いきなり俺の雰囲気が変わって驚いている。
だが、それも当たり前だ。
「…………お前は既に歩む一歩を踏み出したんだ。人の命を餌とする道を歩いてしまった」
「っ!!」
そう、ここにいる全員、反董卓連合の連中も董卓軍の奴らも、既に歩みを止める事は許されない。
どんなに綺麗に舗装されていても、その舗装された中まで綺麗だとは限らない。
それと同じで人の命を、人の人生を、人の幸せを。
その人の全てを自分の為に奪った事に変わりはない。変えられない。
「…………玄徳、お前が許される道は二つ。理想を成し遂げるか、玄徳自身も理想の"糧"となるか」
「理想の…糧?」
「…………そうだ、玄徳の理想はなんだ?」
「皆が笑って過ごせる世界を作る事です」
「…………考えた事は無かったか?」
「何…を?」
「…………家族を殺された人間が家族を殺した人間の下で笑顔で居られるか?」
「っ!でもそれは!」
「…………そうだ。戦争とはそういうものだ。だがな、納得と理解は別だ」
玄徳の瞳が揺れている。
考えろ、まだ間に合う。
止まる事は許されないが考える事は出来る。
もう一度見つめ直せ、お前の理想を。
人の命を奪って尚、自分の理想を叶えるにはどうすればいいのか。
「…………今は考える時間が必要だ。…だからさっさと休め」
冷めてしまったお茶を入れ直し、玄徳に差し出す。
それを一口二口と飲んで、少し落ち着きを取り戻す。
「…………焦るな、焦りは十分な思考が出来ないまま最悪な結果を生む。だからと言ってのんびりしても駄目だが」
「む、難しいよぉ」
少し玄徳らしさが戻ってきた所で、こちらに走ってくる足音が聞こえる。
かなり慌ててる様だ。
そして近づいてきて天幕が荒く開けられ兵士が数人入ってくる。
「ハァハァ…ほ、報告します!」
「…………何だ」
「輜重隊の兵士から報告が!」
早速何か起きたか。
空気が張り詰めるのを感じながら続く報告を聞く。
「虎牢関前まで進軍した袁紹・孫策・曹操の軍が崖上からの落石により退路を絶たれたとの事!」
「…………何だと?」
そこで地図を広げ、兵士の報告から3軍の位置と落石の位置を描く。
そして報告の通りに図を完成させて奥歯を強く噛み締める。
その報告通りなら孟徳が危ない。
最悪その3軍全てが全滅する。
脳裏に孟徳たちの顔が浮かび上がる。
「…………報告ご苦労、下がってよし」
「はっ!」
そして兵士は次の奴に報告しに駆け出してゆく。
「無風さん…」
玄徳が心配そうな顔をしてくるが、そんなのを見ている余裕が俺には無かった。
ここで孟徳を見捨てて俺が生き残るか、孟徳を助け俺が死ぬか。
その取捨選択を強いられている。
孟徳を助ければ確実に俺だとバレる。
そしたら軍律違反の件で孟徳に殺されるだろう。
見捨てれば、孟徳が死に俺は生き残れるだろう。
だが見捨てていいのか?
もし俺が殺されるのなら孟徳の手で直接やられた方が見知らぬ奴にやられるよりいいかもしれん。
それに、もし孟徳や文若、典韋たちを誰かに殺されて俺は理性を保っていられるのか?
あんなに俺に優しくしてくれたあいつらを殺した人間を前にして平気でいられるのか?
「行って」
「…………は?」
玄徳がいきなり何かを言い出し、それに間抜けな返事を返してしまった。
「無風さんは曹操さんを助けたいんでしょ?だったら助けに行ってあげて」
「…………自分たちが崖に立たされる事になってもか?」
「大丈夫だよ、だってそうなったら無風さんがまた助けてくれるでしょ?」
にっこりと笑う玄徳。
自分の方が無理をしているのにこうも他人を気遣えるその胆力に正直感服する。
そして同時に思う。
人はすぐに変わる事などできないのだな、俺も、玄徳も。
「…………ふっ、なら」
行かせてもらう。
それは言葉にせず天幕を出てゆく。
足早に拠点入口に向かうと一人の少女が、魔女帽子をかぶった薄青紫の髪をツインにした少女が立っていた。
「行くんですか?」
その少女…士元が俺を見上げて不安そうな顔で訪ねてきた。
「…………あぁ」
「必ず……戻ってきてください」
そう言って士元が俺の腰に腕を回してくる。
ギュッと掴む少女の力は想像以上だ。
だから俺は……
「…………帰って来れるよう、祈っててくれ」
士元の手を腰から剥がし、しゃがんで士元を抱きしめる。
華奢な体の士元を抱き潰してしまうほど強く、強く、刻み込むかの様に抱き締める。
そして長いようで短い包容を解き、そこから数歩前に出る。
「行ってらっしゃい」
「………行ってくる」
足に氣を込め、一気に飛ぶ。
風が顔にぶつかり、景色が早送りの様に過ぎ去ってゆく。
「…………間に……合え!」
孟徳の所に向かって全力で駆ける。
up主「はい、ということで虎牢関戦前の話でした」
華琳「やっと少しだけ出番来たわね」
up主「次回、どうなるか分からないけどイメージとしては華琳視点からのスタートでいくつもりだよ」
華琳「本当に?嘘だったら刎ねるわよ?」
up主「わからん言うてるのに!?」
華琳「そんな中途半端が許されると?」
up主「思いたい」
華琳「はぁ、まぁそれはいいわ。それよりup主」
up主「なんでしょう?」
華琳「無風から凪の視点に移ったあとの話おかしいじゃない」
up主「?…あぁ、無風は凪が自分の事を華琳から聞いて知ってると思ってたとこ?」
華琳「そうよ、なんで凪の部分あんな言い方してるのよ」
up主「だって聞いたら、凪もその頃は無風の事、華琳から聞いたこと無いって言ってたし」
華琳「あら?そうだったかしら?」
up主「てことは、そこに関しては無風の完全なる読み違いって事だね」
華琳「無風でも間違える事ってあるのね」
up主「同じ人間ですから」
華琳「はぁ、分かったわ。それよりそろそろ終わらして夕飯にしましょう?
」
up主「はいよ、では皆様!また次回~ でわでわ。…っで何が食べたいの?」
華琳「酢豚♪」
up主「得意料理だから別にええけど、パインか梨は」
華琳「いらない」
up主「了解」
北郷&無風「もうお前ら結婚しろよ」




