拠点2 桃香√
拠点編、まずは桃香からやっていきたいと思います。
拠点2 桃香√ 『私の兄』
「はぁ~、疲れたよ~」
私はちょうど平原へのお引越しを終えて、現在は必要なものを部屋に置いている所です。
纏めていた私物をそれぞれの引き出しに入れたり部屋を飾り付けしたりなどをし終えて現在は寝台にうつ伏せに寝ています。
「あぁ~、お日様の匂いがしてポカポカだよ~」
本当ならそのまま寝てしまいたいのですが、今度は執務室に必要書類や印鑑などを分かりやすいように置きに行かなければなりません。
その後は此処の構造を把握するために見て回ったりなどが今日の主な内容です。
大まかな場所は他と似てはいるんですけど、細部がどうなっているのかを見ないと、いざと言う時に道に迷っても困りますしね。
そして私はそのまま寝てしまいたい誘惑を打ち払い、部屋を出て覚えたての廊下を渡って執務室に向かいます。
その時、庭でのんびりしている人を見かけました。
「あ、無風さーん。そんな所でなにしてるんですかー?」
「…………見て分からぬか?酒を飲んでいるんだ」
「昼間っからお酒を飲んでて大丈夫なの?荷物の片付けとかお城の見学は?」
「荷物は身につけてるもの以外何も無い。城の構造は既に把握済みだ」
な、無風さんって何も私物を持ってないんだ。
それにお城の見学も終わってるって、仕事早すぎだよー。
そして無風さんはまた庭の風景を肴に酒を飲み始めました。
私が忙しくしてるのに誘惑を誘うかのように飲んでる無風さんを見ていると、無性に腹が立ちます。
「むー、何もすることが無いなら手伝ってよー」
「…………何を?」
「書類整理とか、報告書の分別とか?」
「…………はぁ」
盛大なため息を無風さんが吐いて、呆れた目で私の事を見てきます。
な、なにか変な事言ったかな。
「…………お前は馬鹿か」
「ひどい!?」
「…………客将に報告書の整理を、しかもまだ分別も行っていない物をなど、万が一にも重要な書類を俺が見てしまったらどうするんだ」
「それは大丈夫だよ!無風さんがそんな事をする筈ないもん♪」
「…………」
「うっ……なんかごめんなさい」
無風さんが見下した様な目で私を見てくるので耐え切れず謝ってしまった。
もう一つ盛大なため息を吐いて無風さんは立ち上がり、私の方に歩いてきた。
「…………まぁ、いいだろう。だが孔明も連れてこい。重要書類の選別をしてから手伝ってやる」
「今は朱里ちゃんより雛里ちゃんの方がいいと思うんだけど」
「…………どちらでもいい」
「うん、朱里ちゃんと雛里ちゃんには重要度の高いものから処理してくれるよう頼んであるから、無風さんと一緒なら雛里ちゃんの方がいいと思って」
「…………そんな気遣いを俺にはしなくていい」
「まぁまぁ、じゃあ行こ♪」
無風さんを連れて朱里ちゃんたちの執務室に向かいます。
途中離れてしまいましたが、途中であった女官に酒瓶とぐい呑を片付けてもらうよう頼んでいただけで、すぐに追いついてきました。
二人の執務室は私とご主人様の執務室の1つ部屋を挟んだ部屋なのでとても近いです。
「失礼しまーす」
「あれ、桃香様?どうかなさいましたか?」
「あ、朱里ちゃん。書類分けるのに雛里ちゃんをちょっと貸して貰いたくて。いいかな?」
「えぇ、少しの間でしたら大丈夫ですよ、雛里ちゃんも大丈夫だよね」
「うん、朱里ちゃん。ちょっと行ってくるね」
二人並んで繋げている机を迂回して雛里ちゃんが来る。
「ごめんね、雛里ちゃん。ちょっとだけ手伝って」
「全然大丈夫ですよ桃香様」
「ありがとー。じゃ行こっか」
「はい……あわわわわ!?」
「どうしたの雛里ちゃん!?はわわー!?」
雛里ちゃんが扉の真横に人が居るのを見て慌て出しました。
その声にびっくりした朱里ちゃんが近寄ってきて無風さんの姿を見た途端に、朱里ちゃんも驚きの声を上げました。
「…………何をそんなに驚く」
「だ、誰でも人が居ると思ってない所に人がいたら驚きましゅ!」
「あぅ~、無風さん意地悪です」
「…………俺が一体何をした」
そんな騒動が合ってから、雛里ちゃんに報告書を大まかに分別して貰って、
分別された書類をさらに分類分けを無風さんがやってくれたおかげで今日の仕事の半分があっと言う間に終わりました。
「二人共ありがとー!おかげで助かったよー」
「あわわ、桃香しゃま!?そんな抱きつかれると。う~、う~!」
手伝ってくれたお礼に雛里ちゃんを抱きしめて頬をすりすりします。
雛里ちゃんの肌はスベスベだから気持ちいいなー。
一通り堪能してから雛里ちゃんを開放してあげると顔を真っ赤にして、またしたくなっちゃいそうです。
「そ、それにしても無風さんは字が読めるんですね」
「確かに結構早く分けてたよねー」
雛里ちゃんの言葉に頷く。
無風さんもご主人様と同じ天の国から来たらしいが、ご主人様は話は出来るが文字の読み書きがさっぱりなので今回は呼ぶに呼べなかった。
てゆうか私、無風さんが文字を読めない場合のこと、まったく考えてなかった。
ご主人様と同じ所に来たっていうなら、その可能性もあったのに『なんでも出来そう』って雰囲気だけで呼んじゃったよ。
もし、この事が愛紗ちゃんにバレちゃったらどうしよう。
そんな私の心情など分かる訳もなく、無風さんはつまらなそうに答えました。
「…………孟徳の所で読むことに関しては出来るようにしてたからな、書くのはまだ練習中だが」
「ほえー、無風さんは凄いんだねー」
「…………北郷より少し長くこの世界に居た差だ。もう少ししたら北郷も読み書きが出来るだろう」
「あぅ、ご主人様はまだ読む事すらままならない状態でしゅ」
「…………理解すれば後は早いだろう」
そう言って無風さんは服の中に仕舞っていた袋から何かを取り出して口に入れました。
「無風さん、何を口に入れたの?」
「…………飴だ」
「えー、いいなー。自分だけずるーい!私にも頂戴♪」
「…………ほら」
無風さんは表情の読めない顔で袋から飴を取り出して私と雛里ちゃんにくれました。
飴はゴツゴツしていてどうやら割ったらしく、見た目が不揃いでした。
「これってどこで買ったの?こんな形の飴見たこと無いよ?」
「…………俺が自分で作ったんだ。固まったのをそのまま砕いたんだから不揃いなのは許せ」
その言葉に雛里ちゃんは驚きの表情で、私は自分でも分かるくらい目をキラキラさせています。
「すごーい!無風さんってお菓子も作れるんだ!」
「あわわ、凄いです」
「…………何を大げさな。これぐらいなら孔明や士元の方が上手いだろう」
「あわわ!なんで私たちの趣味を知ってるんですか!?」
「…………見た目」
とても的確な答えでした。
確かに朱里ちゃんや雛里ちゃんってお菓子作りかなり上手そうです。
「…………いいから早く食え。手がベタつくぞ」
そう言われて食べずにずっと手で持っていたのを忘れていました。
私は躊躇せず口に入れたけれど、雛里ちゃんはどこか躊躇っています。
「…………孔明に食わせる前の味見兼毒見とでも思って食えばいい。後で孔明にもやるから」
「あわ、ありがとうございます」
一人でお菓子を食べることに罪悪感を感じていたらしいです。
その事に気付けなかったのがなんか悔しいです。
そして食べてみた感想としては。
「うーん、すごく美味しんだけど私の知ってる飴じゃないよー?知ってる味なんだけど、なんの味だったかな」
「あわわ、美味しいれふ。これ林檎の味がしまふ」
飴が若干大きかったのか、雛里ちゃんは口を抑えながら感動を口にしていた。
でも、私の食べてるのは林檎じゃない気がする。
疑問に思っていた所で無風さんが答えを教えてくれました。
「…………劉備が食ってるのは桃、士元のは林檎で正解だ。………どうして林檎がこの時代に取り扱うほどあるのかは不思議だったが」
「ああ!言われてみれば桃の味だねー♪モヤモヤがスッキリしたよ」
「凄いでふ。どうやって作ったんでふか?」
「…………簡単なことだ。水に入れる砂糖を半分にして、そこにそれぞれの汁を混ぜただけだ。」
「でも、それだと水分量が多くなりまへんか?」
「…………問題ない。水は煮詰める過程で飛んでいく」
「飛ぶ…でふか?」
「…………あぁ、湯気となって空気中に散ってゆく」
「なるふぉど」
「…………飴が小さくなってから喋れ士元、馬鹿みたいだぞ」
お菓子談義を始めたと思ったら無風さんがそんな事をいい、雛里ちゃんは顔を真っ赤にしてしまいました。
「ねぇねぇ、無風さん。私にも飴出来るかな?」
「…………出来なかったらお菓子作りには向いてないだろうな」
「私も作ってみたい!」
「…………士元に教えてもらえ」
「えぇ!?わ、私ですか!?」
「…………なんだ、無理なのか?」
「いえ、無理じゃないですけど…」
「…………まずは基本の飴作りが大事だ。それから味付けに挑戦したいのならば呼べ。ほらっ」
そう言って無風さんは雛里ちゃんの手に飴の沢山入った袋を手渡しました。
「えっ!?もしかして全部ですか?無風さんの分は」
「…………また作ればいい。それは全部やるから全員で食べるなり、孔明と劉備で3人で食べるなりすればいい」
「えっ?私もいいの!」
てっきり雛里ちゃんに手渡したので朱里ちゃんと雛里ちゃんで食べる為に渡したのかと思ってました。
「…………じゃあ、これを知った上で、耐えられるのか?」
「無理!」
即答です。
こんな美味しい飴を見せられて我慢しろなんて出来ません!
私だって女の子だもん、甘いものは大好きだよ。
「…………まぁ、先にするべきことをしてからにしろよ。じゃ、俺は帰る。」
そういって無風さんは部屋から出ていっちゃいました。
雛里ちゃんは彼の出て行った扉を見つめていました。
「無風さん、やっぱり私を避けてるのかな」
「っ!?」
私が視線を下に下げながら今までの雰囲気から察していた事を口にすると、雛里ちゃんが視界の隅でビクッとしました。
「雛里ちゃんも気づいてたでしょ?私と会った時の無風さんってどこか一線を引いているように感じるの」
「……はい」
そして雛里ちゃんは何かを悩んでいたが、何か決心したような目をして私を見ました。
「実は、無風さんを林の中で見つけて助けようとした時にですね」
「無風さんが自分から死のうとした時でしょ?」
「はい、その時に無風さんは言ったんです」
「何を?」
「『俺を生かせば劉備を殺す』と」
「っ!?」
一瞬理解が追いつかなかった。。
無風さんが私を殺す?そんなの嘘だ。
「嘘……だよね?雛里ちゃん」
「……いいえ、言ったのは本当です。でもその意味がわからないんです」
「分からない?」
「はい、死にたいがために私達の兵を挑発したのだと最初は思ったのですが、それでは回りくどいです」
「回りくどいの?なんで?」
「考えたくはないですが、死ぬなら私を人質にとって態と刺された方が早いです」
「じゃあ、他に何か意味があると。雛里ちゃんは思うの?」
「はい、さらに無風さん自身、桃花様を殺す気が無いですし、無風さんが直接手を出すという線も先程消えました」
「え?さっきなの?」
「だって桃香様、もし無風さんが殺す気だったら、この飴に毒を仕掛けて居る筈ですよ?毒殺が思いつかない人ではないです。
あ、朱里ちゃんへの罪悪感もありましたよ?」
だからさっき食べるのを躊躇したのか、てっきり無風さんが言うように朱里ちゃんへの罪悪感だけなのかと思っていた。
「そしてこの飴を皆で食べるなりしろと言ったと言うことは、毒が入ってる可能性は無いです」
「つまり無風さんは私を直接殺す気は無いのに、そう言ったって事?分かんないよー」
「はい、何の意味もない事は言わない人ですから、何らかの意味はあるでしょうけど……」
戦闘も軍略も政も指揮官としても。
国の運営に関してはどれもが私達の誰よりずば抜けていて、趣味などでも彼は多岐に渡っている。
出来ないことなど何も無い様に見えるほど完璧な彼なのに、どうして自分で立つことをしないのだろう。
無風さんが本気になれば乱世はすぐにでも終わらせる事だって可能かもしれない。
なのに無風さんは日々軍備の増強に手を貸してくれるだけで、他には何も手伝ってくれないし、自分から何もしようとしない。
民が苦しむ時間が増えてしまうかもしれないのに何もしない。
そう考えたときにすごく怒りが沸いた。
私より才があるのに。
私以上に出来ることがあるのに。
私なんかの客将でいることに。
そして同時に思った。
私なんかの客将で居るのは何故なのだろうと。
私に何か期待をしているのだろうか、私を殺すと公言したにも関わらず。
変だとはわかっている。分かっているが一つ思った事がある。
━━━━私に兄がいたら無風さんのような人なのではと
私に酷いことを言っておきながら、私の成長を見ていてくれてる様で。
私が困っていたら、それとなく助けてくれる。
頑張ったら褒めてくれる。
まぁ、褒めてくれるというか飴をもらっただけだけども。
書類整理も雛里ちゃんにも助けてもらったけど、無風さんもちゃんと手伝ってくれた。
こうして平原の相になれたのも無風さんのおかげが大きい。
漢の使者から聞いた限りだと、黄巾党補給路の奪取のおかげで全体的に黄巾党の弱体化した功績と補給の要所を潰した功績の二つが一番大きいとのことだ。
無風さんとその兵隊さんたちが居なければ補給路を奪うことは難しかっただろう。
それは朱里ちゃんが言っていた通り、食べるために義勇軍に参加した人が多かっただろうから、私たちだけでは難しかっただろう。
つまり功績の半分は無風さんのおかげだということだ。
私を殺そうとする人が私を助けるだろうか?
雛里ちゃん同様、私も無風さんの言葉の意味がなんなのか分からなくなってきた。
「私を直接殺そうとしてるんじゃないみたいだし、今は……いいんじゃないかな?」
「はい、ですがそれが計算の内だとしたら油断も出来ません」
「うーん、考えててもしょうがないよ。第一雛里ちゃんは無風さんの事信じてるんでしょ?」
「はい」
顔を少し赤らめながら頷いてくる雛里ちゃんに私も笑顔になる。
「じゃあ、無風さんを信じる雛里ちゃんを私は信じることにするよ♪」
「ありがとうございます」
「じゃあ、私は城の探索に行ってくるね」
「はい、お気をつけください」
執務室のからでて雛里ちゃんと分かれて、一緒に探索しようと言っておいた愛紗ちゃんに会いにいく。
そして、また最初に会った庭に無風さんがお酒を飲んでいるのを見かけた。
まだ、貴方の事が分からないけれど私は頑張って見せるよ。
無風さんの言った事、何故自分から動かず私の所にいるのか、無風さんが私に求めているもの。
どれもまだ分からない。
まだまだ分からない事だらけだけど、一つだけ言わせて欲しい。
「貴方の期待に添えるように頑張ります。"兄上"」
私の独り言は風に乗って消え去り暖かくなってきた風が私を包む。
ご主人様と愛紗ちゃん、鈴々ちゃんと桃園の誓いをしてからもうすぐ一年が経とうとしている。
もうすぐ桃の花が咲く頃だ。
その頃までには満足のいく飴を作って皆で桃の木の下で食べたいな。
そう思う私の足取りは軽かった。
up主「はい、てことで今回桃香編書かせてもらいました」
桃香「うー、恥ずかしいよぉ」
up主「てか兄上って、雛は桃香よりずっと年下じゃねぇかよ」
桃香「嘘っ!?あ、ご主人様と同い年だからそっか」
up主「史実に書かれている年齢だとしたら8つ下だな」
桃香「私そんなに年取ってないもん!」
up主「まぁ、そうだろうね。でも年上なのはそうでしょう?」
桃香「それは……まぁ」
up主「ま、それはどうでもいいんだけど」
桃香「流石にどうでもいいと言われると傷つくよ…」
up主「次回は北郷か愛紗のどちらかを書きたいと思います」
桃香「次回もよろしくね~……私出るのかな?」
up主「わかりません!」




