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知らない方がいい真実

前回のあらすじ

・劉備殺害宣言

・無風自殺未遂

・up主の単位喪失事件

以上

 俺は下邳城の城壁から朝日が昇るのを見ている。

 太陽が少しずつ昇るのを見ながらこれまでの事を振り返っていた。

 この世界で初めて目が覚めた時には孟徳に出会い、この世界で生きるチャンスをくれた。

 俺はそれに応えられる様に勤めてきた。

 今頃はあの豪族共をぶちのめし始めている所だろうか。

 彼女が陳留やその周りを完全に掌握したら戻ることは出来るだろうかという未練が湧いてくる。

 

━━━━そしてまた俺は孟徳に迷惑をかけるのか?


 心の中のもう一人の俺が問いかけてくる。

 いや、俺は死んだんだ。

 あの燃える城で。

 孟徳の前に出れる様な資格など無いのだ。

 文若を危険に晒した挙句、生きるチャンスをくれた借りすら返さず消えた人間にそんな事が許される筈がない。

 あの燃える玉座の間から抜け出し、張角らが使用したのとは別の抜け道を偶然にも見つけたはいいが、

背中に矢傷を負った状態で、正規のルートが分かる訳もなく、様々なトラップにかかった。

 竹槍を間一髪で避け、落とし穴では落ちた先に槍などが無く助かり、

大岩が転がってきた時は隅に身を寄せて避けれたはいいが道を塞がれて岩を退けるのに苦労した。

 だが、一番やっかいなのは水だった。

 いきなり雪崩のように押し寄せてきた水に流され、それ自体は何ともなかったのだが如何せん、

体温が下がり、固まっていた血が溶けてかなりの血を失った。

 それでも諦めず洞窟を抜けると森か林かわからぬがそれっぽい所に出た。

 そしてこの世界に来た時と同じく夢を見て、同じく木々の中で生きるチャンスをくれた。

 まるで繰り返されている様だと思って小さく笑う。

 ただ悩ましい事もある。 

 俺が城壁にいる"もう一つ"の理由。

 それは部屋に"戻れない"のだ。

 いや勿論、部屋にも入れるし、何か不自由があると言う訳ではない。

 それは誰かは知らないが悪戯をしていくのだ。

 大体予想はつく。

 大方、俺の怪我を鳳統と張飛が付きっきりで看病したのが原因だろう。

 それで無かったら劉備を殺すとか言った時に兵が噂みたいなものを広げて追い出そうとしているかのどっちかだろう。

 悪戯も最初は些細なものだった。

 机の上に花瓶の入った一輪の白い花だったり、椅子がただひっくり返されていたりと小学生みたいな事だった。

 しかし、それがエスカレートして今では机に墨で文若とは性質がまったく異なる罵詈雑言が書かれていたり、

食事の前に水を取ってこようとして水を取りに行って帰ってきたら、食器の中にミミズが入っていたり。

 しまいには寝ている時に窓に石を投げられて窓ガラスを割られたり等等。

 悪戯から悪質なイジメになって来ている。

 これ以上エスカレートすると書類の改ざんなどで、俺だけでなく孔明や士元、果てには劉備や北郷にまで被害を被ってしまう。

 

「…………まだ、この時期の夜は………寒いな」


 イジメに関してはそれは俺が部屋に帰るときか、俺が部屋に居る時に限られている様なので、こうして部屋に戻らずにいるのだ。

 なので最近では一日を兵站所・公共の場・城壁の上で過ごしている。

 

「…………訓練所に行くか」


 日がだいぶ昇った頃合で皆が動き出し始め、もう少ししたら朝議が始まるだろう。

 朝議には出れないし出たくもないので、訓練所でリハビリをそろそろ開始した方がいいだろう。

 そこでふと自分が目隠しをどこかに無くした事にリハビリをしようかと思っていた今になって気がついた。

 矢傷の止血の為に体に巻いていた筈だが、もしかしたら何かの拍子で落としてしまったのだろうか。

 もし、あの城の中で落としてしまったとしたら、もう燃えて灰になっている。

 血を吸って濡れていたとしても、この服と同様でかなりいい素材を使っていたから、さぞかし良く燃えただろうなと思いながら、

リハビリを終えてまともに氣を使える様に戻ったら、新しいのを買う事にしようと決めた。



================鈴々視点================


 鈴々は今、朝の集まりに出てきている。

 皆の今日の居場所を確認して、もしもの事があった時の為に何処にいるか分かった方がいいって愛紗が言っていたのだ。

 でも、最近違うことを考えていて朝の集まりの内容だけでなく、話を聞いてなかったりして愛紗や朱里に申し訳ないのだ。

 申し訳ないけど、どうしてもその事を考えてしまう。


「鈴々!」

「にゃにゃ!?どうしたのだ?愛紗」

「はぁ~、お前という奴は。また朝議の内容を聞いてないで考え事をしていたのか?」


 愛紗に言われて周りを見回すとお姉ちゃんやお兄ちゃん達全員が鈴々を見ていた。

 

「にゃ~、ごめんなさいなのだ。」

「もう少ししっかりしてくれ鈴々。してお前は今日の内容は?」

「鈴々、今日は兵の鍛練だけなのだ。」

「なるほど、では訓練所と、終わった後は?」

「今日は部屋にいるのだ」

「ねぇ、鈴々ちゃん。調子でも悪いの?ここ最近ずっと仕事が終わると部屋にいるみたいだけど」


 お姉ちゃが心配そうな声で鈴々を見てきたけれど、首を振って違うと表す。

 

「ちょっと考え事してるだけなのだ。鈴々の体調は特に問題ないのだ」

「考え事?鈴々ちゃん、何を考えてるの?」


 今度は朱里が話を切り出してきた。

 

「無風お兄ちゃんの事なのだ」


 その鈴々の言葉に苦い顔になる朱里、鈴々なにか悪い事言っちゃったかな。

 

「無風殿の事?鈴々、無風殿がどうしたというのか?」

「愛紗は見てないのだ?」

「?なんのことだ」


 他の皆の顔も見るけれど誰も『何か見たっけ?』という顔をしていた。


「ここ最近、ずっと夜になると無風お兄ちゃん。城壁の上にいるのだ」

「なに?ここ最近ずっとなのか?」

「そうなのだ、警備するにも兵は交代でつけてるし、不穏な事をしているとしても、それならもう何かしら起こっていておかしくないのだ」

「つまり、鈴々は無風殿は夜を過ごすだけの為に城壁の上に居ると言うのか?」

「鈴々にはそれくらいしか思い浮かばないのだ。でもそれだと部屋に戻らないのがなんでなのか分かんないから考えてたのだ」

「確かに、寝るなら部屋に帰って寝たほうがいいしな」


 その事について皆で悩んでいたが解決せず、時間だけが過ぎていく。


「うーん。もー、分かんない!直接聞けばきっと教えてくれるよ」


 お姉ちゃんが満面の笑顔でそう言った。


「桃香は気楽でいいなぁ」

「えー、だって考えたって分かんないし、本人に聞けるならそれに越したこと無いじゃん」


 お兄ちゃんとお姉ちゃんのやり取りで場が和む。


「だから、分かんないから聞きに行っちゃお♪鈴々ちゃん、行こ!」


 そう言って朝の集まりをお開きにしたお姉ちゃんは鈴々を連れて玉座の間を出て行く。

 侍女さんや女官の人に聞いて、無風お兄ちゃんが訓練所の横で見かけたと聞いてやって来たのだ。

 ちょうど鈴々も今日は訓練所で兵の訓練なので好都合なのだ。

 そして訓練所の近くにある樹の下で剣を抜く格好のまま固まっている無風お兄ちゃんを見つけたのだ。


「あ!いたいた、無風さーん」


 お姉ちゃんが無風お兄ちゃんに近寄っていく。


「…………劉備か………今はあまり近づくな」

「えっ…」


 いきなり拒絶されたのかとお姉ちゃんが固まる。

 そこに樹から落ちてきた一枚の葉っぱがお姉ちゃんの手前で半分に、次の瞬間にはもう半分に、次にはさらに半分にと切れていった。

 下に落ちる頃には粉々になっていた。

 

「えっ!?今の何!?何が起こったの!?」


 また、ひらひらと落ちてきた葉っぱも同じように地面に着く前に粉々になる。 


「…………今は………剣を振っている……あまり近づくと………怪我するぞ」

「で、でも。無風さん、剣を握ってはいるけど抜いていない様にしか見えないんだけど」

「…………見えないのか?………少し速度落とすか」


 そう言った無風お兄ちゃんの手が霞んできた。

 

ヒュンヒュンヒュンッ!

 

 次の瞬間には剣が無風お兄ちゃんを中心に縦横無尽に刀が振られてるのが、なんとか見えるくらいにまでになった。

 

「わぁぁ!?危ない危ない~!」


 お姉ちゃんのほぼ目の前まで剣が振り回されていて、もうちょっと進んでいたらさっきの葉っぱみたいになっていたのだ。

 鈴々にも見えないほど早く武器を振り回すなんて、無風お兄ちゃんはやっぱり凄いのだなー。

 そして、今度は本当に剣から手を離して近寄ってくる。

 お姉ちゃんは今の事もあって鈴々の後ろに隠れてしまったのだ。


「…………で、なんか用があったんだろ?」

「そうなのだ!無風お兄ちゃんはなんで最近いつも城壁の上にいるのだ?」


 鈴々の言葉に目隠しをしていない無風お兄ちゃんの目の色が少し濃くなった様に見えた。


「…………意味などない、ただ月見酒をしているだけだ」

「本当にそうなのか?部屋からでも月は見えるのだ」

「…………あぁ、そうだ。それと劉備」

「は、はい!」

「…………こんな所で油売ってないで戻れ、そろそろ"来る"頃だぞ」

「えっ?来るって?人が…ですか?」

「…………そうだ」

「桃香様ーー!」


 朱里が走ってこっちに近づいてくる。


「あれ?朱里ちゃん。どうしたの?そんなに急いで」

「はぁ、はぁ。桃香様!今すぐお戻りください。漢の使者の方がお見えになってます」

「えっ?そうなの?何の用だろう」

「…………いいから、早く行け」


 無風お兄ちゃんに言われて急いで戻っていくお姉ちゃん。


「と、桃香様ー!待ってくださいー、私いま走ってきたばっかなんですー」


 お姉ちゃんを追っかけて体力の切れた様な走りで戻っていく朱里。

 もう少しぐらい体力つけた方がいいのだ。


================無風視点================



 やっと使者が来た。

 黄巾の乱の報酬としてどこかの刺史を任されるぐらいはあるだろう。

 今いる下邳が第一候補として、最悪ここの近くだろう。

 俺の知ってる大雑把な歴史通りなら平原の相になるだろうな。

 任命される時期が合っているのか違っているのかは分からないが。

 これで悪戯の件はまだバレそうに無いな。

 余計な心配をかけさせてはいけない。

 安心感を覚えたのも束の間、張飛と共に練兵を終わらせて劉備からの報告を待つ。

 使者が泊まっていかず、そのまま帰っていき俺らは玉座の間に呼び出された。

 そして使者から受け取った物は


『劉備玄徳を平原の相に任命する』


 およそ俺の知ってる歴史の通りに進んでいる。

 とすると次に来るのは"あの連合軍"の出来事だろう。

 そこで俺の脳裏に一人の金髪の少女がよぎった。

 会ってしまうかもしれない。

 そうなった時に俺は自分を抑えていられるのだろうか。

 後ろめたい気持ちが顔にも出ていた様で、張飛にまた心配されてしまった。

 目を隠していない為に表情を読み取られやすい。

 早めに目隠し用の革を調達するなり買うなりした方がいいなと思った。

 それと徐州州牧になり引越し作業をするために荷物を纏めておく様にと言われ思い出したが、俺のバックは陳留に残っているのだろうか。

 ふと自分の荷物が気になった一日であった。



桃香「なんか前書きが物騒なんだけど!?」

up主「ああ、うん。だって本当の事じゃん」

桃香「最後のも?」

up主「……土下座すれば、なんとかなるかな?」

桃香「うーん、多分無理じゃないかなー」

up主「ですよねー、まぁそこまで深刻じゃないから大丈夫」

華琳「しかし、まさかその1単位が彼の運命を左右するとは、この時の彼には…」

up主「華琳さん、それ心臓に悪いから止めて!」

華琳「あら、スリルがあっていいじゃない」

up主「洒落にならないから!」

桃香「そういえば、曹操さん。この前拉致られてたんだって?大丈夫だった?」

華琳「ええ、万事解決したわよ」

up主「警察など恐るるに足らぬわー」

華琳「とか言って、突入されて3秒で捕まってたじゃない」

桃香「えぇー!?up主さん捕まったの?悪い事したらダメだよ?」

up主「解せぬ」

華琳「まぁ、誤解でよかったじゃない」

up主「めっちゃ睨まれながら厳重注意くらったんですが」

桃香「あ!もうそろそろ終わりだよ!みんなーまたねー」

華琳「当分出番無いなんて許せないわ」

up主「次回から今度は劉備軍の拠点編に行きたいと思います。それでは~」

華琳「私の出番は!!」

up主「なんとかする!出来なかったらごめんね!」

華琳「(これ、絶対私の出番無いわね)」

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