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全ての枷を背負う男

怒涛の勢いで仕上げた!



 孟徳が俺に劉備軍の全権を任せると言った時に理解した。

 俺が劉備軍を指揮することで俺の実力と指揮官としての向上を計るつもりなのだ。

 舐めたまねをしてくれる、ならやってやろう。

 最近ちょっと俺を飼い慣らせてきたと勘違いしている孟徳にはいい薬だろうと思い、少し劉備軍を強くてやろうと思った。

 夜になり、十分な大きさの天幕というか布で壁を作っただけだが、その中で今は関羽の相手をしている。

 相手は青龍刀、対してこちらは素手。

 こちらが圧倒的不利に思えるが、それは俺が弱ければの話だ。


「くっ!?当たらないどころか体制を崩される!?」


 関羽が青龍刀を横薙ぎに振るうのをしゃがんで回避すると同時に頭の上を過ぎてゆく青龍刀に手を添えて、更に加速させる。

 加速した青龍刀を抑えられず体制を崩す関羽の腹にしゃがんだ状態からの溜め有りの蹴りをお見舞いする。


「がっ!?くっそ!」

「…………今の青龍刀の速度を出してみろ。それがお前の課題だ」

「無理だ、そんな事したら制御できなく今みたいに攻撃を食らってしまう」

「…………ほぅ、無理とな」


 俺は張飛に真っ黒な俺専用の青龍刀を投げさせるように言う。

 そして投げて渡された青龍刀を構える。

 

「お主の青龍刀は不気味だな」

「…………さしずめ黒龍刀ってとこだ」

「ほぼ全身真っ黒で、まるで死神だな」


 そういって関羽も構える。

 話せるほどの余裕があるわけではない。

 しかし、関羽は自分の得意とする獲物だが俺はそうではない。

 それが分かっているからほんの少し余裕が現れた。

 使い慣れていないモノを使うのは至難の業だと知っているから。

 しかし、その思いをすぐに捨てさせる。

 青龍刀を縦回転で打ち込み、それを防御する関羽。

 しかし、防御こそこっちが狙っていたチャンスだ。

 防御された反動を活かして柄頭で足を払う。


「きゃっ!?」


 そして倒れた関羽に刃先を突きつける。


「…………それでは俺は倒せぬ」

「くっ!参りました」


 関羽とはここで一端仕舞いとして張飛とやり合う。

 関羽にはもっと速度を上げるよう素振りと俺の使った技を練習するように言う。


「にゃ!にゃにゃにゃー!!鈴々は負けないのだー」


 張飛は体型に似合わずものすごいスピードとパワーで文字通り力押しで攻めてくる。

 しかし、見切ってしまえばどうということはない。

 

「…………甘い!」

「にゃにゃ!?」


 蛇矛を振り落とした瞬間に足で押さえつけ、張飛の胸に掌底を叩き込む。


「けほっ!けほっ!う~せこいのだー!」

「…………戦場にセコイも何もない」


 そう言って大体の張飛の力は確認出来たので、横に置いてあった蛇矛を手に持つ。

 

「なら、鈴々本気出しちゃうもんねー」


 今までと変わらない、だからこその違和感。

 本気を出すのなら気の放出量が変わるなり、構えが変わるなり何かしらある。

 しかし、張飛が攻撃に出る瞬間、足の筋肉に"前に出る"のとは違う力が入るのを感じた。

 なるほど、そういうことか。

 敢えて誘いに乗っかってやり、前に出る。

 そして張飛の気配が消えた。

 実際には消えたのではなく、瞬間的にしゃがみこんでからの大ジャンプをして後ろに回り込もうとしているのだ。

 タネを明かせば簡単なことだが、実際にやられると見失う。

 人間は上下の動きにはついて行けない為、本当に見失う。

 しかし、視覚で戦っていない為に俺には通用しない。


「これで勝負ありなの……にゃにゃ!?無風お兄ちゃんが消えたのだ」

「…………消えてない、こっちだ」


 張飛の後ろから頭を撫でてやる。

 視覚に頼る相手ならほぼ絶対勝つ事ができる。

 それを意識としてではなく本能として知っている張飛だから、攻撃に出る瞬間まで分からなかった。

 全部読みきれなかった、ある意味俺の負けでもある。


「にゃにゃ!うにゃ~」


 撫でられて気持ちいいのかだらし無い声になる。

 猫みたいで可愛いと思ってしまった。


「無風お兄ちゃんなかなかやるのだ。今のはどうしてわかったのだ?」

「…………目で見なかったからだ」

「にゃ?無風お兄ちゃん本当は目が見えるのかー?」


 俺は久々に目隠しを外して、一息ついてから鈴々をみる。

 赤いショートヘアで虎?のバッチをつけており、日の出の空みたいに透き通た紫の瞳で見上げている。


━━━━やはり感じるのと見るのとでは違うものだ。


 目で見る情報はとても大きなものがある。

 許褚や典韋の時もそうだったが、彼女も若すぎる。

 だが一つだけ違う。

 彼女の瞳から見える覚悟が既に乱世を進む猛将のそれであった。

 この子は大丈夫だろう。

 素直な分、早くに乱世を生き抜いて矛盾だらけの道を進む覚悟が出来ているのだろう。 

 ただ、それも意識してではなく、本能としてだろう。


「お、驚きました。まさか鈴々に本気を出させるだけでなく、勝ってしまうとは」


 関羽がこちらに歩み寄ってくる。

 関羽は長い黒髪をサイドポニーで括っており、凛とした顔立ちで凛とした目つきが彼女の性格を表している。

 雰囲気からして、現代で生きてたのならば女子大生くらいだろうか?

 その関羽が、自分と妹、劉備軍の主力を打ち負かした上に、今は最高指揮官でもある俺にどう接していいのか分からず、とりあえず敬語なのだろう。

 まだ少し硬い所はあるが、それぐらいがちょうどいい。


「…………目で見ている相手ならば、張飛に勝てるものはいないだろう、なかなかいい妹だな」

「にゃ~、照れるのだ~」

「…………張飛の課題は氣の取り扱いだけだな」

「き?」


 俺みたいに目隠ししても戦える、とまではいかなくても自分の周りがどうなってるのかぐらいは分かるようにすると伝える。


「よく分かんないのだー」


 そう言うと思ったから、地面に座り張飛を招く。


「…………張飛、ちょっと来い」

「にゃ?なんなのだ?」


 ストンと躊躇なく座ってくる張飛の手を取り、氣を流し込む。


「うにゃ?体の中がポカポカしてきたのだ」

「…………張飛、今そのポカポカは体のどこだ?」

「うー、左斜め後ろなのだ」

「…………そうだ、それが氣だ。この感覚を覚えておけ。これからはこれを練習してもらう」

「む、難しそうなのだなー」

「…………直に慣れる」


そして張飛をどけて、関羽も招く。


「わ、私もか!?」

「…………嫌ならいいぞ、あとで張飛に教えてもらうのも有りだ」

「うぅ、いや。ここはご主人様と桃花様の為だ。やる」


 そう言う恐る恐る座る関羽の手を取って氣を流し込む


「う、んん!」

「…………どこに氣を流してるか分かるか?」

「う、上?」

「…………そうだ、流石は姉妹なだけあって覚えがいいな」

「そ、そうか?」

「…………俺には兄妹はいないからな。正直羨ましい」

「…………」


 そうして関羽を立たせ、俺も立って、尻についた土を払う。

 

「…………関羽はもっと型を増やして対応すればいい。張飛は氣の取り扱いだけで大丈夫だ」


 ただ、鍛練を怠っては意味ないがなと付け足し、また目隠しをする。

 

「無風お兄ちゃん、また目隠しするのか?」

「…………あぁ、そうだ」

「にゃー、つけてない方がカッコイイと思うのだー」

「…………慣れてしまうとこっちの方が便利でな」


 一長一短なとこもあるがという言葉は飲み込む。

 

「…………あぁ、最後に一つだけ言うが」

「なんだ?」

「なんなのだ?」

「…………普段の俺とは仲良くするな」

「なっ!?」

「にゃ?どういうことなのだ?」


 今回で結構関係を修復できたみたいでなによりだとは思う……が。

 そこでニヤリと笑って


「なんせ俺はお前らの"ご主人様"に手を出した。無礼極まりない客将風情だからな」

「「…………」」


 そうだ、忘れてもらっては困る。

 兵の前では一番手っ取り早いからと、最低野郎を演じた。

 演じたら、演じ続けなければいけない。

 そう言って青龍刀と蛇矛を持って天幕をでる。


================愛紗視点================


 あの無風という男は一体なんなのだろう。

 最初はご主人様が一人この世界に落とされ、家族も友人も生きているのに会えないという状況を信じられなかった。

 だが、それも一緒に居て嘘偽りないと分かると胸の内が激しく痛くなった。

 私の家族は賊に殺されて死んでしまったが彼の家族は生きているのに会えない、言わば生き地獄同然だ。

 そんな彼に天の御使いを演じてくれと頼み、彼に更なる重みを押し付けてしまった。

 私に出来ることなら何でもしようと恩返しなどではないが、少しでも借りを返せればとも思った。

 そしてご主人様を理解できる者が現れた。

 そう無風の事だ。

 無風の名前を聞いた時のご主人様の顔は今まで見てきた中のどれも比較にならないほどの笑顔でいらした。

 悔しくもあり、嬉しくもあった。

 私では出させることの出来なかった笑顔を出させる彼に悔しいと思った。

 やっと少しでもご主人様の心の寂しさを癒せる事を嬉しく思った。


 けれど…


 あやつは人違いだと、知らぬと言った。

 正直頭にきた。

 ご主人様はずっと一人だったのだ!

 お前がご主人様にどれだけ酷いことをしているのか分かっているのかと。

 

 その後、朱里の言葉を聞いて冷静にもなれた。

 無風が天の御使いであるならば、彼も一人だったのだ、この世界に。

 そしてご主人様でも抑えられなかった感情を押さえ込み、尚且つ冷静だった。

 私はなんてことを思ったのだ。

 目の前の事しか考えていない自分が恥ずかしい。

 しかし、無風はそんな私たちを許して稽古までつけてくれた。

 ご主人様がああなので油断していたのもあるが、ここまで完膚なきまでやられるとは思わなかった。

 一騎打ちの最中でもその後でも彼は私に足りない物を見せてくれた。

 それも手の届かない強さなどではなく、少し頑張れば手が届く強さを示してくれた。

 そんな事ができるのは圧倒的な力量差がなければ無理だ。

 本気を出させたい、認めてもらいたい。

 ご主人様に向ける願望とは異なった願望を胸に秘める。

 

 だが、それを許してくれなかった。


「…………普段の俺とは仲良くするな」


 その言葉は心に氷の釘を打った。

 やはり許してくれないのか、また私が浅はかな考えを持ったのかと。


「なんせ俺はお前らの"ご主人様"に手を出した。無礼極まりない客将風情だからな」


 下卑た笑いをしながらそう言った無風だったが、無理をしてる笑いにしか私には見えなかった。

 天幕から出て行く時も悲しそうに、全てを自分が背負うつもりのように笑っていた。


 お主は全て背負ったら、何をするのだ?

 お主は一体……何者なんだ。


up主「おつかれー」

一刀「しー」

up主「お?」

一刀「今ちょうど愛紗と鈴々が寝たところなんだ」

up主「なるほど、それで一刀が愛紗を、雛が鈴々を膝枕してるわけね」

無風「…………足痺れた」

up主「役得だと思って頑張ってw」

無風「…………」

up主「妹たちに囲まれて幸せそうで…[ヒュン]…うわぁっと!?」

無風「…………up主、殺られたいのか?」

up主「あぁ?やってみろや、返り討ちにしてやんよ」

一刀「うるさいよ黙って」

up主&無風「…………はい(´・ω・`)」

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