真実
弁舌になってる無風は違和感バリバリ!
「さぁ!何故ご主人様に手を出したのだ!事と次第によっては切る!」
天幕の中に入り奥に座らされて関羽に青龍刀を突きつけられる。
孟徳には自分の軍の指揮に戻るよう言って、俺は劉備軍の天幕で尋問される羽目になった。
そしてそんな状況にありながらも冷静に周りの分析をする。
まぁ、冷静でいられるのはただ単に性格がそうなのかもしれないが。
天幕に一番近い席に劉備と北郷が座っている。
普通に考えれば天幕入口近くは末端の席、つまりは一番身分の低い席。
そして俺が座っているのが一番奥の席、本来は劉備か北郷が座るのであろう。
まぁ、どうしてこのような位置になったかは想像に固くない。
もしも俺がここで暴れても大将はすぐに避難出来るであろうと考えた位置なのだろう。
だが浅はかである。
これが尋問用の天幕なら入口以外から逃げられないようにするのが定石。
しかし、今いるのは恐らく劉備軍の軍議用天幕だ。
尋問用と軍議用とでは天幕の作りが違う、少なくとも俺ならそうする。
だからこそ、訳がわからない。
俺を信用してるのか疑ってるのかが曖昧なのだ。
これはもう話に乗るしかないか。
「…………簡単なことだ。名前と人を間違えられていい気がする輩はいない」
「くっ!確かに無礼ではあったのかもしれん。しかし、それで人に手を出していい免罪符ではない!」
関羽の言いたいこともわかるし、俺自身名前を間違えられる事にはどうとも思わない。
一般的な名前の人ならば間違えられたらいい気はしないのだろうが、劉備が初めて俺の姓を口にした時もそうだが、
珍しい名前なので、初対面では必ず間違えられるか読めない名だ。
毎回その事に怒っていてもつかれるだけだ。
「でも、無風?俺の知ってる無風と見た目がそっくり過ぎる。本人だと思うんだが本当に違うのか?」
北郷が残念そうな声で俺に確認を取る。
ここには先ほどのメンバー以外の目と耳は感じられない。
諸葛亮が手配してくれたのだろう。
もう本当の事を言っても大丈夫だな。
「…………いや、恐らく合っている」
先ほどとは違う回答にほぼ全員が「えっ!?」という声をあげる。
唯一諸葛亮と鳳統はなんの反応も感じられない。
やっぱりとでも思っているのかもしれない。
「貴様っ!では何故あの時素直にそう答えなかった!それに合っているにも関わらず手を出さすとは確信犯ではないか!」
関羽が俺を叩っ切ろうと席を立つよりも早く諸葛亮と鳳統が席を立って俺の横にくる。
「…………臥竜鳳雛のお二人が何用だ?」
分かっていてそう問いかける。
二人から話を切り出させるのは少し勇気がいるだろうと思い、こちらから話しかける。
次の瞬間には二人がペコリとお辞儀をして、
「「ごめんなさい」」
同時に謝ってきた。
謝るのはいいが、鳳統さん。
帽子脱いでから謝って、横顔に先端当たってる…
「なっ!?何故、朱里と雛里が謝るんだ!悪いのはコイツだろう」
「愛紗さん。悪いのは私達ですし、私たちを救ってくれたのも無風さんです」
「なっ!?」
関羽はそっちが悪い事と、何故助かったのか分からないらしく戸惑っている。
ここからは諸葛亮に任せて黙っていても良さそうだと判断し、多分これからは無いであろう君主の座る位置からの軍議上の光景を楽しむことにする。
================朱里視点================
はわわ、とても危なかったです。
ちょっとやり方は強引でしたけど、無風さんのおかげで軍が瓦解しなくて済みました。
「朱里ー、どうして鈴々達が悪くて、しかもこのお兄ちゃんに助けられたのだ?」
鈴々ちゃんは素直に分からないから教えて欲しいと言ってきました。
愛紗さんや桃花様も分からないと言った目でこちらを見てきますし、ご主人様は無風さんに会えたことが嬉しすぎて周りがまだ見えないのでしょう。
雛里ちゃんを見て、彼女も「いいよ」という目で返してきます。
それにコクりと頷きながら今回のことを説明するとしましょう。
「まずはご主人様の対応がいけなかったですね」
「やっぱり俺か?」
「はい、ご主人様は無風さんに会えて嬉しかったのでしょうけど、あの時は兵達の目や耳もありました」
「それの何がいけなかったの?朱里ちゃん」
桃花様が何でだろうと呟きながらウンウン唸っています。
「それはご主人様がどんな方なのかを考えればすぐに分かります」
「ご主人様はご主人様だよ?」
「いえ、そうではなくってですね。ご主人様は天の御使いだっていうのが今回の論点なんです」
「あぁ、信じてもらえるかはこれから頑張るしかないけどな」
「ご主人様を疑っている訳ではないんです。管路さんの予言が原因の元なんです」
「え?管路ちゃんの予言って『天空より飛来する光に乗り、光りし衣を着た男が地に舞い降り世に安寧を与えん』ってやつだよね?」
「はい、その文を聞く限り御使いは一人だけですよね?」
「……あっ」
さすがにここまで言えばご主人様は気づいたみたいですね。
「そこに無風さんが来て、御使いが二人になれば…」
「どちらが本物か…ってなるな」
「はい、それをご主人様が自身で御使いが他にもいると兵達に思わせる所だったんです。」
「そうなったら、俺を天の御使いと担ぎ上げたのに天の御使いではないと思われたら…」
「劉備軍は内部から瓦解して終わりです」
私の言葉に桃花様や愛紗さん、ご主人様が青くなります。
鈴々ちゃんは分かって無いみたいだけど。
「でも、私でもひとつだけ分からないことがあります」
「な、なんだ?朱里よ」
愛紗さんが私を見る目を一瞬だけ見つめ返して、無風さんに向きます。
私が無風さんに向いたのに気づいたのか、無風さんが軽くこちらを向きました。
「もっと他にも方法はあった筈です。なのに何故あのような強引な方法に出たのですか?」
「…………簡単なことだ。それが一番…」
「"手っ取り早かった"、でしょ?」
「「「「「!?」」」」」
いきなり天幕にいる誰のものでもない声に驚き、天幕の入口を見ます。
「…………孟徳……」
「あら?何をそんな驚いているのかしら?」
「…………さっき返した人間が他軍の中心にひょっこり現れれば誰でも驚くだろう」
「そうね、で、誤解は解けたのかしら?」
「…………ああ、だから帰れ」
「ええ、そうするわ。けど、少し用事を済ませてからね」
そういうと曹操さんは北郷と劉備に向き
「今回の件、貸しにしなくてもいいわ。そのかわり、黄巾党の本部を攻め落とすまで無風に全指揮を譲りなさい」
有無を言わせてくれない声でそう言い放った曹操さんは、そのまま天幕を出て行ってしまいました。
そして最悪な事に私たちの軍の指揮を他軍の人間に取られてしまいました。
これから桃花様が上を目指すのにとんでもない枷がついてしまいました。
愛紗さんも自分たちの非と軍を守ってもらった事があるために何も言えずただ突っ立っているだけです。
私や雛里ちゃんもこれからどうすればいいのか思考の中に潜ります。
しかし、隣で聞こえてきた笑い声に思考が中断されました。
「…………くくく、ふっふっふ、アーッハッハッハッハ」
「はわわ!?無風さん!?どうしたんでしゅか?」
「あわわ、こわいでしゅ」
「…………くく、いや済まない。孟徳が俺に軍の全権を任せるとはな、いいだろう」
その無風さんの言葉に私だけでなく、劉備様の軍の将全員が青くなります。
「…………俺に力を与えたらどうなるか、孟徳に分からせる必要がある。たっぷり迷惑をかけてやろう」
先ほどとは違い、急に弁舌になった無風さんはなんか怖いです。
それに自分の主に迷惑をかけるなんて何を考えてるのか分かりません。
そして私の方を見て、といっても目隠しで目が見えないのに口が笑っていて怖すぎでしゅ!
「…………お前ら軍師で軍略に明るいのはどっちだ?」
「あわわわわ」
「雛里ちゃん!?しっかりして!」
「…………ふむ、鳳雛の方か」
「あわわわわ~!?」
「雛里ちゃん!?」
もう混沌です!何を言っているのか分からないと思いましゅけど!
混沌です~。
「…………鳳統、参考になるかわからんが俺の軍略、しかと見ておけ」
「あわわ!!」
もう雛里ちゃんがあわわで返事をし出しました。
私はどうしたらいいのでしょう。
「…………それから、関羽・張飛」
「な、なんだ!?」
「どうしたのだ~?」
あぁ、鈴々ちゃんだけいつもどおりで羨ましいよ。
「…………今日の夜、天幕で舞台を作っておけ、お前らを今夜でさらに強くする」
愛紗さんが顔を一気に真っ赤にしました。
絶対思ってる内容違うと思いますけど。
「あの~俺たちは?」
その時ご主人様がまだ呼ばれていないのを気にして挙手していました。
「…………お前らは飾りだろう?飾りらしくしておけ」
「「ひどいっ!?」」
ガーン!?という効果音が聞こえてきそうな私たちの主君の反応に何故か少し涙が出てきました。
あぁ、違う意味で私たちの軍終わりみたいです。
up主「おつかれー」
朱里「お、おつかれさまでしゅ~」
雛里「あわわ、朱里ちゃんしっかり~」
up主「え~と、何があったの?」
雛里「実は無風さんに政を叩き込まれまして」
up主「あー、ご愁傷様」
朱里「雛里ちゃん、お母さんが川の向こうで手を振ってる~」
雛里「朱里ちゃん!?しっかりして!そっち言っちゃダメだよ!」
朱里「うふふ~、おかーさーん」
雛里「朱里ちゃーん!」
up主「無風来たぞ(ボソッ」
朱里「ひっ!?すみませんごめんなさい許してくださー……あれ?」
雛里「ひーん、朱里ちゃんよかったよー」
up主「…ちょっと雛にも説教が必要だな(´∀`#)」




