先を見据える者達の思惑
前回のあらすじ
・村の救援
・無風が無茶した
・じゃがりこが美味い!(゜∀゜ )
以上!
================華琳視点================
その報告が入ったのは黄巾党の大規模広域の村襲撃を阻止するべく、村を手当たり次第に当たって賊が襲撃してないか煙の上がり方を確認したり、
村人に聞いたりしていた時だった。
無風の予感が的中しており、いくつかの村は襲われた後だったり襲われてる最中だったりした。
兵にはかなりの無理を強いている。
当たり前だろう、ここら一帯の村を休憩もなしに回るなんてバカでもなければ普通はしない。
けれど、兵の士気は高い。
それは一つに彼らが村を家族を友人を恋人を守らんとせんが為に兵になったのだからだ。
もう一つはここら周辺の村出身の兵が殆どであるからだ。
自分の生まれ育った村が襲われているのに黙って見ている訳が無い。
その気に周りも当てられ、士気が衰える気配すらない。
そして、春蘭・秋蘭が合流した時に元々狙っていた敵の要所が誰か他の軍と戦闘中との報を聞いたのだ。
そしてその軍は黄巾党よりも少ないらしい。
兵法書通りにしか動けない官軍では有り得ない。
名門袁家の線も無くはないが、袁家なら黄巾党よりも人数が多くておかしくない。
幽州の公孫賛は烏丸も相手にしなければいけないため、ここまで出ては来れない。
あらかたここら一帯の勢力を挙げてみたがどれでも可能性が少ないとなると、あとは義勇軍しかない。
義勇軍で名を上げてのし上がるには名をあげるしかない。
つまり衢地にいる敵は絶好の名を挙げられる好機、そんな所を的確に狙って戦闘を仕掛けたのなら、
この先に生き残る英雄の一人になる。
「会ってみたいわね」
「敵の要所で戦っている軍にですか?」
「ええ、これから私の覇道に立ち塞がる敵になるやもしれないわ」
「華琳様が目をつける敵ですか、気になります。な、姉者」
「ああ、だがしかし華琳様の覇道に立ち塞がる敵は、この夏侯元譲が粉砕してくれる!」
「ふふ、ありがとね。春蘭」
従姉妹の変わらない姿にとても心強い。
無風も個人の強さもさる事ながら指揮官としての才もそこそこあるようだし。
とても心強い。
「華琳様、残るは桂花と無風の隊だけです。」
「そう、あの二人なら私たちの行動も読み取れるでしょう。黄巾党と戦っていた軍に接触しましょう」
「わかりました。一応100人程度残しておきます」
秋蘭がそう言って軍の再編成を行う。
別に残しておかなくても気づいてくれると思うのけれど。
まぁ、そんなことはどうでもいいわ。
私の前に立ち塞がることのできる人物なのかどうか、見極めさせてもらうわ。
================無風視点================
「…………なるほど、それで孟徳たちはいないのか」
文若と共に夜営地に戻ってきたが、そこには兵が少数しか居なく、俺たちが一番に着いたとは考えにくい。
そこで思考に潜りかけた所で待機していた兵が、孟徳たちが先に行った事。
そして俺らが攻めようとしてた所に他の軍が戦闘を開始した事。
「前提として黄巾党の要だと知って狙ったのならば、かなり知恵のある人物ね」
「…………そうだな。もしそうなら孟徳の覇道と相対する人物足り得る」
「えぇ、多分かなりの大物になるわね」
二人で出した結論、それは急いで孟徳と合流する。
なぜなら今の孟徳には知恵者が傍にいない。
妙才もそれなりに頭がいいが、一頭地を抜く程ではない。
もしもの危険性に備えるためにも急ぐ必要があると判断したのだ。
「…………面倒だな」
「何言ってるのよ、分かっててアンタは傍にいるんでしょ?それに貴方や私の思ったように動くような人物じゃないわよ、華琳様は」
「…………ふっ。それもそうか」
馬に乗りながら心の中だけでも急ぐ気持ちで隊を進める。
暫くして遠くに軍が見えてきた。牙門旗は『曹』、孟徳の旗と……もう一つ。
『劉』と緑に黒の文字でそう書かれている牙門旗に小さく舌打ちをする。
俺のうる覚えの三国志でも確かにこの頃から義勇軍として立ち上がったのは知っている。
知っているが曹操と会うのはもう少し後だった気がする。
三国志の有名な人物が女の子になっている事から歴史も全く同じという訳ではないとも思っていた。
先が分からない不安、普通なら分からなくて当然だ。
しかし俺は"未来"から来た。
三国の歴史を知っていてもおかしくない、というより少しなら知っている。
知っているからこそ、知らないことへの不安。
未来から過去にやってきた人でなければ分からぬ不安に押しつぶされそうになる。
だが…立ち止まってはいけない。
立ち止まっても事態が好転するわけではない。むしろ悪化する。
徐々に近づいていく。そして見間違いではない『劉』の旗に盛大な溜息が出てしまう。
「何ため息ついてるのよ、さっさと合流して軍の編成するわよ」
「…………俺は遊軍だから、混ざる必要はない。少し休む」
そう言って自分の隊に休憩すると伝え、馬に乗った状態で目を瞑る。
「ちょっと!あんたも手伝いなさいよ、まったく。ああもう!誰かある!」
横で文若が揺すって来るが無視を決め込む、流石に勝ったとは言え比率でいえば大軍を一個小隊で相手したのである、
隊の奴らもそのまま座り込み休憩している。
天幕を張る事すら出来ないほど疲労が溜まっているのだろう。
================桂花視点================
分かっていた。
無風も無風隊もあの戦闘のあと、ほぼ強行軍で休みなく来たのだ。
我軍しか居なければ何も言わないが、他軍がいる状況でコイツを見える位置に居させるのは少々不味い。
コイツ自身から直接聞いていないけど、十中八九コイツは天の御使いだ。
もしその事が他軍に知られると面倒であるし、隠せるのなら隠しておきたい。
呼んだ兵に流琉を呼ばさせる。
流琉ならば無風を動かせるだろうし、私も無風ほどではないが疲れているため、天幕を用意して欲しいからだ。
「桂花様!兄様!ご無事で何よりです。それで御用はなんですか?」
「流琉、無風と私の天幕を準備してくれないかしら。ほぼ休みなくここに向かってきたから疲れちゃったわ」
「えっ!?そうなんですか?わかりました、すぐ準備します」
そういって流琉が親衛隊の兵に指示を出していく。
「ところで流琉、華琳様はもう相手方に会いに行ってるのかしら?」
「あ、はい。旗で分かると思われますが、相手は劉備様と言うらしいですよ。」
「劉備……聞いてるわ。なんでもこの乱世に乗じて旗揚げして最近メキメキと頭角を現してきているらしいわ」
「桂花様の所にはすでに情報が行っているんですね」
そんな会話をしていると向こうから春蘭と秋蘭が姿を現す。
「おお桂花、早かったな」
「ええ、少し急いで来たわ」
「別に急ぐ必要ないだろ、何故急いだんだ?」
「これ以上軍から離れている訳にはいかないってだけよ、それより二人が戻ってきたのなら華琳様も一緒のはずよね?今はどこにいるの?」
「いや、華琳様はまだ劉備の元にいる」
春蘭の言葉に流石に私も無風もピクリと反応する。
「なにやってんのよ馬鹿!華琳様をお一人で誰ともしれない軍に置いていくなんて、あんた一体何してたのよ!」
「誰が猪バカだ!!」
「姉者、猪とは言っていない。桂花よ、これは華琳様から言われた事だ。すぐ進軍の準備にかかる。編成の方は帰ってきて早々済まないが頼めるか?」
「はぁ、華琳様が決めたのなら文句は無いわ。ええ、編成の方はすぐに済ませる。」
「済まないが頼む。それと無風」
秋蘭が急に話を無風の方に持っていく。
「…………なんだ?」
「華琳様から無風が戻ってきたら、軍に入らずそのまま待機しておけと」
「…………了解した」
そしてまた彼は腕を組んだ状態で休憩に入る。
「桂花も編成が終わったら天幕で休んでいてくれ、報告も聞かなければいけないしな」
「ええ、是非そうさせてもらうわ、てかそうしてくれないと体が持たないわよ」
無風をそのまま待機させることに危機感を覚えるが、華琳様が決めたことだ。
反対するにしても真意を聞かなければ賛成も反対も出来ない。
軍の再編を迅速に済ませて、流琉に軽い食べ物を頼み天幕で横になる。
華琳様は何を考えておられるのか、私はどう行動するべきなのか。
その二つを考えながら深い思考の沼に意識ごと落ちていく。
流石に……疲れたわ。
今は脳を休ませて万全の状態で物事にあたらければ。
それが私の役目なのだから。
少女はそのまま眠りにつく。
覇王の明日を支えるため、己が夢を実現させるため。
桃香「up主さん!私の出番まだなの?待ちくたびれたよ~」
up主「次回で出すから、もうちょい我慢して」
一刀「俺は?」
up主「一刀も次回出すって」
一刀「やっと雛に会える。楽しみだよ」
up主「あれ?一刀は雛の事知ってたっけ?」
一刀「向こうは知らないと思うけどな」
up主「そなの?」
一刀「ああ、剣道大会の決勝戦で見てたからな」
up主「なるほど、そういうことですか」
一刀「毎回決勝に上がってるから嫌でも覚えるよ」
up主「ふーん、まぁ次回こそは宣言通りに蜀勢を書くよう頑張る」
一刀「頑張って、応援してる」
up主「(こいつ、男まで落とす気なのか…?)」