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拠点1 季衣√

仕事…普通に片付いた。

てか先輩が助けてくれたので難なくおわりました。

そんなことはどうでもいい。

では拠点ラスト、どうぞ

拠点1 季衣√ 『分かること、分からないこと』




 ボクは兄ちゃんがよく分からない。

 よく分からないというのは、どう言えばいいのかが分からないのだ。

 武術大会では自分の獲物でも無い武器を使って戦ってるのに、一撃も喰らわずボクたちを倒すほどの強者だったり。

 この前の黄巾党襲撃事件の時には態と弱い奴から攻撃を受けたり。

 兄ちゃんは強いのか弱いのか、頭が良いのか悪いのかがボクには分からない。

 ただ、兄ちゃんのせいで流琉が元気を無くしているのは目に見えて分かった。 

 あの事件の報告の途中で流流がいきなり走り出して出て行って、帰ってきた時すごく落ち込んで暗くなっていた。

 普段なら落ち込んでいても、周りの人に心配を心配を掛けまいと明るく振舞うあの流琉が人目を(はばか)らず沈んでいる。

 きっと兄ちゃんに酷いことを言われたんだと思った。

 それからだ。

 流琉が兄ちゃんを避け始めるようになったのが。


「今夜、流琉の所に行ってみようかな」

「ん?どうしたのだ?季衣よ」

「あ、いえ。最近ちょっと流琉の様子が変なので今夜流流に確かめようかなーと」

「うむ、確かに最近の流琉はおかしいな。季衣よ、私の分も頼めるか?」

「はい、春蘭様も心配して下さってありがとうございます」

「何を言っている。仲間の心配をするのは当たり前だろう」

「はい、ありがとうございます」


 仲間…か。

 兄ちゃんは仲間なのか敵なのか、十中八九敵ではないのは流石にボクでも分かる。

 この街の事もそうだし、最初にボクたちと戦った時なんか生身でボクと流流の攻撃を受け止めてたし。

 もしも敵だったら、自分の身を傷つけてまで騙す必要なんてないだろう。

 兵の練兵がおざなりになりそうだったので、今はこっちに集中しようと思い、頬をペチペチと叩く。


 兵の訓練と報告書、今日の担当である昼から夕方までの場内警備を終えて部屋に帰ってきたのが先ほど。 

 お風呂の日が明日なので、水で湿らせた布で体の汗を拭き直し、寝巻きに着替える。

 今頃は流琉も部屋で布団に入っている時間だ。

 普通なら少し躊躇しそうだがボクと流流の仲なので気遣いは無用だ。

 

「流琉大丈夫かな。あれ?兄ちゃん?」


 流琉の部屋に繋がっている廊下に人が立っている。

 かなりの長身、月明かりで照らされても暗く見える服。

 

「兄ちゃんが流琉に何の用なのかな」


 廊下の曲がり角から顔だけを出して様子を伺う。

 普段なら髪の毛ですぐバレるが、今は寝巻きに着替えているので当然髪もおろしている。

 それから1刻くらい兄ちゃんは突ったったままだったが、流琉の部屋の扉が開き、一言二言話したところで兄ちゃんが部屋に入っていく。

 もしかしたらすぐに兄ちゃんが出てくるかもしれないと思って少しそのまま待ったが、出てくる気配が無いので、流琉の部屋の前まで来て聞こえてしまった。


「に、兄様!?わ、わわわ、私まだ心のじゅ、準備が!」

「!?」


 流流の言葉に扉をソ~と開けて部屋を覗く。

 そこには流流を布団に押し倒して覆いかぶさる兄ちゃんの姿が目に入った。

 その光景に驚き、扉を静かに、バレないように閉めて廊下の角まで足音を立てないように行く。

 角まで来たら全力疾走で自分の部屋に戻り、扉に背を預ける形で座り込む。

 あまりに衝撃的な光景に思考が追いつかない。


「はぁ、はぁ。ま、まさか兄ちゃん。いつもあんな事して?」


 もし、もしもである。

 兄ちゃんに何か弱みを握られていつもあんなことをされているから元気が無かったんだとしたら。

 もしも、それが本当なら…


「許さない、絶対に兄ちゃんを許さない」


 だが次の日にその可能性を打ち砕かれた。

 

「…………おはよう」

「おはようございます!華琳様!皆さん!」


 兄ちゃんはいつもどおりの無表情だったが、流琉は今まで暗かったのが嘘のように明るくなっていた。

 正直、もう訳が分からなくなっていた。

 昨日の推測が正しければ今日も流琉は暗い顔をしていたはずだ。

 そしてその後の流琉の行動が更にボクの思考を分からなくさせていた。

 流琉が暗くなる前も兄ちゃんと仲が良かったが、その後はもう本物の兄妹のようだった。

 兄にべったりな妹と、妹を慈しむ兄。

 そんな言葉が最適だと思えるくらい理想の兄妹に見えた。


 何故?


 その言葉が頭の中で連呼するかのように渦巻く。

 もう自分の中では処理できず、華琳様に相談した。


「そうね、ならもう正直に無風に聞いちゃいなさいな」

「でも、それだと嘘をつかれると思うんですけど」

「そんな事で嘘を付く様な小物ではないわよ」


 そう断言する華琳様の顔には自信があった。

 華琳様の言葉を信じて聞いてみたほうが早いかもしれない。

 兎に角、今は止まった思考を進めるために何かしら動いたほうがいいと思い、思い切って兄ちゃんに聞きに行った。


「兄ちゃん、今いる?」

「…………あぁ」

「あれ、季衣?」


 夜、兄ちゃんの部屋に訪れた時に流流も一緒にいた。

 机の上に蜂蜜色の丸いお菓子もあった。

 

「どうしたの?季衣?」

「うん、ちょっと兄ちゃんに聞きたいことがあって」

「…………そうか」


 兄ちゃんは少しの間、目隠しをしたままボクを見ていたが席を立ち湯呑をもう一つ棚から取り出しお茶を注ぐ。

 その間に座ったボクにお茶を出して、兄ちゃんも座りお菓子を口に運ぶ。

 

「これ、流琉が作ったの?」

「そうだよ、兄様に食べさせて貰ったお菓子を再現しようとしたんだけど何か味が違うんだ」


 ボクもその一口大のお菓子を口に入れて食べたが、流琉が作るだけあってとても美味しかった。

 カリッとしているように見えたが食べるとサクサクで、蜂蜜を使っているからかほんのりと美味しい焼き菓子だった。

 

「うーん、ボクはこれ結構美味しいと思うんだけど、何が違うの?」

「うん、もっとね、こう、兄様が食べさせてくれたのは全体的に甘いんだけど、外と中とで甘さの加減が違うのに纏まりのある甘さなの」


 考えただけでヨダレが出そうである。

 

「それも食べてみたいなー」

「兄様、あの菓子ってまだ残ってないんですか?」

「…………まだあるが………少ないからな」


 そういうと兄ちゃんは見たこともない鞄から、これまた見たこともない小袋を取り出して袋を裂いて、流流のお菓子を入れていたお皿に小袋の中身を入れる。

 コロコロと白い粉がついた丸いお菓子が出てくる。

 キラキラとしていて美味しそうというより綺麗と言ったほうが合うお菓子だった。


「…………食ってみろ」

「あ、うん。い、いただきます」


 竹串で刺して口に運んだほうが粉が指につかなくて食べやすいと流流に教わり、そのとおりに口に運ぶ。


「!?」

「ね、美味しいでしょ?」


 ほぼ流琉の言ったとおりであったが、予想以上の美味しさに確かに流琉の作ったのとは違う。


「…………食いすぎると太るからな?」


 そんな兄ちゃんの注意を無視してパクパクと食べてしまうほど美味しかった。


「こんな美味しいお菓子久々に食べたよー」

「…………ならいいが………で、用とは?」

「え、何のこと?」

「…………お前が………用があって来たんじゃなかったのか?」


 そうだった。

 お菓子のせいで用を聞きに来たのをすっかり忘れていた。


「ああ、うん。あのね、この前の事なんだけど」

「この前って、何時のこと?季衣」

「…見ちゃったんだ、ボク」

「…………」

「流琉の部屋に入って……その……流流に覆いかぶさる兄ちゃんの姿」

「み、見てたの!?」


 流琉が一気に顔を真っ赤にして席を立つ。

 立ったはいいがどうしていいか分からず、椅子に座り直して縮こまってしまう。


「でね、黄巾党襲撃の時から流琉が元気無くなって、兄ちゃんが流流に迫っているのを見て、最初は流琉の弱みを握って兄ちゃんが悪さをしt…」

「そんな事、兄様がするはずない!」


 ダンッ!と机が壊れそうなほどの勢いで叩いてまた立ち上がる流流の顔は真剣だった。

 

「うん、もしそうだったら、昨日の朝議の時も流琉が暗い顔をしているはずだから、ボクの考えが違うことは分かったんだけど」

「じゃあ、何が気になってるの?」


 若干不機嫌である流琉が聞き返してくる。


「流琉が暗くなっていた理由が分からないんだよ、ボクは。そこで分からなくなったから、聞きに来たんだ。」

「う、それは、その。」


 流流が不機嫌な顔から戸惑いの顔に変わる。

 そこでやっと兄ちゃんが口を開く。


「…………俺が斬られた事は知ってるよな?」

「うん」

「…………それはな、事件を解決するのに………一番手っ取り早い方法だった」

「……うん」

「…………でも、その方法で流流に心配をかけさせて………真相を知った流琉に殴られた」

「な、殴ってないです!ちょっと頬を引っ張っただけです」

「…………つまりはだな………怪我人に手を出したことを気にしてた………それだけだ」


 兄ちゃんがボクにも理解できるくらいまで噛み砕いて説明してくれた。

 つまり、根本から間違ってたのだ。

 流琉に兄ちゃんが酷いことをしたのではなく、流琉が兄ちゃんに酷いことをしたのを後悔していたのである。、


「なんだ、結局兄ちゃんが悪いのか」

「…………」


 兄ちゃんはボクのその言葉にどう反応していいのか分からないのか黙っていた。

 でもよかった。

 ボクの人を見る目が腐っていなかった。

 やっぱり兄ちゃんはいい人だけど無茶をやるおバカさんで、頼りになるけど不安になるほど心配にさせられる。

 ただ一つ不満があるとすれば、流琉だけ先に大人の階段を上ったことかな。

 ボクの視線に気がつき、尚且つその視線にのせたモノを理解したのか、流琉がまた不機嫌な顔になる。


「言っておくけど季衣?私まだだからね」

「えっ!?」

「そっ、季衣の勘違い」


 あれでどう他の方向に持っていけるのか、逆に知りたいと言うに言えない。

 

「私と兄様だけのひみつだから、季衣でも教えてあげない」

「えー、なんだよー。教えてくれてもいいじゃんかー」


 話について行けない兄ちゃんを、そのままおいてけぼりにして話を進める。

 兄ちゃんがどんな人なのか、まだまだ理解出来ないところや分かってない所も多いけど、悪い人じゃないと分かったので今はそれで良しとしよう。

 これから徐々に兄ちゃんのことを分かっていけばいいよね。


 少し胸の内がすっきりした事を感じながら、夜のお菓子談義は続いてゆく 

 明日になればまた前のように戻るであろう。

 そうして夜は更けてゆく、二筋の流れ星が流れるその夜を。



華琳「私の出番少なすぎでしょ!」

up主「だって季衣ちゃんのお話ですもの、そらそうでしょう」

華琳「そんな理由なんか要らないわ」

up主「いやいやいや」

季衣「そうですよー華琳様。ボクの回なんですから僕が主役でもいいじゃないですかー」

華琳「そうもいかないわ」

up主「何がそんな気に食わんの」

華琳「up主が気に食わない」

up主「それは悪うございましたね!」

季衣「えー?ボクは好きだよ?」

華琳「べ、別に嫌いと言ってる訳じゃ」

up主「雛…早く帰ってきて。俺じゃ二人を抑えられない」

季衣「次回よろしくねー」

up主「ここでいきなりのそれ!?み、皆様、でわまた次回~」

華琳「なんていうぐだぐだ感なのかしら」

up主「お前が言うな」

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