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拠点1 流琉√ (後編)

妄想爆発!

ただ、それだけだ。

拠点1 流琉√(後編) 『妹として、女の子として』 




 あの事件から一週間が過ぎたが私は兄様を避けていた。

 態と怪我したとは言え、怪我人に手を挙げた上に兄様に泣き顔も見られている。

 羞恥と罪悪感で会うことを躊躇っている。

 兄様は既に復帰しており、いつものように数日を過ごしている。

 ただ一つ変わったといえば朝議には毎回参加するようになった。

 華琳様に厳命されて出る様に強制された、と言ったほうが正確なんですが。

 なので朝議の時間はとても居心地が悪いです。

 でも兄様はいつも目隠しをしているので視線を感じることが無いのが唯一の救いでした。

 そして今日も兄様と顔を合わせられずに悲しい気持ちのまま布団に入り眠ろうとしたとき、ふと扉の外に人の気配を感じました。


「誰かいるんですか?季衣?」

「…………」


 しかし、返事がありません。

 そしてその感じが誰なのか直ぐにわかりました。


「もしかして、兄様…ですか?」

「…………あぁ……」

「っ!!」


 兄様の声、不機嫌にも聞こえるその声を聞いた瞬間、体がビクッと跳ねてしまいました。


「か、帰ってください!兄様と話すことなんてありません!」


 あぁ、私のバカバカぁ!

 折角兄様と仲直りできる機会を自ら手放すのよ!


「…………」

「…………」

「…………」

「…………うぅ」


 かれこれ1刻くらい経つのに兄様はまったく帰る気配がしません。


「…夜風は体に悪いです。……入りますか?」


 扉を開けて久々に間近から兄様を見上げます。


「…………あぁ」


 一言頷いた兄様を部屋に招く。


「今はお水しかありませんけど、それでもいいですか?」


 そういうと兄様はフルフルと首を横に振り手を後ろに持っていきゴソゴソと動かし、目隠しを外す。


「っ!?」


 目隠しをいつもしていたために、それを外した兄様を見ると雰囲気が変わって見えて、少し緊張します。

 月が出ていて部屋が明るくなっているために兄様がよく見える。

 久々に間近で見る兄様の目はとても澄んだ黒色をしていて森の奥深くにある湖のようです。

 そんな兄様が肩から下げていた袋を机の上に置いて袋から白い玉のようなものを出した。


「兄様?それはなんですか?」

「…………あぁ、あまり食べ物で許しを請うのは………好きじゃないんだが」

「食べ物なんですか?それ?」


 兄様がその白い玉の一粒を私の口に持ってきて少し恥ずかしかったけれども、それ以上に自分の食べたことのない物への好奇心が勝ち、それを口に運ぶ。

 兄様が指で持っていて食べづらくしていると、兄様が指ごと私の口に入れてきて、流石に恥ずかしすぎて顔が真っ赤になってしまう。

 しかし、次の瞬間そんなことを忘れる位の衝撃が私を襲った。


「美味しい。甘いのに澄んでいるような甘さで、中はサクサクとして外ほど甘くは無いけれど、全体の甘味が均衡を保っていて、すごく美味しい」

「…………ブルードネージュっていう………菓子だ」

「ぶるーどねーじゅ?」


 聞いたことがない名前に首を傾げてしまう。

 

「…………あぁ、ただここら辺では………見ない菓子だがな」

「それはどういうことですか?」

「…………お茶と…………合わないだろう?」


 そう言われればそうかもしれない。

 このお菓子は渋いお茶には合わない。

 もっと澄んでいて深みのある、酸味のある物なんかが合う気がする。

 

「…………すまない」

「へっ?」

「…………典韋に心配をかけるつもりは無かった。」


 お菓子に気を取られて忘れていたが私は兄様とちょっとした喧嘩中みたいなものだったことを忘れていた。

 そして謝りながら兄様はこちらに近づいてきて私を寝具に押し倒し覆いかぶさってくる。


「に、兄様!?わ、わわわ、私まだ心のじゅ、準備が!」


 私は兄様が私に興奮でもしたのかと勘違いして体を硬直させていましたが、そんな訳もなく。


「…………よっ………と」

「きゃっ!」


 覆いかぶさってきた後、私を掴んだまま兄様が寝転ぶように半回転して、寝具に胡座をかいて座り、その中に私をすっぽりと収められてしまいました。

 兄様の体は大きく、私を体に収めて腕を私に×字に腕を交差させられ、逃げられなくなりました。

 逃げるつもりなんてありませんけれど、嬉しいですし。

 そして顔を私のほっぺにくっつけて小さくささやきました。 


「…………すまない………これからは無いようにするから………許してくれるか?」

「は、はい。もうあんな事勝手にしないでくださいね?」


 兄様に鼻を近づけられて、甘えてこられるのはすごく嬉しいんですけど、お風呂に入っていないので臭くないかがとても気になりました。


「に、兄様?私臭くないですか?」

「…………大丈夫………逆にいい匂いする。"流琉"の匂い」

「えっ?兄様、今私の真名…あわわわわ!?それは流石に恥ずかしいですよ!やめてくださいー!」


 兄様が私の顔に顔を近づけるのを止めて、髪の毛に顔を埋めて呼吸する感触に顔に血がきすぎて死んでしまうかと思いました。

 そして離してくれる訳もなく、腕は交差して私を捕まえたまま布団に横になります。

 当然捕まっている私も横になったのはいいのですけれど、こんなに近くにいて顔を見れないのは嫌です。


「兄様、このまま寝るのはいいんですけれど、せめて兄様の顔が見れるように反転してもいいですか?」

「…………あぁ」


 そういうと腕の力を少し弱めてくれて、そのままクリンと兄様の方を向きます。

 

「あっ…」

「…………ん?」

 

 一瞬、ほんの一瞬でしたが確かに笑ったように見えました。

 それはいつもの悪者めいた笑いでも、笑顔を作ろうとした笑顔でもなく、自然な兄様の優しい笑顔だったように見えました。


「もう一度だけ、寝る前に私の真名…呼んで貰えますか?」

「…………あぁ、おやすみ。流琉」

「おやすみなさい、兄様」


 今宵はひと時の夢、明日にはまた典韋の方で呼ばれるだろう。

 真名で呼ばれることは当分無いかもしれない。

 でも、今だけは流流と、女の子として、異性として呼んでもらたこと。

 妹として、寝る前に真名でおやすみと言ってもらえたこと。

 一瞬にも満たないこの幸せを感じながら眠りたい。


 そして夢という沼に落ちてゆく。


「んー、ふわぁぁ」


 なんか昨日はとてもいい夢を見た気がする。

 それに、なんか布団が硬いのに寝心地がいいのは何故だろうと布団を見る。

 真っ黒な布団、最初「こんな布団だったっけ?」と思ったが、視線を上げていくのと顔が赤くなっていくのが比例していく。

 布団ではなく兄様の上で寝ていたのだ。


「あ、あわわわわ」


 言葉を発しようにも言葉にならず、体を起こそうとしたが何かに押さえつけられて起きられない。


「に、兄様!手を、腕を退けてくださいー!起きれないですし、このままだと恥ずかしくって死んでしまいます!」


 兄様は寝ているにも関わらず器用に押し付けている腕は苦しくはないが腕が退けられないほど力が入っている。

 本気でやれば退かせることも出来そうだが、そんな無理をして兄様に怪我をさせたら嫌なのでしょうがなくまた兄様の胸に頭を預けるような形で体の力を抜く。


「まったく、兄様は。…そういえば兄様の寝顔をしっかり見たのは初めてかも」


 そう、いつもなら目隠しをしたまま寝るので、場所が場所なら投獄されてる囚人にも見えそうとか思ってたけれど、こうして寝顔を見ると年齢が私と大差ないようにも見えてきて、

とても不思議な感じでした。

 

「…………んー………典韋?」

「あっ、兄様。おはようございます」

「…………んー………おはよ」


 まだ8割くらい寝ぼけ眼で、窓から差し込む光に目を細めていました。

 いつも目隠しをしている兄様を相手にしているので、それを外している兄様を見ていると、何かしてはいけないようなことをしているような、いけないことをしているように思えてしまいました。


「日の明るさから見て、まだ早朝ですね、朝議までは時間があると思います」

「…………なら………もうすこし………だけ」

「兄様!恥ずかしいです」


 最近では布団から出ると肌寒くなってきたためか、暖まろうと私を軽くギュウウと抱きしめられました。

 兄様に押し付けられるような状態になり、戸惑っていたのも最初だけで兄様の匂いを嗅ぎます。

 兄様からは森の匂いがしてとても落ち着きます。

 土やそれぞれの木、キノコやお日様の混ざったような匂いで懐かしい気持ちになります。

 そうやって二人で微睡んでいろと


ドゴォォン


 と、どこからか何かを破壊した音が響きます。

 その音に兄様が盛大な溜息を吐いています。

 

「さっきの音、まさか兄様の部屋の音ですか?」


 その問いに頷く兄様には面倒の二文字が顔にありありと出ていました。


「えっと、あの。あの音は一体…」

「…………元譲………朝の鍛練」

「あぁ、なるほど」


 分かりたくないほど分かってしまった。

 春蘭様が文字通り突撃したのだろう。

 兄様に同情する。

 

「…………起きるか」

「…はい」

 

 兄様も大変そうですねとは言わないでおく。


「ふーん、二人同時に来るなんて…ねぇ?」


 朝議に遅れまいと急いできたのだが、冷ややかな目で華琳様にみられる。

 もしかして、もうバレてたりすのですか?


「朝、春蘭が無風に鍛錬を申し込んだときには部屋にいなかったって聞いてるけど、それが流流と一緒にいるなんてねぇ?」


 華琳様の目から温度が無くなっていき、部屋の温度が下がってゆく。


「…………謝りに行ってたんだ………お前もそう言っただろ」

「そうね、言ったわね。でも理解と納得は違うのよ?無風?」

「…………ふっ」

「…なによ」

「…………そんなだと………典韋に抜かれるぞ」

「なっ!?」

「ふぇっ!?」


 いきなり頭を撫でられ、しかも爆弾を投げ込みましたよね兄様!?

 それからはもう予想通り、華琳様は悔しそうに兄様を睨みつけ、あとからやってきた桂花様と春蘭様に絡まれ、朝議をやっている流れではありませんでした。

 でもそんな空間がとても楽しくて幸せで、いつまでもこんな幸せを感じていたい。

 願わくば、もう少しだけこの幸せが続きますように。



季節が変わりゆく空を見上げながらそう思う流流の瞳には悲しげな影が映るのを誰も見ていない。



流琉「up主さん!兄様とのあれは書かなくてもよかったんじゃないですか!?」

up主「いいじゃない、いいじゃない。可愛かったじゃない」

流琉「恥ずかしくて顔から火が出そうですよ!」

up主「それ以上は書かなかったんだからいいじゃないかー」

流琉「それ以上は絶対ダメです!」

up主「濡れ場も書きたいけど、それだと18禁だしねー」

流琉「up主さん、一回死んでみますか?」

up主「やだよ!(やりすぎた)」

流琉「まったく、up主さんは」

up主「まぁまぁ、ということで次回が拠点1ラスト、季衣√頑張りたいです」

流琉「季衣が兄様と交流深めてるの見たことないんだけどなー」

up主「それどころか、最近見てないような気がするんだけど、あの子」

流琉「この前の武術大会でのことは?」

up主「あれカウントしていいんかな、まぁ、また次回お会いしましょう。でわでわ~」

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