拠点1 流琉√ (前編)
まさか流琉も前後分かれるとは思わなかった。
すみません、妄想が爆発しました。
あと、話のどこかで書いたかもしれませんが、
1刻は30分、1里は500mの計算です。
拠点1 流琉√(前編) 『妹として、女の子として』
どうも皆さん。流琉です。
私は今厨房で兄様の為の朝食を作っているところです。
あ、兄様というのは勿論、無風さんの事です。
華琳様の配下に加わった時に季衣が兄様を会った時と同じように兄ちゃんって呼んで失礼だと思ったのですが、兄様が好きな呼び方をすればいいと仰ってくれたので私も兄様と呼ぶことにしました。
自分よりも年上でもありますし、何故か無風さんと呼ぶのが恥ずかしくって兄様と呼ぶようにしたのですが、これがまた何故かしっくりくるのが不思議でした。
最初の頃は兄様の伝えたいことを理解するのがすごく大変でした。
口数は少ないし普段から目隠しをしているので目線で何を見ているのかすら分かりません。
それなのに歩いてても柱にぶつかる事は無いし、人が来ても普通に避けるしで目隠しをしていない人の様に動いているので実は見ているのでは?と疑った時もありました。
それでも半月くらい兄様の後を付いていったりして行動を共にするようになって、今では大体のことは理解できるようになりました。
理解したというよりも「こうして欲しいのかな?」程度に感じることが出来るようになった、と言うべきでしょうか。
兄様のことが分かるにつれて、とても兄様の現状が危ないということも分かってきました。
すごく優秀そうに見えて兄様、かなり不真面目ですし自分のことに無頓着ですし、要するにかなりのズボラなんです。
朝飯は適当で時にはお茶だけ、朝議は気分が乗った時にしか来ない、昼からお酒を飲んで庭でお昼寝、夜にはふらふらと城内を歩き回ったり城壁に登って一晩中おこにいたり等等。
私が見てないと何時か体調を崩してしまいます。
何より一番酷いのが寝てる時です。自分で目を覚まさない限り絶対に起きないんです。
「よっと、これで完成。今日もいい出来栄えに仕上がってるかな?」
誰に言うでもない愚痴やら不満やら心配を心の中で呟きながら炒飯を作って兄様の所に向かう。
「兄様ー。朝食出来ましたよー。入りますよー」
「…………んー………ぐぅ」
「もー、折角起きたのに寝ないでください!ほら顔を洗ってきてください。炒飯覚めちゃいますよ」
「…………ん………」
寝起きの兄様はいつもこんな感じに一言で返事をします。
口を開くのも億劫なのは分かりますけど、返事くらいしっかりと返して欲しいものです。
「…………典韋………おはよ…」
「はい、おはようございます。炒飯作ってきたので食べましょう?」
「…………ん、ありがと………」
「わ、きゃ!もう、いきなり頭撫でないでください!びっくりするじゃないですか」
わしゃわしゃと豪快に頭を撫でてくる兄様、兄様の手はとてもゴツゴツしているのに撫でられると気持ちよくて好きです。
暫く頭を撫でて貰っていたが、折角の炒飯が冷めては勿体無いと手を離してしまった。
炒飯を温かい内に食べてもらいたいけど、もう少しだけ撫でてもらいたかったという相反する気持ちを抱える。
「今日は朝議に参加するんですか?」
食べて口をモグモグさせながらフルフルと頭を振る兄様にため息をつきながら
「ダメですよ?ちゃんと朝議には参加しないと、また桂花様に怒られますよ」
「…………もともと客将………だし……」
「そうですけど、今日の予定とか外の状況とか知っておいた方がいいですよ」
「…………発言権………ないし」
「華琳様に進言すれば許してもらえそうですけど?」
「…………周りに………苛められるし………」
「そんな事言う人は私が許しません。それにそんな事気にしないじゃないですか兄様」
「…………ご馳走様………美味しかった………」
「お粗末さまでした。…ちゃんと出てくださいよ」
「…………了解………」
食器を片付けるために厨房に行こうと部屋を出る前にジト目で釘を刺す。
だが、あの反応は多分行かないだろう。
ため息をしつつ、食器を片付けて玉座の間に向かう。
「流流です。遅れて申し訳ございません」
「いいえ、まだ朝議は始まっていないわ、流流。おはよう」
「おはようございます、華琳様」
私以外の主要人物は揃っていたので、入った時に向けられる視線に少し緊張する。
「ところで流流、あの受精液製造人間は一緒じゃないの?」
「ええ、先ほど朝食を兄様に届けに行った時聞いては見たのですが、多分来ないと思います」
「まったく、朝議に参加しないで何をしてるんだか、あの孕ませ人間は」
「あはは……」
今日も桂花様は変わらないと思いながら乾いた笑いをするしかなかった。
そして朝議が始まって少しした所で一人の兵士が慌てた様子で玉座の間に入ってきた。
「ほ、報告しますっ!」
「何事だ!今は朝議の時間だぞ!」
「夏侯惇将軍、実は先ほど街に潜伏していたと思われる黄巾党の連中が人質を取って近くの屋敷に立てこもりました!」
「なにっ!?それは本当か!担当地区の警邏兵は何をしていた!」
「それが運悪くその地区の警邏兵は無風将軍の部隊ではなく、育成部隊の実習中の兵だったもので…」
「チッ!で、敵の人数と人質の人数は!」
「敵が30、人質が20程です!」
玉座の間に緊張が走る。
兵は一通りの仕事ができてやっと一人前になれる。
だから警邏も仕事のうちで朝から昼の一番事件の起きにくい時間帯に実習をさせる。
その時間に事件が起きないよう他の兵も入れていたはずだが穴があったのだろう。
しかも、最近では陳留がここらで一番安全という噂があったが故に、傷を受けた時により酷く見えてしまう。
そして人数が多すぎて救出しても全員が無事とはいかないだろう。
こちらの被害は免れない。
「ともかく直ぐに動きましょう。刻一刻と事態が悪化するだけよ。春蘭、秋蘭と共に部隊を編成して見えないように兵を配置してちょうだい」
「「はっ!」」
華琳様が指示を出して全員が動こうとした時、また兵士が報告をしに来た。
「報告します!」
「今度はどうした!賊からの要求か!?」
「いえ、たった今、無風将軍が現地にて賊の討伐に成功!人質18人全員無傷で保護いたしました!」
その報を聞いて全員が安堵の息を漏らす。
しかし、次の瞬間に身も心も凍りついたような錯覚に襲われた。
「ただ、人質救出の際に残党により大怪我を負いましたが……」
その言葉に私は地面に倒れるような感覚が襲ってきて、次の瞬間走り出していました。
信じられない!
祭りの時に反則的な実力を見せて全員を圧倒する兄様が大怪我をするなんて有り得ない!
城門に向かって走り、帰ってくる兄様の部隊の中に黒一色の人を見つけました。
兵士二人に抱えられて胸のあたりが血で赤黒くなっていました。
「兄様!兄様ぁ!」
私は兄様に抱きついて顔を見上げました。
とても苦しそうな表情で額には玉のような汗をかいていました。
「気をしっかり持ってください!兄様!死んでは駄目です!」
「…………典韋………か」
「兄様!今、医務室に向かってます!」
兵士さんたちは兄様に教えられていたのか、医務室に着くなり兄様や他の負傷者の手当を素早く始め、私もお手伝いをしました。
結果から言えば胸の傷口は浅く、血も大量に出ていましたが見た目ほど酷くはなく。
後から来たお医者様の話では3日もすれば治るとの事でした。
「…兄様、何故このような事になったのですか。兄様の実力なら賊にかすり傷をつけられる事も出来ないですよね」
「…………」
「兄様、何故黙ってるのですか?人質を守るためとは言え兄様なら、自分も人質の方も無事で残党を倒すことだってできるはずですよね?」
「…………」
兄様は全然口を開いてくれません。
そんなに私のことが信用できませんか?
そんなに私に心配かけさせたくないのですか?
「教えてあげましょうか?流琉?」
「…華琳様」
そこに華琳様が桂花と一緒に入ってきました。
「華琳様は何か知っているのですか?」
「ええ、というか流琉が兵の報告の途中で急に走り出したから、あなた以外皆知ってるわ」
「えっ!?そうなんですか!?」
正直あの時は兄様の安否以外頭になかった。
それが恥ずかしくて顔を赤くして俯いてしまう。
「で、聞きたいの?流琉は」
「うぅ…、はい」
「聞いたら多分怒るわよ?」
「怒るような内容なんですか!?」
「えぇ、実際私は無風を怒りに来たのだから」
華琳様が優しい笑みから凍えるような鋭い視線で無風を睨みつける。
「無風が怪我したのはね、策なのよ」
「策?」
「えぇ、先ほどの事件のせいでもし対応が遅れたらどうなっていたか、分かる?」
「…いえ、すみません。分かりません」
「この街が黄巾党が暴れているこのご時世、他と比べてとても平和が保たれているのは知ってるわね?」
「はい、それは。噂になるほどですから」
「ええ、そうね。噂になるほど平和よね、それがいけなかったの」
「?」
私が平和で何がいけない事なのか理解できないって顔でいると、華琳様は一瞬表情を暗くしてからため息を一回ついて
「平和であったが故に、民は『この街なら絶対安全』とそう思う。その安全と思っていた街で事件が起これば他の街で事件が起こる以上の風評被害が起こるのよ」
「そんな、平和だから絶対安全だとは限らないんじゃ」
「そうね、でも民はそう『思う』のよ、そこで今回無風が対策してくれた」
「…………この怪我………だ」
「そう、無風が民を守って怪我をしながらも人質を救助することで民は『絶対安全な街』から『安全でないが将軍が命を賭けて守ってくれる街』に意識を背けることができた」
「じゃ、じゃあ兄様が怪我をしたのは……」
「…態と怪我をしたのよ、一歩間違えれば本当に命を落としていたでしょうね」
「…………」
兄様はそこまで計算して自分の命と風評を天秤にかけ、風評を取った。
パァン!
私が兄様のほっぺに張り手を入れたのが部屋中に響く。
「馬鹿!なんでそんな事で命を賭けるんですか!死んだら終わりなんですよ!兄様が培ってきた物が全部無くなるんですよ!」
「…………全部は………無くならない」
「私、言いましたよね!無茶しないでくださいって!もしものことがあったらどうするんですか!」
何時か兄様が私と季衣の攻撃を生身で受けた時の事を思い出す。
「無茶して、死んで、兄様はそれでもいいのかもしれない。でも、残される側の気持ちも考えてください!残される…私の…気持ちも………考え…て……っ!」
気がついたらまた走り出していました。
そして部屋に戻ってその日はずっと部屋に引きこもっていました。
================無風視点================
典韋には申し訳ない事をしてしまった。
今の心配か今後の心配かを考えて、出した結果が今後の心配を取ることにした。
だから賊が残っている事が分かっていながら態と反撃のチャンスを与えて相手の攻撃を受けた。
それを見たウチの連中がその賊を半殺しにしてしまったのは、利用した側としては申し訳なく思ったが、元々そんなことしなきゃいいのにと思うことにした。
ただ、今まで身の回りの世話をしてくれていた典韋には絶対怒られると思っていたが、怒るでなく、いや怒っていたが、まさか泣くとまでは思っておらず、更に罪悪感が増した。
「あんたは後の事を気にしないで全員制圧すればよかったのよ」
文若がそう言いながら近づいてきて謝ろうとしたら
パァン
典韋にやられたのとは反対のほっぺにビンタを食らった。
「ふん、いい気味よ」
そう言って帰っていく文若にすまんと小さく謝る。
「ふふ、桂花も可愛いわね」
「…………孟徳は………怒らないのか?」
「怒っているわよ?正直に言うと少ない民を失うよりあなたを失ったほうが多くの民を失うでしょうし」
「…………民に………大も小も無いぞ」
「そんな事わかっているわ、それに私まで怒ってどこを叩けばいいのよ。頬は両方ともやられちゃってるし」
クスクス笑っているが目が笑っていない。
許しはしないが先の二人に免じて引いてくれたのであろう。
「…………すまない……」
「それは流琉に言ってあげなさい、今のところ貴方に一番懐いているのは流流なのだから」
孟徳はそう言って医務室を出てゆく。
後日、怪我が完治して孟徳に朝議への強制参加と顔面に強烈な一撃を貰った事はまた別の話
流琉「私と兄様のお話なんて書いて喜ぶ人なんているんでしょうか?」
up主「私は好きですよ?」
流琉「up主さんは雛さんとも仲がいいですよね」
up主「ああ、雛とは仲いいよ、良くお酒を一緒に飲むし」
流琉「まるで現実にいるみたいな言い方を」
up主「まぁ、リアルの人物が切っ掛けで生まれたのが雛だからな」
流琉「そうなんですか?」
up主「うん、そいつと話していた時に思いついたからね」
流琉「ある意味その人がりあるの兄様ですね」
up主「そだねー」
流琉「そういえば後編は?」
up主「頑張ってるけど」
流琉「けど?」
up主「なんか少女漫画っぽいイメージになってる」
流琉「up主さん、女性視点から見るの好きですよね」
up主「どちらの視点からでも楽しめるよ」
流琉「そういうのなんて言うんでしたっけ?ばいせくしゃ…」
up主「やめれ!これ以上はあかん。皆様でわでわまた次回ー」




