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拠点1 春蘭√

春蘭√ということで、春蘭のキャラを考え、考え事をしてもイマイチ容量を得ない思考をするというテーマで書きましたが、難しいものですね

拠点1 春蘭√ 『足りないものと欲しいもの』




「くっそ、今日も負けた。何故だ!」

 早朝の鍛練を終わらせて、今は朝議の前の剣の手入れをしている。

 私はここ毎日無風と打ち合いをしているが一向に勝てる気がしない。

 しかもアイツが少し本気を出したのですら最初に会った日のみ。

 それ以来、無風は鍛練で試合をする時は目隠しを取って、私と同じ大剣で相手をしてくる。

 手加減されているのが頭の悪い私でさえ分かる。

 悔しいし、私の武を侮辱されて全身の血が沸騰しそうだ。

 しかし、そこまで手加減をされている相手にすら敵わない。

 

「私は………弱いな」


 そんな私が華琳様の第一の矛に居ていいのだろうか。

 彼奴(あいつ)こそがその座に就いた方がいいのでないだろうか。

 しかし、彼奴は客将の身分から正式に華琳様の軍に入ろうとしない。

 それが何故だか分からない。

 正式に軍に入ればもっと融通が効いたりするはずだ。

 そんな疑問を持ちながら剣の手入れを済ませ、朝議に遅れてはいけないと玉座に急ぐ。


 玉座に着くと、まだ数人しか集まっていなかった。

 華琳様・秋蘭・桂花・季衣・流流、そして無風と数人の文官たち。

 無風はつい最近朝議に参加するよう言われているらしい。

 ただ、発言権は無い。

 いつもどおりの真っ黒な姿に真っ黒な目隠しをしていて腰には木刀を吊るして少し離れた所で腕を組み柱に体をあずけ、一見すると寝ている様に見える。


「春蘭、遅かったわね。」

「すみません、華琳様。剣の手入れに時間がかかってしまいました。」

「そう、なら構わないわ」


 華琳様とそのような話をした後、秋蘭の隣の席に座る。

 しばらくして武官や文官がゾロゾロとやってきて朝議が始まる。

 無風は未だに柱に寄りかかって微動だにしていない。

 何故なのかその姿を見ているとイライラしてくるので別の事を考えて気を紛らわせることにした。

 そういえば無風は徒手空拳や大剣とあの細い頼りなさそうな木刀の他にも使える武器はあるのだろうか。

 例えば華琳様の絶や秋蘭の餓狼爪(がろうそう)、季衣の岩打武反魔(いわだむはんま)など、どれも本人達と同じぐらいの実力で戦えるのだろうか………


「春蘭!!」


 いきなり華琳様に真名を叫ばれて驚いて意識を考え事から切り離す。


「は、はい!なんでしょうか華琳様!」


 何か粗相を犯してしまったのかと華琳様を見ると何か怪訝そうな顔だった。

 怒られると思っていたばかりにどうしていいのか分からなかった。


「朝議が終わったのに春蘭は何を考えていたのかしら?」

「えっ?…あ。」


 華琳様の言葉に周りを見回すと玉座の間に残っているのは私と秋蘭、華琳様と季衣だけだった。


「あ、いえ、何でもありません、華琳様。気にしないでください」

「それは私たちには言えないことなのかしら?」

「いえ決してそういうことではありません。ただ…」

「ただ?」

「華琳様や秋蘭、季衣は私が朝議の前に無風と一緒に鍛練をしているのをご存知ですか?」

「えぇ、一応はね」


 華琳様の言葉に秋蘭と季衣も頷く。


「それでですね、鍛練の際に彼奴は私と同じ大剣でやり合うのですが…」


 その言葉に全員が驚く、相手と全く同じ土俵に立って自分の得意武器で無いものを扱って戦うなど死に急ぐようなものだ。


「そこで、無風が私と鍛練する時には大剣だったように、華琳様や秋蘭、季衣と戦う場合も全員の得意武器で戦うのかなぁと、ちょっと考えてただけです、すみません。」


 何故か説明してるうちに華琳様の目がだんだんと細まって部屋の温度が下がったように感じ、何故か謝ってしまう。


「確かにそれは気になるわね。」


 少し考える素振りをして華琳様がニヤリとした顔で何かを思いついたらしかったが、その日は何事もなく終わった。

 そして華琳様の企みは次の日の朝議によって明かされた。

 いつもどおり桂花が朝議の進行をして全員の予定の確認は全部済み、それでは朝議をこれで終了しますと言いかけた桂花を華琳様が止めた。


「待ちなさい桂花」

「華琳様?何か他にありましたか?」


 昨日のことを何も知らない桂花は考える素振りをするが、華琳様が頭を振って否定する。


「ちょっとね、こう毎日仕事仕事だと疲れるでしょうし、最近は黄巾党も大人しい。だからここでちょっと息抜きを兼ねた催しをしようと思うの」


 そう言って華琳様はいつものように柱に寄りかかっていた無風の目の間に行き、くるりと半回転してこちらの全員に向かって


「催しは3日後に行う。…そしてこの無風に勝利することが出来たものには望むものを賞品とする」


 その華琳様の言葉に皆がざわめき、無風も目隠ししている頭をカクンと傾ける。

 

「勝負方法は武術、囲碁、将棋の3つとする。」


 その言葉に文官は囲碁か将棋か、どうやって勝つかを考え静かなのに対して武官の方は客将ごときに負けるものかとお互いに激励している。

 その武官文官を横目に華琳様が無風に条件を付け足す。


「無風には手加減として相手と同じ武器で挑むこと。いいわね?」


 無風の周りに集まってきてる私たちだけに聞こえるくらいの音量で喋る。

 無風は盛大な溜息を吐きながら、全種類の武器を揃えると言って街の鍛冶屋に向かう。

 流流がそれについて行き、桂花は最初反対したが華琳様に「じゃあ、桂花は不参加なのね?」と言われると、策を練ると言い、すぐさま部屋に戻った。

 春蘭は乗り気ではないようだが、奴の弓の腕を見るには丁度いいかなどと言い笑っていた。

 そして何故私がこんなにも皆を冷静に見ているのかというと……分からないのだ。

 私の疑問から始まって起きたこの催しで無風の実力の一端が見えるし、勝てれば無風より強い事が証明できて華琳様から褒美も貰える。

 ただ、そこでまた一つの疑問が沸く。

 それは『本当に私の欲しかった物』なのだろうか。

 無風に勝ちたい、それは本当だ。

 華琳様からの褒美も貰いたい、それも本当。

 しかし、自分の本当に望む物がそれなのかと聞かれたら、心にモヤがかかって良く分からなくなる。


 考えることが下手な私があまり考え事をしても答えが出せないのは自分がよくわかっている。

 だから思考をそこで中断させるかのように頭を振り、兎に角どうやって無風を倒すことができるかに専念することにした。

 華琳様が決めたのは試合方式と無風への条件のみ、細かい事項は後々説明を受けるだろうが、そこまで気にしなくても大丈夫だろう。

 考えるべきはどう戦うか、だ。

 今までの鍛練では勝てたことは一度としてない。

 そこに隙を生む事ができれば勝機はある。

 今まででは大剣だけでの攻撃で負けてきた。

 ならばそこに体術を組み込んで戦えば、一瞬の隙を作ることができる。

 できるが、とんでもない博打でもある。

 そこで回避されれば、次からは予測されて回避されるだろう。

 一度きりの好機を物にできるか、正直無理かもしれないとそんな考えが頭をよぎった。

 弱気になってしまうのは人間の本性だから仕方がない。

 『どうせ』また負けるさと『どうせ』勝てっこないと、私の中のもう一人の私が囁きかけてくる。

 だが……『もしかしたら』勝てるかも知れない、『もしかしたら』上手くいくかもしれない。

 私は今までその『もしかして』を確実にするために日々頑張ってきたのだ。

 上手くいく、上手くいかない訳がないと自分を信じて鍛錬を始める。

 『もしかしたら』を確実にするために…


 催しの祭り当日、今までの暗くなっていた話題を、鬱憤を吹き飛ばそうとするかのように盛大に祭りは行われた。

 祭りは3日をかけて行われることとなった。

 初日は無風の意見が採用されて、街の横でそれぞれのお店の人が出店を開き、道を作るかのように左右に出店が出され、さながら小さな街みたいになっていた。

 無風はラーメンの麺を改良した麺で焼きそば?なる物を作っていた。

 あれは美味かった。華琳様も喜んでいたし、季衣も美味そうに大量に食べていた。

 続く2日目は文官と無風の囲碁・軍人将棋への挑戦と勝ち抜き式の試合の二つだった。

 無風に挑戦した文官は続々と負け、私には分からなかったが桂花が将棋でいいところまで行ったそうだがそれでも負けて、無風が張り手を食らっていた。

 流石の私でも無風に同情したな、あれは。

 勝ち上がり式では言うまでもなく桂花が優勝した。

 そして最終日の今日、武官の武術大会が開かれた。

 これは無風への挑戦だけですごい数だったらしく、勝ち抜き戦は取りやめとなった。

 試合の注意事項としては、刃等の武器は刃を潰す事と場外に落ちたら無条件で負け、降参は認めるくらいのものだった。

 勝敗は、先に武器を相手に一当てした方の勝利というものだった。

 そして下級・中級武官の殆どが我先にと無風に勝負を挑んだが未だ誰も無風に勝利していない

 

 主要の人物からは先ず季衣が出場した。

 対する無風は季衣の岩打武反魔の半分以下の大きさの鉄球であり、普通なら舐められていると思われる。

 現に下級武官は侮辱だなどの声を挙げている。

 しかし試合が始まると同時に侮辱ではないことを悟る。

 季衣の武器は大きく当たれば相当なダメージが入るが振りが大きくなる。

 無風の鉄球はダメージもそれなりにはあり小回りも効くが、力負けしてしまう。

 しかしそれが普通であればの話である。

 無風は縦横無尽に鉄球を高速で振り回して季衣に襲いかかる。

 圧倒的な力押しと物凄い速度で迫る鉄球に為す術もなく場外に叩き出される。

 

 次に流琉が出場したが、無風は流琉とほぼ同じ葉々だった。

 いい勝負になりそうかと思われたが予想を超えた事を無風はしてくれた。

 流琉が葉々をこっちに向かって投げるも、無風も葉々を投げ、武器同士を絡ませたのだ。

 何をしているのかと一瞬思った直後、無風は相手の武器ごと流琉を引っ張り上げて宙に投げ出された流琉を受け止める。

 何が起こったのか理解していなかったがお姫様抱っこされていることに気がついた流琉は顔を真っ赤にしてアウアウと固まってしまった。

 そんな固まった流琉をそっと場外に立たせて勝利した無風を皆が皆、驚いて目を見開くことしかできなかった。

 

 流琉の次には秋蘭が出場した。

 あまり乗り気でないのか普段通りに無風と喋って、暫くしてお互い距離を取り合い弓を構えた。

 そして試合が始まると同時に秋蘭が矢を三本も立て続けに連射する。

 それを軽々と全部避けて、無風も矢を放つ。

 今回はまともだと思ったが、無風の矢が地面に着弾した時にそれは起こった。

 地面が爆発したのだ。

 正確には地面に矢が半分埋まって、土が盛り上がったのである。

 そのすぐ横に回避した秋蘭が目を丸くして矢を見ている。

 後から聞いた話だが、秋蘭曰く矢が鉄で出来ていたそうだ。

 それを普通の矢と同様に放つ無風は人間なのだろうかと正直後から疑問に思ってしまった。

 話の続きだが、そんな矢を受けてしまってはひとたまりもないと判断した秋蘭は降参した。


 信じたくないがその次に現れたのが華琳様だった。

 私も参加するわという爆弾発言をして、もし御身に何かあったらどうするのですかと桂花に止められたが、それを大丈夫の一言で一刀両断して出場なされた。

 無風は華琳様の絶とは比べ物にならないほど大きい大鎌だった。

 棒の長さだけでも彼奴の二倍はある。

 そして試合でもその長さを活かして寄せ付けず、かと言って懐に入れば体術で応戦する臨機応変の戦い方に華琳様も負けてしまった。

 

 そして最後に私が無風と相対する。

 獲物は鍛練の時と同じ大剣だった。


「今日こそはお前に勝つ!」

「…………」


 無言でいる無風は、今日初めてその目隠しを取った。

 その行動に主要人物の殆どが驚きの表情をする。

 無風は目隠しをしていたほうが強いという事を知っている。

 無風が目隠しを取るということは手加減すると同義語の認識なのだ。


「やはり今日も目隠しを取るのだな」

「…………」


 無言で深い森の闇のようにすんだ目だけがそういうのなら俺に勝ってみろと言っているかのようだった。


「…ならお望み通り倒してやる!」


 そう言って試合が開始され5合くらい打ち合ってから、一瞬の好機が訪れた。

 私の懐に入って来たのである。

 それを見逃さず、ギリギリなで引きつけて肘打ちを顔面に入れる。

 いや、入れたと思ったが回避されたのである。

 やられる!そう思い、奴の攻撃を間に合わないと思っていても防御しようとする。

 そして防御は"間に合った"……何故かというと目の前に無風はおらず、奴は場外に転んでいた。

 そう、まるで"私の肘打ちが入った"かのように飛ばされた形で場外に転んでいた。

 次の瞬間、会場が割れんばかりの歓声に包まれた。

 体中の血が本気で沸騰するかのように熱くなり、剣を持つ手に力が入る。

 倒すべき敵同士だった者に勝ちを相手から渡された事への怒りで我を失いかける。

 しかし祭りに支障をきたしてはいけないし止まらない。

 真夜中、街のドンチャン騒ぎを遠くから聞きながら玉座の間により華琳様から褒美を貰える事になった。


「春蘭、無風に勝てるなんてすごいじゃない。賞品を与えるわ、何がいいの?」

「……華琳様、私は本気の無風との勝負を所望します」

「えっ!?」


 私の賞品の内容があまりにも予想を外れていたらしく華琳様が無風を見る。


「…………まぁ、多分そうだろうとは思った。」


 無風の返答にも皆驚いた。

 何故分かっていたのか…と


「華琳様には丁度位置的に見えなかったのかもしれません。私の肘打ちで無風を場外に飛ばした。けれど実は肘打ちは当たっていなかったのです」


 私の言葉に少し理解が遅れたが、その意味を理解した皆は物凄い怒気を無風に放っていた。

 侮辱するにも程がある。

 全員がそう思っているのだろう。


「……いいわ、春蘭。その褒美、確かに。……いいわよね、無風?」


 華琳様が拒否権なんて無いがそれでも一応の了承を問うと言った目で無風を睨む。


「…………あぁ、もちろんだ。もうここでいいよな。他のやつには見られたくないし」


 そう言って無風は目隠しを取る。


「無風っ!!!!!」


 その無風の行動に華琳様が激昂する。


「…………孟徳、別に俺は手を抜いていない。そこまで信用できないか?」

「ええ、今のあなたは全く信用できないわ。」

「…………そうか、だがこちらも手を抜いてる訳では無いから外したまま行かせてもらうぞ」


 そう言って試合の時とは全く違う、ダラリと剣を持っている自然体な状態で私を見る。


「…………もう本気を出しているぞ、かかってこい」

「ふん、言われなくても」


 そう言って七星餓狼を脳天に向かって叩き落とすが、剣が彼奴の頭に触れるか触れないかという時点で無風の体が煙のように消えてしまった。

 彼奴の攻撃に備えようと後ろを振り向いて防御の構えを取ろうとした時には、目の前には地面があった。

 自分でも気づかぬうちに叩き伏せられて首に剣をつけられ1合と持たず敗北した。


「…聞いてもいいか?」

「…………あぁ」

「何故私と戦う時に目隠しを毎回外すのだ?」

「…………元譲の目を見るためだ」

「目を?」

「…………そうだ。目は口ほどに物を言う。元譲は狙うところを必ず目で見てから狙ってくるからな」


 その言葉に全員が絶句する。目隠しを外していたのが本当に手加減でなかった。

 その思い込みこそが無風の最大の武器だったのだ。

 

「…………ちなみに………当たってた」

「はっ?」

「…………剣の柄が………当たってた」


 彼が言うには肘は当たってなかったが剣の柄が当たって本当に突き飛ばされていたという。

 ただ、私が肘打ちで当てれなかったから態と負けたように見えて後で再戦させられると予測していた。

 だから分かっていたのだ。

 そんな自分の勘違いに盛大に笑ってしまった。


「そうか、私に足りないものは"冷静さ"だったのだな、あっはははははは」

「…………そういうことだ。…………"見事"だ」

「っ!?」


 無風に見事と言われ、胸の内が満たされたような感覚でいっぱいになる。

 そして悟った。

 私が本当に欲しかったものは彼奴に認められる事だったのだ、と。


 自分に足りないもの、自分が欲しかった物、その両方を見つけられていい日だったと秋蘭に部屋まで運ばれながら思った。


最近、無風の喋り方が流暢すぎるように感じてキャラがぶれてきた気がするので、ここで気を引き締め直して行きたいと思います。

次回は秋蘭√かな?

正直秋蘭について何書けと!?状態ですので更新は遅いかも?

分かりませんができるだけ早く載せられるよう頑張ります。


でわでわ、次回までアディオス!

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