拠点1 桂花√
※このお話ではグロい表現があります。
あと桂花の好感度が一気にあがります。
それでも良いという方は楽しんでいってくだしあ
拠点1 桂花√ 『王佐の才を持つ者』
私はアイツが気に食わない。
言わなくても分かるだろうが無風のことだ。
私は自分の命を賭けて華琳様に認めてもらった。
それは華琳様がそういった有能な人物が好きだと知っていたから、あえてその方法で私の能力を見せて華琳様に認めてもらった。
なのにアイツは何をするでもなく華琳様に拾われて客将とされ、しかもアイツは知らないだろうが重鎮と同等の権限を行使することを華琳様自身許可されている。
まぁ、それだけの武を持っている訳なのだが、私が許せない、というか見逃せない事が一つある。
「アイツの街に関する改善案、この私でさえ思いつかなかったような大胆且つ効率的な案を思いついたこと」
そう、アイツの改善案は革命的だ。
この方式を取れば一体どれだけ利益が上がるか分からないくらい上がる。
政にも精通し、武にも秀でている。
まさに文武両道の秀才である。
なのにアイツは客将から正式に華琳様の軍に入らず、武では春蘭、知では私に一番を譲っているような状態である。
舐められているとそう思った。
この前の戦から帰ってきた時もそう思った。
もうそろそろ頃合だろう、アイツにこの前の真相を聞くと同時に知では私が上だと分からせてやる。
思ったら即行動と言わんばかりにアイツの部屋に向かったが、部屋はもぬけの殻、華琳様の所かとも思ったが、華琳様は休暇とは名ばかりの縁談の処理に追われている最中だ。
そして女官やら侍女やらに聞いて彼を別館の近くにいたとの目撃情報を手にした。
そして別館の近くの建物でアイツが成金共相手に口論していた。
「アイツ!なにやってんのよ!相手は仮にも豪族なのよ!」
しょうがなくアイツに近づくと、アイツがこちらに気づき
「…………文若、こいつらを頼む。」
「は?えっ!?ちょっと!?」
一方的に話を押し付けてアイツは別館の方に物凄い速度で走っていった。
「なんですか!?あの輩は、身分を弁えるということを知らぬと見える。あのような下賤の輩が客将として居たら曹操殿の名に傷をつけてしまう」
「本当にそのとおりですな、何故あのような田舎者が曹操殿の客将としているのか理解できぬ。はっ!もしや曹操殿の弱みを握って……おのれ卑怯な」
言いたい放題言う成金共に頭の血管が焼き切れそうになった。
確かにアイツは気に食わない奴だが、お前らのような何の才も無い金だけの者に侮辱するような資格などあるものか!
頭に血が上りすぎて、もうちょっとで全て吐き出しそうになった。
それで文句を言ってアイツだけに迷惑が行くのならばまだマシだが、華琳様に迷惑をかけてしまってはいけないという心が、その一歩を踏み出さずに済んだ。
「すみません、アヤツは曹操様の護衛として今いらっしゃります。あの者が独断で帰れとは申さないはず。恐らく曹操様が何件もの縁談をして疲れたのでしょう。すみませんがお引き取りくださいませんか?」
━━━━なんで私が男に頭下げて口調を正さなければいけないのよ!
と心の中で叫ぶ。
「うむぅ、荀彧殿がそういうのであればそうなのでしょう。」
「そうですな、あの者は許せないが曹操殿に大事があってはいけませぬし、帰りますか」
案外素直に引き下がった事に、こいつらは本当にただ華琳様に惚れただけなのだとわかった。
そこには共感が持てるがそれだけである。
そしてアイツのただならぬ様子に不安を覚えていた私は、すぐさま別館に向かった。
しかし、向かう途中でアイツが誰かを引きずって別館から出てきた。
しかし何故か上着を着ていなく、真っ黒な半袖だった。
「なにやってたのよ!?ってコイツ、ここらでは大きな地主の息子じゃない!何をしたのよ!これで華琳様が覇業を進むのに障害になったらどう責任を取るのよ!」
私は近づきたくもないが、アイツの胸ぐらを掴んで憎悪を込めた視線で睨む。
「…………コイツは孟徳を襲おうとした。」
「…っ!!」
コイツの言葉に頭の中が真っ白になりかけた。
「…………大丈夫だ。ギリギリ未遂だ。だが心配だから文若、孟徳の傍に行け。アイツは客室の隣の寝室にいる」
コイツの言葉を聞いてすぐさま華琳様の元に向かう。
「…っ!華琳様、ご無事ですか!?」
「あら、桂花じゃない。いらっしゃい、どうしたの?」
そして寝具に腰掛けていた華琳様を見る。
華琳様のほっぺは赤く腫れ上がっていたが涼しげな顔をしている。
体にはアイツの上着を来ている。その横には引きちぎられていた服が無造作に散らばっていた。
そして注意して見ないと気がつかなかったが、手足にきつく縛られた痕も見受けられた。
そして私の未熟さを呪った。
こうなることは予見できたはずである。
なのに私は自分の仕事やアイツの事で頭がいっぱいで見落としてしまった。
アイツが来なければどうなっていただろう。
そう思ってゾッとした。
「華琳様、すみません。私は軍師失格です。どうか首を刎ねてください」
これ以上生き恥を晒したくなかった。
華琳様のためにとこの身を捧げたのに、何の役にも立っていない。
全てアイツが手を加えた結果だ。
「……泣いていたわ。」
「…はっ?」
突然華琳様がそのような事を口にして私を優しげな目で見ていた。
「無風がね、泣いていたのよ。私が酷い目に合ったっていうのに、まるで自分がそれを受けたかのように…」
アイツが涙を流すなんてありえないと思っていた。
いつも無表情、笑うとしてもニヤリとした何か企んでいるだろう笑みをするくらいしか見たことがなかった。
「桂花、私のことはいいから。今は無風の方に行ってちょうだい。」
華琳様の言葉に戸惑った。
何故、今この状況でアイツの方に行かなければならないのか疑問が浮かぶ。
「多分、無風は私の為にと動く。間違いないわ。でも、多分暴走する。桂花には彼の暴走を止めて貰いたいの、お願い。」
華琳様にお願いされては断るわけにはいかない。
渋々とだが彼が戻ったであろう建物の方に向かう。
しかし、変だった。何が変なのか最初は分からなかったが、すぐに気がついた。
音が"無い"のだ。いや、街の喧騒は聞こえるし、練兵の音も聞こえる。
だが"自然"の音がしないのだ。風が止んで、木の葉の擦れる音も、虫の声も、動物の鳴き声もしないのだ。
ただならぬ雰囲気を感じながらも彼が居るであろう部屋の扉を開けて………気を失いかけた。
無風の尋常ならざる怒気の波に当てられ、危うく気絶するところであった。
ただ気絶しなかっただけで、声を出す事も出来ず、息も苦しい。
呼吸もどうやってしていたのか忘れ、冷や汗と脂汗が止まらない。
コイツが怒るとこんなにも恐ろしいものなのかと初めて体感した。
私の入室に気がついた無風は怒気を抑えてくれて、なんとか満足に呼吸することができた。
そして初めて周りを見回して驚いた。
昨日今日と縁談の申し込みをした奴から、今までに縁談を申し込んだ者まで部屋に集められていた。
そして無風の横には何か布の被さった結構大きなものも存在した。
彼らはコイツの怒気に当てられても平然としていた。
それに気づくことも出来ない凡愚共ということか。
「…………集まってもらったのは他でもない。今後一切、孟徳への縁談を申し込むのは止めて貰いたい。」
彼がそう口にすると成金共は揃って文句を口にする。
当たり前だろう。
客将風情がそんなことを言って聞くほどコイツ等は出来ていない。
「…………もし、孟徳の許しなしに近づいたら………」
そう言って話を止めた無風は横にある布を取り払うと、そこには先ほど無風が引きずっていた男、華琳様に暴行を加え、襲おうとしていた輩だ。
殺したい一心だったが、無風の出方を見ると同時に、それを止めるよう華琳様に言われた事を心底で繰り返し呟き、自身を落ち着かせる。
「…………コイツは孟徳に暴行を加えた者だ。」
その彼の言葉に全員が黙り込む、何て事を!と驚愕する奴、馬鹿な奴だと見下すように見る奴それぞれだ。
「…………そして、次から孟徳を自分の為だけに利用しようとする奴らはこうなる」
そう言って無風は奴の腕を掴む。
投げ飛ばすのかぶん殴るのか、はたまた精神的に懲らしめるために大勢の前で素っ裸にするのか。
色々な方法が出てきたが無風の取った行動は常識の範疇を超えていた。
握りつぶしたのだ。腕の真ん中らへんを。
物凄い絶叫が部屋に木霊する。
その光景に数人が倒れ、倒れるに至らなくても、いきなりの光景に震えだす奴が大半だった。
そして次に左太ももを触り、顔を涙や鼻水、唾液を滅茶苦茶にまき散らしながら止めてくれと懇願する声を無視して、まるで大型の動物に噛みちぎられたかのような形に握り潰される。
そして次に右の太ももを握りつぶそうとした時に、私は我に返った。
「止めなさい!無風!!」
その私の言葉にピタッと動きを止めてこちらを見る。
目隠しをしているから見られたというか、こっちに顔を向けたが正確なのだが。
見られただけで自分の臓器を握られているような感覚になり、恐怖で足が竦む。
しかし、ここで彼を止めなければ彼の暴走を止められる事が出来なくなりそうだった。
「もう、全員気絶してるわよ。それにそれ以上やって得があるならまだしも、面倒しかないでしょう?」
彼はその言葉に成金共の方を向く。
左の太ももを潰した所で耐え切れなかったのだろう。
そして、それで止まるような奴でも無いと直感し、損得を交えて説得する。
「…………分かった。ここは文若の顔を立てておこう。」
何故か、コイツが言葉を発しただけで安堵感がこみ上げてくる。
そしてその場に兵士を呼んで、成金どもを別の部屋で寝かせるよう指示をだし、あの輩も一応医務室に連れてゆく。
そして彼はその部屋から一歩も出ずに、ただ佇んでいた。
体中血だらけでいつもなら戦場で呆れるほど見ているが、何故かその時のアイツは、その姿が怖かった。
しかし、何故か私や季衣、流流には優しく接する。
最初は力が無いことを哀れんで同情していると思っていたが、不思議とそうでは無いように感じた。
「この際だから聞くけど、なんであの時私を助けたのよ。」
あの時?と頭を傾げて何時のことか考えている。
もう幾分か冷静になったのだろう。
話を切り出して、まだ先ほどの状態だったらどうしようかと肝を冷やしたがその心配は無いようだった。
「季衣と流流が仲間になった時の戦の件よ。兵糧は確かに足りなかった。間違いない。なのに足りたのは貴方が持ってきたのでしょう?」
その私の言葉にバツが悪そうな表情をする。やっぱりか…
「…………必要だった。」
「…はっ?」
「…………この軍にはお前のような知に秀でた才の持ち主が必要だった。」
「…………」
彼の言葉に絶句する。
己の方が知略が優れているのに私のような者が必要だと言った。
「…何故、私なの?」
何故自分なのか判断材料がまだ少し足りない。
「…………風がなんなのか………知ってるか?」
「…………」
彼は質問に答えず問い返してきた。
私が聞きたいことに答えろとの意味と彼の言いたことが分からないからの沈黙
「…………風はどこにでも吹く。時にはただ吹き通るだけだったり、人に当たってその人の周りを一時回って、またどこかに流れてゆく。」
「っ!?」
やっと彼の言いたことに気がついた。
今は客将としているが、いつかはどこかへ行ってしまう。
そう、まるで風のように。
「駄目よっ!どこかに行くなんて絶対に駄目よ!」
「…………」
今まで感じていた気持ち。しかしそれを認められない気持ち。
やっと競える相手ができた。
やっと認め合える相手に出会えた。
やっと………コイツならと思える相手に出会えた。
なのに、なのになのになのに!!
コイツはどこかに行ってしまう、風のように消えてしまうと言った。
「なんでよ…華琳様や私たちの何がいけないのよ」
分からない、コイツが何を考えているか分からない。
「…………何もいけなくないから………出ていける。」
「っ!!」
それは、俺がいなくても大丈夫、やっていける、安心して旅立てる、認め合ったからこそ、信じ合えるからこそだと彼の言葉は言っていた。
「…………まぁ、まだ大丈夫」
『まだ』と言った。
つまりまだ出て行かない。
これから引き止める手段はいくらでもある。
そして後日…
「精液量産機!勝負しなさい!今度こそ私が勝って、華琳様の軍から追い出してやるわ!」
あの出来事の後に、兵糧を助けてもらったお礼をしたいと言ったら、以前私がやっているのを見たという軍人将棋を教えて貰いたいと言われ、最初の数戦は私の圧勝だったが、
何故かその後から私の連敗続き、いくらやっても勝てず囲碁に切り替えたが、こちらは言うまでもなく強かった。
なんでも、道場に居た頃、おじい様に血反吐を吐くまで叩き込まれたらしい。
文字通り血反吐を吐くまで…
それには少し同情したが、政務の縫い目を見つけては彼に勝負を挑むことか日課となっていた。
もちろん勝負もそうだが、今を楽しみたいのと、彼を引き止めるための私の策でもある。
「あー、今のまっt~~~っ!いいえ、大丈夫よ」
そして今日も黒星が一つ追加された。
このお話、中学の時に雛形を作っていていつか出したいなーと思っていたので今回出せて良かったです。
雛形をどこにしまったのか探して押入れ大掃除になり、母親に何事かと驚かせてしまい、申し訳なかった。
次回は、夏侯姉妹√になると思います。
多分、きっと、恐らく。
でわでわ