拠点1 華琳√ (後編)
前回のあらすじ
・華琳の知識1UP
・華琳の覚悟1UP
以上
拠点1 華琳√(後編) 『貴方は何者?』
「今までと、これ以上の会話で私の気持ちが上がるような気がしません。すみませんがお引き取りください」
縁談の話を昨日で7割近くの豪傑とは名ばかりの肥え肥った成金の男共を切って、私の休暇を兼ねた縁談の処理を最終日の今日、それも午前中にこの無駄な時間を終わらせるために
話を円滑に進めて、ある程度話したら先ほどの言葉で打ち切る。
休暇のはずなのに被りたくもない仮面を被ってニコニコと笑顔で接して余計に疲れが溜まっている気がする。
残り数名となり、次の人を呼ぶ。
次は確か、この辺では3本の指に入る莫大な地主の息子で、周りの人からの評判はいいと聞く。
「陳留郡の曹孟徳殿、此度は我が家の縁談を了承してくださって誠にありがとうございます。」
「いえいえ、こちらこそ貴方様のような人のお目に止まれるとはとても嬉しく思います」
ふん、断れない事を知っててそのような事を口にするか。
悪態を心の中だけに留めて本当に嬉しそうという仮面を顔につける。
「いやぁ、私は縁談で話せるような楽しめるお話を持っていないので正直何を話せば良いのか、すみません」
「ふふ、貴方様のお話であればなんでもよろしいですよ?」
無風のような無表情ではなく、人が好きそうなはにかんだ顔で、普通の娘なら好感を持てるような顔をする。
カッコ良さや外交面で判断するなら100人の内99人は彼を選ぶだろう。
しかし、私には何か肌にぬるい風が舐めるように吹いてくるような、得体の知れない何かを微かに感じる。
だがここで全てをほっぽかして行く訳にもいかず、それから1刻|(30分程度)ほど話をして、定型文になったお決まりの言葉を口にする。
「すみませんが、今まで話していてこの出会いを続けられる自信がありませ……」
「まぁまぁ、そう言わずに。もうちょっと話をしましょう?」
なんだこの男は、話を切り上げて終わらそうとしたが彼が立って私を止める。
「…僕は貴方のおメガネに叶わなかったのですか?」
「えぇ、すみませんが貴方とはこれ以上付き合い続けるのが私には無理だと思いましたので」
「……あの無風とかいうポッと出の成り上がり者ですか?」
「…っ!」
いきなり無風の名前が出てきた事に対応が遅れ、彼に驚きを悟られてしまった。
それを見た彼は俯いてボソボソと何かを呟きだした。
直感的に彼の近くにいては不味いと思い、席を立って逃げようとする。
しかし彼に腕を物凄い力で掴まれ引き戻される。
「何をするのよ!痛いじゃない。離しなさい」
あまりの異常な事態にいつもの口調に戻ってしまった。
そして先ほどとはガラリと雰囲気が変わった彼が私を抱き寄せながら無表情で喋っていた。
「なんであんなクソ野郎が良くて俺が駄目なんだよ。俺の方が美形だし金も権力もある。なぁ、僕の何がいけないんだい?」
一人称が定まってなく無表情と笑顔が交互に入れ替わる。
明らかに異常だ。
「離しなさい!人を呼ぶわよ!それにこんな罪を犯してただで済むと…っ!んーっ!んーっ!」
「ちょっと静かにしてね、あまり叫ばれても困るから」
彼がそう言って来客用部屋から寝床のある部屋に私を連れてゆき、布団に押し倒される。
そしてここまで何故私が無理矢理逃げようとしなかったのかというと、できなかったのである。
上手く関節を決められて両手をまさか片手で押さえられ、もう片方の手で口を押さえられていたのだ。
無理に逃げようとしたら腕がダメになる可能性もあるので、一瞬の隙をついて逃げるつもりだったが、隙が全くと言っていいほど無かった。
そして手詰まり、来客用とは言え、手抜かりがあっては舐められると思い、寝室は防音設備が施されている。
しかも別館で滅多に人が来ないこともあり、気づいてくれる可能性は皆無と言っていい。
まさかこんな事で自分のやった事が裏目に出るとは思わなかった。
彼は私の腕と足を寝具の柱に紐で結び私に覆いかぶさるようにのしかかる。
「あぁ、綺麗な肌、澄んだ蒼眼、サラサラとした金髪。全て可愛いよ"華琳"。」
彼の言葉に驚く!私の断りも無しに真名を口にされて体が焼けるほど憎しみの炎を燃やす。
だが私は憎しみの炎を燃やせば燃やすほど、比例して頭が冷えてゆく。
「…いい度胸ね、私の真名を勝手に口にするなんて。殺して欲しいのかしら」
「君はそんなことしない、なぜなら君は僕の妻になるんだから、大丈夫僕はあんなクソ野郎とは違う。金も力も持っている。」
そんな彼の瞳を見つめてその奥に渦巻くものがなんなのか理解した。
支配欲
彼は自分の思い通りにいかない物があることに許せないのだ。
豪傑で金持ちで手に入らないものは殆ど無い環境で生きてきたのであろう。
無様だな、そう思ってしまった。
「いいえ、あなた程度では私の夫は務まらないし、更に言えば無風の方があなたより何倍も魅力的よ?」
「うるさい!あんな野郎のことを口にするな!!」
パーンといい音が鳴り、最初は自分のほっぺにビンタされた事に気がつかなかった。
「凡愚もここまで行くと最早滑稽ね」
「うるさいうるさいうるさい!!!」
それから馬乗りに乗られてほっぺをビンタされまくった。
鏡で見たらきっと腫れて赤くなっているだろう。
「お前は俺の女だ!素直に言うことを聞いてればいいんだよ!」
そして私の服を引き千切り、自分のイチモツを晒す。
「やれるものならやってみなさい、私はあなたなんかに屈しない」
その言葉に挑発されて、彼のを私に差し込もうとする。
あぁ、まさか私の初めてをこんな奴に散らすのかとどこか他人事の様に思っていた。
その時に脳裏に浮かんだのは春蘭でもなく秋蘭でもなく、黒一色の彼の後姿だった。
ガシャーーン!!!
ドガッ!!!!!
ガラスの割れるものすごい音と同時に私の上にのしかかっていた彼が壁際で首を掴まれて宙吊りになっている。
そしてその首を片手で締め上げながら持ち上げている黒一色の後姿。
「無風っ!?どうしてここに!?」
「…………案の定………か」
彼はこうなることが分かっていたのだろう。
城内にいるにも関わらず装備が万全であった。
「…遅いわよ!何をしていたの!?」
「…………残りの縁談待ちのゴミを片付けていた」
「…………あぁ、理解したわ」
相手もいきなり帰れと言われたのであろう。
客将に言われて「はい、そうですか」で済まない。
付け加えるなら彼も多く喋らない性格なので話が一向に進まなかったのだろう。
そして彼は客室に向かって掴んでいた男を投げ飛ばし、私の所に戻って来て、一刀のもとに縄を切断した。
「…………怪我は頬の部分だけか?」
「えぇ、傷が残ったら最悪だわ」
「…………そうか」
彼は一言呟くと自分の黒い上着を脱いで私に羽織らせる。
私よりもふた回り程大きいその黒服を着ると、彼が私を抱きしめる。
彼らしくない行動に戸惑う。
しかし、すぐに彼が震えているのがわかった。
静かにしているとポタポタと水滴が落ちる音がした。
まさかあの無風が泣いている!?
無表情が多く、ほかの表情は滅多に見せないあの無風が自分のために泣いていると思うと、胸の内が暖かくなる。
「馬鹿ねぇ、なんで貴方が震えて泣いてるのよ。怖い目に遭ったのは私なのに」
彼は暫くそのままだったが、震えが収まるといつもの無表情で、隣の客室でまだ気絶している男の襟首を掴み、部屋を出て行く。
それから一度として縁談の申し込みが来ることは無くなった。
それとあの男の家の当主が、無条件で土地の権利書を譲るという血付きの手紙と共に送られてきた。
真名を勝手に呼んだ事もあったが、きっと無風が私の代わりにやってくれただろう。
正直あの時は彼の泣いてる姿に驚いて憎しみを忘れていた。
ただ、少し問題があるとすれば泣いていた姿を見られたのが恥ずかしかったのか、この頃は姿を見せても避けられていた。
桂花はそのことに憤慨していたが、事情を知ってる、というか当事者だった私はしょうがないと割り切っていた。
つい昨日あったかのようなあの日の出来事を頭の片隅で思い出しながら、報告書に目を通しているとその中の一つが床に落ちてしまった。
それを面倒臭いが拾い上げ目を通す。
そして内容……ともいえないただ一文だけ書かれた報告書に少しの間釘付けになってしまった。
書かれていた内容、それは。
蒼天已死 黃天當立 歲在甲子 天下大吉
これを訳すと『蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉』となる。
蒼天すでに死す……つまり漢王朝の転覆を言っているのだろう、そして黄天、これは黄色い布を巻いた連中を意味する。
「……黄巾党」
いつだったか彼が呟いていたのを聞いていた言葉を思い出す。
その時は言い得て妙だと心底でクスリと笑いながら思った。
だが、この文が届いたのは最近だ。
そして彼はまだ見ていないはずである。
彼の言った黄巾党という言葉、黄色い布を巻いていた事が切っ掛けかもしれないが、もし……もし黄天が立つと知っていたのなら…。
「貴方は一体………何者なの?無風」
空は青く澄んでいるが、一瞬曇って見えた孟徳であった。
うん、書いてて自分が感情移入しすぎて泣いてしまった。
なのでちょっと意味不明?というかわかりづらい所があるかも…
無風が自分の無力さに嗚咽は出さないが震えて涙を流す。
どこのドラマ?w
てことで次は流れ的に桂花かな?
多分桂花√だと思います!
では皆様!また次回お会いしましょう~