プロローグ
初めての投稿です。
皆様からしたら目も当てられないものかもしれませんがご了承ください。
2017/03/12 本分修正
つまらない。
全てがつまらない。
いつからだろうか、気がついたらいつもその事しか考えていない。
今も剣道の試合中に関わらず、油断なく相手の動きを捉えながら考えに没する。
「「・・・」」
相手も俺の動き一つ一つを注意深く観察しながら、隙を作るまいと神経を尖らせている。
(なら、あえて隙を作るまで・・・)
「…っ!てぇぇぇぇい!」
隙を作った瞬間、相手が勝負に出てくる。
俺の脳天を叩こうと、全力で振り下ろされた竹刀を紙一重で避ける。
「っ!?」
その一撃にすべてを賭けていたのが分かる通り、外した途端にバランスを崩す。
明らかに剣道慣れしていないのが見て取れる。
俺は、終わりとばかりに軽く面に竹刀を当てる。
パーーン!!
「一本!白!」
竹刀が相手の面にあたり審判が判定を下す。
その後も難なく試合に勝利し、立礼をする。
「ありがとうございました!」
「……ありがとう……ございました」
--ぱちぱちぱち--
他の剣道部員達のまばらな拍手を受けながら防具を外していく。
「ぷはぁ!やっぱり無風さんは強いっすねー!」
「…お前が弱いだけだ」
「当たり前です!俺が剣道部入ったの1ヶ月前ですよ!?無茶言わないで下さい。」
「……」
今は高校大会に向けて剣道部の2年が新入部員に指導込みの練習試合を行っている。
そしてその練習試合で新人相手の2年を努めたのが俺、無風 雛だ。
……一見女のような名前であるが立派に男である。
そして後輩が剣道始めたばかりなのに無茶言わないでくださいとばかりの視線で抗議の文句を口にする。
しかし……
「…俺なら勝ってた」
そうポツリと一言俺は呟いた。
「へっ?」
何の事かわからないって顔をして聞き返した後輩は他の先輩方に「どういうことですか?」と目でその意味を問いた。
仕方ないと言いたげな顔をした我らが部長がその答えを口にする。
「雛はな、入部当初から既に剣道部で負け知らず。大会でも優勝以外見たことない程で、剣の申し子ってのはコイツの様な奴を言うんだろうな」
部長は諦め半分面白半分な顔で肩をすかして答えた。
「えぇー!もうそれ化物レベルじゃないっすか!」
誰が化物だ誰が。
化物は正直ひどいと心の中で呟く。
後輩たちが尊敬の眼差しでこっちを見てくるが全部無視。
そんな光景をニヤニヤしながら部長は更に暴露しでかす。
「さらに雛は実家が明治から続く由緒正しき剣術道場ってやつらしくてな、コイツもそこの免許皆伝を貰っているという凄腕だ」
後輩たちがその話を聞いて尊敬の眼差しから崇める眼差しに変化した。
その家で認められる為の項目の一つに氣を扱える事が前提にあるが、言っても分からないだろう。
「…お疲れ様でした」
この場の空気に耐え切れず、早々に帰ろうと身支度を整えて剣道場を出て行く。
「おつかれ、また明日なー」
部長の声を聞き流しながら帰路の夜空の下へ赴く。
唯一全てをつまらないとしか感じない俺が面白いと感じる事ができる時間。
夜の空を見上げていると自分の考えてる事がちっぽけなモノでしかないと思わせてくれる。
俺の名前は特殊だ。普通に考えると俺の家系の名前は珍しいし、俺の名前の意味も特殊だ。
無風 雛、風が無いところでも雛鳥が羽ばたいて遠くに行けるように、高く大きく自由に育ってほしいという意味で親が名づけたらしい。
昔、本で名はその人柄を表す。特殊だったり、珍しい名前の人は何かしら特殊な性癖を持っていたり、飛び抜けたような考え方をしたりするらしい。
それを見て俺は言い得て妙だと思った。
俺は、自分の名前の意味を両親から教えてもらった時、その意味とは別に『風がないと飛べないの雛鳥』と捉えてしまった。
自分自身理解しているが雰囲気が独特で掴みづらく、喋り方も言葉少なめで何考えてるかわからない奴だと自分でも思ってる。
「………?」
そんな自分がなんなのかを考え続ける毎日だったが、ふと周りの様子がおかしいことに気がついた。
(静かすぎる?)
遠くの大通りの車の喧騒も住宅から感じる人の気配すら感じない。
「………誰だ」
そして少し離れた道の曲がり角から小学校低学年くらいの女の子が表れた。
(…いや、中学……高校生か?)
表情を見た瞬間、自分の中の警戒度を数段上げる。
幼い容姿には似合わない知性が女の子の瞳から伺えたからだ。
「………」
警戒しながらその子が言葉を発するのを待った。
そしてその子の小さな口が微かに開き、言葉が溢れる。
「タスケテ・・・」
その言葉を聞いた瞬間、俺は竹刀を真後ろに振った。
何かが自分に飛来するのを感じ、それを両断する。
カンッと両断した時に甲高い音が鳴り、ソレが地面へ落ちると共にガシャン!とガラスが割れるような音が続く。
「………鏡?」
地面に落ちたソレを注意深く見ると如何にも骨董品と思える青銅の縁(ふち)にガラスが填め込まれていただろう散らばったガラス片。
一瞬、弁償を盾にした悪質な者の仕業かとも思えたがそれが間違いであった事を悟る。
割れたガラス片が光りだし直視出来ないほどにまで輝きをましたからだ。
「………っ!?」
意識と身体が吸い込まれる様な感覚に陥り、必死に耐える。
「タスケテ・・・ワタシヲ」
「………くっ!」
気がついた時には自分の真横に先程の彼女が居り、自分を見つめていた。
その一瞬で気を逸してしまい意識が闇に沈んでゆく。
膝をつき倒れ込むのを他人事の様に感じながら、意識が持ってかれる瞬間、彼女の声を聞いた。
「あなたの……あなた様の外史へようこそ」
俺の意識はそこで途切れた。
次回から恋姫の世界です!
私の外史であり、貴方の外史でもある恋姫の世界。
貴方の外史の人生に幸多きことを願います。