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九死に

 足がもつれた瞬間から、時間の流れがゆっくりになった。実際には俺は普通に転んだはずなので、いわゆる走馬灯のようなものだろう。


 無様に前のめりに地面へダイヴしたのも、


 体や頭を守り、かつ転倒の勢いを少しでも軽くするために両手を先に地面に付けたのも、


 そのまま前転した上で、追ってくるドラゴンを確認するためにそのまま後ろを見るような形に体をひねったのも・・・


 すべて一瞬の出来事だった。

 ゆっくりと、転ぶ俺。

 一気に距離を詰め、襲いかかるドラゴン。


「うわぁあああっ」


 もうだめだ、そう思った。あとはもう防衛本能から両手を前に出したのと、「助かりたい」「こっちへ来るな」と念じるしか手段はなかった。



「・・・・・・・・・」





 襲いかかってこない。

 恐る恐る目を開くと、そこには、目を閉じて倒れているドラゴンがいた。


「た・・・助かった?」


 全身の力が抜ける。完全に死を覚悟したが、何とか危機を脱したらしい。ゆっくりと、ドラゴンの元に歩み寄る。あまり近寄りたくはないが、本当に動かないのかは確認したい。いつでも逃げれるように心の準備をしながら確認したところ、動物には(ドラゴンなんかは特に)あまり詳しくないが、どうやら気絶しているようだった。何故気絶したのかは分からないが、これでどうにか安心できる。


 来た道を振り返ってみると思った以上の距離を走ってきたらしい。しかし、モノクロの風景は変わらない。どうやら海に面した山というか丘の頂上付近にいたようで、海側に向かってなだらかな傾斜を降りてきたようだ。


「・・・・・・」


 そのまま降りてもよかったが、目覚めた場所戻ることにした。

 ここは自分の知らない世界だ。色がなく、そしてドラゴンのいる世界。ならば、何故自分がこの世界にいるのか。その手がかりが目覚めた場所にあるかもしれない。

 それに、元の世界の「人間」があそこに倒れていた。ピクリとも動かなかったが、俺と同じようにこの場所に来たのなら、俺と同じように気を失っているだけだろう。決して好きそうな人種ではなさそうだったが、わからないことだらけの世界の中で唯一同じ世界観をもって向き合える人間になるかもしれないのだ。いないよりはいいだろう。


「・・・色も付いてるしな」


歩きながら、俺は力なく呟いた。


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