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ライトニング・ウォーカー  作者: 魔桜
Chapter03:役者は舞台に出揃う
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‐19‐ 挟み撃ち

 ジェラートは苦悩していた。

 足は一歩も動くことなく、渋面を作っていた。立ち止まって考える前に、行動をする。それがジェラートの生き様だったのだが、今自分にどんな役割が与えられているのかが分からなかった。

 こうして心が惑った時には、ハンスマンの考えに従うのだが、命令を聞かされていない。

 ならば、ハンスマンに指示を仰ぎに行くのが無難。

 だが、そうすればライオネルやクロエと戦うことになる。

 それは嫌だった。

 どうせなら自分の思いつく限りの手段を尽くして、絶望に満ちた顔を見ながら浸りたい。だが、無駄の嫌いなハンスマンはジェラートの自由を許さないだろう。

 それに、ジェラートは、自分以外の人間が他人を痛めつけているのを視認するのも嫌だ。どうしても混ざりたくなってウズウズしてしまう。悲しみにくれている人間を貶めている姿をこの目にしているのに、手が出せないとは、なんという拷問だ。

「…………ん?」

 ジェラートはライオネルの店先で黙考していたのだったが、気配を感じて、瞬間的に刀を精製する。

 ゴッ、とジェラートの身長よりも巨大な物体が視界を覆う。

 ジェラート目掛けて飛来してきたものを斬り落とそうとした。が、高速で飛んできたものが、外灯だと知ると、最小限の動きだけで躱す。流石に、外灯は斬れない。斬ろうとして正面に立っていれば、そのまま肉体がひしゃげていただろう。

 ドゴォオン、と轟音を立てて、地面が捲れる。

 外灯は根元から、強引にねじ切られていた。どんな魔法を使ったのかは知らないが、これほどの物量を問答無用でぶん投げてくるような人間は、きっととびっきり頭がイっている。何が目的かは一切不明だが、こういう手合いなら、いい時間潰しになりそうだ。

 ジェラートは対峙しようとするが、何故か逆方向から足音がする。

 回り込まれたのかと思い焦るが、足音は両方から聞こえてくる。まさかの挟み撃ちだった。随分と周到に追い詰めるものだと想い、感嘆する。一体、どんな敵だろうか、疼いてきた。

 ジェラートは『パラダイス・ロスト』が点々とサーカス小屋を移動していた時に、様々な人間と邂逅してきた。その中で、自分に恨みのあるようなやつがいたかどうか、想像を膨らませる。だが、そんな無駄な思考は、一端切り離す。よくよく思い出せば、ジェラートとに不意打ちをしてくるような人間には、心当たりがありすぎて、たった二人などには絞れなかった。

 一方の人間が一足先にジェラートの瞳に映る。

 深い夜闇から現れたのは、ジェラートの知らない、鮮血のような紅い髪をした女だった。

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