表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若木大地(30)、転生したら若木だった件  作者: サトウススム
第一章 若木大地と森の仲間たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

第8話 死角とシェル構造

次話は3/31(火) 18時に投稿予定です。

 ――――ドゴォォオオオオン!


 バリバリ―――メキメキ!!!


 (なっ、なんだぁぁあああ!!??)

 「ぴっ、ぴぴぃぃいいい!!??」


 ―――突然の轟音に、オレは飛び起きた。


 ここは―――そうだった、昨日急造で作った丸太小屋だ。


 隣ではアカネが、気持ちよさそうに寝ている。


 今の音で起きないとか、コイツ大丈夫か?


 音の元凶を探るべく、周囲を見渡した。


 あれ、そういえば、マリーがいない。


 オレたちに寄り添うようにして眠っていたはずだ。


 どこか、朝の散歩にでも行ったのだろうか。


 それにしても、今の音は―――



 ―――ドゴォォオオオン!!!!



 (うおおおおっ!?)


 「きゃああっ!! な、なに!?」


 再び、壁に何か硬くて重いものがぶつかったような衝撃音。


 注意して周囲を伺うと、それ以外にも、ズン…ズン……と地面を揺らす振動が伝わってくる。


 何か巨大なモノが、小屋の外で動いているような―――そんな気配がする。



 一回目の音で起きなかったアカネが、二回目でようやく目を覚ました。


 サポート役なのに呑気だな!?

 

 ふと、大震災の時も目を覚まさず、揺れが収まってから起き出してきた弟を思い出したわ。


 っと、オレもそんな事を考えている場合ではなかった。


 壁を見ると、二度の衝撃で、丸太が割り裂かれていて、もう今にも折れて崩壊してしまいそうだ。


 どうしようか迷っている間に、木片がバラバラと落下し、メリメリとイヤな音が聞こえてくる。


 このまま、中にいると危ない!


 (アカネ、起きたか!? とにかく、外に出るぞ!)


 「えっ? は、ハイ!!」


 まだ入り口付近は無事だったので、二人で慌てて飛び出した。


 一体、何がぶつかってたんだ?


 どこかから、岩でも飛んできたのか?


 小屋から出て、サッと周囲を見てみるが、やはりマリーの姿はない。


 いったい、どこに――――


 「ギィィィエエエエ!!」


 頭上から、何かが振り下ろされる……!


 とっさに右に飛び込んで躱す。


 (くっ……!!)


 ズドォォオン……!


 間一髪で躱したそれが、地面に突き刺さる。


 これは―――岩じゃない、攻撃だ……!


 地面に突き刺さった巨大な尾、そしてその本体をようやく視界にとらえた。


 (な、なんじゃこりゃあ!?―――で、でかいサソリ……!?)


 「ひっ―――!?」


 体高2メートル以上もありそうな、デカいサソリを目にして、一瞬固まるアカネ。


 そういえば、前に「虫系が苦手」って言ってたな、あれは柏木だけど。


 「イヤーー、キモすぎぃい!!! ムシはいやぁあああぁぁぁぁ……」


 と泣きわめきながら、ぴゅーっとオレの陰に隠れた。


 といっても、アバターのオレじゃなく、本体の大樹の方に駆け込んでるんだけど。


 ……あいつ、オレを置いて逃げやがった。


 あと、サソリは虫じゃないと思うんだが。


 それに、見ようによっちゃ、今のアイツ自身が羽虫みたいに見えなくもないぞ。


 言ったら二度と口をきいてくれなくなりそうだから、言わないけど。

 

 (お、おい、アカネ! オレはどうしたらいいんだよ!?)


 一応サポート役なんだろ!?


 今こそアドバイスが必要な場面だろ!


 すると、樹の陰からチラっと顔をのぞかせるアカネ。


 「が、がんばって倒してくださいよ! 私はここで応援してますから! 信じてますよ、センパイ!」


 (な、なにぃ………!?)


 倒すって、オレがか!?


 マリーがいない以上、オレしかいないのはわかるが、こんなのどうすりゃいいんだよ!?


 「そ、ソイツはジャイアントフォレストスコーピオンって魔物です! 大きなハサミと、死角から飛んでくる毒尾に注意!」


 (お、おう!……………それで!?)


 しかし、それ以上の事は答えずに、サッと身を隠すアカネ。


 (ってオイぃぃ! それだけかよ~!? そんなの見りゃわかるんだよ!)


 もっと、倒し方とか、敵の弱点とか、そういうの待ってるんですが!?


 アカネとお互いに不毛な言い争いをしている間に、大サソリがドスン、ドスンと地面を揺らしながら近づいて来る。


 その恐ろしい目で、しっかりとオレを見据えている。


 全身が黒緑の甲殻に覆われていて、言うまでもないが、いかにも硬そうだ。


 どうして襲ってきてるんですか、と問いかけたい所だけど、ムダだろう。


 見るからに凶悪な両腕のハサミを、ガチンガチンと鳴らしながら、さらにじりじりとオレに近づいて来る。


 デカい。


 今の自分が5歳児程度だから、余計にそう感じるというのもある。


 それに、この危険な気配。


 この世界に生まれてから、感じられるようになったものだ。


 オーラとか魔力とか、そういうものかもしれない。


 この世界には、こんな危険な生物が、そこら辺にウヨウヨしてるのか?



 ジャイアントフォレストスコーピオンは、明らかに、目の前の生き物を捕食対象として見ている。


 チラリと先ほどまで寝ていた小屋を見ると、無残に破壊されていて、その破壊力に背筋がゾッとする。


 あんなもの食らったら、オレなんてひとたまりもないぞ!?


 (マリー!! どこ行ったんだよ!? 今こそ、オレを守護る時だぞ!!)


 こちらも、相手の動きを見逃さないように注意しながら、チラチラと周りを伺うが、やはりマリーはいない。


 そしてアカネは頼りにならない。


 これはもう、覚悟を決めるしかなさそうだ。


 突然の出来事にかなり動揺してしまっていたが、こうなると、逆に落ち着いて来る。


 昔から、オレはこういう性格だ。


 人生、なるようにしかならないし、すでに人生ですらない。


 フウッ―――と、一つ小さく深呼吸をして、気持ちのスイッチを入れ替えた。


 (よし、オッケーだ)


 覚悟を決めたら、後は実行あるのみ。



 ―――さて。


 今のオレに出来る事で、戦闘に使えそうな能力と言えば―――


 (【操樹(そうじゅ)】か……正直、小屋を建てるぐらいしか、役に立たないかと思ったけど……)


 神授の森に由来する植生を、自分の意思のままに操る事ができるスキル。


 これを上手く利用すれば―――


 (考えようによっちゃ、意外となんとかなるかもな……)


 使えそうなモノがないか、周囲を探るために、チラッと、ヤツから視線をそらした。



 ―――その瞬間。



 獲物のスキは逃さないとばかりに、


 「ギィィイイ!」


 ジャイアントフォレストスコーピオンが、左のハサミを素早く伸ばし、オレを切り裂こうと動いた。


 このままでは、この愛らしい緑のアバターちゃんが――真っ二つに!


 (まずっ! 【操樹(そうじゅ)】―――!!!)


 とっさに、オレは組んであった小屋の丸太をこちらに引き寄せようと、手をそちらに向けて、能力を解放する。


 すると、丸太が、まるで自らの意思を持つかのように、滑るように動き出し―――さらに加速!


 オレから見て左、ヤツからしたら右前方から、丸太が猛スピードで飛んでくる。


 そして、迫りくるハサミに、正面から叩きつける。


 次の瞬間、鈍い衝撃音が響き―――


 ガイィィイイイン!


 (―――ん? この音……?)


 丸太をぶつけられて、ハサミを弾き飛ばされたジャイアントフォレストスコーピオンは、大きく体勢を崩している。


 ぶつかった衝撃音に、少し違和感を覚えたが、それは後で考えることにする。


 (よし、今だ―――!)


 チャンスとばかりに、今度はこちらから攻めようと構えるが―――


 ふと、視界の端にキラリと光るなにかが見えた気がして、慌てて後ろに飛び退る。



 ―――ズゴォオオオ!



 間一髪、先っぽが凶悪に尖った毒尾が、目の前を猛烈な勢いで、空気を切り裂きながら、地面に突き刺さった。

 

 (――――っぶな! 死角からの尾の一撃、確かにやっかいだ!)


 せっかくハサミの攻撃を躱しても、むやみに突っ込もうとすると、手痛い反撃を喰らうわけだ。


 しかも、掠っただけで毒にやられる。


 これでは、こちらから、近づいて攻撃する事も出来ない。


 こいつ、意外とスキのない攻撃をしてくるぞ。


 ……さて、どうする?


 (……って、待てよ?)


 死角からの……?


 (そういえば、オレって、今は……)



 目の前の獲物が、考え事をしながら、あさっての方向を向いている。


 ここぞとばかりに、ジャイアントフォレストスコーピオンは、今度は右のハサミで、獲物を引き裂こうと、腕を横から薙いだ。

 

 ビュォオオオ!


 うなりを上げて、標的に迫る巨大なハサミ。


 獲物はハサミに気付いていないのか、まだよそ見をしたままだ。


 「センパイ、あぶないっ!」


 樹の陰に隠れた羽虫のような生き物が、なにか叫んでいるが、もう遅い。


 捉えたと思った瞬間―――


 ―――ヒョイ!


 こちらを見ないまま、まるでこちらの動きが見えているかのように、危なげなく躱された。


 「……グォォ?」


 自らの必殺の攻撃が躱され、訝しむような声を上げるジャイアントフォレストスコーピオン。


 「ぴっぴっぴ……」


 こちらに向き直り、不敵な笑みを浮かべる獲物を前に、じりっと一歩後ずさる。



 (ふっふっふ……)

 「ぴっぴっぴ……」


 内心冷や汗を流しながらも、余裕の態度を敵に見せつける。


 闘いには、ハッタリも必要だ。


 (大丈夫だとは思ってたけど、危険なのには変わりないし、怖かった~!)


 よそ見をしながら、ハサミの攻撃を躱せたカラクリ、それは―――


 視界に、巨大なサソリと―――()()が映る。

 

 そう、みんな覚えているかわからないが、オレの本体はあくまで大樹なんだ。


 アバターの身体で、家の中で眠れる幸せに、すっかり忘れていたが。


 そこ、お前が忘れるなよって言葉は口にしないように。


 で、本体とアバター、両方の視界が見えている以上、オレに死角は()()()()()()()、と言ってもいいだろう。


 アバターの後ろから攻撃されたって、バッチリ本体から見えちゃってるのである。


 自分に知覚できないような速度の攻撃とかは、さすがに躱せないが、このサソリの攻撃ぐらいなら、なんとか躱すことができる。


 一撃を躱されたサソリが、今度は躱されまいと、連続攻撃をしかけてくる。


 左、右、そして尾の三段攻撃。


 普通なら、躱すことは難しいだろうが、今のオレは余裕を持って躱すことができる。


 まるで格闘ゲームでキャラを操作しているようだ。


 その後も、サソリの攻撃を全て躱すか、体勢が厳しい時には【操樹】で飛ばした丸太で防いだ。


 もはや、ヤツには決定的な攻撃方法がなくなったようだ。


 これで、オレが有利な立場に立ったぞ。


 こちらにまったく攻撃が通じなくなり、身の危険を感じたのか、ジャイアントフォレストスコーピオンの動きが、目に見えて鈍った。


 そのまま、じりじりと後ずさる。


 (もしかして、逃げるつもりか?)


 逃げるなら、逃がしてしまってもいいような気もするが、いつまた寝込みを襲われるか、わかったものじゃない。


 倒せるなら、確実に倒すべきだ。


 (今度は、こっちの番だ! 悪いが、覚悟してもらうぞ!)


 敵の攻撃を躱しながら、考えていたことを、実行に移す。


 (【操樹】―――!)


 オレがサソリに向かって手をかざすと、周囲の地面から、ザザザ…と何本ものツルが伸びてくる。


 そうだ。


 なにも、操れるのは木だけとは限らない。


 この森に生まれた()()()()が対象となる。


 スルスルと、ツルが現実味のないスピードで伸びてきて、ジャイアントフォレストスコーピオンの身体に絡みついた。


 むかし理科の授業で見た、植物の成長記録映像をさらに早送りしたみたいだ。


 うにうにと、次々とツルが伸びてくる。


 ……うん、ちょっと気持ち悪いと思った人いるよね?


 正直オレもちょっと思ったから、責められないわ。



 サソリは、絡みつくツルから逃れようと、ハサミでツルを切ろうとするのだが、なかなか思うように切れない。


 ただのツルではないのだ。


 操っている感覚でわかったが、どうも自分の神霊力とやらがツルに作用して、普通ではありえない強度を持つようになっているようだ。


 次々と伸びてくるツルに絡み取られ、必死にもがくジャイアントフォレストスコーピオン。


 すでに身動きが取れなくなっている。


 これで、完全に敵の動きを封じ込めた。


 ただ、それだけで、勝ったとは言えない。


 ただ動けなくしただけだ。


 ここで、切れ味の鋭い剣とか、武器を持っていたら、それで攻撃するところだが、残念ながら、武器は一切持っていない。


 ……まあ、たとえ持っていたとしても、今のオレ程度の技量と力では、あの硬い甲殻には、傷をつける事も出来なかっただろうが。


 では、オレにはこれ以上、どうする事も出来ないか?


 いや、これがそうでもないんだよな。


 まあ見ててくれ。


 オレはアバターの手を、ツルに巻き取られたサソリにスッと向けた。


 そして、精神を集中し、


 (はぁああああ!!)

 「ぴぃぃいいい!!」


 ありったけの神霊力を、ツルに向かってさらに流し込む。


 すると―――



 ………ビキ……



 固いものに、ヒビが入ったような乾いた音がした。



 ビキ…ビキビキ………



 そして、それは段々と拡がって行く。


 ビキビキビキ……!!


 それはすぐに、目に見えるほど、はっきりとしたひび割れが、全身の甲殻に発生していった。


 (―――よし、思った通り!)


 ”シェル構造”という物をご存じだろうか。


 一番身近な例でいうと、卵だ。


 卵は、外部環境から身を守る為に、外からの衝撃には強い。


 しかし、ヒナは内側から簡単に殻を割って、外に出ることが出来る。


 サソリの甲殻も、同じシェル構造。


 ということは―――


 (内側からの攻撃には、弱いはずだ!)


 オレは、絡ませると同時に、甲殻の隙間から内部に、ツルを侵入させていたのだ。


 大量にツルを侵入させ、膨張させていった事により、その圧力に殻の内側が耐えられなくなったのだ。


  (お次は、こうだ―――!)


 内側からツルを引かせると、今度は甲殻の表面に這わせていき、全身を締め上げていく。


 ギリ………ギリギリギリ………


 すると――――


 グシャァッ!!!


 決定的な破滅の音がして―――



 ジャイアントフォレストスコーピオンは、その四肢をバラバラに破壊された。



 ちょっと、いやかなりグロい。


 思わず目を逸らしたくなるほどに、割れた甲殻や、ちぎれた肉片が辺りに飛び散っている。


 そんな中―――


 「ぴっぴぃぃいいいい!!!」


 まだ早朝の冷えた森に、呑気な勝利の雄たけびがこだました。




 


お読みいただき、ありがとうございます。


評価、ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)


執筆の励みにもなりますので、よろしければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ