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若木大地(30)、転生したら若木だった件  作者: サトウススム
第一章 若木大地と森の仲間たち

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7/8

第7話 アバター(ぴっぴぃ)

明日の8話以降は、三日に1話程度の更新となります。

よろしくお願いします。

 「ぴ、ぴっぴぃいいいい!!」


 ジタバタ。


 「ぴっぴぴ、ぴぴぃ?」


 アタフタ。


 

 ……たのむ、そんな目で見ないでくれ。


 オレは真面目なんだ。決して遊んでるわけじゃない。


 (お、おいどういう事だよアカネ!)

 「ぴ、ぴっぴぴぴ!」


 さっきから、ピィピィ鳴きながらもがくオレの姿を、じーっと見つめている。


 そして、サッと顔を背けるアカネ。

 

 「す、すいませ―――ぷぷっ、だって、あまりにも嬉しそうにしてるし、それを台無しにするような話をするのも、なんだか―――ふふっ、忍びないなって」


 完全に面白がってるよね、お前。


 ちくしょう、またこんな展開かよ!


 せっかく身動きできない境遇から、自由に動ける身体を手に入れたと思ったらコレだ。


 (はぁ……)

 「ぴぃ……」


 アバターに意識を移した直後は、マリーと会話できていると思っていたが、あれはアカネの言葉を聞いて、オレとの会話を推測していただけなんだな。



 すると、言葉は通じないものの、オレの慌てぶりを見て何か感じたのか、マリーが助け舟を出してくれた。


 「……?? 大丈夫です、大地様。たとえ今はそのお姿でお話が出来なくとも、本体に戻られれば、これまで通り、私とお話できますわ」


 ―――はっ…!?


 そ、そうだった!


 さすがマリー、頼りになるぅ!


 (お、おいアカネ! どうやって戻るんだ!?)

 「ぴ、ぴっぴぴ!ぴぴっぴぴ!?」


 「どうやっても何も、センパイが戻りたいと思ったら戻れるんじゃないですか?」


 な、なるほど、そういうもんか?


 よ、よーし、戻れ、戻れ戻れ!


 目を瞑って意識を集中させると、また先ほどの様に、意識が何かに吸い込まれるような感覚がした。


 「―――はっ!?」


 気がつくと、また元の大樹にオレの意識は戻っていた。


 なるほど、これは便利だ!


 自由に出たり入ったりできるんだな。


 「マリー、今度は聞こえる?」


 「はい、もちろんです。大地様の美しいお声が、バッチリ聞こえておりますわ」


 「そうか、よかったー。まあちょっと不便だけど、戻ったら話せるんなら、大きな問題ではない、かな?」


 しかし、アバターになると言葉が話せない問題は、いずれなんとかしたいもんだなぁ。


 「………」


 ……あ。


 「……? どうしたんですか、センパイ、急に黙ったりして?」


 「大地様?」


 訝しむ二人。


 「大地、行きまーーーす!」


 そう叫んで、また意識を集中して、アバターを作成し、一気に射出する!


 ブォオオオン………! シュババババ!ドォォォオオオンンン!!!


 重厚な効果音(脳内)と共に、弾丸のようなスピード(妄想)で、勢いよく射出されるオレ。


 (うははは……! こういうの一度やってみたかったんだよなぁ! かなり状況は違うけど、まあいいだろ!)


 「……なにやってるんですか……はぁ。いい歳して……」


 アカネの視線が冷たいが、気にしたら負けだ。


 (いいだろ別に! こうなったらもう歳とか関係ないんだよ)

 「ぴぴぃっ! ぴぴっぴぴぴっぴ」



 そうやって遊びながら、何度かアバター生成を繰り返していくうちに慣れてきて、意識を集中させたりすることなく、自由自在に出たり戻ったり出来るようになった。


 (よーし次は、どこまで遠くに行けるか、実験だ!)


 ぴゅーーっと、本体が見えなくなるくらい遠くまで行ってみる。


 すると―――


 (あ、あれっ?)


 動けるには動けるが、なんか…


 (感覚が少し、おかしい…?)


 本体との繋がりみたいなものが、薄くなってきたような気がする。


 すぐ横に付いてきているアカネが、注意を促す。


 「あー、あんまり離れると、たぶん接続切れちゃいますよ」


 ……Wi-Fiかよ。


 (ふぅむ……確かに接続が弱まってるが、この身体(アバター)で動き回るだけなら、問題はなさそうだな)

 

 アバターの動きを確認してみるが、思い通りに動かせる。


 (ちなみに、接続が切れたらどうなるんだ?)


 「センパイには今、この神授の森から、膨大な神霊力が集まって来てるんですよね。で、その力をアバターで使うことで、能力を発揮できるんです」


 ほほぅ、神霊力とな……イイじゃないか、厨二全開な名前!


 「だから、その接続が切れちゃったら、アバターの能力が制限されちゃいますね、当たり前だけど」


 なんだ、そんなことか。


 じゃあ……


 (離れなければどうという事はない!キリッ!)


 なんちゃって。ぷぷぷ!


 「どうでもいいですけど、私以外にはただぴーぴー鳴いてるだけですからね?」


 うるさいな、放っておいてくれ。


 

◇◇



 ひとしきりその辺で遊んだあと、アカネと二人で、本体まで戻ってきた。


 マリーがずっとそこで待っていてくれたようだ。


 本体に戻って、アバターを解除する。


 「あれ、マリーはここで待っててくれたんだ? 一緒に付いてきてくれてもよかったのに」


 「ええ、ですが、そういう訳にもいきませんわ。だって―――」


 「センパイ、わかってないかもしれませんが、アバターはともかく、その若木本体って、今はかなり無防備なんですよ?」


 「なに? ……言われてみれば、確かにそうだな」


 転生初日に、ゴブリンに伐採されそうになったんだった。


 あれから何もなかったから、忘れてた。


 本体には反撃手段がない。


 逃げる事も出来ない。


 ああ……だからマリーはオレの傍でずっと守ってくれてるのか。


 これまでの数年間ずっと。


 「ありがとう、マリー。本当に助かるよ」


 オレは心からの感謝を、彼女に伝えた。


 するとマリーは目を大きく見開き、口を覆った手が、少し震えている。


 「礼を言うのは、私の方ですわ。大地様、この世界に生まれて来て下さって……本当に…っ」


 目じりに涙を堪え、オレを一心に見つめている。


 その真剣で切実な目に吸い込まれるように、オレも彼女を見つめる―――


 「マリー……」


 「大地様……」


 ……


 ………


 「………ウォッホォォン!」


 アカネのワザとらしい咳払いで、妙な空気が一掃された。


 「あ、いや、まぁあの……そんな風に言ってくれて、うれしいよ。何でこの世界に生まれて来たんだろって、ずっと思ってたからさ」


 ずーっと立ってるだけだし、ついネガティブな思考をしてしまう時も、さすがにあった。


 でも―――


 「そんなに喜んでくれる人がいるなら、それが理由なのかなって、ちょっと思ったよ」


 今までの時間が、報われたような、そんな気がした。


 「大地様……」


 「マリー……」


 「―――それはもうええっちゅうねん!」


 アカネが鼻から息を荒げていた。なぜだ。



◇◇



 「さて。それでは二人に、これからのオレの方針を伝えようと思う」


 落ち着いたタイミングで、オレは二人に切り出した。


 ちなみに、今は本体に意識があるが、アバターも出したままである。


 要するに、視点が二つある状態だ。


 あくまでオレ自身の意識は一つしかないが、本体が見ている光景と、アバターの目線、両方が視えている状態だ。


 前世の人間ではありえない状態なので、言葉で説明するのは難しいが、とにかく両方の視界を持っている。


 うーん、例えれば、某国民的サバイバルゲームの三人称と一人称視点を同時に見てるみたいな感じかなぁ。


 しかも、その三人称視点が、ほぼ360度の視界を持ってるんだよ。


 でもそれって、考えてみたら死角がないって事じゃん。強くね?


 ゾンビさんだって、物陰に隠れて背後から脅かしてくれてたのに、それもう通じないよ! ちょっと工夫してくんないと、つまんなくなるよ!


 「方針ですか? いいんじゃないですか、いつまでも、ここでこうしてる訳にもいきませんからね」

 

 バカな事を考えてないで、二人にちゃんと伝えておかないとな。


 「オレがこの森でやりたい事、それは―――環境整備だ!」


 「「環境整備??」」


 二人の声がハモる。


 「普通なら、どこかの街とか村とか、そういう所に落ち着いて、暮らしていくことになるだろ?」


 「まあ、普通はそうよね。私やマリーが街で暮らせるかは置いといて」


 ……それもそうだな。


 「しかーし! 本体がここにある以上、オレはここから動くことができない。ということは―――」


 「なるほどねー、それで環境整備なんですね」


 最後まで言わせろよ……まあいいけど。


 「というわけで、まずは、何はともあれ、家を作ろうと思う」


 また何か言いたげにしているアカネを遮って、オレは話を続ける。


 「いや待て、言いたいことはわかる。今のオレに家が必要なのかって、言いたいんだろ?」


 家を建てたところで、人間らしい生活など、ほとんど何一つできないのだ。


 だが、しかし!


 若木になったとはいえ、意識はあくまで人間。


 本体にいる時はともかく、今はだいたいアバターとして動き回ってる以上、野ざらしのままでは、落ち着かないし、安らげない。


 「やはり、衣・食・住は生活の基本。これらを充実させていく事が、すなわちここで生きていくと言うこと!」


 「素晴らしいお考えです!」と手を叩くマリーに向かって、サッと手を挙げて応える。


 「まあ、わからなくはありませんが……でもなぁ」


 いまいち納得がいかない様子のアカネ。


 「ん? なんだよ、言いたい事があるならハッキリ言ったらどうだ」


 先ほどはアカネを遮ったクセに、偉そうにその先を促す。

 

 「住はまあいいとして、衣と食なんて、今のところ必要ないのでは?」

 

 「…………」


 なかなか、痛いところを突いてくるではないか。


 そこは、あえて考えていなかったというのに!


 「どうでもいいですけど、センパイらしくない、可愛らしい姿ですよねぇ」


 あっ、そこも、あえて考えていなかったのに!


 どうでもいいなら、わざわざ言わなくてもいいんじゃないですかね?


 しっかり思い出させてくれるんだな!


 実は、本体からアバターを見た時に、思わず「うわぁ」というため息交じりの声を上げてしまった。


 幼児体形のずんぐりむっくりで、緑の半透明なのはもうわかっていたんだが、なんと頭の両サイドには、葉っぱが垂れ下がっていて、それが大きな垂れ耳のように見えるんだ。


 いわゆる”ロップイヤー”を持つ、ちょっとデカいウサギみたいな感じ。


 そんな可愛らしい生き物の中に、オレがいるんだぜ。シュールだ。


 「こんなに可愛らしいんですもの。森の皆にもきっと愛されますわ」


 全肯定マリーありがとう。


 「あれ、でもオレとアカネはともかく、マリーは家とかあるの?」


 そう問いかけると、少し寂し気な笑みを浮かべるマリー。


 「そうですね、以前は、たくさんの仲間たちと過ごした家が、ありました」


 ()()()()()、という事は、今はもう……ってことだよな。


 「そ、そうか、余計な事を聞いたな、悪い」


 「気になさらないでください。今は、大地様、アカネさんとご一緒できて、こんなに嬉しい事はありません」


 これ以上突っ込んでも藪蛇にしかならないので、話題を変えよう。


 「とにかく! オレが言いたいのは、これからこの森で、三人で楽しく、幸せに暮らしていきましょう!ってことなんだよ」


 それは二人共賛成だろ?という気持ちを込めて二人に視線を送る。


 ウンウンと頷くマリーの横で、下を向いてブツブツ呟いてるアカネ。


 「幸せに……一緒に……?」


 なんだか顔が赤い様な気がするが、どうしたんだ? バグでも出たのか? 森だけに。



◇◇



 精神を集中させ、アバターの手を前方に向けて、頭に描いたイメージを念じる。


 すると、地面に横たわっていた丸太が、ふらふらと宙に浮かぶ。


 そのままスーッと移動させていき、すでにいくつか組み上がっている丸太の上に、載せていく。


 これは、神授の森で生まれた植物なら、自在に操ることが出来るという、木造建築にはこれ以上ない便利な能力だ。


 名前がないと不便だという事で、勝手に名前を付けてみた。


 (このスキルの名前は、【操樹(そうじゅ)】だ!)


 まるで木を操縦してるから、みたいなダジャレじゃないよ、偶然だよ、ホントだよ。


 とにかく、家づくり、街づくりのためにあると言っても過言ではないくらい、今のオレにとっては、なくてはならないスキルだ。


 数年間立ち続けたオレへの、ご褒美に違いない。


 家づくり以外の何に役立つのか、まったくわからないが。


 もしかして、街づくりの神様とかの役割を持って生まれたんかな。


 (それとも、意外とこの世界ではみんな持ってる能力なのか?)


 せっせと丸太小屋を作りながら、とりとめのない事を考える。


 あ、ちなみにお気づきかと思うが、アバターの発する言葉はすべて「ぴぃ」となっているのでよろしく頼む。


 いちいち説明すると野暮なので、脳内変換をしておいて欲しい。


 「こんな能力、センパイ以外、持ってるわけないんだけど……」


 (そうなのか? そんなレアなものをいただいたとは、なんだか気が引けるが……まあ、便利なものは使わないと損だよな!)


 そう言って、近くに集めた手ごろな丸太を、次々に【操樹】を使用して操り、簡単な小屋を組んで行く。


 ちなみに、【操樹】などの能力は、アバターの姿でないと使う事ができなかった。


 本体からの神霊力の供給を受けて、アバターでその力を行使する、というイメージだ。


 そして、今その力を使って組んでいるのは、生木で作った応急措置的な丸太小屋だ。


 本当なら、こんな小屋はまず組まない。


 丸太加工してないし、基礎も丸太。


 おまけに屋根も丸太。


 これだとすぐ劣化するし、重くて長期間持たない。


 ただ、今日はもう時間がないんだ。


 アカネに教えてもらった能力をもっと上手く使えたら、色々やりようはあるんだろうが、昨日の今日どころか、今日の今日では、なかなか難しい。


 本格的なのは、明日以降、チャレンジしていこうと思う。



 それに、今日はとにかく濃い一日で、この世界に転生してから、一番目まぐるしい時間を過ごした。


 白銀のオオカミが突然マリーになったかと思うと、今度は柏木にそっくりなアカネまで出て来て、色々と話を聞いたり、スキルの確認などをしていたもんだから、すっかり辺りが薄暗くなってきている。


 そうなんだよ、これ全部今日の出来事だったんだよな。


 数年間、のんびりと立っているだけのオレにとっては、目眩がしそうなほど忙しい日だった。


 おっと、いかん。


 森の昼は短い。


 余計な事を考えてないで、今は早く小屋を組まないと。


 オレは急いで、とにかく今日明日と、雨露をしのげる小屋を建てていった。


 (―――っとっと、これ……で………完成!っと)


 屋根の最後の丸太を載せて、1時間急造丸太小屋が完成した。


 文字通り、ただ丸太を組んだだけなので、雨も風も、隙間からいくらでも侵入してきてしまう。


 でも、これだって【操樹】がなければ、本来なら何倍もの時間がかかるところなんだから、贅沢は言えない。


 完成した小屋の中に入ってみると、やはり元人間、建物の中にいるという安心感に包まれる。


 これは、当たり前だった元の世界では、あまり感じた事がない感情だ。


 オレに続いて、アカネとマリーも小屋に入ってきた。


 「へぇ~、さすが元建材商社の社員、いい仕事―――とは言えないまでも、まぁまぁの出来じゃない?」


 お前も元社員だ。


 あ、いや違うのか。ややこしい。


 「大地様は、このような建物を建てることが出来るんですのね! 驚きましたわ」


 手放しで賞賛してくれるマリー。


 (本当はもっと、いいモノが作れるんだけどね。それは明日以降のお楽しみって事で!)

 「ぴぴっぴ、ぴっぴぴぴっぴ、ぴぴぃいいっぴ!」


 ……そうだった、今は100%アバターに意識を移してるから、しゃべれないんだった。



 適当に枯草を敷いて、本日の寝床を作る。


 そこに横になったオレとアカネのすぐ側に、人化を解いたオオカミの姿で、マリーが横たわった。


 美しく、柔らかな毛並みに包まれて、とても温かい。


 「あたたかい……」


 アカネも、その温かさに、眠気がやってきたらしい。


 ……ノルンも寝るんだな。


 丸太の天井を見上げながら、そんなとりとめのない事を考えている内に、オレもウトウトしてきた。


 これから……ここで……みんな…で……たのし……く…………

 


 「おやすみなさいませ、大地様、アカネさん。願わくばこのまま、安らかな眠りを」

 

 入口から差し込む月明かりに照らされたマリーの顔は、穏やかでありながら、言葉にならない願いが込められているように見えた。


お読みいただき、ありがとうございます。


評価、ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)


執筆の励みにもなりますので、よろしければお願いします。

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