表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
若木大地(30)、転生したら若木だった件  作者: サトウススム
第一章 若木大地と森の仲間たち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/9

第3話 オオカミの正体、そして…

明日も4話を投稿予定です。

少しずつ読んでいただいていて、ありがとうございます!

 結論から言おう。


 彼は、()ではなかった。


 ―――()()だったのだ。

 

 ……え?


 なんでわかったのかって?


 もちろん、オレだってオオカミの生態なんてわからないから、獣の見た目でオスかメスか判断した訳じゃないんだ。


 いつものように、ただ突っ立ってぼーーっとしてたオレと、これまたいつも通り、オレの足元でくつろいでいた白銀のオオカミ。


 お友達のシマリスちゃんも、さっき見かけた気がするし、日差しが柔らかく、森を吹き抜ける爽やかな風が心地いい。


 それは、ここ数年変わらない日常だった―――んだが、それは突然終わりを迎えることになる。



 足元で寝転がっていたオオカミさんの耳がピクン、と何かに反応したかと思うと、すっくと立ち上がり、突然人の言葉を話し始めたんだ。


 それも、想像もしていなかった、鈴が鳴るような美しい、大人の女性の声で。


 あまりの出来事に、言葉を発することも出来ずに固まっていたオレの前で、さらに驚愕の出来事が起こった。


 なんと、全身がまばゆいばかりに輝き始め、その光の中から、見目麗しい女性が突然現れた、という訳なんだ。


 たぶん変身したんだ。


 自分で言っててバカらしいが。


 ……あれかな、ちょっと前に動画サイトで見かけた街頭ドッキリマジックか? それなら説明……つくかも?


 なんて、現実逃避気味の事を考えるしかできない。



 そして、唖然として何の反応も返せずにいたオレに向かって、その女性は落ち着いた様子で、静かに話し始めた。


 ほとんどは意味が分からない話だった。


 そんな中でも、どうにか理解できた部分があった。


 なぜかわからないが、ただの若木(植物)であるこのオレ、若木大地(30+数年)を色んな脅威から守り、付き従うと言い始めた。




 ―――さあ、どうかな、みんな状況わかってくれた?


 わかってくれたら、頼む、いったい何が起こっているのかオレに説明してほしいんだ。


 そしてどうしたらいいか教えてくれ。



 …………どう? 誰もいない?



 ………そうだよな、誰もいないんだよ。


 はあ……しょうがない。


 自分でなんとかするしかない。



 まずは、挨拶だ。


 初対面の人間(?)に会ったときは、明るく元気な挨拶。


 これは営業の――いや人間社会での基本だ。


 名刺は今持ち合わせがないのでお許し願いたい。


 ただ、一つ懸念があるとすれば、オレ日本語しか話せないけど、通じるんか?


 通っていた駅前留学の先生にも、苦笑いされるほどの見事な語学力しかないんだぞ?


 ……でもさ、今あのオオカミさん、日本語話したよな?


 ってことは、こちらの言葉も通じるって事だろ? 信じてるからな?


 ゴクリと喉を鳴らして、勇気を出して話しかけてみる。


 「あ、あの、初めまし……て? オレは若木大地っていいますが、アナタ……は?」


 営業失格と言われても仕方ない、全然明るく元気じゃない挨拶になってしまった。


 すまん。さすがにオレも動揺してるみたいだ。


 そもそも、オレは今植物であって、口も無ければ発声器官も多分ないんだ。当然、声なんて出せていない。


 だから、心の中で挨拶はしてみたものの、どうやったら先方に伝わるのか、何か方法がないか考えていたんだ。


 なのにだ。


 「まあ、大地様とおっしゃるのね。私はマリーと申します。どうぞよろしくお願いいたしますわ」


 ……通じちゃったよ。


 テレパシーとか念話とかそういうヤツかな。…同じ意味か。


 しかも、やっぱり日本語に聞こえる。


 ここは日本なのか?……いやあ、それはさすがにあり得ないだろ。


 よくわからないけど、とにかく、意思疎通が出来るんなら、こんなにありがたい話はない。


 なにせ、それを求めてこの数年間、ひたすらずーーーーっと立ち続けてきたのだから!


 いくら植物になって、時間感覚が変わって、ぼーっとしてるのが苦痛じゃなくなったとはいえ、それにしても限度ってものがあるんや!


 なんだかんだ言って、誰かとおしゃべりしたい! そりゃそうだろ!


 人間は、社会的な生き物なんだ!


 はいそこ! 人間じゃないとかいうツッコミは受け付けません!


 「オレの声、聴こえるんですか!? あ、あの、ここはどこなんでしょうか!? オレは一体誰なんでしょうか!? あ、いや自分の名前はわかるんです、そうじゃなくって、オレはなんで植物なんでしょうか!? 実はオレ人間なんです! しがないサラリーマンなんです!いやわかります、どう見たってしょくぶ―――」


 数年ぶりに誰かと会話が出来たという興奮から、頭に浮かんでいた疑問が全て吹っ飛んでしまい、思っていたことを畳みかけるように、口走ってしまう。


 「ええーっと、ちょっと落ち着いてくださいね。いきなりそんなにたくさんお話されても、ちょっと困ってしまいますわ」


 すると、白銀の美女は苦笑しながらも、優しく落ち着いた雰囲気でたしなめてくれる。


 ◇◇


 まだ少し興奮状態ではあったが、女性と色々と会話することで、状況が少し、ホントに少しだけだがわかってきた。


 さすがに自分が元の世界で(おそらく)死んで、(たぶん)元の世界ではない場所に転生したんだろう。


 それは(だいたい)察しがついていた。


 だが、ゴブリンはともかく、オオカミが人間に姿を変えるというのは、”くまのこみていたかくれんぼ~”とかのお話でもなければ現実ではあり得ない。


 これで、もう異世界転生は確定したと言ってもいいだろう。


 よし、ハッキリしてむしろスッキリしたわ。


 ちなみに、女性と話しているうちに気付いた事がある。


 自分の心の中で思った事、考えた事が全て伝わるわけではなく、人間だった時の様に、相手に話しかけるつもりで思った事だけ、伝わるようだ。


 ……正直助かる。


 だって考えても見てくれ。


 目の前の女性は、和服と洋服の中間の様な服をお召しだ。


 胸元がかなり大胆に開いていたり、和服の様な合わせなのに、スリットというか長い裾の隙間が大きく開いている。


 そんな状態だとどうなるかと言うと、健康的なおみ足が太ももまで露わになっておられる。そんなお姿なんだ。


 そんなにも魅力的な外見を持つ女性を一目見て、スタイル良ッ!とか脚ながっ!とか胸デッ…!とか、一瞬でも考えない男がいるだろうか!?いや、いるはずがないッ!!!


 しかも最近それは男だけじゃなくって、女性でもエッな恰好してたら見ちゃうって聞いたんだよ。


 ということで、魅力的な人がいたら全人類が見ちゃうし、全植物も見ちゃうってことが証明されたわけだ。


 それはもう宇宙に定義された自然の摂理なんだよ。


 でも、それはどうやら伝わっていない様なのでセーフ!


 いや女性はそういう視線はすぐわかるらしいのでバレてる可能性は大。


 しかし思ったことが伝わっていないなら最低限セーーーフ!!!


 しかも今自分は植物!


 視線すら気取られる心配がない!!……はず!


 ……これは捗るな……ふう……


 ――とにかく、内心何を考えてるかはとりあえず置いといてくれ。な?



 気を取り直して、お話を進めて行こう。


 「私はマリー、見ての通り、この森で暮らしておりまして、大地様が目覚めた気配に惹かれてやってきましたの」


 そう、この人はマリーさんと言うらしい。


 女性に年齢を聞けるわけもないので想像してみるが、見た目の若々しさからは20代前半、といった感じがする。


 よく見ると頭にはいわゆるケモミミが付いていて、白銀の美しくしなやかな髪が腰のあたりまで伸び、腰からは見事な毛並みの尻尾が垂れている。


 もふもふだ。


 顔をうずめたら気持ちよさそう。


 人型に変身する前の白銀のオオカミの時から、その大きさと言い毛並みと言い、只者ではないのがパッと見るだけで十分感じられた。


 こうして話していると、目の前の女性が放つ存在感がマジでハンパない。


 なので、見た目はオレより若そうだが、見ていると圧倒されるような気配を感じる。


 きっと名のある魔物なんだろう。


 もしかしたらこの森の主的なアレなのかもしれない。


 あの日、ゴブリンから助けてくれたのも、実は偶然じゃなかった……ってことかな? 多分そういう事だよなぁ。


 でもまあ、とりあえずその辺は深く突っ込まないでおこう。なんか聞いても答えてくれなさそうな雰囲気だし。


 ――というか気配ってなんだ。いつの間にオレはそんなもの感じられるようになったんだ。


 よくはわからないが、とにかく何かを察知するような感覚が、確かにある。


 それに、どうもマリーさんが日本語を話している様には思えないのに、なぜかオレには日本語に聞こえる。


 そしてオレは日本語で話しているつもりなのに、きっちりとマリーさんに通じているようだ。どういう仕掛けなんだろ。


 ……まあいいや、今はそんな些細な事はどうでもいい。


 それより今は聞きたいことが山のようにある。


 「マリーさん、オレはどうして植物になってるんでしょう。転生するにしたって、普通、人間とか魔物とか、とりあえず動物に転生するものなんじゃないでしょうか? 前世はただのサラリーマンの人間だったんです。」


 (いや転生にルールとか法則なんてあるのかどうか知らないが、植物なんてあまりの仕打ちじゃないでしょうか!?)


 (オレそんなに前世で悪い事しましたかね!? )


 (あー……多少心当たりがないわけでもないが、でもさ、みんな意外とそんなもんだよね!? そんな清廉潔白に生きてますぅ!?)


 (しかもオレ、最後に人の命助けましたぜ!? それじゃ足りないってコトォ!?)


 ――などと、またまくし立ててしまいそうになるがグッとこらえて、ホントに聞きたい部分だけで我慢する。我慢出来てエライ。


  いやまあ、マリーさんに聞いても仕方ないのかもしれないが、今のところ他に聞ける方はいらっしゃらないので仕方がない。


 「ごめんなさい、人間界の知識はあまりなくて………さらり……まん??というものはよくわかりませんが、貴方は……ん-、そうね、私にとってとても大事なお方よ。」


 ダメ元で聞いてみたんだが、そんなはずはないのに、どうもマリーさんはオレの事を昔から知っている様な口ぶりだ。


 そこのところもう少し詳しく伺いたかったが、「うふふふ」としか返ってこない。


 「まあ、そんな事は気にせず、これからは私と一緒に、この森で暮らしましょう? きっと楽しいですわ」


 ……そ、それはまあね? こんな美女とご一緒できるのであればね? やぶさかではないというかね?



 「それにしても、どうして今まで話しかけてくれなかったんですか? ゴブリンから助けてくれた時から、毎日のようにオレの所に来てくれてましたけど……樹の中にオレがいるって、わかってたってことですよね?」


 「あら、それは―――」


 マリーさんが何かを言いかけた瞬間、また何かの異変を感じた。



 【――――ザ……ザザ――――】


 何かノイズの様なモノが脳内で聞こえてきたかと思うと―――


 今度はマリーさんではなく、オレ自身が輝きだした。


 またかよ、今日は“森の輝きキャンペーン”でも開催中なのかよ!?


 さっきマリーさんが白銀に輝いた時よりもさらに眩い、黄金の輝き。


 ―――はっ!?


 まさか、オレも高身長イケメンに変身する時が、ついに来たのか!?


 若木から若木なんていう、ギャグとしか思えない転生を強いられたオレに対する、損害補填がやっと来たか!?


 「なっ、なんだぁああ!!??」


 イケメン(イケオジでも可)に変身するのを期待しながら、自分を包み込む黄金の光を見ていると、ふと思い出した。


 ――そういえば、あの時も……オレが前の世界で死んだ時も、こんな感じの光に包まれたような……気がするな。


 【――再構築、準備完了】


 死にゆくオレに縋り付いて、涙を流してくれた柏木の姿を思い出す。


 【マスターの情報、記憶を閲覧、解析―――完了】


 まさか、あんな風に泣いてくれるなんてなぁ……若くして死ぬっていう最悪の状況の中、柏木のあんな顔が見られた事が唯一の救いか。


 【外見情報を取得。―――ザザッ――の生体情報を元に構成開始】


 ……なんだかさっきからうるさいな。誰だよ?


 よくわからない声が聞こえているが、今はまぶしくてそれどころではない。


 誰かに文句を言いたくても、発光しているのは自分自身なので、文句も言えないよな。


 オレの身体から発生した黄金色の光が辺りを一面に照らし、目も明けていられないほどの眩しさにしばらく耐えていると、やがてその光が一点に収束するように集まる。


 どうやらイケメンに変身できるわけではなさそうだ。


 ……しつこいとか言わないで欲しい。



 黄金色の光の粒子が、収束し、何かの形に――あれ、これって―――ヒト?


 光が収まった後にそこから現れたものは、人だ。


 しかし人間とは言えないような……


 だって、明らかに小さい。そして背中に透明の羽がヒラヒラと淡く輝きながらはためいている。


 いくら今の自分がかなりの高さを持つ樹だからって言っても、さすがにわかっちゃうぐらい、小さい。


 普通の人間の手のひらサイズぐらいしかないんじゃないか?


  

 待てよ。あの姿、どこかで……


 その姿をオレの脳みそ(無い)から引っ張り出した記憶にある姿だと認識した瞬間、オレの心臓(だから無い)が跳ね上がったような気がした。



 ―――っていうか! は!? えええっ!!!???


 う、嘘だろ????


 そんなバカな。


 いやちょっと落ち着け。


 「―――ふうぅぅぅっ……」


 こういう時は深呼吸だ……いや気持ち的にね?


 幸い深い森という事で、新鮮な空気はそれこそ売るほどある。


 少し気持ちを落ち着けて、再びその光から生まれた存在を凝視する。


 オレの目がおかしくなったんでなければ……


 あ、あれは――――――


 【初期設定開始――バックアップより人格・記憶継承―――現界完了】


 あの姿は―――


 「お久しぶりです、と言うべきでしょうか、センパイ?」

 

 ()()は、オレの事を『センパイ』と呼んで微笑む、『()()()()』その人だった。



お読みいただき、ありがとうございます。


評価、ブックマークなど頂けたら、とても嬉しいです(#^^#)


執筆の励みにもなりますので、よろしければお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ