表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/26

9.母の痕跡

「おい、侵入者は!?」

「見当たらねぇ! どこに隠れやがった!」


 ノウス教団は入り組んだ地下水道を拠点として利用していた。シノブにとっては隠れやすく、好都合である。


 追手が去っていくのを確認し、こっそりと動き出す。


「臭い……」


 ルリットが鼻をつまんだ。確かに酷いニオイである。

 シノブとルリットは物陰に隠れながら進んでいく。


「む? これは……」


 ふと、シノブのセンサーが1本の髪の毛を感知した。地面に落ちた長いそれを拾い上げる。桃色の髪の毛。


「生体データ……ルリット殿との血縁者の可能性……」

「ママ!? ママの髪……!」

「毛根部分に新しい細胞──数時間前に抜けたものでござる」


 ルリットはシノブに縋りついて、髪の毛を見つめる。青い目が大きく揺れた。


「ママがいた……! ここに!」


 シノブは髪の毛がいくつか落ちているのを見つける。暴れたのか、揉み合ったのか。ただならぬ事があった様子である。


 髪の毛を辿ると、少しだけ開いた扉があった。錆びた鉄の扉を引く。そこは小さな部屋だった。誰もいない。妙に静かだった。


 手錠が転がっている。また、簡素な机に何枚かの紙。シノブは紙を手にとり内容をスキャンした。


「ルミエールにて逃走中だったレイアを捕縛、本拠地へ輸送する──」


(レイア殿……。状況から考えると、これはルリット殿の母君の事で間違いなかろう)


「……ママは?」

「どこかへ……連れて行かれたようでござる」


 遅かった。もう少し早ければルリットは母親と再会できたかもしれない。シノブは肩を落とし、ルリットはひと粒の涙を流した。


 シノブは更に紙をめくる。あまり重要な情報はない。だが、ある一文が目を引いた。


 ──紋章の子が持つ、時を操る力。理想郷を開くために不可欠。


「時を操る……?」


 シノブはルリットの手の甲を見た。謎の痣。森で魔物に襲われた時、眩く光った。

 あの時、魔物は突然“止まった”ように見えた。


(あれが、時を操る力だったのでござるか……?)


「ルリット殿、手を」

 シノブはルリットの手を取り、痣を見つめる。ルリットも同じように痣を見た。

「これ、なんなんだろうね? へんなの」


 シノブはひと呼吸おいて、どう説明すべきか考えた。


「ルリット殿、この手にはとても不思議な力が宿っているのでござる」

「不思議な力?」

「うむ、ルリット殿の力を欲しがる者たちもいる。だが、必ず拙者がお守りする故、安心召されよ」


 ルリットはよく分からないながらも頷いた。シノブはルリットを安心させるよう、微笑みかける。


「これ以上の長居は危険でござるな。ルリット殿、ここを出るでござるよ」


 ルリットの手を取り、扉を開けた瞬間。


 冷たいものがシノブの首に当たる。

 それは、氷でできたレイピアだった。部屋の温度が急速に下がっていく。


「やあ、探しものは見つかったかい?」


 シノブはルリットを抱き寄せて後ろに跳び、体勢を整える。


「セリオン!」


 セリオンはレイピアを構える。冷たい尖先が鋭い光を帯びている。


「レイアならさっき輸送されたばかりだ。残念だったね」


 その言葉にルリットが身を乗り出して叫んだ。

「ママを知ってるの!?」


 セリオンは少し間を置く。


「知り合いさ」


 その目には複雑な感情がこもっていた。


「紋章の子。いや、ルリット。君がいないと計画は始まらない。俺達と来てくれるだろう?」


 ルリットはただならぬ空気を感じたのか、静かに首を横に振った。


「嫌……! ルリットはシノブお兄ちゃんといる! お兄ちゃんといれば、なにも怖くないんだから……!」

 シノブはルリットの言葉に力強く頷いた。セリオンはやれやれと呆れ顔だ。


「シノブお兄ちゃんが大好きってワケね。ハイハイ」


 セリオンが仮面を外した。真剣な眼差し。黒い真珠のような瞳には余裕が感じられる。


「なら、楽しい力比べのお時間だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
シノブの分析能力凄すぎる  時を止める力の理想郷の関係性が気になって早く知りたい ちなみにセリオンの瞳は黒いんですね。ありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ