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6.晩餐、侵入者

 広いテーブル、真っ白なクロス。その上には沢山の銀の食器とご馳走たち。

 まさに貴族の晩餐である。


 豪奢な椅子にちょこんと座ったルリットは、シノブの方を見つめていた。というか、この場にいる全員がシノブの前に置かれた陶器の瓶に注目していた。


「その……君は本当にそれだけでいいのかな?」


 シノブとルリットを招いた男が遠慮気味に尋ねる。それ、とは瓶の中の食用油の事である。


「ロボットである拙者に食事は不要。燃料さえあればそれで十分でござる」


 ルリットはちょっと困惑しながら、

「シノブお兄ちゃん、本当にお腹すかないの?」

と尋ねる。シノブは何でもないように頷いた。


「ルリット殿は人間。しかも育ち盛りでござる。しっかり栄養を摂られよ」

 その言葉に、男も賛同した。

「そうだとも、遠慮せず食べなさい」


 シノブは食用油を経口摂取しつつ、ルリットの様子を観察する。


「おいしいね!」


 ニコニコと食べ進めるルリット。ナイフとフォークを上手に持ち、キレイに食べている。

「ルリット。君は食べるのが上手いな」

 男に褒められて、ルリットは照れ臭そうだ。


「ママが教えてくれたの!」

「素晴らしいお母様だね」


 うん! とルリットは力強く頷いた。


 食事が終わり、男はシノブとルリットを別の部屋に招いた。

 そこで待っていたメイドは、大きなクローゼットからいくつかの服を取り出した。


「シノブ。私の娘のお下がりだが、ルリットに着せてやっていいかね」


 男はルリットのボロボロの格好を見兼ねたらしい。ルリットは目を輝かせて服を見ている。


「な、なんと……! そこまで気遣っていただけるとは。この御恩、どうお返しすれば良いか」


シノブは深々と頭を下げた。男はいやいやと首を振る。


「旦那様! それと、お客様! レディが着替えますので、出ていって下さいな!」


 メイドに追い出されて数分後、扉が開き、ルリットが飛び出してくる。


「シノブお兄ちゃん! 見て!」

「おお! 大変身でござるな!」

「でしょー!」


 ルリットはくるりと回転した。Iラインのスカートがふんわりと広がる。上品な紺色の布地。胸元の赤いリボンが愛らしい。

 髪はキレイに梳かされ、三つ編みが2つぶら下がっている。


(明日からは拙者が髪を結ってやろう……)


 そうして、シノブはメイドから30種類程の髪の結い方を学んだ。学んだ、というよりはデータを取り込んだという方が正しいが。


◆◆◆


 その晩の事である。


 月のない夜。シノブはルリットが眠りについた事を確認して、蝋燭の光を吹き消した。あたりが闇に包まれる。

 シノブには暗視機能が備わっている。暗闇でも不自由しない。


「少しスリープモードに入っておくか……」


 ルリットのベッドにもたれて座り、目を閉じかける。

 

 キィ……、と窓が開く微かな音。シノブは目を開く。

 窓が開き、深紅のカーテンがひるがえった。夜風がシノブの頬を撫でる。


 誰かが床に足をつけた音。シノブは動かず、様子を伺う。カーテンの隙間から、男が顔を出した。


 ハーフアップの銀髪が靡く。20代後半くらいだろうか。凝った装飾の仮面をつけており、顔は分からない。しかし、その生体データには見覚えがあった。


(この男……ひったくりの生体データと完全に一致する……)


 見た目は全く異なっているが、同一人物だとシノブは確信した。


 シノブは動揺し、少し身動いだ。男はそれに目敏く気づく。


「なんだ、起きてるじゃないか」


 男は目を細めた。シノブは静かに立ち上がり、ルリットを守るように立ち塞がった。

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― 新着の感想 ―
ルリットの髪型を30種類も覚えるところがかわいい ハーフアップの銀髪!ありがとうございます。好きです。こうゆう感じ
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