19.中央広場の決戦
派手な金属音が響く。火花が散る。
周りのカラクリたちは、2体の戦いを息を潜めて見つめている。
カラクリ兵が熱風を巻き上げながらシノブに突進した。シノブはそれを躱し、ナイフをカラクリ兵のコアに突き立てようとする。
が、カラクリ兵はナイフを右腕で跳ね返した。
ナイフはシノブの手を離れ、数メートル飛ぶ。
「くっ……!」
「排除……スル……!」
カラクリ兵の全力のパンチを、シノブは飛び上がって躱した。そして、カラクリ兵が体勢を整える僅かな間でナイフを回収する。
カラクリ兵はシノブのマフラーを無遠慮に掴んだ。そのまま引っ張られ、シノブはバランスを崩す。
「させぬ……ッ!」
シノブは自らカラクリ兵の懐に入り込み、ナイフをその頚部パーツに突き刺した。配線が何本か切れ、歯車の破片が散る。
「ギギギ……!」
カラクリ兵はシノブのマフラーを放し、頭を抱えてよろめいた。ガチン、ガチン……と、歯車が噛み合わず火花が散る。
「マダ……ワタシ ハ ……!」
カラクリ兵が再び突進の姿勢を取った。内部からはガチャガチャと壊れた機械の音がする。
地面を強く踏みしめて、カラクリ兵が突進した。シノブは低く体勢をとり、迎え撃つ。
雨の中、二人の影が交差した。
キィーン、と鋭い音。シノブの手にナイフはない。
ナイフは、カラクリ兵のコアに突き刺さっていた。
「ガ……ガガガ……」
カラクリ兵が仰向けに倒れた。シノブは振り向いた。焦げ臭い煙があたりに充満する。
カラクリ兵は立ち上がろうとするが、それは叶わず地面に崩れ落ちた。
雨が弱まる。風が黒い雲を運ぶ。
雲の隙間から、朧月が顔を出した。その光がカラクリ兵を優しく包んだ。
「……ガ……ト、ウ」
カラクリ兵は酷いノイズ混じりに、ちいさな声を発した。シノブは耳を澄ませた。
「止メテクレテ アリガトウ……」
シノブは目を見開いた。
「カラクリ兵殿……!」
瞬間、凄まじい熱風が噴き出して、カラクリ兵の巨体がバラバラと崩れた。
暴走していた他のカラクリ達は、目が覚めたように正気に戻った。金属の足音をたてながら去っていく。
沢山のカラクリ達が倒れ伏す中央広場。シノブだけが、柔らかな雨を受けながら立ち尽くしていた。
◆◆◆
「なによ、なんなのよアレは!」
屋上で一部始終を見ていたルーザはヒステリックに地団駄を踏んだ。手に持っていた黒い箱を地面に叩き付ける。箱は壊れ、中から配線や歯車が飛び出した。
「あれが例の“ヒーロー気取りの化け物”さ」
セリオンの言葉に、ルーザはハッとした。
「……あれが! なら紋章の子も近くにいるはず……!」
ルーザはイライラした様子で爪を噛み始める。
「あんなのが居たんじゃ、近づけない……!」
ルーザのキンキン声に、セリオンは頷いた。
「ああ、強かった。カラクリ相手なら無双だ」
セリオンは意味深に笑う。シノブの持つ、致命的な弱点を開示する気はないらしい。
「俺は退散するよ。面白いものも見れたしね」
セリオンは屋上から飛び降り、闇の中に姿を眩ませた。ルーザはまだ爪を噛んでいる。
「紋章の子を手に入れなきゃ……! 早く、早く早く!」
ガチン、と上下の歯がぶつかる。
「早く、理想郷に!」




