11.教団
ノウス教団、本拠地。
薄暗い会議室で、幹部たちは大理石の円卓を囲んでいた。
セリオンは、手のひらの上で氷の結晶を舞わせて遊んでいる。
「で、紋章の子を見つけたんでしょ? どうしてここに居ないのかしら?」
長い赤髪の女が少々苛立った様子でセリオンに尋ねた。セリオンは薄ら笑いを浮かべている。
「性急だな。なに、少し泳がせてみようと思って」
その答えに、女は怒りを露わにした。ドン、と机を叩く。
「儀式の時は近づいてる! これ以上待てない……もっと本気で理想郷を目指しなさい!」
「おーおー、嫌だね、女の癇癪は」
セリオンの揶揄いに、女は更にヒートアップした。
「ようやく裏切り女を捕まえたのに……! 肝心の娘の方が手に入らないんじゃ意味ない!」
「そうカリカリするなよ」
「なんなのその態度は! 真剣さが足りない!」
二人の諍いを、西洋甲冑の男が仲裁する。低く重い声が場に響く。
「落ち着け。紋章の子はまだ年端も行かぬ幼子。捕まえるのは容易い」
その言葉に、セリオンが反論する。
「さて、どうかな? あの子の側には厄介な化け物が引っ付いちゃってるんだよ、これが」
「厄介な化け物……。詳しく聞かせろ」
甲冑の男が興味を示す。女も耳を傾けた。
「見た目は人間だが、中身はカラクリ。そいつが紋章の子を守ってる。ヒーロー気取りでね」
女は鼻で笑った。
「じゃあなに? そのカラクリに負けてきたの? だから娘を連れて来られなかったんでしょう?」
「さあ、どうかな」
曖昧に微笑んだセリオン。セリオンと女の間に火花が散った。
「カラクリとは……。これもレイアの差し金だろうか」
甲冑の男は腕を組む。
セリオンが口を開く。
「それと、紋章は覚醒しつつある。俺もその力を喰らったよ」
女が目を見開き、甲冑の男が身動いだ。
甲冑の男はしばらく考え込んだあと、女の方を向いて口を開いた。
「そういえば例の件はどうなった?」
女は、ああ、と思い出したように声を出す。
「メカニケルの連中ね。あの街の連中といったら、全く信仰心というものが足りないの。こちらの申し出をことごとく断ってくるのよ!」
「信仰心、ねぇ……」
セリオンはウンザリした様子で呟いた。女がセリオンを睨みつける。しかし、すぐにやめた。
「何度も教団に歯向かってきて、嫌になっちゃう!」
そう言ったものの、女はニヤニヤと笑っている。
そして上機嫌な様子で、机の上に小さな黒い箱を取り出した。
セリオンと甲冑の男が箱を見つめる。何かの機械のようだ。赤いボタンのようなものがいくつかついている。
「メカニケルの連中に目にもの見せてやるの」
女が赤髪をふわりと舞わせた。
「このルーザ様が、あの街をもっと従順にしてあげるわ!」




