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◇◇盈虚◇◇


「名前が嫌いなの?体質も?私は好きだよ。満月でも新月でも見えなくても月はある。雪が降れば月は隠れる。そうしたら月は下からは見えない。(あなた)を見れるのは私だけ。盈虚(えいきょ)の全てを私が覆って隠してあげる。それでいいでしょ?」

 そう言って笑うお嬢様を思い出す。

速く、速く、速く、もっと速く!もっともっと速く一秒でも速くお嬢様の元へ行かないといけない。私のせいだ、私がお嬢様から離れたから。離れるべきじゃなかった。自分を許せない。命に代えて救い出す。必ず。

 あなたの言葉に何度も救われたんです。私の事をかっこいいって、頼りにしているって、好きだって、私の物だってそう言ってくれたから私は今生きていられます。


◇◇美月◇◇


 私は突然走りだした、スーツさんを追いかけました。最初は走って追いかけたのですが、早すぎて見失ってしまいました。仕方がないのでまた空を飛び追い掛けます。走り出して数分しか経っていないはずなのに上から見渡してようやく見つける事が出来ました。彼女は数キロ先にあるホテルの近くにいるようです。何があったのかわかりませんが、尋常ではありません。放っておくことは出来ないのでもう一度話しかけてみます。何か力になれる事も有るかもしれないですし。


◇◇盈虚◇◇


 いない。なんで?発信機点いたのはこのホテルだった。そして、数分後にこの近くで消えた。部屋にお嬢様は居なかった。フロントで確認したが、出て行った様子はないという。これで誤作動の可能性は低くなった。帰ってきた事はフロントの人が確認している。なのに突然消えた。発信機も消えた。普通の方法では気がつく事は出来ない。ならばこれは裏社会の人間が関わっているのだろう。それも恐らく、人ならざる存在が。最悪の状況になった。どうすればいい?ホテルの裏口に立ち考える。一先ず社長に連絡を取り、それから。

「あの」

 警察に連絡するわけには行かない。まだ遠くに行ってはいないはずだ。ならばこの辺を走り回って探すべきか?だけど、このホテルの何処かに囚われている可能性も否定できない。ならばどうするのが正解か?

「あのー、あのすみません!」

「誰だ!あーあんたか。すまないが今忙しい」

「そうですよね。えっと力になれる事があればと思ったんですが」

「いや待て、お前どうしてここにいる?こんな短時間で移動できる距離じゃないだろ!お前が犯人の一味か?話し掛けてきたのは足止めの為か?お嬢様を誘拐したのは何故だ!話せ!」

「お、落ち着いてください。誘拐なんて知らないです」

「じゃあどうやってここまで来た?」

「と、飛んできました」

「は?」

「見ててください」

 そういうと彼女は文字通り浮いた。

「…お前、超能力者の類か人ならざる存在かどっちだ?」

 何と答えようと即座に攻撃出来るようゆっくりと構えを取る。お嬢様の居場所を聞き出さなくてはいけない。殺す訳には行かないが無事に済ますつもりはない。

「えーっと、説明が難しいんですが、この力は貰った物です。私は人間です」

「そうか。まあいい。聞くべきことは一つだ。お前はお嬢様の誘拐に関わっていたのか?」

「違います。信じてください」

 そう言われても信じる訳には行かない。お嬢様の誘拐に超常の力が関わっている可能性があり、超常の力を使える存在が目の前にいる。偶然とは思えない。ここで話をしているのも時間稼ぎの可能性がある。少し強引に聞き出すかそう思った時だった。

「ほんとに空飛んでたんだって」

「嘘だろ。人が飛ぶなんてありえねえよ」

「俺も見たぜ人人がスーッと飛んでたんだよ。この辺に降りたはずだぜ」  

 そんな会話が聞こえてきた。慌てて小声で話し掛ける。

「お前、そのまま飛んできたのか?姿消すとかなんかしなかったのか?」

「えっと、すみませんそこまで頭が回っていなかったです。あの、姿って消せるんですか?」「知らん!兎に角こっちへ来い」

 飛んでいた人間が本当にいたら騒ぎになってしまう。慌てて手を引き、ホテル近くの物陰に隠れる。

「姿消せないのか?なんかそういう能力とかさ」

「今日貰ったばかりの能力なので良くわからないんです」

「はあ?」

 この抜け方はとてもじゃないが裏社会の人間とは思えない。だけど、演技の可能性もある。どちらにしろこんな怪しい奴放置しておくわけには行けない。どうする?お嬢様の誘拐に関りがあるのか?一先ずホテルに連れ込み拘束した上で、社長に連絡し人を派遣してもらい話を聞き出してもらおう。そう考えて振りむいた所、居なくなっている。


 逃げられた。そう思った時だった。

「見てください!これ消えていませんか」

 目の前から呑気な声がした。慌てて手を突き出すとキャッと言う声がした。感触からすると腕だろう。実態はあるようだ。

「あの…消えてます?」

「ああ」

「良かったです。透明になるのってどうすればいいのかわからなかったんでとりあえず風景と同化出来ないかなって。ほらグリーンバックってあるじゃないですか。あんなイメージで。まさか一回目で上手く行くなんて」

 調子が狂う。こいつは本当になんなんだ。とりあえず逃がさない為に手は掴んだままにしておこう。

「あの、それでどなたか誘拐されているんですよね?警察に連絡しないと」

「何言ってんだお前。そんな事しちゃ駄目だろ」

「え?何でですか?」

 何でって。こいつ本当に何も知らないのか?もう頭がこんがらがる。面倒だ。時間も大分経ってしまった。一先ず拘束してから考えよう。そう決めた時、足音が近づいてきた。


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