11
短めです。
◇◇盈虚◇◇
兎に角一度深呼吸をする。落ち着かないと。私はお嬢様と違い緊急時に感情的になってしまう。感情を上手くコントロールできない。冷静になれ。いつも諭してくれるお嬢様はいない。私が落ち着いて行動しないと。スマホを部屋に忘れた事も今更気がついた。部屋に行く時間ももったいない。緊急連絡用のスイッチを押す。これで神薙家に連絡が行く。すぐに応援が来るはずだ。次に今手を掴んでいる女から事情を聞き出す。無関係とは思えない。おい、そう声を掛けようとした時、足音が聞こえてきた。
防犯カメラは神薙家の方で何とか出来るから気にしていなかったが一般人は困る。口止めも面倒だ。どうするかそう考えていた時だった。
「あれ?盈虚さんですよね?」
◇◇咲◇◇
ずっと手首を掴れていて痛くなってきました。離して欲しいですがスーツさんはずっと考え込んでいます。さっきは誘拐がどうとか言っていたので力になれるのならなりたいですが明らか冷静じゃありません。話し掛けても何かを考え込んでいるようで上の空。こうなったら止められたけど警察を呼ぼう。そう決めた時です。微かに足音がしたので振り向くとそこには私の知っている人がいました。
なんでここに美月先輩が?
◇◇美月・咲・盈虚◇◇
「ここにいるって事は雪さんと会えたんですね。良かったです。心配していたので」
「えっと?誰だっけ?会った事があるような?あいやそれよりもお嬢様と会ったのか?どこで!」
「えっと、さっき近くの公園で。何度かパーティーで顔を合わせた事があります。話した事はないですが」
「今は何処にいる!」
「え?ホテルまで送って来たので部屋にいると思いますけど」
「いないんだよ!会ったっていつの話だ」
「え?えーと、三時間前あ違う、こっちだと二十分くらい前かな」
「言ってる事が良く分からない!どっちが正しいんだ!」
「落ち着いてください。冷静になって」
「そうです。心配なのはわかりますが、冷静になってください。時間は二十分くらい前で間違いないです。居なくなってるってどういうことですか?電話とかしましたか?」
「そんな事態じゃないんだよ!ああ、ごめんちょっと落ち着かせてくれ。色々あり過ぎてもうよくわからない」
「わかりました。急にすみません。とりあえず警察に連絡しましょう」
「そうです、やっぱりそうするべきです」
「…あの、私たち以外にも誰かいますよね?しかもこの声聞き覚えあるんだけど」
「今はそれどころじゃない!というより警察は駄目だ。お嬢様を探さないと」
「あ、そうだ人探しなら丁度いいものありますよ。人探守って言うんですけど。えっと説明が難しいな。あ、でもこれちゃんと機能してないかな」
「それお守りですか?」
「ちょっと違うな。…ねえやっぱり誰かいるよね?」
「あ、すみません。姿消したままでしたね。私です咲です」
「咲さん?やっぱりそうだよね!声聞き覚えあるもん。え?姿消しているってどういう事?」
「ちょっと待ってくれ!それ本当に人探守か?伝説の代物だぞ」
「え?そんなに貴重な物なんですか?」
「ああ。それ本物か?」
「多分そうです。私咲を探してここに来たので。えっと見えないけど本当に咲でいいんだよね?」
「本物なんだな?本物なら貸してくれ!頼む!」
「あ、はい。どうぞ。持ちながら手を合わせて探す相手を思い浮かべると赤い線が出てきます。その先に、あ、もうやってますね」
「え?宙に何ですかこれ?漫画とかで出てくるポータル?みたいな?」
「狭魔?あちょっと待ってください!何があるかわからないのに飛び込むなんて危険です!」
「お嬢様今行きます!」
「もう行っちゃいましたね。先輩ありがとうございます。私様子見てきます!ここにいてください」
「え?ちょっと待ってよ!…あれ咲さん?まだいるよね?え?もう行っちゃったの?おーい」
主人公の二人は殆ど何も把握していない。
前回の後書きで美月に月を付けたのは理由があると書きましたが、自分の書いている世界一愚かな選択をあなたとを読んでいただければ何となくわかると思います。(ダイレクトマーケティング)




