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◇◇咲◇◇


 私は一人サークルの飲み会を抜け出しました。二次会が始まりそうでしたが、先輩や後輩のいる前では好きに飲めません。私は二年生ですがとある事情によりお酒を飲むことができます。ですが周りの同級生は飲めません。そんな中一人だけ飲むというのも気恥ずかしいものがあります。

 まだ22時を回った頃。明日は一限目から授業あり、一日大学にいる必要があるけれどもう少しなら飲んでも大丈夫。どこかで自分の好きなように飲もう。そう考えた私は夜の街を一人で歩き始めました。少し遠いけれど、いくつか通りを進み街の端のほうに行けばお気に入りのバーがあります。そこを目指して歩いていた私は、ひっそりと建っている鳥居に気が付きました。

 

 鳥居は道の横に立っており裏には街路樹があるだけで何もありません。とてもしっかりとした作りで古いものに見えます。今まで何度も通ったことのある道だけれど、気が付きませんでした。

 鳥居は他の神社にあるものと比べて半分くらいの大きさに見えます。それでも目立つはずだし今まで気が付かないなんてことあるのかな。そんなことを考えながらせっかくだからと手を合わせました。すると次の瞬間景色が変わっていました。


「え、ここ何処!?」

 私は困惑して周囲を見渡しました。鳥居の前にいたはずなのに、神社の境内にいました。かなり大きな神社です。これだけ立派なら有名になっていてもおかしくないけどテレビでもみたことがないし、こんなところに神社があるなんて話は聞いたことがないです。そもそもさっきまでいた道ではなくなっています。鳥居も見当たりません。そしてふと空を見上げると星が渦巻いて月が3つありました。夢でも見ているのかと考え始めたその時、私の前に突然一人の女性が現れて言いました。

「いきなりだけど貴方『妲己(だっき)』継がない?」

「はい?」


◇◇美月◇◇


 私は(さき)が消えた後の鳥居を見て呆然としていた。目の前で咲が煙のように消えてしまったのだ。周囲を探しても、鳥居の裏を見ても誰もいない。そもそもこんなところに鳥居なんてなかったはずだ。幻を見るほど酔ってはいないと思う。付き合いで最初に一杯飲んだだけだし。

 私は元々咲を追いかけてサークルの飲み会を抜け出した。彼女は私の一学年下の後輩であり、片思いの相手だ。飲み会で話しかけようとしていたけれど、きっかけを見つけられずそうこうしているうちに咲は飲み会を抜け出してしまった。

 元々お酒は苦手で余り飲まないし、飲み会の雰囲気もあまり好きじゃない。二次会まで付き合う必要はないだろう。咲も抜けるならせめて一言声を掛けよう。そう思ったのだ。

 慌てて追いかけたのはいいものの、結局話しかけることができずに後をつけていた。考えてみたら話し掛ける内容も決めていなかったし。途中急に咲が道端の何もないところで立ち止まった。声をかけるか迷い少し様子を見ていたところ、突然鳥居が現れたのだ。驚いて呆然としてところ咲が消えてしまった。私は立ち尽くしたまま呟いていた。

「えーどういうことこれ…」


◇◇咲◇◇


 目の前には誰も居なかったはず、私が空を見ていた一瞬のうちに現れたのでしょうか?

「初めまして。こんばんは。えっと、どういうことでしょうか?」

 私は困惑しながら尋ねました。

「こんばんは。初めまして。いきなりごめんね。ここに来た人なんて五十年ぶりくらいだからついね。私は七十二代目妲己。継ぐって言っても何かしなきゃいけないとかじゃなくて私の力を上げるだけだからどう?」

「私は咲といいます。えっと、もう少し詳しく話していただきたいんですけれど、妲己って何でしょうか?妖怪しか思いつかないです。それと此処はいったいどこなんでしょうか?帰れるんでしょうか?あと名前教えてもらってもいい?」

「ありがとう。良い名前ね。急に話しかけられたから怖いと思うけど、敬語じゃなくてもっとフランクに話してほしいな。そうだね。わからないよね。一つずつ説明するよ。まずここは裏の世界というかあなたがいつもいる世界と世界の間みたいなところかな。狭魔(はざま)って呼ばれているわ。話が終わったらちゃんと元の世界に返してあげるから心配しないでね。妲己はその妖怪であっているよ。昔話とか神話で出てくるやつ。他の名前だと玉藻の前とか呼ばれていたりね。あとは九尾の狐とかかな。狐の妖怪と言われているいけど実は妖力を受け継いでいるだけの人間なんだよね。私も元々ただの人間だったし。もしかしたら私の前の妲己には本当に狐がいたのかもしれないけれどね」

 妲己さんの話はその後も続きましたが要約すると一万年以上前から妖力という特別な力を持った存在が妲己と名乗り力を受け継いできたとのことです。最も妲己さんも先代から話を聞いただけで本当かどうかわからないそうですが。


 妖怪という存在はいるとされています。小学校のころから妖怪・精霊・神様は存在していると習います。でも大半の人は半信半疑です。なぜならそういった存在を見たことがないからです。私は幼いころに神隠しにあったそうです。両親が公園でほんの少し目を離した瞬間に忽然と消えてしまったらしく相当騒ぎになったと聞きました。警察が捜査したところ防犯カメラに写っていた私が煙のように消えていたそうです。

 一月後私は同じ公園で見つかったそうですがその時明らかに成長していました。検査の結果約一歳分年をとっていました。それらのことから私は神隠しにあったのだと認定されました。神隠しにあった結果私は周りの子供たちよりも一歳年上として学校に通うことになりました。私が大学2年生でもお酒を飲めるのはそういう訳があります。話がそれましたが私は行方不明になっていた間のことを一切覚えていませんでした。そのため不思議な現象や存在に対しては半信半疑でした。そんなことを考えていると妲己さんはこんなことを言い始めました。

「色々できるんだけどまあ話だけじゃわからないだろうから見せてあげるよ」


 そう言うと妲己さんは様々な能力を見せてくれました。蛙や私に変身、火や水・雷を出す、鳥のような羽を出し空を飛んでみせる、姿を消すなど不思議なことを次から次へと披露してくれました。私は目の前で起きていることにただ圧倒されていました。不思議な事ばかりでしたがとてもバーチャル映像には見えませんでした。氷を触ってみたら冷たかったし、火の近くでは熱かったです。私は目の前で起きていることが多すぎて混乱していました。私は驚きながらも不思議と惹かれていました。自分もあんなことができたら楽しいだろうなと。

「こんな感じで割となんでもできるよ。どうかな?ちなみにこの力を持っている間は不死だし不老でもいられるよ。私は二百年以上生きているけどそうは見えないでしょ?」

「凄いですね。でもその力をもらったら私は人ではなくなるのでしょうか?それに妲己さんはどうなるのでしょうか?不老不死ではなくなってしまうってことですよね?それに不便になりますよね」

「優しんだね。どっちも心配しなくて大丈夫だよ。能力を継いでも人間でなくなるわけじゃないよ。超能力者になるとイメージしてくれればいいかな。あと能力を渡してもほんの少しだけのこるから。私はもう十分生きたしもういいかな」

「そうなんですか。もし断った場合はどうなるんでしょう?」

「どうにもならないよ。何もしない。無理強いはしたくないからね。ここから元居た場所に返してあげる。それでお終い。私はまたここに誰か来るのを待つよ」

「ここに来ることができる人じゃないと受け継いでないんでしょうか?外に出てもっとふさわしい人を探すのはどうでしょうか。それとも待つということは出られないのでしょうか?」

「閉じ込められているとか、封印されているって思った?そんなことはないよ。自由に出られる。ここに来た人でなくても力を引き継ぐことはできるけど、素質みたいなものがあるんだよ。あなたがここに来る前に見た鳥居があるでしょ?あの鳥居はね認識疎外の呪文がかかっていてね普通は気が付けないんだよ。それに気付ける人は素質があるってこと。生まれつきじゃなくてもふとした瞬間に見えるようになることもあるんだよ。さっきも言った通りここに来た人は五十年ぶりだからね。咲さんどうかな?」

 そう言って妲己さんは笑いました。


中編になる予定です。数人の視点で展開されて少し時間が前後します。想定では5万字くらいで終わる予定です。

隔日投稿の予定です。


また、この小説は「世界一愚かな選択をあなたと」という小説家になろうで投稿している小説と世界観を共有しています。そちらも読んでいただければ幸いです。


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