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夢見る白雪姫  作者: 折色 寄
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現実5

 相変わらず単調な時間が流れる病室に、僕はそれなりにうんざりしていた。こうしている場合ではないのに、家族や病院側から不用意に外へ出ることを止められている。僕は風花のために、一刻も早くアクションを起こさなければならない。現にある程度行動は起こしているし上手くいってるけど、それでも呑気に時が流れるのを待っていては、風花の願いが崩れてしまうことになる。

 焦る気持ちを窓に映る景色に溶かしていると、病室のドアが開く音がした。振り返ると、僕を睨みつける駿河がいた。

「やっぱり来たね」

 僕が言うと、駿河はずんずんとこちらに歩み寄って来た。決して穏やかな展開になることはないと、僕は悟った。駿河は僕の目の前で立ち止まると、鋭い眼光で僕を見下ろした。

「お前、風花に何かしただろ」

 下手に答えると喉笛に飛び掛かって来そうな居住まいで、駿河は訊いた。

「前にも言ったけど、僕には他人の夢に干渉する能力はない。むしろ、風花に何かしたのは君の方だろ」

 言葉を選んだ方がいいのだろうけど、風花の気持ちを汲むよりも自分の感情を優先している駿河に、僕はそれなりに腹が立っていた。僕の棘のある言葉に、駿河は額に血管を浮かべた。

「このまま風花が眠ったままで良い理由はない。一刻も早く目覚めるべきだ」

「それは駿河の都合だろ? 夢の中で風花に拒絶されたのは、風花にはまだ目覚める意志がないってことだ。それなのに、駿河は無理矢理起こそうとしている」

 僕が言うと、駿河は悔しそうに歯を食いしばった。それから僕を睨むと、怒りを抑えた様子で言った。

「昨日、風花の夢に潜った。だが、どういうわけか俺が降り立ったのはガキの頃の夢だった。俺と風花と梵が川のほとりで眠っている夢だ。おかしいのは、風花の夢に出てきたあらゆるものに干渉することができなかったことだ。夢の中にいた風花や俺や梵に触れることができなかった。俺の存在を無視するように、夢は流れ続けていた。やがて夢は終わって、俺は強制的に風花の夢から排除された。こんなこと、今までなかった。お前が風花の夢に何かしたとしか思えない。何をしたのか絶対に突き止めてやるからな。そして、俺はもう一度、夢の中で風花に接触する」

 駿河はそう言い残すと、病室を出て行った。

「僕のしていることは、間違ってないんだよな? 風花」

 僕は溜息を吐きながら、独り言のように呟いた。


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