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学校の脇の図書館  作者: 理科準備室
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大人の場所

終わりの会が終わって、教室から廊下に出るとぼくの2年1組は2階の一番端の校舎ということもあって、後ろの方からおしゃべりは聞こえてくるけど帰りの会は終わったばかりなので誰も歩いていなかった。ぼくはすぐそばの階段を駆け下りて玄関へ向かった。

 途中、昼休みに寄った「男子児童便所」の前を通ったとき、体操着姿の3年生の男子たちがそこに群がっておしゃべりをしていたのが聞こえた。

「2組の腰帯(こしおび)が昼休みここのベンジョでいっぱいクソを出したそうだよ」

「汚ねー、うんこもらし! うんこもらし!」

「まだ臭いが残っているかもしれないから、寄ってみような」

「うん、そうしよう」

 ここの「男子児童便所」で腰帯くんのおにいさんがうんこしたことはもう学年中のうわさになっていた。そして学校でのうんこがばれた子はそれがトイレのしゃがむ方できちんとしても、理不尽なことに「うんこもらし」と呼ばれる運命が待っているのは穴見小男子のオキテだった。

でも、仮に学校で「うんこもらし」という言葉そのものになってしまったときはもっとひどい運命が待っていた・・・。

そんな運命とたたかっていたぼくは息切れしながら玄関の靴箱から靴を出して上履きを履き替えると、先生の自動車の駐車場以外は砂利が敷き詰められた校庭をぼくはさらに走った。ランドセルを背負い体操着を持ちながら走るのはけっこう大変だった。ランドセルは背中でゆらゆら揺れるし、体操着も数回うっかり手を離れて地面にころがり、ほこりがちょっとついた。風を切って交通安全の黄色い帽子も数回飛びそうになって思わず押さえずにはいられなかった。おまけに梅雨が明けたばかりの夏の太陽がぼくをきびしく照らして、帽子から服から下着まで体じゅう噴き出す汗でぐっしょり濡れていた。

でも、ぼくが目指していた穴見あなみ市立図書館はもうすぐだった。道を右に曲がればもう構内で駐車場だった。ぼくは市立図書館の玄関に向かってひたすら走った。

穴見市立図書館の玄関に着くと目の前に靴箱と子ども用と大人用に分けられて館内用のスリッパが無造作に投げ込まれている二つの大きな段ボール箱と、その更に奥には小学生はランドセルが置いてもいいロッカーがあった。そのロッカーにはまだ一つもランドセルは置いてなかった。いくら市立図書館でもこれからうんこするのに小学生が他にいないのはラッキーだった

ぼくはまず靴を脱ぎ、大きな段ボール箱から「あなみしりつとしょかん」と金色のひらがなで文字が入っていた緑色の小さな子ども用スリッパに履き替えると、さっそくロッカーにそれまでうっとうしかったランドセルと体操着袋と交通安全の黄色い帽子を投げ込むように置いて、それまで走ってきたのではあはあと息を付くと やっとぼくは身軽になれた。



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