第四十一話 砲撃
何とか開戦日までに間に合いました。
三式戦パイロットの慰霊碑も学校帰りに見に行ってきました。
あの戦いから七十年……日本が本当の独立をするのはいつになるでしょうね。
「宇垣司令官ッ!!瑞雲偵察機より入電ッ!!『我、敵艦隊ヲ発見ス』敵艦隊は前方約二百キロの地点にいますッ!!」
通信紙を持った通信兵が慌ただしく艦橋に入ってきた。
「……空母はいるのか?」
「は。確認すれば……空母はおらず、戦艦四、巡洋艦五、駆逐艦十二隻がこちらに向かって航行しているようです」
「……妙だな。空母がいないとはどういう事だ?」
宇垣は思わず参謀長の松田に尋ねた。
「恐らく……空母部隊と戦艦部隊に分離したのでは?空母が囮となって攻撃隊を引き付けて、その間に戦艦部隊が接近するという作戦ではないのですか?」
「ふむ……一理あるな。とすると、我々も分離したのは成功だったようだな」
宇垣はニヤリと笑う。
「今のうちに兵達に戦闘配食を配らせろ。腹が減っては戦が出来んからな」
「分かりました」
松田は宇垣に敬礼をした。
「いよいよか………」
長門は防空指揮所で前方の海面を見ていた。
「気合いが入り過ぎているぞ長門」
そこへ金剛が転移をしてきた。
「金剛か……」
「ほら」
金剛が何かを長門に投げる。
長門は受けとって中身を見ると、お握り三つと沢庵が三切れがあった。
「うちのところから貰ってきた。今のうちに食べておけ」
「……済まないな……」
長門は金剛に一言言って、お握りを食べる。
塩がよく効いている。
「ドイツ海軍はあまり砲撃戦には馴れていないと思うが、イギリスを倒した強敵だから油断は禁物だな」
「あぁ。海中から魚雷を撃ってくるのにも気をつけないとな」
風が強く吹き荒れて、金剛の金髪の髪が揺られている。
「ま、頼りにしているぞ大将」
金剛はニヤリと笑って転移をした。
「……言われなくてもそのつもりだ」
長門は苦笑した。
―――戦艦ビスマルク―――
「敵艦隊が前方にいるだとッ!?」
ウェルナーは思わず叫んだ。
「は。空母はいませんが、戦艦を中心とした艦隊です」
「……敵も同じ考えだったんだろう。まぁいい。ビスマルクに立ち塞がろうとする奴は誰でも沈めてやる」
ウェルナーは勝利を確信したかのように笑う。
「全艦速度を上げろッ!!敵艦隊を血祭りにあげるぞッ!!」
ウェルナーの言葉に艦隊の士気は上がった。
「クックック。漸く日本海軍と出会えるか」
防空指揮所で艦魂であるビスマルクが笑う。
「ツシマ沖海戦以来の艦隊決戦は我々が勝たしてもらおうッ!!」
ビスマルクは腰に据えてあるサーベルを抜いて、前方の海面に突き刺した。
そして二時間半後。
「敵艦隊発見ッ!!距離五万四千ッ!!」
長門に見張り員が叫んだ。
「……全艦に発光信号。全艦砲雷撃戦用意ッ!!」
「ハッ!!全艦砲雷撃戦用意ッ!!」
長門から発光信号が全艦に伝えられる。
「いよいよだ………」
乗組員が慌ただしく動く中、宇垣は誰にも聞こえないようにそう呟いた。
そして、着弾観測のために零式観測機(零観)と瑞雲が合わせて五機がカタパルトから発艦していく。
「Uボートはいないな?」
「はい。今のところソナーには反応していないようです」
宇垣の言葉に松田が答える。
「なら、海中に注意はあまり向けなくていいな。だが一応は警戒してくれ」
「分かりました」
松田が頷いた。
「敵艦隊との距離四万八千ッ!!」
見張り員が報告してくる。
「……東郷ターンにしますか?」
「いや、同航戦にしよう」
松田の意見に宇垣は苦笑した。
「東郷ターンは相手が分かっている。なら、単縦陣での同航戦だ」
「了解。ドイツ艦隊との同航戦に入ります」
松田は宇垣に確認のために聞く。
宇垣は頷いて、全艦がドイツ艦隊との同航戦に入る。
―――旗艦ビスマルク―――
「奴らめ……同航戦で我々と戦うのか。右砲戦用意ッ!!」
ビスマルク以下、ドイツ艦隊の主砲が宇垣艦隊に照準する。
それは勿論、宇垣艦隊でもあり左砲戦の用意をする。
「距離四万二千ッ!!」
「……四六センチ砲の最大射程距離です」
「うむ………長門、陸奥。撃ちぃ方始めッ!!」
「了解。撃ちぃ方始めッ!!」
宇垣が叫び、それを艦長が復唱した。
「撃ェーーーッ!!」
防空指揮所でも、長門が日本刀をドイツ艦隊に向けた。
ズドオォォォーーンッ!!!
長門、陸奥から四六センチ砲がドイツ艦隊に対して火を噴いた。
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