第三十九話 反撃
―――遣印艦隊旗艦信濃―――
「山口長官。第一次攻撃隊が帰還します」
「うむ」
古村参謀長の報告に山口は頷く。
攻撃隊は被弾機、パイロットや搭乗員が負傷したりしている機体から着艦していく。
それが終われば、艦爆隊、艦攻隊と続いて最後に零戦と陣風が着艦するのだ。
「……このまま空母部隊も被害無く乗り切りたいのだが……」
「長官。それは運だけです」
山口の言葉に高橋が言う。
「確かにな………」
山口は上空を見上げた。
上空は晴れていたが、ところどころに厚い雲がある。
「……攻撃されたら雲を利用されるな……」
「確かにそうですな。ですが、奴らはまだ我々を発見はしていません」
山口の言葉を古村が言う。
「それに艦隊は砲撃部隊と分かれましたが、イージス艦の浪速と難波がいますので防空は完璧なはずです」
遣印艦隊は第二次攻撃隊を発艦させた後、戦艦部隊を率いる宇垣中将が砲雷撃戦による敵艦隊撃滅を具申してきた。
山口もこれを了承して、戦艦四、重巡四、軽巡二、駆逐艦八隻を分離させて敵艦隊を目指したのである。
今の山口艦隊には空母五隻、防空巡洋艦四隻、駆逐艦十二隻である。
「……今の着艦状況はどうなっているんだ?」
「加賀隊は後少しで彗星の着艦が終わります。彗星隊が終わり次第、天山隊の着艦を始めます。千歳隊と千代田隊は全機着艦しました」
山口の問い掛けを、航空参謀の高橋が言う。
「………何か?」
山口を不審に思った古村は山口に尋ねた。
「……嫌な予感がする。加賀の陣風隊を赤城、信濃で受け入れろ」
「分かりました」
高橋は山口に敬礼をして、直ぐに指示を出す。
指示を受けた加賀隊の陣風は半数に分かれて、赤城と信濃に着艦をした。
「陣風と零戦は機銃弾と燃料の補給を急がせるんだ。補給が出来た機体は直ちに発艦せよ」
山口の指示が次々と飛ぶ。
機銃弾と燃料の補給を終わらせた陣風と零戦が発艦していく。
その時、電探室から報告が来た。
『電探に反応ありッ!!敵機ですッ!!数は約百あまりッ!!距離五万七千ッ!!』
「……山口長官の予感は当たりましたな……」
古村参謀長は少し焦るように言う。
「……俺としては当たりたくなかったがな。全艦対空戦闘用意だッ!!」
『ウウゥゥゥーーーッ!!!』
艦隊中にサイレンが鳴り響く。
各艦の対空要員が甲板を走り回る。
「機銃弾持ってこいッ!!」
「西野は三番機銃座に持っていけッ!!高田は五番機銃座だッ!!」
ところどころで怒号が聞こえてくる。
「迎撃隊は何機あげれるんだ?」
「は。陣風三四機、零戦十四機の四八機です」
「……少ないな。彗星もあげろッ!!」
「す、彗星もですかッ!?」
山口の命令に古村が驚く。
「彗星の機首には十二.七ミリ機銃が二丁ある。あげれるだけあげろッ!!」
「は、はいッ!!」
そして、どうにか加賀から彗星五機が発艦した。
『敵攻撃隊の距離、三万七千ッ!!』
『敵機発見ッ!!』
陣風隊を指揮する二階堂少佐の右を飛行していた陣風が翼をバンクして、右2時の方向に向かう。
「いたッ!!全機突撃ッ!!」
敵の攻撃隊は陣風、零戦隊より五百、上にいた。
二階堂は下方からの攻撃を選択したのだ。
陣風隊と零戦隊、彗星隊は攻撃を開始した。
「落ちろッ!!」
ダダダダダダダダッ!!
十二.七ミリ機銃弾はフォッケウルフ戦闘機の左翼を貫き、フォッケウルフ戦闘機はスパイラル回転をしながら墜落していく。
他の陣風と零戦も多数のフォッケウルフ戦闘機とスツーカ、フォッケウルフ雷撃機を落とした。
しかし、スツーカ十九機、フォッケウルフ雷撃機十一機が乱戦を抜けて、遣印艦隊に迫った。
―――イージス艦浪速―――
「敵雷撃機接近ッ!!」
「主砲撃ちぃ方用意ッ!!」
「主砲撃ちぃ方用意ッ!!」
高中艦長が下命し、速水砲雷長が復唱する。
「撃ちぃ方始めッ!!」
「撃ちぃ方始めッ!!」
ドォンッ!!ドォンッ!!ドォンッ!!
こんごう型と同じオートメララ社の百二七ミリ砲が火を噴き、フォッケウルフ雷撃機を落としていく。
「な、何だあの巡洋艦はッ!!」
上空で戦況を見ていたフォッケウルフ戦闘機のパイロットが叫んだ。
その時、艦隊上空にあった雲からスツーカ七機が一斉に急降下を開始した。
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