第三十五話 宣戦布告
―――1945年1月20日、ニコバル諸島沖―――
その海域にはニコバル諸島の小アンダマン島にあるテンディグリー海峡を航行している機動艦隊がいた。
機動艦隊の艦艇は艦尾旗竿に旭日旗を掲げていた。
ドイツに対する反抗の意思と民族の誇りを込めて翩翻とはためく旭日旗は、きらめく太陽の光りとうねる群青の中で鮮明に浮かび上がっていた。
それは日本帝国海軍・遣印艦隊の偉容である。
日本帝国は遂に世界を我が意で動かさんとするドイツ第三帝国に対して反逆の旗となる旭日旗を翻らせたのである。
艦隊は旗艦信濃を中心にして左右に空母赤城、加賀、小型空母千歳、千代田が航行をし、空母を守る艦艇は戦艦長門、金剛、榛名、山城。
重巡洋艦摩耶、羽黒、足柄、最上。
軽巡洋艦矢矧、能代。
防空巡洋艦五十鈴、由良、浪速、難波。
駆逐艦二十隻の機動艦隊であった。
―――旗艦信濃―――
「索敵機からの報告は?」
信濃の艦橋で遣印艦隊司令長官に就任した山口多聞中将が航空参謀に就任した高橋嚇一中佐に尋ねた。
「残念ながらまだ一報はありません」
「……そうか」
山口は頷いた。
「ですが、第一機動艦隊との集合地点で待ち伏せされるのはドイツ艦隊は我々の動きを察知しているでしょう」
「当然だろうな」
遣印艦隊参謀長の古村啓蔵少将の言葉に山口は頷いた。
古村少将は航空戦にはあまり熟知していないが、水雷戦やフネを操らせれば相当の手錬れであるために山口自らが起用したのだ。(ミッドウェー海戦の南雲中将みたいな)
「長官。第一機動艦隊への救援戦闘機部隊が帰還しました」
「被害は?」
「ありません」
今から一時間半前、ドイツ艦隊が自由イギリスの第一機動艦隊へ攻撃隊を送り込んできた。
第一機動艦隊も奮闘するが、上陸輸送船団に空母を分けたために戦闘機部隊は悪戦苦闘をしていた。
それを知った山口は急遽、土方将中佐率いる艦上戦闘機陣風二個中隊十八機を派遣したのだ。
「土方入ります」
将が艦橋に入ってきた。
「ご苦労だったな」
「いえいえ。任務ですので」
「何機落としたのかね?」
「二個中隊の全部で戦闘機八機、艦爆七機、艦攻十一機を落としました」
「うむ」
将の報告に山口は頷く。
「ドイツ艦隊はまだ見つからないんですか?」
「うむ。彩雲を八機放っているがな……。まぁもうすぐ見つかるだろう」
その時、通信室直通電話の受話器を握っていた伝令が叫んだ。
「彩雲三号機より入電ッ!!我、敵艦隊を発見せりッ!!敵艦隊は空母を含むですッ!!」
「報告にあった敵艦隊の位置はこの辺りです」
作戦参謀が海図の上に赤鉛筆で印をつけた。
場所は第二機動艦隊から約四百キロ離れていた。
「攻撃隊の準備は?」
「加賀隊、千歳隊、千代田隊は全機完了。赤城隊、信濃隊は後十分で完了します」
高橋が報告をする。将は既に艦橋を降りていた。
「……………」
山口は黙って海図を見ていたが、ゆっくりと口を開いた。
「準備完了している加賀、千歳、千代田から攻撃隊を発艦せよ。赤城と信濃は二次攻撃に回す。主攻撃目標は敵空母だッ!!」
まずは敵が持つ航空部隊を殲滅する。
帝国海軍きっての航空指揮官である山口多聞らしい作戦であった。
―――空母加賀甲板上―――
「発動機回せェーーーッ!!」
二段式空母である加賀の甲板上では整備員達が整列した航空機の発動機を回していた。
そして、装着されている油圧カタパルトから次々と艦戦の陣風が飛び上がっていた。
「皆様……お頼みします……」
加賀の防空指揮所で艦魂の加賀が攻撃隊に敬礼をしながら見送っていた。
潮風で彼女の黒の長髪がサラサラと流れている。
加賀からは百八機(陣風三六機、彗星三六機、天山三六機)、千歳、千代田から零戦九機、天山九機からの攻撃隊は加賀飛行隊長の橋口中佐を総隊長にして敵ドイツ艦隊に向かったのであった。
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