第三十一話 インド洋海戦
本日は終戦記念日です。
本来なら内閣は靖国神社に行って、英霊達に黙祷を捧げるべきですよ。
まぁ民主党のクズ共は行かんでしょうが……。
中国は空母を試験航行するし何を考えてるんですかね。
とにかく英霊の皆様、安らかにお眠り下さい。
合掌……………。
――1944年9月9日インド洋―――
蒼い海には幾つもの白い航跡が入り乱れ、幾つもの砲弾が海面に叩きつけられて水柱を上げていた。
その蒼い空で幾つもの航空機が空戦をしていた。
―――自由イギリス東洋艦隊旗艦ウォースパイト―――
カニンガム司令長官は被弾で起きた火災の煙り臭いを我慢しながら三万メートル先にいるドイツ艦隊を見ていた。
自由イギリス東洋艦隊はドイツ艦隊発見後にセイロン島を出撃した。
しかし、高速の第一機動艦隊は低速の第一艦隊より燃料を消費してしまい、一旦セイロン島に帰還していた。
勿論、燃料補給後には直ぐに出撃をしていた。
第一艦隊はやむを得ず、配属の空母イーグル、ハーミスの艦載機で索敵をしていた。
ドイツ艦隊がその索敵の網に引っ掛かったのは6時間前。
砲雷撃戦の前に二隻から攻撃隊を送ったが、ドイツ艦隊の上空迎撃機に殆どが落とされて、帰還したのは僅かシーファイヤー五機のみであった。
カニンガムはそれでも諦めず、砲雷撃戦を展開した。
しかし、砲撃戦でマレーヤとバーラムが大破して後に弾薬庫に引火して爆沈。
バリアントは中破。
旗艦ウォースパイトは大破していたが、まだ航行は可能である。
「……ロレンスの第一機動艦隊が来るまでは無理だった……か……」
カニンガムは悔しそうに呟いた。
その時、レーダー員が叫んだ。
「北々東より航空機の編隊が接近ッ!!第一機動艦隊からの攻撃隊ですッ!!数は六十ッ!!」
「第一機動艦隊からの攻撃隊より入電ッ!!『我、コレヨリ敵艦隊ニ突入ス』」
カニンガムは一瞬、喜びかけた。
しかし直ぐに表情を暗くした。
六十機あまりではドイツ戦闘隊の包囲網は破れない。
上空には百機あまりのフォッケウフル戦闘機がいたのだ。
そして、第一機動艦隊からの攻撃隊はたちまち落とされていった。
「……此処までか……」
諦めともとれるカニンガムの呟きは落下してきた砲弾の命中音に押し潰され、誰の耳にも入る事はなかった。
この時、第一機動艦隊は最大戦速で第一艦隊の戦闘海域まで八十キロの距離にまで近づいていた。
「第一次攻撃隊は?」
旗艦プリンス・オブ・ウェールズの司令官席に座っていたオーウェン・ロレンス少将は参謀達を見渡した。
そして、電話機に取り付いていた航空参謀と視線があった。
「……第一次攻撃隊は失敗したようです。帰還はシーファイヤー十機、ケイト(九七式艦攻)二機です」
「………そうか」
砲撃戦のさなかという混乱している状況であればもしや……と考えて送り出したのだが……。
「ドイツ人め、海での航空戦も覚えたか……」
参謀長のイシゴニス少将が悔しげに言う。
ロレンスは航空参謀を見る。
「第二次攻撃隊の発艦準備は?」
「もうじき終わります」
航空参謀の言葉にロレンスは無言で頷き、前方の海へ目を戻す。
今度の第二次攻撃隊は戦闘機六十機、雷撃機七十機で編成されている。
空母部隊の残存機の半分強といってもいい。
「(雷撃隊によって敵が混乱したところを我が部隊が突入出来れば或いは……)」
険しい顔つきだが、ロレンスの目はまだ諦めてはいなかった。
しかし、神は彼の願いを受け入れなかった。
「旗艦ウォースパイトより入電ッ!!」
通信兵が艦橋に入ってきた。
艦上構造物を破壊されてなお、無事であったウォースパイトの通信装備が、カニンガムからの指示を伝えてきた。
「暗号ではなく、平文でした……」
通信兵がロレンスに渡す。
「ッ!?……まさか……」
通信紙を一瞥したロレンスは驚きと困惑をして、イシゴニスに無言で渡した。
「ッ!?……長官…これは……」
「……あぁ。撤退命令だ」
『ッ!?』
参謀達が驚く中、イシゴニスがゆっくりと口を開いた。
「我が第一艦隊は戦闘力を損失す。避退すること不可能なり。付近には追尾魚雷を装備すUボートが潜み、第一機動艦隊への攻撃を企図あり。我、東洋艦隊司令長官として命ずる。貴艦隊は反転避退し、我が根拠地の防衛せよ。これに背けば軍法によりて処断されるものと心得よ。ただ貴官らの後日の再戦を助くことのみが、我に為せる一事なり……」
そしてロレンスは通信兵から新たな紙を貰った。
『オーウェン堪えてくれ。お前の部隊までが此処でやられるわけにはいかんのだ。残存部隊を取り纏めて再戦に備えよ。お前楽させるのではない。男と見込んで、貴様の双肩に我が大英帝国の命運を担がせるのだ。恨むのは構わん。だが、我が最後の命令はしかと成し遂げよ。さらばだオーウェン』
紙にはこう書かれていた。
「……ロレンス長官……」
「分かっているカニンガム長官はこの先に罠がある事を言っているのだ」
「では……」
イシゴニスの問いに、ロレンスは深い溜め息を吐いた。
「……全艦隊一斉回頭。戦闘海域より退避し、残存部隊の集結をはかるッ!!」
数分後、第一機動艦隊の全艦は回頭を開始、第二次攻撃隊も発艦中止となった。
回頭を終え、大洋を切り裂くプリンス・オブ・ウェールズの艦首からはまるで嗚咽のような声が低く響いていた。
―――旗艦ウォースパイト―――
「使えるのは前部のA砲搭のみです」
「A砲搭?充分だ。この距離ならビスマルクをやれる」
既に距離は一万二千を切っている。
「長官。巡洋艦部隊が退避しません。むしろ、敵に一撃を与えてから退避すると言っています」
戦艦部隊で残っていたバリアントは大破して二隻の駆逐艦の護衛の元、退避していた。
「……馬鹿どもが……」
カニンガムは呟くが、叱責の色合いはなかった。
「狙うはただ、ビスマルクのみだッ!!」
カニンガムの叫びと共に自由イギリス東洋艦隊は横陣隊形のままドイツ艦隊への突撃を開始した。
このインド洋海戦は自由イギリス海軍の敗北に終わる。
しかし、カニンガム以下艦隊将兵、そしてその艦艇は英雄として永くイギリス人の心にとどまる事になるのであった。
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