第二十六話 新兵器
それからほぼ一ヶ月後の7月18日の横須賀海軍航空基地に将達が再び集まっていた。
「おい、あの陣風の主翼下に……」
華牙梨が担当者に話し掛ける。
「はい、航空機搭載用の対空噴進弾です」
駐機場に翼を休めていた陣風の主翼下には左右に三発、計六発のロケット弾が搭載されていた。
「乙戦闘機(局地戦闘機)の雷電と紫電改にも六発が搭載される予定です。ちなみに軽戦闘機の零戦は四発です」
担当者が将達に説明する。
「噴進弾はレーダーや赤外線を持ってないので追尾は出来ません。その代わりに応用をしました」
「応用?」
玲於奈が問う。
「はい、高角砲弾の三式弾を真似て三式噴進弾です。発射すると、途中で焼夷弾子が四散して敵航空機を襲う寸法です。史実の三号爆弾と同じですね」
それでも分からない方はヤ〇トの主力戦艦やアンド〇メダが搭載している拡散波動砲を思い浮かべたらいいと思う。
「では土方少佐(昇進)、実験して下さい」
「やたら旧式機があると思ったらそういう事かいな……」
駐機場には陣風の他にも九七式艦攻一号や九五式戦闘機等が多数整列していた。
「しゃあない……やるか」
将はため息をついて、準備をする。
「皆さんは念のために防空壕に避難して下さい」
担当者が誉達に言う。
ババババババババッ!!
陣風は既に試運転をしていたのか、一発でエンジンが繋かった。
将は陣風を滑走路に移動させる。
「……行くか」
将はブレーキを離す。
陣風は勢いよく滑走して、大空へと舞い上がる。
将は車輪を収納して高度千を維持する。
『では攻撃開始して下さい』
無線から担当者の声が聞こえる。
「了解。之より攻撃を開始する」
将は操縦桿を倒して急降下に移る。
ガタガタッ!!
機体が震えるが、空中分解するような事は起きてない。
陣風の装甲は厚く、急降下速度九百キロまでいける。
このため、史実の零戦のような急降下制限は無いのだ。
急降下をしながら将は九八式射爆照準器を覗いて駐機場にいる旧式機群を見る。
「撃ッ!!」
カチカチッと操縦桿に備えられた発射ボタンを押す。
最初は右翼から、そして左翼からロケット弾が発射される。
将はフラップを開き、操縦桿を引いて急上昇をする。
「……ッ!!」
Gに耐えながら後ろを振り返る。
二発のロケット弾白い噴煙を吐き出しながら旧式機群に向かう。
すると、ロケット弾は途中で焼夷弾子を四散させる。
四散した焼夷弾子はそのまま旧式機群の装甲を貫いた。
ズガアァァァーンッ!!
ズガアァァァーンッ!!
旧式機群は爆発炎上する。
ちなみに旧式機群の燃料タンクには消火訓練が出来やすいようにオクタン価が低いガソリンが少量入っていた。
だが、それでもガソリンはガソリンである。
『異常はありませんか?』
「いや、全くないわ」
『分かりました。残りの四発ともぶっ放して下さい。帰還は第二滑走路に降りて下さい』
「了解や」
将は炎上する旧式機群に残りのロケット弾を叩き込む。
攻撃が終わると同時に整備員や消火員が駐機場にわんさかと向かい、消火活動を開始する。
それを尻目に、将は隣にある第二滑走路に着陸する。
幸いにも煙が邪魔になる事はなかった。
「ご苦労さんやな将」
誉達が将を出迎える。
「まぁ仕事やしな」
「そういえば、ロケット弾は艦艇に配備されないのか?」
玲於奈が担当者に聞く。
「既に空母と駆逐艦に対空噴進砲が配備されつつあります。いずれは全艦艇に配備されます。さらに、ロケット推進を利用した対潜ロケット爆雷も正式採用されました」
71式ボフォース対潜ロケットと思えばいい。
ただし、ボフォースには近接信管だがこの対潜ロケットは時限信管である。(44年の11月に近接信管が完成するまでは時限信管)
日本海軍は着々と史実の経験を踏まえて、搭載装備を増やしていた。
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