第二十四話 書記長の末路
「大変ですッ!!敵機来襲ですッ!!」
幹部と朝食を取っていたスターリンは一瞬、思考を停止した。
「書記長ッ!!ご指示をッ!!」
スターリンはその言葉に我に帰り、迎撃態勢を取らせる。
「戦闘機は全機発進だッ!!対空戦闘用意ッ!!」
スターリンは防空濠に向かう。
「(馬鹿な……。ウランウデが陥落したのはつい数日前のはずだ。何故攻撃が出来るんだ……)」
スターリンは知らなかった。
陸自のブルドーザーや施設作業車が総動員で滑走路を修復したのだ。
イルクーツクの基地にはYak―1戦闘機が百五十機程あった。
しかし、機体はあってもそれを操縦するパイロットの錬度が低かった。
史実の日本軍のようにベテランパイロットの大半が戦死するか捕虜になっていた。
それでもソ連のパイロット達は機体に鞭を入れて日本軍の攻撃隊がイルクーツクに着く前に飛び上がった。
その数は約五十機程。
スターリンは何としてでも空襲を防いでほしかった。
しかし、スターリンの望みを叶える事はなかった。
―――将機―――
「敵戦闘機やな。全制空隊、突撃や。一機残らず叩き落とすんやッ!!」
将は最大速度の五百八十キロまで押し上げ、千三百馬力の金星エンジンが唸りを上げる。
みるみると、敵戦闘機が胡麻粒から大きくなる。
「もらったッ!!」
ダダダダダダダダダッ!!
将は擦れ違うざまに十二.七ミリ機銃弾を一連射を叩き込む。
エンジンに機銃弾を受けたのか、一機のYak―1戦闘機がエンジンから火を噴きながら落ちていく。
「………マジ?今、スゲー適当に撃ったんやけど……」
将は流石に冷や汗をかく。
「……まぁ撃墜は撃墜やからええか」
将は新たな獲物を探す。
爆撃隊は零戦隊のドッグファイトを優雅に眺めつつ、爆撃準備に入った。
―――入佐機―――
「投下用意」
「投下用意ヨーソローッ!!」
入佐の命令を爆撃手が復唱する。
「何時でもいけますッ!!」
爆撃手の声に入佐は頷いた。
「投下ッ!!」
「投下ッ!!」
爆撃手が再び復唱をして一式陸攻の爆弾倉から二百五十キロ爆弾二発、六十キロ爆弾四発がイルクーツクの飛行場に向かって落ちていく。
列機も、次々と爆弾を落としていく。
同じ頃、九七式重爆や百式爆撃機呑龍も陸軍施設に向けて二百五十キロや六十キロ爆弾を投下していた。
ヒュルルルルル………。
ズガアァァァァァンッ!!
ズガアァァァァァンッ!!
爆風で、人間が兵器が空を舞い、爆弾の破片で人間が傷つく。
「書記長ッ!!このままでは危険ですッ!!撤退されては如何ですかッ!!」
鉄ヘルメットを被った幹部がスターリンに具申する。
「撤退と言っても何処に逃げるのだッ!!」
「ブラーツクか、ウスチイリムスク辺りではどうですかッ!?あそこにはまだ十五万の部隊が健在ですッ!!」
「………良かろうッ!!直ちに撤退だッ!!」
スターリンや幹部は急いでジープに乗り込んで司令部を出る。
ブオォォォォォンッ!!
「書記長ッ!!敵機ですッ!!」
幹部の言葉にスターリンが振り返ると、一機の零戦が降下していた。
「逃がすかァッ!!」
奇しくも、その零戦はセイバーが搭乗していた。
「一人も生きて帰すかッ!!」
セイバーは操縦桿上部にある十二.七ミリ機銃のボタンを押した。
ダダダダダダダダダッ!!
十二.七ミリ機銃弾がジープを襲うが、第一射目は外れた。
「くそッ!!」
セイバーは操縦桿を引く。
地面にぶつかろうとしていた零戦は上昇する。
セイバーは左旋回をして再びジープに向かって降下する。
タタタタタタタタッ!!
ジープから機銃が火を噴くが、セイバーは無視する。
九八式射爆照準器にジープが写る。
「くらえッ!!」
セイバーが再び十二.七ミリ機銃を発射する。
ダダダダダダダダダッ!!
ズガアァァンッ!!
今度は命中した。
「どうだッ!!」
セイバーは小さくガッツポーズをした。
「しょ、書記長………」
肩を負傷した幹部が愕然とした。
スターリンは確かにいた。
しかし、スターリンの首は吹き飛び、最期の表情はアッとしたような表情だった。
スターリンの四肢にも多数の機銃弾痕があった。
「……………終わり……か……」
幹部はガクリと膝をついた。
翌日、ウランウデにイルクーツクからの軍使が訪れ、ソ連の無条件降伏になった。
というわけで、書記長は首が飛ばされました。御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m