第二十三話 攻勢
―――6月5日、イルクーツク―――
史実ではミッドウェー海戦の日であるが、この世界ではソ連との戦争としている。
ここ二ヶ月、日本軍は息を盛り返していた。
5月中旬には以前の国境まで再占領をし、下旬にはハバロフスク、スタノヴォイ山脈、ヤブロノヴイ山脈、カムチャツカ半島、チタを占領していた。
ウランウデも戦闘中である。
「糞ッ!!何なんだこれはッ!?」
ソ連の書記長であるスターリンが怒号を放つ。
「百五十万だぞッ!!百五十万の兵士と三個機甲師団を投入して一旦は占領したのに盛り返されてるのだぞッ!!」
スターリンが喚く。
最初のソ連軍の進撃はよかった。
しかし、陸海軍の攻撃隊に輸送路や補給基地を爆撃されてから補給が途絶えると一気に戦線を維持する事が出来なくなってしまった。
スターリンがいるイルクーツクにもたまに一式陸攻隊や深山の爆撃隊が爆撃をしてくる。
「いいかッ!!何としてでも満州を落とすんだッ!!このまま此処にいればドイツ軍がやってくるんだッ!!」
ドイツ軍は既にモスクワを占領していた。
モスクワを脱出する際に、シベリア鉄道はあらかた爆破させたが修理したらシベリア鉄道を使って攻めてくるのは明白である。
スターリンとしては満州で軍備を整え、満州をドイツ軍の防波堤にしようとしていた。
しかし、押し返されては何の意味もないのだ。
「何としてでも満州を手に入れるのだッ!!」
改めてスターリンはそう宣言した。
「ほ、報告しますッ!!」
一人の伝令が司令部に入ってきた。
「ウランウデが陥落しましたッ!!」
伝令の言葉にスターリンは顔を歪めた。
―――五日後、6月10日PM:21:00ウランウデ―――
陸自の施設作業車と75式ドーザが破壊された滑走路を整備している。
その横では整備された滑走路の駐機場で八十機余りの零戦隊が翼を休めていた。
「……イルクーツクで最後の決戦やろな」
搭乗員待機所で将達が休息していた。
「何でだ?」
セイバーが尋ねる。
「まだ未確認やけど、イルクーツクにはスターリンがいるらしいねん」
将の言葉にセイバーは目を見開く。
「それは本当か将ッ!!」
セイバーが将の肩を掴み、ガシガシと揺らす。
「ほ、ほんまやから揺らすな……」
「あ、すまない。でも、もしかしたら御祖父様や御祖母様の仇が取れるかもしれんからな」
「そういやそうやな」
セイバーはそう言って、愛刀の日本刀を抜く。
「もし……あの糞野郎を捕まえたら……」
セイバーは置いていた一升瓶を日本刀で斬った。
一升瓶は左斜め下に斬れて中身の酒が零れる。
「俺がこの手で糞野郎を斬るッ!!」
セイバーは宣言した。
だが、足元を見ると足がフラフラしている。
「セイバー……酔ってるな?」
「私は酔っていないッ!!……ヒック///」
「いや酔ってるやん」
ビシッと将がツッコミを入れる。
「うるしゃいッ!!酔っていないったら酔っていないッ!!///」
「顔を真っ赤にして酒臭いのはどうやねん」
「御嬢様、そろそろ寝ましょう。二日酔いになりますよ」
由真がセイバーをおんぶして待機所を出る。
「私は酔っていない〜〜〜」
「だから酔っとるわ」
将がボソッと呟く。
―――翌日―――
「ぅ〜〜〜、頭痛ぃ〜〜」
待機所に整列したセイバーが頭を押さえている。
「酒飲むからや」
将が言う。
「今日は本拠地のイルクーツクを爆撃や。皆、気を緩めるなよ?」
『了解ッ!!』
搭乗員達が敬礼する。
「全員搭乗やッ!!」
将の言葉に搭乗員達は愛機の零戦に走って駆け寄る。
ババババババババッ!!
八四機の零戦のプロペラが回る。
隣の第二滑走路では一式陸攻と九七式重爆、百式爆撃機呑龍がプロペラを回していた。
そして、発着指揮所から青い旗が振られた。
ブレーキをかけていた将はブレーキを離す。
零戦は勢いよく滑走路を駆け出す。
機体が水平になると、操縦桿を引く。
零戦はフワリと浮かび、大空へと舞う。
零戦八四機、爆撃機一三二機は編隊を組みながらスターリンがいるイルクーツクへと向かった。
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