第十七話 戦艦ビスマルク
ビスマルクは沈んでほしくなかったので何かこうなりました。
―――1941年6月1日柱島泊地旗艦長門―――
「将。山本長官が呼んでいるぞ」
自室にいた将に長門が呼びに来た。
「ほんまに?分かったありがとう」
二人が長官室に向かう。
―――長官室―――
「長官。お呼びとは?」
「あぁ……ビスマルクは沈まなかった」
「………本当ですか?」
山本は無言で頷いて、一冊の計画書らしき物を取り出して、将に渡した。
「それに戦闘詳細が載ってある」
「……見ても宜しいですか?」
「構わんよ」
将は計画書のページをめくった。
戦艦ビスマルクは史実より多めの護衛艦艇と共にブレストを5月18日に出港した。
艦艇は二番艦のティルピッツ、シャルンホルスト型二番艦のグナイゼナウ、重巡プリンツ・オイゲンだった。
さらに空母グラーフ・ツェッペリンも参加していた。
グラーフ・ツェッペリンは工程七十%だったが、参加させた。
搭載機は日本義勇軍の零戦二四機、さらに輸入してライセンス生産しているフォッケウルフ雷撃機(九七式艦攻)十八機である。
グラーフ・ツェッペリンの護衛には重巡艦二、駆逐艦八隻が護衛していた。
未完成の空母を戦線に出して大丈夫なのか?と言われたが、フランスよりに航行していれば問題ないとされた。
さらに、ビスマルク艦隊にはドイツ海軍が輸入した零式水上観測機(零観)と零式水上戦闘機(零式水戦。史実の二式水戦)を搭載している。
空母を持っていなかったドイツ海軍はフロートが付いた零戦に着目したのだ。
そして史実同様のデンマーク海峡海戦が起きた。
イギリスの損害は巡洋戦艦フッドが沈没。
さらに、プリンス・オブ・ウェールズの司令塔と第一主砲の一発ずつの命中弾があり、艦橋要員は壊滅して第一主砲塔も射撃不能になった。
また、水線下にも四発の命中弾があり、プリンス・オブ・ウェールズは大破してしまい戦線を離れた。
艦隊司令長官のギュンター・リュッチェンス中将は艦隊を二つに分けさせてブレストに帰還する事にした。
巡洋戦艦グナイゼナウはプリンツ・オイゲンと。
ビスマルクはティルピッツに分かれた。(空母グラーフ・ツェッペリンの部隊はビスマルク艦隊より離れたところで作戦をしていた)
イギリス海軍もH部隊から巡洋戦艦レナウンと空母アーク・ロイヤルを借りて戦艦ビスマルクを捜索した。
そして5月26日、空母アーク・ロイヤルのソードフィッシュ雷撃機がビスマルクとティルピッツに襲い掛かるが、二隻の上空には六機の零式水戦と二機の零観の八機がいた。
八機は正に獅子奮迅の戦いをしてソードフィッシュ雷撃機を十四機も落とした。
また、空母グラーフ・ツェッペリンの部隊の偵察機がキング・ジョージ五世、ロドネーの部隊を発見。
零戦十二機、フォッケウルフ雷撃機十八機を送り込み、ロドネー、ドーセットシャーを中破に追い込ませた。
さらに、付近にいたUボートの雷撃で重巡ノーフォークを大破したため、イギリス海軍はビスマルク追撃を中止した。
そしてビスマルクとティルピッツは無事に5月29日にブレストに帰還した。
「……成る程なぁ。史実よりかなり変わってるな」
将はため息をはく。
「だが、これで欧州戦線は分からなくなってきた……」
長門が呟く。
「あぁ、欧州戦線は奇々怪々なり……やな」
将は言う。
ドイツ海軍は今回の戦訓で零式水戦と零観の重要さを認識した。
ドイツ海軍は日本海軍に零式水上三座偵察機の購入を伝え、日本海軍もこれを承諾して九機を与えた。
さらに、ドイツ海軍は輸送船を改造して四隻の水上機母船を作る事にした。
これは空母グラーフ・ツェッペリン級が就役するまで使うのである。
グラーフ・ツェッペリンの工事も急いで行われる事になった。
ちなみに水上戦闘機はフォッケウルフFw190を改造する事になった。
欧州の海はビスマルクとティルピッツの存在に怯える事になった。
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