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第十話 通州ヲ防衛セヨ




―――昭和十四年七月二十六日旗艦長門―――




この日、連合艦隊旗艦の任務についていた戦艦長門は横須賀に寄港していた。


「それで、東條さん。緊急な話しとは何ですか?」


長官室で将、東條、山本による緊急会談が行われたのだ。


「うむ、実は最近中国が怪しげな雰囲気を出しているのだ」


東條は開口一番に言う。


「怪しげな雰囲気……ですか?それはどういった雰囲気ですか?」


「詳しくは断定出来んのだが、米国から武器供給がされているらしい」


東條が口を閉じた。


「何かあるんですか?」


「北京にいる部隊から昨日連絡が入ってな。武器供給をされた気配がある部隊を特定したと言ってきたのだ」


「その部隊とは?」


「冀東防共自治政府の保安隊だ」


「な…何やてッ!?」


将は思わず立ち上がった。


東條と山本は驚いた。


「東條さん。冀東防共自治政府てまだあるんですか?」


「あぁ、そうだが」


将は黙り込んでしまった。


「土方君。何か大変な事でも起きるのかね?」


東條は将に尋ねる。


「……東條さん。急いで部隊を通州に派遣して下さい」


「ッ!?……やはり何かあるのか?」


「……虐殺です」


将はゆっくりと口を開いた。


読者の皆さんを知っていると思うが、通州事件をご存じだろうか?


1937年(昭和12年)7月29日、冀東防共自治政府の保安隊約三千名が日本軍部隊・特務機関に対する襲撃と、それに続いて起こった日本人居留民(朝鮮系日本人を含む)に対する虐殺が行われたのである。


この事件は第二の尼港事件とまで呼ばれている。


本当なら全容を語りたいが、保安隊が行った余りにも残虐で非道な虐殺であり、事件を詳しく書かれていた、中村粲の『大東亜戦争への道』を読んでいる最中に思わず自分は泣いてしまったので、書けません。


申し訳ないが、事件を詳しく知りたい方は、ウィキペディアで検索して下さい。


話しを戻す。


将は一通りの説明を終えた。


「……何と言う事だ…」


山本は顔面蒼白だった。


「どうやらこの世界ではまだ無かったようですね。東條さん、急いで部隊を派遣して下さい」


「うむ、北京には今、休養中である第二三師団がいる。こいつを通州に向かわせよう」


話しは終わり、東條は急いで陸軍省に戻って指示を出した。


第二三師団長の小松原道太郎中将は休養中だった兵士達を集めて編成。


編成が完了した三個中隊が通州に向かった。


残りの部隊も編成が完了次第、通州に出発した。


また、北京には九七式戦車隊二個中隊(一個小隊三両。四個小隊で一個中隊十二両の編成)がおり、そのうちの一個中隊が通州に派遣された。


また、通州に駐留していた約110名の部隊は日本人居留民達に対して夜間の外出を禁止させた。


通州は、北京から約十五キロ程の場所であるために僅か一時間弱で三個中隊が到着。


さらに、一時間後には九七式戦車隊一個中隊が到着した。


保安隊はこの動きを察知していなかった。(全く監視していないため)


だが、保安隊を支援し、米国から武器供給された中国国民党は察知していた。


蒋介石は直ちに、増援の九千人を送った。


蒋介石は米大統領ルーズベルトに電話会談をした。


「ようやく日本を泥沼の戦争に引き込めます」


「分かった。日本が貴国に対して何らかの行動があれば、輸出を禁止にさせる」


電話会談は約10分だけだったが、ルーズベルトは安堵の息を漏らした。


これでようやく戦争が起こると……。


―――七月二十九日払暁―――


『ウワアァァァァァッ!!!』


遂に、保安隊及び、中国軍一万二千名が通州城内の日本居留民地区と守備隊地区に対して突撃を開始した。


しかし、突撃をした彼等を待っていたのは砲弾の雨だった。


ドオォォンッ!!


ドオォォンッ!!


ヒュルルル……ズガアァァンッ!!ズガアァァンッ!!


砲弾が保安隊と中国軍兵士を肉のミンチに変える。


日本軍は万全の体制だった。


既に前日まで居留民達を一個中隊の護衛の元、北京に避難していた。


また、北京には増援として新たに二個師団が集結していた。


話しを戻す。


保安隊と中国軍は日本軍の攻撃に焦っていた。


奇襲して虐殺する予定だったが、これでは困難を極めると判断したのだ。


保安隊と中国軍はゆっくりと後退をし始める。


今がチャンスだと思った小松原中将は九七式戦車隊に突撃命令を出した。


「全車、俺に続けッ!!」


戦車隊指揮官の宮沢少佐は九七式車載重機関銃を乱射しながら、突撃を開始した。


戦車の突撃に保安隊と中国軍は完全に戦意を失い、遂に撤退を開始した。


「勝ったな……」


指揮所で小松原中将は呟く。


死傷者もまだ報告はないが、五十名弱と見込まれている。


だが、小松原は素直に喜べなかった。


「敵の撤退は罠だとも有り得る。充分警戒をするのだ」


だが、それは杞憂に終わる。


本当に撤退したのだ。




日本軍死傷者約五十名。


保安隊及び中国軍死傷者約三千五百名。



日本政府は中国に対して厳重な抗議と当事者を日本で裁判をかけるとの声明文を発表。


しかし、中国政府は日本軍がいきなり保安隊と中国軍に対して攻撃を仕掛けたと発表。


さらに日本軍は捕らえた捕虜を処刑したと写真も公表した。


しかし、写真は明らかにぼかしていた。




―――8月8日陸軍省―――


「土方君、どうやら中国は本気で戦争をする気だ」


将は再び、東條と面会をしていた。


「そのようですね。恐らく後ろ盾はアメリカ……」


「一応、中国全土にいる日本居留民には満州か内地の帰還を命じた。それに北京に駐屯している部隊から報告があったのだが、天津で中国軍が増強しているらしい」


「やるしかないようですね。ですが、まだ待って下さい」


「何故かね?」


東條は首を傾げる。


「黒竜江省の大慶油田を見つけるまで待ってほしいんです。石油が無いと機械は動きませんしね」


「ハハハ、確かにな」




その四ヶ月後の12月6日、遂に大慶油田を掘り当てた。


名前も大慶油田ではなく、安易に満州油田と名付けられた。


精製された重油、航空機用高オクタン価ガソリンは陸海軍の腹を満たした。


御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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