ロケットを作る時間があったら、なあ
屋上に入ると骨があった。
鳥なのか、ネズミなのか。いずれにしろ、ここには誰も入れない。一匹さみしく死んでいったのだろう。
「あ、そこら辺に、アタシの作ったカラスのプラモが転がってるから気をつけてね。てか、もう踏んでた?」
「いや、まだ…、ていうか前にも入ったことあるんかい!」
「何で?屋上って登るためにあるとこじゃん」
僕は思わず、空を見た。角ばった空には、白い雲が並んでいる。今日は曇り、明日は雨。西の方からは黒い雲がゆっくりと量を増やしている。
「準備完了!行くよ!」
振り返るとカラは屋上の端の方で、何かを組み立てていた。近づいて見たところ、ペットボトルロケットらしく!?
「もしかして飛ばす気じゃ…」
「ファイヤアアア!!」
僕は急いで耳を塞いだ。
ロケットは煙を吐き出しながら飛んでいく。
「うんうん、いけるいける」
「ペットボトルロケットって水で飛ぶんじゃなかったっけ」
そのまま、ロケットは西の空へ飛んでいき、黒い雲に直撃した。
「目を閉じて!」
とりあえず、言う通りにした僕の耳に、雷の音が聞こえた。
「成功! もう目を開けていいよ」
カラは装置を片付けはじめていた。
「思ったんだけど、今って、目を閉じる必要あったの?」
「あったけど?てか、そのためにモヤスに来てもらったんじゃない?」
「えっ?」
「アタシって、成功するとトコトン、気分がアガっちゃうでしょ。そんなときに」
僕は唾をのみ込んだ。
「目を閉じてるモヤスの不細工な顔を見ると、気分がサガるでしょ。だからいい感じ」
僕は改めて空を眺めた。僕の気持ちを分かってくれるのはこの曇り空だけだ。
「それで、今のは結局何?」
そう訊くと、カラは無い胸を張った。
「雨を降らせたの。明日雨がここに降らないように。C国式に」
たしかに、ある国は特別な行事の前にミサイルで雨を強制的に降らせている、らしい。コイツはそれをやったのか。
「そこまでするほど、明日大事な予定があるの?」
「うん、明日洗濯物を干そうと思ってたし」
僕は頭を抱えた。なぜ、ロケットを作った…というか
「今日干せよ」