一日の終わり
左手を上に捧げたまま、僕はカラの隣に座った。
「ステータスの特典スキルの欄を見てみて」
「そんなのあったかな」
特典スキルは一番後ろに載っていた。
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…
特典スキル
・魔法素地完全解放(女神授与)
・天界パス(女神授与)
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僕はカラを見た。
「ねっ」
カラは親指を立てた。
「えっ、だって」
「あのバカ王の部下は天界パスのスキルを知らなかっただけ」
「いや、うん、それも疑問だったんだけど、今はそれより」
カラは割り込んだ。
「何でスキルが二つあるかってコト?」
僕は頷いた。だって、神様は言っていたのだ。運がよくて一つしかスキルが入らないのだと。
カラの説明はよく分からなかった。
「それは女神が機械の仕組みを知らなかったから。そしてアタシは知っていたから」
「女神は、0.5入るとか何とかって」
「そんなワケない。機械に二人入ってたら、二人に同じスキルが授与される。機械って出来る限り、沢山の製品を生み出せるように作られてる。そして、キャパ以上は普通の入れ方だと入らないように、工夫されてる。二人余裕で入れたってことは、そーゆーこと」
よく分からなかったが、もう、それ以上に嬉しさのほうが強かった。
「なら、僕も魔法が使えるようになるってこと?」
「素地は特典スキルで入ったから、なんとかはなるけど」
「やった!」
剣士と魔法使いだったら魔法使いがいい。剣士でもいいけど、体育で持つ竹刀ですら重く感じる僕がいいところまで行けるとは思えなかった。しかも、家から「炎よ、あのモンスターを倒せ!それから風よ残骸をここまで運べ!」とかって魔法を放てば、あとは家でだらだらして待っていればいいのだ。楽すぎる。
カラはなぜか微妙そうな顔をしていた。
「うーん、でも魔法はちょっと準備が必要かな。それまでは剣士やるしかないし、明日は武器のお店行ったあと、テキトーにギルドの依頼受けてみよ?」
僕もギルドの依頼を受けることに異論はなかった。お金は大切だ。藁の寝床は早いところ卒業した。
カラはリュックから杭と縄はしごを取り出した。更に、杭を水場の近くの地面に立てると、縄梯子にリュックを結びつけた。
「何してるの?」
「アタシは念のため非常口つくっとく。モヤスは藁あつめて、ベッド二人分つくっといて。できたら寝てていーから」
そういうと、カラはリュックと縄梯子を水場の底にゆっくり垂らした。そして、さっさと下りていってしまった。
カラに突いていきたい気持ちもあったが、僕はもう疲れていた。日本は真夜中だろう。もしかしたら、次の日の朝になったかもしれない。
僕は急いで二人分、藁をかき集め、ベッドを作った。藁は十分あった。さすが勇者のペットの部屋である。
そのまま、僕は一つのベッドに横になった。意外と寝心地がいい。それとも、寝不足ならどこでも高級ベッドなんだろうか。そんなことを考えながら、僕は眠りに落ちた。