初代 ー名前を教えてくださいー
さて、返事をしたのはいいものの・・・
「えっと、君の名前は?」
すると、女性は涙を吹いて俺の目を真っ直ぐ見て言った。
「魔王様のお名前は?」
「?」
なんで俺の名前を聞くんだ?まぁ、確かに尋ねておいてこっちが言わないのは確かに失礼だ。
俺は素直に答えた。
「俺の名前は天坂透だ」
「?・・・それはどちらが先代を司る名でしょうか?」
先代を司る名?名字のことかな?
「それは天坂だ」
「なるほど・・・では私の名前はティア=天坂です」
「なんで俺の名前をくっつけたの?」
「それは、契を交わしたからですね、私の全ては 魔王様のものという意味です」
言い方に問題はあるが、単純に結婚したから名字をもらったということだろう。
そこは納得なのだが・・・
「あー、そうなっちゃうか」
「おかしなことがありましたでしょうか?」
「いや、俺の元いた場所では天坂っていうのは自分の名前の前に置くんだよ」
「そうなのですか、では私は今日から天坂ティアです」
うん、違和感がすごい!
まぁ、いいか。そのうち慣れてくるだろう。
何はともあれ俺はこの時初めて今まで話してい た、これから一生を共にする女性の名前を知ることができた。
あれ?ティアがなんか頬を赤らめてる?
「てぃ、ティア・・・?」
「は、はい!なんでしょうか!?」
ティアがびくっとする。
明らかに様子がおかしい。
「どうした?気分でも悪いのか?なんか顔赤いぞ?」
「だ、だってこの後・・・」
嫌な予感がする。
「魔王様は私を・・・///」
ティアはより一層頬を赤らめる。
そして震えている。
「いや、しないよ!?」
予想はしてたけどさ!
それが怖くて泣いていたティアにそこまでするほど俺は鬼畜ではない。
「ふぇ?」
ティアは呆けた顔でこちらを見る。
「するわけないでしょ?そんなに怖がってるのに」
「い、いやでも・・・」
「それに、そういうことするのはお互いが愛し合うことでできることでしょ?」
「でも、他の行き道は・・・」
「だから、少しずつ俺を好きになってよ、俺も好きになって貰えるように頑張るから!」
「・・・!」
「どう?」
「はい!!」
ティアは笑顔で返事をしてくれた。
その時の顔はとてもとても綺麗だった。