初代 ー混乱して笑ってそして泣いてー
「・・・ま、魔王様?」
「な、なんでしょうか・・・」
「なぜそのような態度をお取りになるのですか?」
なぜと言われましても・・・
「自分、まだこういう体験をしたことがないものでして・・・あはは・・・」
愛想笑いで誤魔化してみる。
「それはどういうことですか!!?」
ダメでした。
目の前の女性が血相を変えて問いただしてくる。
「いや、実は・・・」
俺は他の世界からやってきたことを説明した。
神様との下りは話がややこしくなるので全カットしたが・・・
「ということは魔王様は元は一般市民だったということですか!?」
「はい」
「ということは魔王様はこれが2度目の人生だということですか!?」
「おそらく」
「ということは魔王様が好きな種族は男ということですか!???」
あ、完全に混乱してる。
「1回落ち着こ?」
「落ち着いてなどいられません!!」
うん、どうしよう。
先程から焦りまくっている女性は同じ場所を行ったり来たりしながらなにやら言っているが、早口すぎてさっぱり聞き取れない。
「マオウサマハマオウサマデハナクデモヨビダシタカラニハ・・・」
「あ、あの・・・」
「魔王様!質問があります!」
一応結論が出たのか勢いよく言い放つ。
「な、なんでしょうか?」
「もしかして魔王様はご自身の魔法も使えないのですか?」
そんなの当然使えるわけな・・・ん?
そういえばさっきから体がすごい元気なように感じる。いつもはぼーっとしてるからこんなに体が元気なことはないはずなのに・・・。
「ちょっと試してみてもいい?」
「はい、どうぞ」
俺は魔法を試すために何もない後ろを向いて・・・
「・・・で、どうやってだすの?」
至極当然な質問を聞いた。
だって生まれてから魔法なんて使ったこともなければ見たことすらないんだよ?分かるわけないじゃん。
「手を前に出して思い浮かべれば魔王様なら出せると思うのですが・・・」
はて、なにを思い浮かべればいいのか。
「そうですね、炎をだすイメージなんかがいいのではないでしょうか?」
言われたとおりにやってみる。
(手を前にだして、炎よでろ!)
ブォン!ドカーン!!
何が起こったのかは分からなかったが目の前がなにやら大惨事になっている。
いや、確実に俺のせいだよな。
予想以上に威力が強かった。謝ろうと後ろを振り向くと・・・
「よかったですー!」
いきなり抱きつかれた。
「わ、わ、ちょっ・・・えぇ!?」
もちろん女の子耐性なんてゼロだ。
「あ、ごめんなさい・・・!」
本当に嬉しかったのだろう。少し恥ずかしそうにしながら俺から離れる。と、その瞬間泣き出した。
「え?」
もう何がなにやら訳が分からない。
「すいません、私・・・魔王召喚なんて大役任されて・・・失敗したと思って・・・でも・・・」
言わんとすることは分かる。
魔王を召喚するなんて多分極わずかな者にしかできないんだろう。あんなに魔物も集めて期待され緊張する中で俺みたいな何も知らないような変なやつが召喚されてしまえばそりゃ誰だって絶望のどん底に叩きつけられる。
でも、俺まだ一言も魔王になるなんて言ってないからね?
いや挨拶はしたけどさー、あれは・・・そのなんていうか?その場しのぎ的ななにかであって・・・
なんか申し訳なくなってきたなー・・・。
「私・・・私・・・」
なおも泣いている女性に俺は静かに近づいて頭を撫でた。
(大丈夫、君は悪くない、そして俺も悪くない、悪いのは全部あの糞ガキなんだから・・・)
という意味を込めて。
少ししてから・・・
「すいません、取り乱しました」
「いや、全然いいよ」
可愛かったし。
「では・・・」
「?」
女性が俺に1歩踏み寄る。
「私と契を結びましょう、魔王様」
笑顔でそう言われた。
「・・・は!?」
今度は俺がマヌケな声を出す番だった。