初代 ー魔王降臨ー
「ようこそおいでくださいました、魔王様」
目が覚めてからの最初の一言。
よし、状況整理をしよう。俺は身勝手な守護神によってほかの世界へ飛ばされた・・・よな?だからここはもう異世界ということにしよう。異世界で俺は今なにをしてる?まず、椅子かなにかに座っている。そして目を瞑っている。分かっていることはこれぐらいか・・・
さっきの聞こえた声は女性の声だったな。魔王って聞こえたんだけど?まぁ、いいか。
俺は意を決して目を開ける。目の前には透明感のある白髪、顔立ちが美しい女性がこちらを見つめていた。おそらくさっきの声の主だろう。
「・・・ここは?」
「魔王城の王室です」
返答と同時に彼女は深々と頭を下げた。
その女性に再度問う。
「色々と分かんないんだけど、魔王ってもしかして俺?」
「その通りでございます」
あれ?おかしいな。異世界転生といったら勇者とか魔のものを倒す存在になるのがテンプレじゃないの?なんで負けフラグ立ってるしかもラスボスに転生しちゃうの?いや待てよ、あの身勝手でわがままな神様がこの世界に飛ばしたんだろあ、普通に有り得るわ、寧ろ納得。
「魔王様、こちらへ来て頂いてもよろしいですか?」
「あ、あぁ」
戸惑いながらも女性の元へ。
「!!」
見下ろすと1000体以上の魔物が膝を折ってこうべを垂れている。
ゴブリンみたいなやつや骨でできたやつもいる。
俺がいるここは魔物たちがいるところより高くなってるらしい。かなり奥まで見渡せる。
しかし、今気づいたが薄暗い。ほぼ窓からの光だけだ。そのせいで見渡せるがどんな魔物が奥にいるかまでは分からない。
いつの間にか下の魔物と同じようにこうべを垂れている隣の女性が言う。
「なにかお言葉を頂ければと」
急にそんなこと言われてもなー・・・。
でも、ずっと頭を下げさせているのも可哀想だ。
俺は口を開く。
「こ、この度は私のためにお集まり頂きありがとうございます、至らぬ点もあると思いますがこれからよろしくお願いします!以上、解散!」
うん、全然魔王っぽくない!てか、ダサい。
今まで普通に生活してたから魔王っぽいセリフなんて出てこねーよ!「ふはははは!」とか言っとくべきだったか?
あーぁ、ほら下の魔物たちが心なしかポカンとしてるよ。いやでも魔物ばっかりで俺も怖いんだよ!?なんなら足ガクガクしてるよ?
「・・・へ?」
隣からそんな腑抜けた声が聞こえた。