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第3章 帝国の内政 開戦

開戦の一ヶ月前、帝国には国民の全てが震撼する通達が行われた。


「非帝国国家の連合軍による帝国侵攻作戦が行われることをキャッチした。現在、軍が迎撃の準備中である。国民は心せよ。」


帝国史上初の大連合軍の侵攻作戦の開始が近いことが発表されたのである。国は、事実の公表により国民の意識を改めようとしたわけだが、そうはならなかった。

長く勝ち続け、今回も事前に分かっているじゃないか、多くの国民がそう思ったのだ。

徒党を組んで挑んできても、負けることなどない。

雑魚はいくら集まっても雑魚。

皆がそう考えていた。


発表は逆効果となったわけである。

一般の国民が何ができるという話だが、国民の士気というのは意外にも軍の士気にもつながるもので、このゆるい感じは軍にも広がった。



皇帝は軍に向けて「領土多重防衛作戦」を指令、軍は防壁に兵力を集中配備した。そう、「防壁に」である。

帝国軍の防衛戦は、国境線での水際迎撃が主流であり、国境の軍事都市群は相当な設備であった。そのような環境の中で、防壁への集中配備を選択したのだ。防壁の最外周と言えども、国境付近ではない。つまり、国境での防衛戦を放棄したのである。もちろん、国境にも部隊は配備したが、小規模な部隊しか置かれなかった。



驚きの発表はこれに止まらなかった。

皇帝はさらに「都市軍備令」を発令、都市に固定砲台と移動砲台、武器庫、個人用火器を配備するように指示し、国民に戦闘時は参加をすることを義務付けた。

これに伴い、都市では軍事訓練の時間帯が設けられ、周辺に配備された部隊が教導を担当することとなった。

国民をいくら訓練しようとも、素人に毛が生える程度の練度にしかならないわけだが、なぜ国民皆兵制のようなことになったのだろう。残念ながら、それの答えとなる資料は発見できなかった。しかし、明らかに負けを確信しているような流れであった。



軍民共に戦闘態勢となったころ、各国軍による多方向同時侵攻作戦が開始された。


各国統一作戦名「世界の審判」


前述した覚えがあるが、各国は事前に連絡を取っていた形跡がなかった。ではなぜ、統一した作戦名があるのか、なぜ連合軍と呼称されるのか。


作戦名も呼称も簡単かつ同時に解決される。多くの国の軍データベースに同じ名のデータが存在したからだ。作戦名と同じ名の。

細かいところで差はあれど、配備計画・兵站線・侵攻日程などが細かく記載されていた。中には、他国との共同作戦の計画書もあり、これらのデータが各国の連合の証拠となった。


お気づきかもしれないが、わかるだろうか。この件についての私の言及の仕方は不可解であることに。

作戦のデータや同じような機密情報が各国にあったから連合していた、と書いているのだ。国同士が協力関係にあったかどうかなど政治家や軍人などの人間がよく知っているだろうと。

なかなか不気味な話だが、戦争から20年しか経っていないが、当時の支配階層や軍人がほとんどいないのだ。戦争での戦死・終戦直前の事故死・終戦後のゲリラ戦やテロなどによってことごとくが死亡した。現在の支配階層や軍上層にいるのは、戦争を生き残った若手や地道な努力をしてきた中堅の人間で、当時は大した機密に触れられなかった。

終戦後すぐに様々な調査が行われたが、どういう経緯で各国が共闘したのかという点には触れられることはなかった。今となっては、連合軍だったというくらいしかできないわけだ。


かなり余計な話となったしまった。

戦争が始まってすぐに、色々な場所から人間が消えた。政治家・商人・高級軍人・役人・大企業の社長などだ。消えたというのは一部の人間だ。いわゆる、行方不明というやつだ。もちろん、帝国からではない。

が、何人かは帝国に渡ったとの情報があがった。


しかし、帝国は亡命や誘拐の類全てを否定した。それに加え、自国の不祥事を押し付けるなとの発表を行い、戦争の和平交渉を行うことはないと通知した。


帝国と各国は、細々とした連絡ラインが存在していたが、侵攻を受けている帝国が自ら連絡手段を断ち、宣戦布告を行なったわけだ。約100年続いた、帝国の不可侵路線がついに転換された。防御を整える布陣をした帝国が、自ら和平を否定したのだ。



こうして、不可解ながらも、どちらかが滅びるまで続くこととなった戦争が始まったのである。



ここで内政は区切りとなる。

次は帝国の外交について見ていこう。



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