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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第一章
9/89

第9話

 ジェラルド様から紹介を受けた『鈴の宿』に来た。

 値段は中ぐらいだけど、とても良い宿らしい。

 入ると優しそうな女将さんが受付と案内をしてくれた。

 とりあえず1泊だけにした。


 もう夕方だ。

 陽も落ちて夜がやってくる。

 部屋に入ると今日1日の出来事が改めて現実だと認識した。

 俺は賢者の資格を失ったんだな。


 さて、本当に自分に失望するのはまだ早い。

 早いぞアルマ。

 頑張れアルマ。

 この鍵の魔具の本当の性能を見つけるんだ。


 魔具は魔力を増幅するもの。

 これまでの魔具の研究から、魔具を使った時に特定の属性に魔力を変換しやすくなる場合があることが分かっている。

 ただその場合は、もう見た目からして分かるそうだ。

 火属性への変換がしやすくなる魔具は、杖の先端から火が出ているとか、氷属性に変換しやすい玉は真っ白で氷のように冷たいとか。


 俺の魔具は、鍵というあまりに特殊な形状をしているけど、何かの属性を表すようなものはない。

 鍵が表すものってなんだ?


「鍵……鍵……」


 部屋のドアに目を向ける。

 外から開けられないように鍵を閉めてある。

 当然鍵を挿して解除すれば開けられる。


 もしくは宝箱とか。

 鍵が閉められた宝箱を開ける。


 鍵というものからイメージできるのは、ドアや宝箱といった何かに鍵をかけて閉めたり開けたりするってことだ。

 この鍵は何を開けて何を閉めるものなんだ?


 魔具の鍵を手に持つ。

 この鍵が開けられるもの、閉められるもの。

 特殊な能力があるなら、鍵に関連する何かのはずだ。

 伝説の扉を開けられるとか、そういうのは困るけど。


「ん?」


 鍵に魔力を流して何を開けられるか考えていると、何かの感触があった。

 鍵の魔具が何かを開けようとしている?

 なんだ?


 さらに魔力を流してみる。

 より明確な感触が伝わってくる。

 いま鍵は何かを開けようとしているぞ。

 でも開かない。

 なんだ?

 魔力が足りないのか?


「ふぅ……だめか」


 今日は卵を孵化させるときに、ほとんどの基礎魔力を使い果たしてしまっている。

 何かが開きそうだったけど、魔力が切れてしまった。

 今は休憩が必要なようだ。

 ご飯を食べて今日はゆっくり休むことにしよう。




 朝です。

 基礎魔力は全快している。

 栄養をしっかり取って6時間も寝ればだいたい基礎魔力は全回復するんだよね。

 2時間ぐらいの昼寝でもけっこう回復するし。


 さて、昨夜の続きです。

 起きて早々だけど、鍵に魔力を流していく。

 やはり何かが開きそうな感触が伝わってきた。

 ここでさらに魔力を流していく。

 俺の基礎魔力20で何かを開けることができるのか?


 基礎魔力の8割ほどの消費した時、ガチャっと音がした。

 俺の頭の中で響いたように聞こえた。


「開いた……」


 その音の後に俺の目の前でドアが開いた。

 ドアと言っていいのか?

 何もない空間に透明なドアのようなものが突然現れていた。

 それが開いている。

 なんだ?


「失礼します……」


 ドアの中を覗いてみる。

 えっと……壁?

 あれ? 壁が見えるぞ。

 なんだここ。


「ほえ?」


 透明なドアの先には、俺が立てるぐらいの空間があった。

 すぐ目の前は壁だ。

暗くて良く見えないけど真っ白な壁だな。

 意味が分からん。


 鍵で何もない空間でドアが開いた。

 そのドアの先には俺がただ立つだけの空間がある。

 それだけ。

 なんじゃこれ!!


 外に出る。

 ドアを閉める。

 ドアから鍵を離そうとしてみる。

 離れた。

 ドア消えた。


 また鍵をドアに挿し込むようにしてみる。

 ドアに鍵が挿し込まれた感覚が伝わる。

 ドアを開ける。

 開いた。

 中はさっきと同じ。


 中に入る。

 中からドアを閉めてみた。

 閉まった。

 鍵を……ドアから離してみる。

 離れた。

 ドア消えた。

 俺は真っ暗な狭い空間に立っているだけ。

 ドアに鍵を挿し込む感覚で、ドアを開ける。

 開いた。

 外に出られた。


 う~ん……中に入ってドアを消した時にどんな風になっているんだろう。

 もし外からもドアが消えているなら、あの空間は次元が隔離された特殊な空間ということになる。

 それにしても狭すぎるが。


 魔力か?

 鍵に流した魔力が少ないせいか?

 でも俺が流せる魔力は……あれ? これってどっちだ?

 もしかして……溜められるパターン?

 魔力を流し続けていったら、あの空間が広くなっていくとか?

 それなら……意味があるぞ。

 よし、すぐに検証だ。

 まず宿泊を1泊伸ばそう。

 朝ごはん食べたらすぐに寝よう。


 俺の気持ちは上向いていた。

 どういう能力であれ、やっぱり俺の鍵の魔具には特殊な能力があったから。




 昼時です。

 基礎魔力は半分ぐらい回復している。

 何もない空間で鍵をドアに挿し込もうとしてみる。

 挿し込んだ。

 回復した魔力を流す。

 鍵からドアに魔力が流れていった。


 回復した魔力を全て流した後に、ドアを開けてみた。

 結果……ほんのちょっとだけ広くなってるな。

 間違いない。

 俺が中に入って立ったら目の前が壁だったのに、そこにさっきは無かったスペースが存在している。

 広がっているぞ。


 これが鍵の特殊能力か。

 問題は中から鍵を閉めた時に、外から完全に隔離されているかどうか。

 もし隔離されているなら、これはとんでもない能力だぞ。

 迷宮でとてつもなく有用な能力となる。


 迷宮の探索は過酷だ。

 賢者はただ騎士に指示するだけでいいけど、騎士は様々な準備をして迷宮を探索することになる。

 特に強い魔物が生息する迷宮の奥深くに行くには、迷宮の中で泊まることも当たり前なのだ。

 そのため騎士は荷物持ちなどのサポート役も連れて迷宮を探索する。

 食料の問題、睡眠の問題などなど、実際の迷宮探索にはいろんな問題をクリアしていかなければならない。


 でもこの空間が、外から完全に隔離された空間なら。

 安全に寝泊まりできる空間なら。

 これほど迷宮探索に適した『拠点』はない。


 ちょっとわくわくしてきたな。

 魔力増幅効果はまったくなかったけど、迷宮探索にとてつもなく有用な魔具だったわけだ。

 まだ空間は狭いけど。


 これで失った賢者の資格が戻ってくるとは思えない。

 いまこの特殊能力を学院に伝えたら、俺は賢者の手先となる賢者を強いられてしまいそうだ。

 つまり迷宮を探索する騎士をサポートする賢者に。


 それにまだ鍵の特殊能力を全て把握しているとも限らない。

 この空間だって外から隔離されているかどうかまだ確認できていないし、他にもまだ特殊な能力があるかもしれない。

 いずれにしても、しばらくは魔術師として活動して鍵のことをもっと良く知る必要がある。

 その間に空間を探索の拠点となり得るほどの広さに拡張していかないと。


 とりあえず昼ご飯を食べにいこう。

 そしてまた寝よう。

 夕方にまた空間を広げよう。

 宿泊も伸ばそう。

 手持ちのお金で1ヶ月程度は泊まれる。

 その先は自分で稼がないといけないけど、今は鍵の特殊能力を把握するのが先決だ。


 こうして昼ご飯を食べて寝て、夕方に空間を広げると、また晩御飯を食べて寝た。

 そして翌日の朝。

 思わぬ来客を迎えることになる。


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