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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第三章
75/89

第75話

 鍵の空間での休憩を終えて、再びアーネス様に飛んでもらう。

 フヴェルゲルミルの泉までそれなりに距離がありそうだ。

 モーズグズがいた場所はヘルヘイムに向かう場所なのだから、ニブルヘイムの終わりの場所なわけで。

 方角だけ見失わないようにしよう。


 氷の世界ニブルヘイムは地下にあるため、真っ暗な場所がほとんどだ。

 でもところどころ、氷が発光している場所がある。

 近づいてみると、氷の中に光の塊が見える。

 この光る氷はモーズグズに教えてもらった方角に飛べば飛ぶほど数が増えてきた。

 ヘルヘイムに近づくほど光る氷は減って暗闇の世界になっていくのかな。


「あれは竜巻?」

「そのように見えます」


 光る氷の数がかなり増えて、もう光魔法の明かりが無くても十分に視界が見えるぐらいになった。

 ちょっと明るくて神秘的な氷の世界の中に、竜巻のような渦が発生している。

 ちょうど俺達が向かう方角に4つの竜巻だ。

 風魔法で散らしてしまえるか?


「僕が散らしてみます」

「お願いします」


 鍵の魔具に魔力を流して風魔法で竜巻を散らしてみる。

 魔法を放てば竜巻は散って消えるんだけど、その後にまたすぐに新たな竜巻が発生してしまった。

 なんだこれは。

 ただの自然現象じゃないな。


「あの大きな氷の塊が竜巻を発生させているようです」

「あれか」


 竜巻の根元には大きな氷の塊が4つ見えた。

 大きさはそれぞれ違うけど、どれも大きい。

 竜巻を散らすと、確かにその氷の塊から新たな竜巻が発生していた。


「氷の中に何かいます……狼? それに人も」

「またそっくりさん? でもどうして竜巻が?」


 嫌な予感がした。

 アーネス様に迂回して飛んでもらうことに。

 しかし右に向かった瞬間、その方角にも竜巻が発生したのだ。

 同時に後ろにも、左にも竜巻が発生する。

 どうやら竜巻に囲まれてしまったようだ。


「一度降りましょう」

「はい」


 一度降りて鍵の空間からみんなに出てきてもらい、状況を説明する。

 その間にも俺達を囲む竜巻は勢いを増すばかりだ。


「あの4つの氷の塊が竜巻を発生させているようです。僕が竜巻を散らしたら、氷を砕いてください」


 元を絶つ。

 前方の竜巻4つの風魔法で強引に散らすと、同時にみんなが氷に向かって駆け出した。

 モニカが一番速く、戦具の斧で氷をかち割ろうとした。

 その時だ。

 氷の塊からいきなり大量の蒸気が噴き出してきた。

 モニカも慌てて動きを止める。

 4つの氷の塊全てから蒸気が噴き出している。


「何か出てきます!」


 蒸気は氷が解けたことで噴き出していたのか。

 中から出てきたのは……人が3人に狼が1匹。

 いや人のうち一人はスヴァルトか? それに狼じゃなくて巨大な犬にも見えるぞ。


「あのスヴァルトまさか!」

「ナルル様?」

「最悪のスヴァルト……デックアールヴではないのか……私も直接見たことがないが、伝え聞いた特徴が似ている。両腕に謎の文字を刻まれたスヴァルトだったそうだが……こいつの両腕にも何かの文字が刻まれている」


 最悪のスヴァルトと呼ばれたデックアールヴ。

 俺も名前だけは知っている。

 エルフだけではなくハイエルフも多数殺害したスヴァルトとして有名だ。

 デックアールヴの所業によってスヴァルトはさらに忌み嫌われることになったとか。


「む? あれは……グラム!? それにフロッティではないか!?」


 グラムとフロッティ? なんだっけ?


「ブリュンヒルドが私に与えた2本の剣です」


 ああ! 神獣フェンリルと戦った時のあの神剣か!

 左の人族が持っているのがグラムだっけ。

 フロッティは右の人族が持っている。

 どうしてここにある?


「本物?」

「本物のグラムとフロッティは失われたはずですが……」

「氷で作られた偽物では?」

「とても氷で作られたように見えないが」

「ですね」


 最悪のスヴァルトに、神剣を持った人族が二人。

 そしてその後ろにいる巨大な犬。

 俺の中ではこいつが一番やばそうだ。


「後ろの大きな犬……やばい気がします」

「私もそう思う。強いぞ」


 マーナさんもかなり警戒しているようだ。

 氷の塊から出てきた偽アーネス様や偽の俺は動きが緩慢でまったく脅威ではなかった。

 こいつらも氷の塊から出てきたけど、歩く様を見る限り、どうやら偽の俺とは違うようだ。

 何より俺達に明確な敵意を向けてきているのが分かる。


「罠だったのかな」

「どうでしょうね。あの女巨人が仕組んだ罠なのか。それとも……」

「スキールニルか」

「いずれにしても、竜巻に囲まれたこの中で、こいつらと戦わなくてはいけないようです。逃げの一手でもいいのですが……フヴェルゲルミルの泉まで追いかけられても困りますし」

「やるっしょ」


 相手は3人と1匹。

 さてどうする。

 なんて考えていたら、デックアールヴの両腕が黒く輝き始めた。

 刻まれている文字が光っている?

 何か来るぞ。


「ティア結界を!」

「はい!」


 俺とティアで2つの結界を展開する。

 デックアールヴの両腕から放たれたのは闇の光線だった。

 その闇の光線は2つの結界に穴をあけてぶち破ると、後ろの竜巻まで届いていた。

 なんて長距離砲だよ。


「ご主人様。あのスヴァルトは私が」

「俺もやるぜ」

「私も!」


 ナルル、ディア、ティアの3人でデックアールヴか。


「ではグラムを持つあの戦士は私が」


 アーネス様はグラムを持つ人族の戦士。


「では私はフロッティを持つ戦士を」


 マリアナ様はフロッティを持つ人族の戦士。


「私は巨大な犬を」

「モニカも一緒にやるっしょ」


 モニカとマーナさんは大きな犬を。

 

それぞれの相手が決まった。

 俺は後方からみんなの支援という形がいいだろう。


「分かりました。僕は後方からみんなの支援をします」

『はい!』


 とはいえ、相手を一人ずつ確実に倒していきたい。

 回復と支援のできるティアを、みんなの回復と支援に早く回した方がいいだろう。

 ならデックアールヴを一番先に倒すか。

 こいつが一番好戦的っぽいし。

 とりあえずみんなに支援魔法を発動しておいた。


「またきます!」

「結界」


 デックアールヴは他と連係する気はまったく無さそうだ。

 両腕から闇の光線を再び放ってきた。

 結界で防ぐも完全には防げず、また後ろの竜巻まで届いていた。


「霧」


 ナルルの闇の霧がデックアールヴを包み込む。


「衣」


 黒いぴっちり全身スーツの衣を着て防御力を高める。


「闇玉!」


 ディアが光を吸収する闇玉を辺りに展開すると、ナルルは『影』を使ってその影の中を移動するとデックアールヴとの距離を詰めた。

 そして大剣で霧の中にいるデックアールヴへと斬りかかる。


「なっ!」


 霧の中で大剣が何かとぶつかり合う音が聞こえてくる。

 ナルルの驚きの声からして、大剣が通じてない?

 霧が晴れてきて見えたのは、なんとナルルの大剣をその両腕で弾いているデックアールヴの姿だった。

 なんで生身の腕でナルルの大剣を弾くことが出来るんだよ。


「ならば!」


 ナルルは魔霊具『闇大剣』にさらに魔力を注ぐ。

 闇大剣の黒い輝きがさらに増していく。


「絶」


 腕でナルルの大剣を弾くデックアールヴに向けてディアが絶を放った。

 不敵な笑みのまま、デックアールヴは片腕を絶に向ける。

 絶がデックアールヴに直撃したと思った瞬間、絶が消え去ってしまった。


「あの両腕が魔力を散らしているぞ!」

「魔力を散らしている?!」


 スヴァルトの力の源は魔力だ。

 その魔力を散らしている?

 いやエルフやハイエルフを殺しまくった最悪のスヴァルトと呼ばれた奴だ。

 魔力だけではなく、精霊力も散らして無効化できるのかもしれない。


「ぐあぁぁっ!」


 デックアールヴの手がナルルの肩を捕らえた。

 するとナルルが苦痛の叫び声をあげる。


「貴様……このぉぉ!」


 薙ぎ払われたナルルの大剣を、もう片方の腕で弾く。

 片手はナルルの肩を掴んだまま。

 何をしている?


「光弾」


 光属性の弾をデックアールヴに放つ。

 スヴァルトは闇魔法を使うだけあって、光属性が苦手だ。

 ナルルも苦手なんだけどね。

 放たれた光弾はナルルの肩を掴むデックアールヴの左肩に命中した。

 両手が塞がっていたことで光弾を散らすことはできなかったようだ。

 この隙にナルルはデックアールヴから離れた。


「大丈夫か?」

「大丈夫です。ですが私の魔力を吸い取りました」

「魔力を吸い取った!?」


 魔力を散らしたり吸収したり、なんでもありの両腕だな。


「絶」


 ディアが再び絶を放つ。

 しかしデックアールヴが片腕を絶に向けると、やはり散って消えてしまった。

 発動された魔法そのものを吸収することは出来ないのか。

 魔力吸収は直接触れた相手からか。


「来るぞ!」


 デックアールヴの両腕が黒く輝く。

 さきほどまでよりも強力に輝いている。

 鍵の魔具に魔力を流す。

 強力な結界を頼む。


「結界!」


 ディアが結界を展開する。

 その上に俺の結界を重ねる。

 発動された結界は白い光りのカーテンのようなものだった。


 デックアールヴの両腕から放たれた闇の光線は光のカーテンを突き破り、ディアの結界にぶつかる。

 今度はディアの結界を破ることはなく、闇の光線は弾かれた。


 さきほどより強力な闇の光線は、吸収したナルルの魔力を使ったのか。

 しかし逆に結界を突き破れず弾かれたことで、デックアールヴはご不満のようだ。

 虚ろな目でも不機嫌なのが見て取れる。


 他に目を向ける。

 アーネス様達も激しい戦闘を繰り広げている。

 やはりあの大きな犬が一番手ごわそうだ。

 グラムの戦士、フロッティの戦士、そして巨大な犬に向かって、ここから光弾を撃って援護していく。


「ディア」

「はい」

「おそらく奴は魔力を吸収している間は、魔力を散らすことはできない。私が近付いて魔力を吸収されている間に、絶を放て」

「……分かりました! やってみせます!」

「頼んだ」


 肉を切らせて骨を断つか。


「ご主人様より頂いたこの貴重な魔力。少しお前にくれてやろう!」


 闇大剣を消して素手でデックアールヴに近づいていく。

 自ら両手を前に出して、デックアールヴを捕まえにいった。

 その誘いに乗ったデックアールヴはナルルの両手を捕まえる。


「ぐぅぅぅぅ!!!!」


 その両手からナルルの魔力を吸い始めた。

 苦痛を伴うのだろう。

 ナルルはその場に膝をつく。


「今だ!」


 その後ろからディアが込められる最大限の魔力を込めた絶を放つ。

 完璧な絶だ。

 上手く制御出来ていなかった頃のディアとは違う。


 ディアの渾身の絶にデックアールヴはナルルの手を離し、両腕で絶を散らそうとする。

 絶がデックアールヴの両腕を……貫くことなく散ってしまった。

 あれだけの絶でもだめか。


「消えろ」


 デックアールヴの前で膝をつく格好となっていたナルルの両手には、闇大剣が握られていた。

 手を離された瞬間に出したのだろう。

 しかも、こちらも最大限の魔力を込めた闇大剣だ。

 その大剣がデックアールヴの下から上へと斬り上げられる。

 股間から脳天まで一直線。

 こいつが痛みを感じられるか分からないけど、もし感じられたとしたらとんでもない痛みだろうな。

 男としては同情するよ。


 真っ二つに斬り裂かれたデックアールヴは、二つに分かれて氷の大地に転がった。

 血はまったく噴き出していないように見える。

 まずは一人。

 これでティアの支援をみんなにも回せるぞ。


『お前はこっちだ』


 どこかで聞いた低い男の声。

 同時に俺の目の前に竜巻が発生する。

 後方に吹き飛ばされてしまった。

 いくつも吹き荒れる竜巻のカーテンによって、みんなと分断されてしまった。


 いつの間にか後ろに氷の塊が1つ置かれていた。

 その氷の中には一人の男性が入っている。

 どこかで見たことのある顔だ。

 この顔は……。


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