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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
55/89

第55話

 諸々の準備が整いました。

 アンナ達5人の属性付与も終わった。



アンナ 炎

リーズ 水

カヤ  風

エルゼ 土

ルシア 氷



 その他の騎士達も10人ほどが進化している。

 ここらで一度、最上級に行ってみることにした。

 ナルルにもお手伝いで来てもらった。


 前衛をモニカ、ナルル、アンナ、エルゼ。

 中衛をマリアナ様とディア、カヤ、ルシア。

 後衛を俺とティア、リーズ。

 アーネス様は上空だ。

 その他に進化させた10人の騎士達を中衛と後衛の間に配置して戦力の厚みを増しておく。

 これなら最上級迷宮を探索することが出来るのではないか。


 まずは王家の迷宮の上級の迷宮主を倒さないといけない。

 一番最初に倒した時は30分近くかかっていたけど、今ではものの5分で倒すことが出来る。

 ミスリルはもちろんもらっておきます。


 迷宮主のガーディアンを倒すと最上級迷宮に繋がる黒い渦が発生する。

 いよいよ探索開始だ。


 最上級迷宮の魔物はとにかく耐久力が段違いである。

 属性付与まで強化された戦具を持つアーネス様達が全力で攻撃しても、どの魔物も一撃とはいかない。

 しかし以前のように魔物を倒せずどんどん魔物が増えてしまうような事態にはならない。

 押し寄せる魔物を次々と倒して前に進めている。

 アンナ達5人の戦力も上手く機能してくれているのは大きい。


「順調だけど油断しないで少しずつ進もう」


 奥に進めば進むほど、魔物はさらに強くなる。

 様々な属性が入り乱れるように光りを放つ。

 アーネス様達は陣形を乱すことなく、着実に前に押し進めていった。

 これだけ激しい戦闘を連日行えるのも、鍵の空間で十分な休憩をゆっくり取れるから。

 本当に鍵の空間様様だな。


 王家の迷宮の最上級はまったく地図のない状態で探索を始めている。

 迷宮の構造も広大で、最奥部に辿り着くのはいつになることやら。

 ちょっとずつ地図を作製しながら、奥に奥にと向かっていった。


 最初の最上級迷宮の探索は60日間にも及んだ。

 それでも迷宮の半分程度までしか奥に進んでいないのではないかと推測されたが、2度目の探索も60日間ほど行い、ほぼ最奥部に近いところまでたどり着けた。

 強力な魔物が落とす等級魔石は4等級、3等級、2等級と1つの魔石が信じられないほどの魔力を保有している。

 それを俺が吸収するわけで。

 基礎魔力はとんでもないことになっている。

 王家の迷宮の最上級を探索する前で3000程度だったのが、2回の探索を終えたいま、倍の6000まで上がっている。


 ここでも倍々ゲームです。

 増えた基礎魔力を使って進化騎士を増やす。

 進化騎士を最上級迷宮の探索に投入する。

 より探索が安定して攻略できる。

 さらに進化騎士に属性付与を与えていく。

 戦力アップでどんどん攻略が加速していく。


 迷宮主と遭遇しないように最奥部の一歩手前で探索を続けることにした。

 今では最奥部の一歩手前に到達するのに10日。

 そこで40日ほど探索を行い、10日かけて戻ってくる。

 戻ってきたら10日間の休息。

 1回の探索で70日間を費やす形だ。


 3回目、4回目、5回目が終わった時、結婚式から1年が経過して、みんな一つ歳を重ねた。

 俺の基礎魔力は9000→13000→18000と増えていった。



マリアナ様

10400000/20000:修復

10400000/10000000:解放『ニーズヘッグ』



 マリアナ様の解放ニーズヘッグの1000万の魔力も溜まっている。

 自称ニーズヘッグは早くフヴェルゲルミルの泉に連れていけと相変わらず煩い。

 ただ、そこに連れていけばマリアナ様は解放が使えるようだ。

 自称ニーズヘッグがそう言っていたらしい。



 50人の騎士達の進化と属性付与もほとんど終わっている。

 オーディン王国の弟子システムはそれなりに上手くいっているけど、どうしても騎士になれない人達も出てきてしまう。

 その人達の中から王家が問題ないと認めた人を、俺の騎士にすることになりそうだ。

 年齢幅も広い。

 特に年齢が高い人は弟子システムでも騎士として迎え入れられることは少ない。

 そのため30代で戦具を得られない多くの人達を俺の騎士に迎え入れることになりそうだ。

 40代以上でも、まだまだ現役で働く気がある人には戦具を与えることになるだろう。


 王家の迷宮最上級の6回目の探索。

 今回は迷宮主を倒すことを目標とした。

 そしてこの6回目の探索で、しばらく最上級迷宮の探索はお休みすることになる。

 理由としては子作りだ。

 アーネス様とマリアナ様、それとモニカとこの探索が終わったら子作りに専念することになっている。

 2年間ほど迷宮探索はお休みの予定だ。

 もちろん、アンナ達は上級迷宮の方で魔石集めを進めるけどね。


 王家の迷宮の最上級の迷宮主は、アーネス様が空を飛んで偵察した時に見つけている。

 頭と首のない大きな巨人のような魔物だ。

 取り巻きがいないため、迷宮主かどうか判断に迷ったそうだけど、あれ以外に迷宮主と思われる魔物は見つかっていない。


 最上級迷宮を探索する時には、21人での探索が基本となっている。

 まず俺。

 アーネス様、マリアナ様、モニカ、ティア、ディアの5人。

 アンナ達5人。

 その他騎士10名。


 その他騎士10名はサポート役となるため、最上級迷宮の経験を積ませるために、毎回入れ替えている。

 残りの40名ほどの騎士達は上級迷宮で魔石集めをしてもらっている。


 今回はナルルにも来てもらった。

 迷宮主との戦いだから、ナルルがいてくれると心強い。

 そのため今回は22人での探索だ。


 いつもの同じペースの10日で最奥部の一歩手前までやってきた。

 今回はここからさらに奥に探索していく。

 アーネス様とディアの闇鷹を使って偵察しつつ、首のない巨人を探して進んでいった。

 半日ほど進んだところで、そいつは見つかった。


「あれか」

「本当に大きいですね」


 アーネス様は前に一度見たことはあるけど、俺達は初めてだ。

 王家の迷宮最上級の迷宮主……首無し巨人とでも呼ぼうか。


「取り巻きは見えないね……でも召喚タイプかもしれない」


 動きはとても鈍い。

 巨体をゆっくりと動かしながら何をするでもなく歩いているかのようだ。

 実際何もしていないんだけど。


「ディアの絶を合図に戦闘を始めます。みんな所定の位置へ」

『はい!』


 ディアの絶一発で倒れてくれたら楽なんだけどな。


「ディア」

「いくぜ! 絶!!」


 絶を纏った闇矢が首無し巨人に放たれた。

 矢は大きな巨体のお腹に見事に当たった。


「おいおい」


 首無し巨人はお腹をぽりぽりとかいて、何事も無かったかのようにまた歩き始めた。

 ディアの絶を合図にアーネス様、マリアナ様、モニカ、ナルルが首無し巨人に攻撃を始めた。

 アンナ達5人は取り巻きが召喚されないか辺りを警戒している。


「なんだこいつは?」


 取り巻きが召喚される気配はない。

 それどころか、首無し巨人はアーネス様達の攻撃を受けても反撃してこない。

 一応ダメージは与えているようだ。

 攻撃される度に、痛そうに身体をひねったり腕で防御したりしている。

 でも何も反撃してこないのだ。


 迷宮主じゃない?

 どういうことなんだ?


「何か……一方的にこっちが攻撃して悪い気すら覚えるんだけど」

「確かに。でも迷宮にいる以上は魔物なんだろ? やるしかない」


 俺の近くで闇矢を放つディアが言った。

 まぁそうなんだけど。


 首無し巨人の体力と耐久力はすさまじかった。

 その点は迷宮主といえるだろう。

 一切反撃してこなかったけど。

 サンドバック状態のままアーネス様達の攻撃を実に1時間以上受け続けたのだ。

 アーネス様達の方が途中で息切れして、代わる代わる休みながらの攻撃となった。

 そして1時間後。

 ついに首無し巨人は、その巨体が崩れ落ちるように大地に転がった。


「やっとか……長かったね」


 みんな達成感より疲労感の方が大きいな。

 一切反撃してこない魔物をひたすら攻撃していただけだからね。

 でもこれだけの巨体なら魔石は……あれ?


「首無し巨人が……」

「……消えていく?」


 やっとの思いで倒した首無し巨人の巨体は霧のように消えていってしまった。

 魔石は見当たらない。

 代わりにどういうわけか……黒い渦が残った。


「これって上級迷宮に帰る用?」

「それか……まだ続きがあるのでは?」


 まさかまさか。

 最上級迷宮はここで終わりじゃない?

 それとも最上級迷宮の上がある?

 神級とか?


「ふむ……旦那様。ちょっと覗いてみましょう」


 アーネス様が実に嬉しそうな顔で言った。

 またそうやってすぐ行こうとする。


「いやいや。ちょっと待ってください。もし最上級迷宮よりもさらに強い魔物がいる迷宮だとしたら危険です」

「ちょっとだけ、ちょっとだけですから。先っぽだけ」

「そのエッチな言い方やめてください」

「ご主人様は言うのも言わすのも好きっしょ」

「それは今はいいから」


 絶対この渦の中はやばい気がする。

 最上級よりさらに強い魔物がいるんだ!


「あれ? この渦……入れません」

「え?」


 いつの間にか渦の前にいたマリアナ様が、黒い渦を触っていた。

 入れない?


「入ろうとしても、押し返されて入れないんです」


 入ろうとしないでください。


「む? 本当だな」

「お……行けないっしょ」


 だから入ろうとしないでください。

 まぁでも入れないのはよかった。

 これで危険な場所にいく必要は……ん?


「あれ?」

「お?」

「あ?」

「ふむ」


 こんな時にどうしてお前は……。

 俺の鍵の魔具からその黒い渦に向かって光りが伸びていた。


「なるほど。そういうことでしたか。旦那様の鍵で開けるのですね」

「……そうなっちゃいますよね?」

「そうなりますね」

「また今度にしません?」

「また今度では、いつになるか分かりません、戻ったら旦那様との楽しい子作りが待っているのですから。私もマリアナもモニカも、再び動けるようになるまで時間がかかります」


 はぁ、仕方ない。


「開けますけど、少しでも危険だと思ったらすぐに戻りますからね?」

「もちろんです」


 本当に分かってるのかな。

 黒い渦に鍵を押し当てた。

 鍵が挿し込まれる感触。

 うん、間違いなく開きそうです。

 鍵を回すと、ガチャリ、と頭の中に音が響いて開いた。


「え?」


 次の瞬間、俺は黒い渦の中に吸い込まれていた。

 頭の後ろの方からアーネス様達の叫び声が聞こえたような気がした。

 目の前が真っ黒になり、意識が遠のくのが分かった。








 夢を見ているわけでもない。

 ただただ暗い中にいて、自分が眠っているのか起きているのかも曖昧な感じだ。

 どれほど時間が過ぎたか。

 やがて遥か彼方に光りの点が見えてきた。

 それは徐々にゆっくりと俺に近づいてくる。

 永遠とも思える時間をかけて、その光の点の中に俺は入っていった。



「いて」


 久しぶりに声を発した気がする。

 それがどれくらい久しぶりなのか分からない。

 ほんの数秒かもしれない。

 でも何百年ぶりのような気もする。

 そして、ここはどこだ?


 辺りは豊かな自然が溢れていた。

 動物や鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 俺は……俺は何をしていたっけ?

 どうしてここにいるんだっけ?


「どうすればいいんだ! 何も変わらないではないか!!」


 突然、自然の中に男の怒声が響いた。

 鳥たちが驚いて空に羽ばたいていく。

 俺はその声がする方に向かっていった。


「テュールの片腕と引き換えに、フェンリルをグレイプニルに縛り付けられたのだろ」

「それは予言でも最初からそうだった! 問題はラグナロクが起きればグレイプニルが解けてしまうことだ!」

「お前が動くたびに事態は悪化しているように思うのだが……少しは落ち着いたらどうだ、オーディンよ」


 オーディン?


 茂みの奥から聞こえる声に近づいていく。

 そこには……澄んだ綺麗な泉だ。

 その泉の前に一人の男がいた。

 男が一人……でも会話はもう一人と……。


「俺は死にたくない! 何としても生き延びたいのだ! 運命を変える方法を教えてくれ! ミーミル!!」


 ミーミル?

 あ、泉の中に……頭が見えたぞ。

 え? 頭だけ? あれ、頭だけなんですけど。


「すでにこの世の知恵と知識を得たお前に教えることなどない」

「そんなこと言うなよ! 賢者の神ミーミルよ! 俺を救ってくれ!」

「あいかわらず情けない奴だ。本当にお前が最高神なのかと疑いたくなるぞ」

「疑ってもなんでもいい! 俺は死にたくないんだ!!!」


 オーディンと呼ばれた男はその場で寝転ぶと、ジタバタと手足を動かしている。

 まるで我儘を言う子供だな。


「ゲルズをフレイの妻に迎え入れることに成功したスキールニルに、もう1本グレイプニルを作らせに行かせたのだろう?」

「ああ、行かせたとも。あいつめ。もう1本グレイプニルをドヴェルグに造らせるために、秘密のルーン文字を教えろと言ってきやがった。なんて強欲な奴なんだ!」

「それで教えたのか?」

「教えたとも! なぜなら俺は死にたくないからだ!」

「まったくお前は……」


 話を聞く限り、このオーディンという男は死にたくないそうだ。

 誰もが死にたくないだろう。

 俺だってそうだ。

 で、ここはどこで、君達は誰?

 話で飛び交う言葉は……まるで古代の神々の会話なんですけど。


「ならばスキールニルの帰還を待て。運命が変わるかもしれぬだろ」

「それが戻ってこないからこうして来ているのだ! スキールニルが発ってもう1年だぞ! 一向に奴はグレイプニルを持って戻ってこない!」

「知らん。待て」

「なんて薄情な! それでも俺の伯父か!」

「この世の全ての生命はみな繋がっとる。お前とだけではないわ」

「ふん! もう知らん! お前のことなど知らん!」

「あ~帰れ帰れ。さっさと帰れ」


 オーディンという男は暴言を吐くだけ吐いたら、どこかへと去っていった。

 オーディンの姿が見えなくなると、泉の中に頭だけ浮かんでいる奴が、茂みに隠れている俺の方に視線を向けた。


「そこにいる者よ。出てくるがいい。私に何か用か?」


 ばれてました。


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