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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
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第54話

 オーディン王国の王都に俺達は戻ってきた。

 アーネス様も一緒だ。

 ナルルとディアのおかげで、奇跡的にアーネス様は生きて戻ってこれた。

 全身傷だらけのアーネス様を見て、俺はずいぶん取り乱してしまった。

 ティアの再生で傷はすぐに癒えたけど、アーネス様は目覚めるまで2日を要した。

 その間、自分でも信じられないほど取り乱してしまい、みんなに迷惑をかけてしまった。


 あの北部の森林での一件は、公には公表されないことになった。

 単に災害級の魔獣を俺達が討伐したということだけが公表された。


 フレイ王国では、フレイ王が病死したと発表された。

 あの後、フレイがどうなったのか分からなかったけど、たぶんあの場で殺されたんだろう。

 フレイ王国では新たな王の選定で混乱状態が続いているらしい。


 落ち着いたところで俺達は話し合いを持った。

 フレイヤもまだここにいる。


「剣だけが宙に浮いて私に斬りかかってきました。その動きはあまりに凄まじく、解放のブリュンヒルドから2本の神剣を貸し与えられていましたが、防ぎきることも出来ませんでした」

「お姉様の剣技を上回る剣だなんて……」

「しかも持ち手がいない。ずっと攻撃してくるだけ。勝てるわけないな」

「その剣の所有者はいた」

「輝く馬に乗った者ですね」


 その姿を見たのはナルルとディアだけ。

 アーネス様は剣の相手に集中していて、そいつの存在に気づいていなかった。


「世界樹の守護者じゃの」


 フレイヤが言った。

 かつて一度だけ会ったことがある世界樹の守護者。

 そいつは輝く馬に乗っていたそうだ。


「世界樹の守護者……おそらく名はスキールニル。トールが言っていた古代の神々の時代から生き続けている者でしょう」


 あいつは俺達とは根本的に何かが違う。

 生命としての格が違うといえばいいのか。


「輝く馬に乗っていた人物は世界樹の守護者スキールニルであるという前提のもと、話を進めたいと思います。まず僕達はスキールニルと絶対に敵対しなくてはいけない理由は、いま現在ありません。トールの言葉からしても、スキールニルが世界の平和のために動いているとも考えられます。今回はフレイ王の後ろに彼がいたため戦うことになってしまいましたが」


 フレイ王がどうしてマリアナ様に執着していたのかは気になるけど、あんな化け物とは出来れば敵対したくない。


「スキールニルが何をしているのかまったく分かりません。分かっていることはエルフとスヴァルトに制約を与えていることです。スヴァルトに関しては与えた制約の契約が破損してしまったため、魔力暴走が起きてしまっています。これがスキールニルの意図したことなのか、それとも意図しない偶然のものなのかも分かりません」


 現状、スキールニルがしていることで問題なのは、スヴァルトのことぐらいだ。

 エルフが世界樹に精霊力を捧げて、その10分の1だけ祝福を与えるという仕組みをスキールニルが造ったとしても、それそのものを悪とはいえない。ずいぶん中抜きしているけどさ。


 ん?

 中抜きされた残りの精霊力って何に使われているんだ?

 世界樹の維持かな……。


「スキールニルが今後も僕達に敵対してくるのかどうか……それを見極めたいところですが、どうすればいいのか皆目見当もつきません」

「相手は古代の神ともいえる存在ですからね。こちらから会いに行って話をすることも出来ませんし。何処にいるのかも分かりませんしね」

「制約が解かれた我を見たら……我は殺されるのかの」


 フレイヤの不安はもっともだ。

 スキールニルが来た時、フレイヤは鍵の空間の中にいたので姿を見られたということは絶対にない。

 でもナルルやディアのことは見られている。

 これほど強力な魔力を持ったスヴァルトが存在している、という事実は認識しただろう。

 そこからどの程度、スキールニルが推測しているのか分からないけど。


「フレイヤ様とミラさんは、当分身を隠しますか? 僕の鍵の空間の中で」

「そうしたいところじゃが、女王としての国を捨てるわけにはいかぬ。まぁ、世界樹の守護者が来たら、その時はその時じゃ」


 何だかんだでみんなフレイヤ様のことも心配はしている。

 でも女王として国に戻ると言われたら、何も言えない。


「分かりました。明日にでも国にお届けします。アーネス様申し訳ありませんが」

「大丈夫ですよ。もう傷は癒えて体力も戻りました。変に気を使われると、私の方が困ります」


 俺達が分かる情報を話し合っても何か答えがでるわけではない。

 スキールニルがこれからどう動いてくるのかも分からない。

 こちらから敵対行動を取る必要はない……と言っても何をしたらスキールニルにとって敵対行動なのかも分からないけど。

 結局、俺達は俺達がやるべきことをする、という話に落ち着いた。




 翌日、フレイヤ様を国にお送りした。

 ナルルもスヴァルト区域に戻った。


 俺達がオーディン王国でやるべきこととは、もちろん王家の迷宮での魔石集めです。

 そして王家の迷宮の最上級を攻略すること。


 マリアナ様の戦具に暗黒属性を付与して、解放の魔力を溜める。

 アンナ達5人を進化させて、属性を付与する。

 またアンナ達以外にも、1日に一人のペースで戦具の卵を孵化させて俺の騎士を増やしていく。

 主に大きな戦具の卵を持った騎士候補生もしくは戦士で王家支持派の人達だ。


 解放ブリュンヒルドを使ったアーネス様はモニカと同じく『神の使い』という資格を得ていた。

 やはり解放を使うことで得られる資格のようだ。


 スキールニルの影に怯えながらも、俺達は日々王家の迷宮での魔石集めを続けたのであった。





 アンナ達5人が進化した。

 属性付与の新しい情報が見えた。

 ただ、解放の情報は見られなかった。

 解放は誰もが得られるものではない? 何か条件が必要なのかもしれない。


 1日一人のペースで戦具の卵を孵化させて、俺の騎士となった者は50人に上った。

 目ぼしい候補者は全て孵化させたので、これ以上は新たな騎士は特別な理由がない限りは増えないだろう。

 この50人全員の戦具を進化させて属性付与させることになる。


 マリアナ様の戦具の魔力もどんどん溜まっていく。

 アンナ達が進化したことで、等級魔石の集まるペースはさらに上がった。

 毎日のように大量の等級魔石が俺のもとに運ばれてくる。

 本当は基礎魔力を上げるのはある程度のところでやめるつもりだった。

 でも、心のどこかでスキールニルの影を感じると、どこまでも基礎魔力を求めてしまう自分もいる。


 鍵の魔具による基礎魔力の増加は倍々ゲームみたいなものだ。

 基礎魔力が増えて騎士の戦具を強化すると、得られる魔石がさらに増える。

 基礎魔力は栄養を取って寝れば回復するので、さらに増えて基礎魔力で騎士の戦具を強化していく。

 この繰り返しで、魔力の増加はどんどん増えていくばかりだ。


 アーネス様達は厳しい自己鍛錬を続けている。

 マリアナ様もモニカも。

 そしてティアもディアもだ。

 みんな心のどこかにスキールニルを見ているのかな。

 俺もぼけっとしているわけにはいかない。

 魔力は騎士達に与えなくてはいけないけど、身体を鍛えたり、魔法に関する研究を深めたり、出来ることはしていった。





 いつスキールニルが襲ってくるのか。

 最初は大きな不安だったけど、あれから一月、二月、三月、半年と時が流れ、スキールニルの動きがまったく見えてこないと、だんだん平穏な生活にも慣れてくる。

 厳しい鍛錬はみんな続けているけど、休息の時は穏やかな時間が流れていた。


 王家の迷宮の探索、鍛錬、そして休息とイチャイチャを繰り返していたら、いつの間にかアーネス様とマリアナ様との結婚式の日が近づいてきていた。

 フレイヤ王国から戻って1年が経過していた


 16歳の時に賢者の資格を失った俺は、17歳の時に賢者の資格に復帰した。

 それから1年経って今は18歳だ。


 アーネス様は20歳、モニカは19歳、マリアナ様は18歳で、みんな綺麗で可愛い大人の女性へと成長している。

 そして胸もさらに豊かに柔らかくかつ張りのあるものへと成長していた。

 その成長した胸から放たれるダブルおっぱいアタックと、トリプルおっぱいウェーブの破壊力は凄まじい……。


 結婚式はかなり盛大に行われるようで、ちょっと緊張しています。

 精霊王国からはフレイヤ女王が参加して頂けることになっている。

 フレイヤの方にもスキールニルはまったく姿を現していない。


 人族の国家は大小様々な国の王や重鎮達が参加予定で、ここで騎士の進化について発表することになっている。

 オーディン王国は俺の騎士だけではなく、他の賢者達も騎士を進化させている。

 かつて大賢者と呼ばれていた者達は、それまで溜めていた魔力を使って騎士をすぐに進化させていた。

 いまだに弟子システムを受け入れない元大賢者もいるけど、それはそれで勝手にどうぞだ。

 もう王家は元大賢者に頼る必要はない。

 今後の繁栄を共に歩まない者は、勝手にしてくれればいいだけだ。



 そして結婚式当日。

 俺は晴れてアーネス様とマリアナ様を妻として迎えた。

 巷の認識はアーネス様とマリアナ様の婿に俺が迎えられた、というものだろうけど。

 結婚式は1日で済むようなものではない。

 連日、王都はお祭り騒ぎだ。

 俺達……というよりかはアーネス様とマリアナ様なんだけど、各国の王達との挨拶や会談で大忙しである。

 俺は二人の後についていくだけであった。


 騎士の進化は各国に大きな衝撃を与えた。

 実際に進化した騎士をお披露目したため、進化というそのものを疑う者は少なかった。

 ただ、進化のためにどれくらいの魔力が必要かを測定できる魔具……つまりは俺の鍵の魔具のことなんだけど、それに関しては懐疑的に見える人も多かったな。


 進化に必要な魔力を測定する代わりに、今後もオーディン王国と良好な関係を築いて欲しいとアーネス様は各国の王に伝えていた。

 属国というわけではないけど、オーディン王国は人族を代表するような大王国だからね。

 まぁこっちに歯向かうようなことはしないでくださいね、ということだろう。


 結婚式からお祭り騒ぎと各国の王との会談などで、落ち着くまで20日ほどかかった。

 ようやく落ち着いたので、また俺達はやるべきことに戻ることにした。

 前と変わったことと言えば、アーネス様とマリアナ様が俺のことを『旦那様』と呼ぶようになったことか。


 ちなみに、モニカは側室とかではなく、愛人ポジションがいいらしい。


 日常に戻った俺達がやることは、もちろん王家の迷宮で等級魔石を集めること。

 俺は騎士達に魔力を与えて進化と属性付与に導くこと。

 1日の半分の魔力はマリアナ様に与え続けたことで、ついにマリアナ様の戦具も属性が付与された。

 暗黒属性です。

 自称ニーズヘッグの竜も喜んでいた。

 これで残すは魔力1000万が必要な解放のみだ。


 自称ニーズヘッグの竜はあいかわらず、自分をフヴェルゲルミルの泉に連れていけと、マリアナ様に言ってくるらしい。

 それがどこにあるのか分からないのに、連れていけるわけないのだが。


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