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異世界で賢者になる  作者: キノッポ
第二章
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第51話

 新しい仲間が増えました。

 名前はニーズヘッグ。

 蛇にしか見えない自称竜です。

 人の心を読む力があるのか、蛇だと思って見ているとすごい睨んできます。


 戦具としては問題なく活躍してくれる。

 マリアナ様は変わらず鞭をばしばしと魔物に叩きつけている。

 ニーズヘッグの頭は大丈夫なのか? と思って見ていたら、鞭として使われている時には頭が消えていた。

 どこに引っ込んでいるのか分からないが、やはり頭を鞭として使われると痛いのだろう。


 ニーズヘッグは自分を『フヴェルゲルミルの泉』に連れていけとマリアナ様に言ってきた。

 そのフヴェルゲルミルの泉がどこにあるのか聞けば、ユグドラシルの3本の根の1本が伸びている地下世界の氷の国『ニブルヘイム』にあると答えが返ってきた。

 ニブルヘイムがどこにあるのかそもそも知らない。

 地下世界というぐらいだから大地の下にあるのかもしれない。

 氷の国という名前からしてすごく寒そうなイメージだ。

 で、そこに連れていったらどうなるの? と聞けば……。



この世の罪を喰らい終焉の時を待つ



 まったく意味が分かりません。

 分からないので、フヴェルゲルミルの泉のことは置いといて、せっせと王家の迷宮の上級を探索して等級魔石を集めることにしました。

 俺の基礎魔力を増やしつつ、魔力の半分はマリアナ様の戦具へ、残りの半分でアンナ達を進化属性付与させることにした。

 ちなみに、アーネス様の解放『ブリュンヒルド』はもう魔力が溜まっています。

 モニカと同じく魔力は溜まったけど、アーネス様も解放を使うことが出来ないと感じられた。

 解放の使用条件は不明だけど、俺達に必要な時には使えるものだと気楽に考えることにした。


 上級迷宮を探索していれば、霊物にも遭遇する。

 ティアは再生をよく使うので、霊物に遭遇するのは消費した精霊力の補充に助かっているが、ティアもまだ一つ授けていないものがある。

 そう、種だ。


 何の種から分からないけど、精霊力1万も必要なものだ。

 すごい種に違いないから、ティアに種を授けるための精霊力も与えていった。

 そして、ティアの種の精霊力1万が溜まったのである。


「これが……種?」

「う~ん、種は種だね」

「見る限りは種ですね」

「種っしょ」


 めちゃめちゃ大きな種だった。

 精霊具が出てくるように、大きな種が一つ出てきたのだ。

 ティアの頭より大きいんじゃないか?

 こんなのどこに植えるんだよ。


「水とか肥料とかすごいことになりそうだな」

「これ植えて何が生えてくるんでしょうね?」


 とりあえず王家が管理する庭の花壇に植えてみることにした。

 花壇がいいのか畑がいいのか分からないけど。

 侍女達にお水だけ毎日あげるようにお願いしておいた。



 フレイ王国に動きがあった。

 俺とアーネス様、マリアナ様の婚約が発表されると、大激怒の手紙を寄越してきたそうだ。

 以前のフェンリル級の魔獣の時に迷惑をかけたことは、お金で賠償すると王が申し出たのだが、婚約を取り消してマリアナ様を自分のところに寄越さないなら戦争とまで言ってきたそうだ。

 ただ、マリアナ様の戦具の卵を俺が孵化させたことを告げると、途端にトーンダウン。

 戦具の卵からは『戦具の鞭』が現れたとだけ伝えたそうだ。

 実際にマリアナ様がフレイ王国の使者に、ただの戦具の鞭(通常形態)を見せた。

 すると、フレイ王国は急にマリアナ様への興味を失い、賠償金での調整に入ったとか。


 フレイはマリアナ様の戦具の卵の大きさからして、神獣か古代の神話に繋がる何かがあるのでは? という推測もしくは希望しか持っていなかったというわけだ。

 ならこれでフレイのマリアナ様への興味も無くなり、一安心ということになる。

 そう思っていたら、とある事態が発生した。


「魔獣? あのフェンリル級の?」

「はい。前回と同じ北部に突如として災害級の狼の魔獣が現れております」

「う~ん……罠かな?」

「そうでしょうね。あまりに都合が良すぎます。フレイ王国の発表では、前回の災害級の狼の魔獣はフレイ王国が討伐したことになっています。あれから半年も経っていません。同様の災害級の魔獣が成長するにはあまりに短期間すぎます。どこかに潜んでいたとしても、都合が良すぎるでしょう」

「やっぱり前回と同じ個体だよね。っていうことは、この魔獣を操っているのはフレイ王国、もっと正確に言うとフレイ王かな」

「私もそう見ています」

「覚醒状態の騎士3人で勝てなかった魔獣か……危険だね。前回の戦闘状況を知る者はいない。負けたとしても、あと一歩まで追いつめていたのか。それとも手も足も出ない状況で負けたのかも分からない」

「私とモニカは属性付与をアルマ様から与えられています。それに進化したマリアナ。アンナ達がいれば遅れは取らないかと」

「そう僕も思うけど……」

「何かひっかかりますか?」

「うん。この魔獣を操っているのがフレイなら『神器』が出てくるかもしれない」

「なるほど」


 神器はやばいからね。


「でもどうして動いたんだろう?」

「マリアナへの興味は失われたと思っていましたからね」

「あの人、大嫌い!」

「フレイ王国の使者はマリアナ様の戦具を見た。その後にフレイ王国は方向性を変えて賠償金での話し合いへと移った。いまもその話し合いは行われている。……誰かが何かを入れ知恵したか」


 誰が?

 可能性として考えられるのは一人しかいない。

 世界樹の守護者。

 スキールニルしかいない。

 フレイヤも一度しか会ったことがないと言っていたけど、フレイが何度会っているのかなんて知らないことだ。

 もしかしたらフレイとは定期的に会っていたのかもしれない。

 なんせ古代の神フレイに仕えていたぐらいなんだから。


 使者から話を聞いたフレイ王はマリアナ様への興味を失った。

 しかしその後、スキールニルと会う機会がありマリアナ様の戦具のことを伝えたら、スキールニルから何らかの情報を得た。

 それでまたフェンリル級の魔獣を動かした?


 フェンリル級の魔獣の討伐には覚醒騎士が動くと思っているはずだ。

 騎士の進化のことはまだ他国には言っていない。

 オーディン王国内の賢者と騎士の仕組みが安定してから、他国にも伝えるつもりでいるそうだ。


 もしこのフェンリル級の魔獣が覚醒騎士をものともしないほどの強さなら、いずれ討伐にマリアナ様が出てくると思っているのか?

 前回も大賢者達は動かず、結局王族のフィリップ様が動いたからね。

 今回も王族が動くとすれば、アーネス様やマリアナ様が動くことを期待してもおかしくない。


 相手がどの程度、気合を入れてやってくるのかが問題だ。

 様子見なのか。

 何かを確認したいのか。

 それとも何かの確信を得ていて、はっきりとした目的があるのか。


 慎重に動きたいけど、実害がすでに発生している。

 放って様子見するわけにはいかない。

 俺達が行くしかないだろう。


 王に俺達がフェンリル級の魔獣討伐に行くことを告げた。

 王は偵察隊を出してはどうか? とずいぶん俺達のことを心配してくれた。

 でも偵察に最も適したディアがいるから、偵察込みで俺達が行くのが一番良い。

 最後は王も納得してくれて、俺達を送り出してくれた。




 オーディン王国から北に向かう。

 アーネス様に飛んで連れていってもらうのですぐです。

 目撃情報はかなりの北部で、精霊王国のフレイ王国との国境付近の森林だった。

 近くの適当な場所に一度降りて、鍵の空間に入る。


「ではアーネス様とディアに偵察をお願いします。魔獣を見つけたらここに戻ってきてください」


 アーネス様は上空から、ディアは闇鷹を使って偵察を始める。

 陽が暮れ始めるころ、ディアが見つけた。


「チッ……やられた」

「やられた?」

「闇鷹が潰された。たぶんその魔獣だ」

「闇鷹をアーネス様に送って」

「了解」


 アーネス様に戻ってきてもらった後に、もう一度闇鷹を潰されたという場所に送る。

 するとその場所で同じように闇鷹は潰された。


「まただ」

「見えた?」

「いや、見えない……最初は魔獣かと思ったけど、何かの魔法で潰されたかもしれない」

「ケーラさんの闇魔法のようにあたりの景色を変えているかもしれないね」


 災害級の魔獣ともなれば高い知能を持っているだろう。

 あたりの景色に同化して潜んでもおかしくないけど、ディアが感じたのは魔法のようなもの。

 つまり魔獣だけではなくて、来ているんじゃないか?

 もしかして張本人が。


「ディア。絶いこうか」

「え? いや、それはまだ」

「大丈夫。前回は上手くいったじゃん」

「あれはたまたまだろ」

「大丈夫だって。僕の勘を信じて」

「ゴシュジンサマの勘は頼りにならないって」

「闇鷹を囮に。攻撃された方角に向かって絶を発動。はい、いこう!」

「チッ……失敗してもしらねぇぞ」

「その時はその時さ。アーネス様達がフォローしてくるから」

「うむ。任せておけ」

「ディアちゃんなら大丈夫よ!」

「思い切ってやるっしょ」

「ディアならきっと出来るわ!」

「いや……別にそんなに励ましてもらわなくていいから」


 ちょっと照れ隠ししながら、ディアはまず闇鷹を飛ばした。

 さきほど潰された場所に飛ばす。

 ディアは闇弓に闇矢をセットして構える。

 そして闇魔法『絶』を発動。

 闇矢にあやしく揺らめき黒く輝く闇が浮かぶ。


 闇鷹とディアの視界は同調している。

 闇鷹が攻撃を受けた方角。

 そこに向かって、ディアが闇矢を放った。


 闇矢に付与された『絶』が、全てを絶っていく。

 全ての繋がりを絶つ魔法が『絶』だ。

 魔法の効果も、そして命さえも絶っていく。

 絶が付与された闇矢が飛んでいった後は、まるでブラックホールに吸い込まれた後のように何も残らない。

 ただ魔法の発動も制御も難しいようで、失敗すると何の効果も発揮してくれないんだけどね。

 今回は……上手くいったようだ。


「お見事」

「当たった。でも込めた魔力が少なすぎて……相手の結界みたいなのを壊すことしか出来なかったな」

「それで十分。ディアの絶のおかげだね」

「チッ……もっと上手く使えれば」

「焦らない焦らない。少しずつ使いこなせていければいいよ」


 全ての繋がりを絶つ魔法とはいえ、込めた魔力によって威力が変わってくる。

 相手の魔力や抵抗力が大きければ、繋がりを絶つことは出来ない。

 そもそもディアが本来持つ自己魔力だけでは、大きな威力を得ることなんてできないだろうしね。


「さて、あちらさんも驚いているかな」

「でしょうね」


 かなり広範囲に結界? のようなものを展開していたのか。

 それまで見えていた景色の一部が変わり、ここから見える森の奥に何やら建築物まで見えてきた。

 砦とまではいかないけど、拠点のようなものを築いて隠していたのか。

 そこにいるのは……。


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